戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達   作:宇宙刑事ブルーノア

120 / 162
第16話『サンジェルマンの回想』

日本・某所に在るパヴァリア光明結社の秘密アジト………

 

「ガハッ!?………」

 

「………マッドギャランは何処に居る?」

 

壁に叩き付けられて吐血しへたり込んだ錬金術師に銃口を向けながら問い質すサンジェルマン。

 

「ハ、ハハハ………残念だが、このアジトは数ある1つに過ぎん………マッドギャラン様は居られん」

 

「チッ!………」

 

錬金術師の答えを聞いたサンジェルマンが、露骨に舌打ちをして苦い顔を見せる。

 

「残念か、サンジェルマン………そんなに()()()()の仇が討てなかったが悔しいか?」

 

「!!」

 

続く錬金術師の言葉に、サンジェルマンに瞳に怒りの炎が燃え始める。

 

「ヘヘヘ、奴等も馬鹿な連中だ………マッドギャラン様に歯向かうなど、愚かな………」

 

「黙れっ!!」

 

そこまで言いかけた瞬間に、サンジェルマンは発砲し、錬金術師の左肩を撃ち抜く!

 

「! ぐあああああっ!?」

 

「錬金術師の誇りを無くした貴様が何をほざくか!」

 

悲鳴を挙げる錬金術師に向かって、怒りを露わにそう言い放つサンジェルマンだったが………

 

「フ、フフフ………マッドギャラン様! 万歳っ!!」

 

錬金術師が突如そう絶叫したかと思うと………

 

突然アジトが爆発し始めた!!

 

「!? しまっ………」

 

た、と言い掛けた瞬間、サンジェルマンの頭上でも爆発が起こり、大量の瓦礫が降り注いだのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日の放課後………

 

「ほら早く早く!」

 

「待ってよ、弓美!」

 

「そんなに急がなくても、ふらわーは逃げたりしませんよ」

 

先を行きながら、創世・詩織・小里に呼び掛ける弓美。

 

「いや~、弓美さん、すっかど元気になったみだいで、えがっただ」

 

そんな弓美の姿を見て、小里がそう言う。

 

「ですね。一時期、何だが塞ぎ込んでいる様子でしたから」

 

「うん、やっぱりユミは元気な方がらしいよね」

 

その言葉に同意する詩織と創世。

 

以前、ロボミの事があり、一時塞ぎ込んでいた弓美だったが、創世・詩織・小里の励ましで、今ではすっかりと以前の元気を取り戻していた。

 

「………うん?」

 

とそこで、路地裏に続く道に差し掛かった小里が、何か気配の様な物を感じ取って足を止める。

 

「何だべ?………」

 

気になった小里は、路地裏へと足を踏み入れる。

 

すると、大型のゴミ箱の陰に、誰かが隠れる様に居るのに気付く。

 

「??」

 

恐る恐ると言った様子でその大型のゴミ箱の陰を覗き込むと………

 

「う………ううう………」

 

血が止めどなく流れ、白いスーツを赤黒く染めている左腕を右手で押さえて壁に力無く凭れ掛って苦悶の声を漏らしているサンジェルマンの姿が在った。

 

「!? たたたたた、大変だぁーっ!!」

 

「小里っ!?」

 

「如何したのっ!?」

 

「何があったんですか!?」

 

思わず小里が叫び声を挙げると、小里が付いて来ていない事に気付いて戻って来ていた創世・弓美・詩織が路地裏に飛び込んで来る。

 

「!? この人はっ!?」

 

「酷い怪我です」

 

「きゅ、救急車っ!!」

 

そして負傷しているサンジェルマンの姿に気付くと、弓美がスマホを取り出して119番通報しようとしたが………

 

「止せっ!!」

 

そこでサンジェルマンが、フリントロック式の拳銃………ファウストローブを起動させるアイテムである『スペルキャスター』を弓美へ向けた。

 

「!?」

 

「ユミッ!!」

 

「何をなさるのです!!」

 

「あわわわっ!?」

 

弓美が固まり、創世がそんな弓美を庇う様に立ち、詩織がサンジェルマンを睨み付ける中、1人あわあわとする小里。

 

「余計な事を………するな………私………は………」

 

しかし、色々と限界だったのか、台詞も半ばでサンジェルマンは力尽きた様に項垂れ、スペルキャスターを構えていた手も脱力して地面に落ちる。

 

「! し、死んじゃったっ!?」

 

「いえ、気を失っているだけです………」

 

その光景を見て弓美が慌てるが、詩織が状態を調べてそう告げる。

 

「如何するの? ワケ有り………と言うより、厄介事だと思うけど」

 

創世がサンジェルマンを横目に弓美達に問う。

 

助けようとして銃を向けられた事も有り、正直彼女への印象は良くない。

 

助ける義理は無いとも僅かに思ったが………

 

「放っておけないでしょ! 響達だったら問答無用で助けるわよ!」

 

「そうですね………響さん達ならそうなさるでしょう」

 

弓美は迷い無くそう言い返し、詩織もそれに同意した。

 

「………分かったよ。けど、如何する? 救急車は呼ばないでくれって言われたけど………」

 

「取り合えず、ふらわーさ運ぶのは如何だが?」

 

創世に小里がそう返す。

 

「けど、如何やって………」

 

成人女性のサンジェルマンを、4人居るとは言え、弓美達が運ぶのはかなり困難だった。

 

「! アレはッ!!」

 

とそこで、また何かに気付いた小里が路地裏から再度通りに飛び出す。

 

「オーイ! タロウさーっ!!」

 

両腕を大きく振って、シロクマ宅配便の車を呼び止める。

 

「小里か。如何した?」

 

「タロウさ! 助げでけ!」

 

そして、運転席から運転手………『桃井 タロウ』が顔を出すと、そう言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫しして………

 

ふらわーの住居スペースの一室にて………

 

「………う………ううん………!?

