戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達 作:宇宙刑事ブルーノア
バルベルデ共和国のとある村………
押し寄せて来たクーデター軍の前に、風前の灯火かと思われたバルベルデ国防軍と村人達だったが………
間一髪の所で、S.O.N.G.と宇宙刑事達の救援が間に合い、事無きを得る。
その後、怪我人の手当てや物資配給の為のS.O.N.G.一般隊員達が到着。
装者達と宇宙刑事達も、その手伝いへと回る………
「「クリスッ!!」」
「パパッ! ママッ! 大丈夫っ!?」
避難民達の中に雅律とソネットの姿を見つけたクリスが駆け寄る。
「ああ、僕達は大丈夫だよ」
「クリスとお友達のお陰よ。ありがとう」
「良かった………」
両親の無事な姿に、クリスが安堵の溜息を吐く。
「クリス」
とそこで、今度はロケットマンがクリスに声を掛ける。
「小父さん………」
「すまない、クリス………お前にとっては忌わしい思い出の有るこの地で戦わせてしまう事になってしまうとは………」
「別に………小父さんの所為じゃないし、気にしてねえよ」
再びバルベルデに地を踏む事となってしまったクリスを気遣うロケットマンだが、クリスはぶっきら棒にそう返すと、踵を返して両親とロケットマンから離れて行った。
「あ! クリス………」
「ソネット、今はそっとしておこう………」
引き留めようとしたソネットを雅律が止める。
「此処はクリスに友人達に任せよう。アイツも年頃だ。何時までも両親の世話になるのは気が引けるだろう」
「………クリス」
ロケットマンにもそう言われ、ソネットは立ち去って行くクリスの背に寂しげな視線を向けるのだった………
一方、その頃………
「ほーら、美味しいお菓子だよ~。いっぱい有るよ~」
「「「「「わあ~~~っ!!」」」」
救援物資の中に有ったお菓子を、子供達に配る響。
「ありがとう、お姉ちゃん!」
「大丈夫だよ~。この内戦はすぐに終わるからね。そしたら、また皆笑顔で過ごせる様になるから」
お礼を言って来た少女の頭を優しく撫でながら、安心させる笑みを浮かべて響はそう言う。
「ホントにっ!?」
「うん、ホントホント」
「わ~い! また学校に行けるんだ~っ!!」
「「「「「わ~いっ!!」」」」」
少女が喜びを露わにすると他の子供達も歓喜する。
「皆に知らせなきゃーっ!!」
そして少女がそう言って駆け出したのを切っ掛けに、蜘蛛の子を散らす様に方々へ走り出した。
「…………」
それを見送った後、先程まで戦場だった場所を振り返る響。
その場所からは、まだ戦車等の残骸が燃えて黒煙が上がっており、風に棚引いている。
「…………」
「響」
表情が険しくなる響に、未来が声を掛けた。
「あ、未来」
「大丈夫? 怖い顔してたよ?」
「うん………この国をまた戦火に巻き込んだパヴァリア光明結社の事が許せなくて」
独裁政権が倒れて、漸く平和が訪れ始めていたバルベルデに再び戦火を持ち込んだパヴァリア光明結社への怒りが胸中に湧き上がる響。
「そうだね………私達必ず、パヴァリアを倒さないと」
その思いは未来も同じで有り、拳を握り締めた。
「「「「「アハハハハハハッ!」」」」」
と、その2人の耳に、複数の子供達の笑い声が聞こえて来る。
「「?………」」
その声が聞こえた方向に視線をやると、そこには笑う子供達の前にしゃがみ込み、三脚で地面に立てたカメラを向けている1人の男の姿が在った。
「お、良いね、その笑顔! じゃあ、こんなのは如何だ?」
「「「「「アハハハハハハッ!」」」」」
響と未来に背が向いているので良く分からないが、男が何かをして子供達を笑わせている様だ。
「「あの………」」
その様子と男の事が気になり、声を掛ける響と未来。
「え?………」
男が振り返ると、両手を使ってで
「ブッ! アハハハハハハッ!!」
「! クククククク………」
思わず吹き出してしまう響と、何とか堪えようとしているものの堪えられずに笑いが漏れる未来。
「お、そっちも良い笑顔だね」
男はそれを気にする事も無く、三脚からカメラを取り外したかと思うと、笑って居る響と未来に向かってシャッターを切った。
「あ、えっと、その………ゴメンなさい」
「日本人の方ですよね」
そこで落ち着いた未来が気まずさから謝罪し、響がそう尋ねる。
「ああ、俺は『一文字 隼人』。見ての通りのカメラマンさ」
カメラを降ろしながら男………『一文字 隼人』はそう答える。
(アレ? この人………)
(何処かで見た気が………)
その隼人の姿を見た響と未来が見覚えを感じる。
「あ、えっと、私達は………」
「知ってるよ。『立花 響』ちゃんと『小日向 未来』ちゃんだろ」
とそこで、自己紹介をしていなかった事に気付いた響が、慌てて名乗ろうとしたが、それを遮る様に隼人が2人の名を口にした。
「えっ!? 如何して私達の事を?………」
「おやっさんと本郷の奴から聞いたのさ。それに俺はカメラマンだからな。情報には聡いのさ」
驚きを示す未来に、隼人はそう返す。
「おやっさんって………」
「響の伯父さんの事だよね………」
「「!!」」
隼人から出た名の内、おやっさんと言うのが立花 藤兵衛である事に思い至った響と未来は、隼人が藤兵衛の店に飾られている写真に写っていた7人の男の1人である事に気付く。
そして、以前出会った別の写真の人物………『本郷 猛』が仮面ライダーであった事を思い出す。
「それじゃあ、貴方は………」
その事を口にしようとした瞬間………
「だ、ダンナー! た、助けてくれよーっ!!」
悲鳴の様な声と共に、子供達に群がられてるミラアルクが姿を見せる。
「おやおや、人気者でいらっしゃるじゃないですか、ミラアルクさん」
「茶化してないで助けてくれよー! あ! ちょっと! 羽はやめろだぜ!!」
茶す様に言う隼人に愚痴っていると、群がっている子供の1人が彼女の羽に触り出して慌てるミラアルク。
「やれやれ………お~い、その辺にしといてやれよ」
そこで隼人が漸く子供達を止めに入る。
「「あ………」」
聞きたかった事を聞きそびれ、所在なさげとなる響と未来。
「お! 居た居た! お~い、響ちゃ~ん! 未来ちゃ~ん!」
とそこで、2人の名を呼びながら轟が現れる。
「あ! 轟兄!」
「轟お兄ちゃん!」
「この村はもう大丈夫だそうだ。弦さんが一旦本部で次の行動に付いて話し合うから、帰還してくれってさ」
響と未来が気付くと、轟がそう言葉を続けた。
「う、うん………」
「分かったよ………」
一旦隼人とミラアルクに視線を向けつつも、轟の後に続いて本部への帰還に入る響と未来。
「「…………」」
一方、その隼人とミラアルクも、去って行く轟・響・未来に一瞬だけ視線を向けたのだった。
◇
バルベルデ共和国のとある港湾施設に入港しているS.O.N.G.の潜水艦………
その指令室にて………
「全員集まったな。先ずは先の救援作戦、御苦労だった」
集まった装者達と宇宙刑事達を前に、先ずは先の戦闘の勝利を労う弦十郎。
「他の戦線の状況は如何なって居ますか?」
その労いもそこそこに、翼がそう尋ねる。
だが、彼女の指摘通り、クーデター軍ことパヴァリア光明結社は周辺諸国全てに戦火を広げており、装者達と宇宙刑事達が勝利した戦場はその内の1ヶ所に過ぎない。
如何に
「それについてだが………」
「クーデター軍は突如として全ての戦線を放棄し、国内へと撤退し始めているそうです」
弦十郎の言葉を、朔也が変わって説明し、モニターにクーデター軍が全ての戦線から後退している様子を映し出す。
「撤退?」
「如何言う事だ? 周辺諸国の軍と国連軍との戦闘はクーデター軍が有利に立ってたんじゃないのか?」
マリアと奏が怪訝な顔をする。
彼女達の言葉通り、現在の戦況はクーデター軍が有利に立っており、態々それを放棄する理由が見当たらなかった。
「分かりません。ですが、クーデター軍が戦線を放棄し始めたのは、先の戦闘が始まった直後からなんです」
「それって………」
「私達が来たから、撤退を開始したって事デスか?」
続くあおいから報告に、調と切歌がそう言う。
「もしかすると、パヴァリア光明結社の目的は最初からS.O.N.G.………そして宇宙刑事達だったのかも知れないわね」
「つまり、この内戦自体が俺達をこの国へ誘い出す為の茶番というワケだ」
「そんな! 私達を誘い出す為だけに、内戦を起こしたって事ですか!?」
「許せないっ!!」
了子とキャロルの言葉に、未来が驚愕の声を挙げ、響が怒りを露わにする。
「!!………」
クリスも険しい表情となって拳を握り締める。
「その撤退しているクーデター軍ですが………2箇所に集結しています」
そこで朔也が、撤退しているクーデター軍が、バルベルデ共和国内のとある2つの地点に集結している事をモニターに示す。
「1つは森林地帯の奥地に在るプラントを兼ねた基地。プラントで生産されているのは化学兵器か、或いは異端技術の物と推測される」
「拉致された周辺の町や村、更に国連軍や周辺諸国の軍人や国民、そしてNGO活動で訪れていた多数の人々がこのプラントで強制労働を行わされています」
弦十郎の説明をエルフナインが補足し、クラッシャー・ファイトロー・ミラクラー達が拉致して来た人々を強制労働させている様子を撮影した写真を出す。
ご丁寧に疲弊して働けなくなっている人間に鞭を打っていると言うあからさまな様子のシーンも有った。
「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」
その写真を見た装者達が義憤に駆られる。
「そしてもう1つは………此処です」
そこであおいが、敵が集結していると言うもう1つの地点の衛星画像を出すが………
そこには鬱蒼とし森林地帯が広がっているだけで、
「? 何も無い様にみえますけど?………」
「ちょっと待って………今動画の方を流します」
セレナがそう言うと、あおいが静止画から動画へと切り替える。
それは、映し出されていた何も無い地点に、クーデター軍の1部隊が接近している様子だった。
その部隊が、ある場所から先へと進むと………
まるで消しゴムで消されたかの様にその姿が消えてしまった!
「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」
「コイツは………」
装者達が驚きを示し、轟も声を挙げる。
「コレだけではなく、この地点にはレーダーやセンサーが全く反応しないんです」
「つまり、それが逆に何かが隠されている証拠になったってワケか」
「ステルスの為の機能が逆に仇となった様ですね」
朔也がそう補足すると、雷と劾が少し呆れた様子でそう言い合う。
「恐らく、此方が敵の本拠地と思われる。謂わば本命だ。しかし、強制労働をさせられている人々を見捨てるワケには行かん。よって、この2箇所に対し、同時攻撃を仕掛ける事とする」
「戦力を分散させるのですか?」
「愚策じゃないかしら」
弦十郎が二面作戦を執ると言うと、翼とマリアが暗に反対を表する。
「懸念は最もだが、我々には時間が無い」
「プラント基地を放置すれば捕らわれた人々が危険に晒されますし、かと言って本拠地を放置すれば撤収されてパヴァリア光明結社の情報を入手する機会が失われてしまいます」
それに対し、弦十郎と慎次がそう言い返す。
「心配するな、その為に俺達が居るんだ」
「「…………」」
轟がそう言うと、雷と劾も無言で頷いた。
「では、メンバーの編成だが………」
そして、そこで弦十郎からプラント基地へ向かうメンバーと、本拠地へ向かうメンバーが発表される。
プラント基地へ向かうのは、轟・響・未来・翼・奏・クリス………
本拠地へと向かうのは雷・マリア・切歌・調・セレナ・劾となったのだった………
◇
丁度その頃………
S.O.N.G.と宇宙刑事達の出現に合わせる様に周辺諸国から撤退したクーデター軍だが………
何時の間にかクーデター軍の手によって、国境線には厚い防壁が立てられており、また受けた被害も大きかった事もあって、周辺諸国の軍や国連軍は追撃を出来ずに居た。
その分厚い防護壁が立てられたとある国境線にて………
1台のバイクが、国境線に向かって真っ直ぐに進んでいる。
「…………」
行く手には分厚い防護壁が聳え立って居るが、バイクに跨っている人物………ノーヘルで、白く輝く長い髪を棚引かせているこれまた純白のスーツを着こなしている男装の麗人と言った女性は、まるでそれが見えていないかの様に更にバイクを加速させた。
「…………」
その目には、深く激しい怒りと憎悪の炎が見て取れた。
と、接近して来るバイクに気付いたのか、防護壁に備え付けられていた赤色灯が回転し、警報を表すサイレンが鳴り響く。
そして、自動防衛システムが作動し、防護壁の一部が変形して小口径の速射砲が出現する。
その速射砲の照準が、バイクに接近して来る男装の麗人に向けられる。
「…………」
だが、それでも尚、男装の麗人はバイクを止める事無く、防護壁へと突っ込んで行く。
遂に、その男装の麗人とバイク目掛けて、速射砲が火を噴いた!
砲弾が男装の麗人の身体を吹き飛ばす………
かに思われた瞬間!
男装の麗人の身体が光に包まれ、光輝くアーマーの様な物を纏った様な状態となった!
砲弾はアーマーに当たると砕け散り、火花と共に飛散した。
速射砲はその名の通りに、次々に砲弾を男装の麗人とバイクに向かって放つが、その全てが男装の麗人が纏うアーマーかバイクに当たって砕け散って行く。
やがて、男装の麗人が纏っていたアーマーの光が粒子状になって流れて消えて行くと………
その全容………『ファウストローブ』が露わとなった!
「…………」
と、男装の麗人が右手をハンドルから離したかと思うと、その手にハンドガンの様な武器が出現する。
左手のみでバイクを操ったまま、右手のハンドガンを防護壁へと向ける男装の麗人。
「…………」
そして、防護壁へと向けて発砲!
赤く輝く弾丸が防護壁へと向かい、命中したかと思われた瞬間………
まるでミサイルが直撃したのかと思う様な大爆発が起き、命中箇所から速射砲を含めた広い範囲の防護壁が跡形も無く消し飛んでいた!
「…………」
防護壁がゴッソリと無くなった場所を、男装の麗人が乗ったバイクが悠然と通り抜けて行く。
「アダム………いや、マッドギャラン………待って居ろ」
無言だった男装の麗人がボソリとそう呟くと、その瞳の奥に燃えている怒りと憎悪の炎が更に激しくなる。
それは、復讐と言う名の炎の色だった………
つづく
新話、投稿させて頂きました。
登場したゲストはズバリ、『一文字 隼人』でした!
内戦国と一文字 隼人………
コレでもうこの後、何が起こるかはピンッと来てる人、多いんじゃないですかね。
ちょっと違うのは、バルベルデは悪の秘密結社と化したパヴァリア光明結社によって内戦状態に陥ってるので、許せぬ悪に立ちむかう正義が居ると感じで、原作みたいに正義が虚しいって感じは無い形になってる事ですかね。
パヴァリア光明結社のバルベルデ本拠地とプラント基地に同時攻撃を仕掛けるS.O.N.G.ですが、謎の麗人の存在が………
果たして、彼女には一体何があったのでしょうか?
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。