 

意識を取り戻したサンジェルマンが、見知らぬ天井が視界に入って来て跳び起きる。

 

「ッ!!」

 

途端に、負傷していた左腕に痛みが走り、苦悶の表情を浮かべる。

 

あ! 気が付きました?」

 

「駄目ですよ、まだ安静になされていなと」

 

と、そのサンジェルマンに、弓美と詩織がそう言う。

 

「! お前達は!?………此処は何処だ!?」

 

「此処はお好み焼き屋のふらわーです」

 

「病院さだば行ぎだぐねみだいだったはんで、こごさ運んだだ」

 

サンジェルマンが問い掛けると、今度は創世と小里がそう返す。

 

「おや、美人さんは目を覚ましたのかい?」

 

そう言う台詞と共に、洗濯籠を手にしているふらわーのおばちゃんが現れる。

 

「!!」

 

「ハイ、今起きたところです」

 

「ありがとう、おばちゃん。部屋と服を貸してくれて」

 

サンジェルマンが驚いていると、弓美と創世がそう言う。

 

「気にしないで良いよ。前にも似た様な事があったからねえ………あ、服の洗濯はは今終わったから。乾くまで待っててね」

 

おばちゃんは洗濯籠に入れられている洗濯されたサンジェルマンの服を見せながら言う。

 

「………感謝する」

 

「それまで私の悪いけど、我慢しておいてね」

 

着替えさせられていた事に気付いたサンジェルマンからのお礼を受け取りながら、おばちゃんは服を干しに向かった。

 

「! ッ!!………」

 

とそこで左腕に鈍い痛みが走り、腕を押さえるサンジェルマン。

 

左腕には包帯が巻かれていたが、既に血が滲み始めている。

 

「包帯、変えちゃいますね」

 

「やっぱり応急処置だけじゃ………」

 

詩織が包帯を替えに掛かると、弓美がそう漏らす。

 

「………何故私を助けた?」

 

包帯を替えられながら、サンジェルマンは弓美達にそう問い質す。

 

彼女からしてみれば、弓美達が自分を助ける様な謂れは無い筈であった。

 

「誰かを助けるのに一々理由が要るワケ?」

 

「何?………」

 

だが、弓美からはそんな答えが返って来て、サンジェルマンは驚きを示す。

 

「それが当たり前だもん。私の友達も言ってたわ。名も無い花を踏み付けられない様にする事に、理由が要るかって」

 

「それはちょっと違うんじゃないかな?」

 

ドヤ顔でそう言う弓美に、創世が苦笑いしながらツッコミを入れる。

 

「…………」

 

そんな弓美達の姿に、サンジェルマンは一瞬何かを懐かしんでいるかの様な表情を見せたが、すぐに仏頂面になる。

 

「あ、申し遅れました。私、寺島 詩織と申します」

 

「私は板場 弓美!」

 

「安藤 創世です」

 

「どうも、犬山 小里です。よろすくお願いすます」

 

そこで、詩織達が思い出したかの様に自己紹介をする。

 

「………サンジェルマンだ」

 

名乗られた手前からか、自らも名乗るサンジェルマン。

 

「サンジェルマン?………」

 

「何かアニメの名前みたいでカッコイイ!」

 

一風変わった名前に怪訝な顔をする創世とは対照的に、無邪気かつ率直な感想を口にする弓美。

 

「サンジェルマンさんは何故あの様な場所で倒れていたのですか? それにこの怪我は一体?」

 

「…………」

 

詩織が問い質す様に尋ねるが、サンジェルマンは沈黙を返す。

 

「………貴方、ひょっとすて………パヴァリア光明結社のふとじゃねか?」

 

「!?」

 

しかし、小里からそんな質問が飛ぶと、驚きを露わにして小里に視線を向けた。

 

「パヴァリア光明結社?」

 

「それって、響達が戦ってるって言ってた………」

 

「………()だ」

 

創世と弓美がそう言い合っていると、観念したかの様にサンジェルマンが口を開き始める。

 

()?」

 

「じゃあ、今は違うって事?」

 

「パヴァリアとは袂を分かった………寧ろ、今の私にとって奴等は仇敵とも言える存在だ」

 

そう言うサンジェルマンの目の奥には、怒りと憎悪の炎が燃えている。

 

「一体何があったのですか? 宜しければ、お話して頂けませんか?」

 

包帯を替え終えた詩織が更に問い質す。

 

「………アレは今から幾何か前の事だ」

 

するとサンジェルマンは、自身がパヴァリア光明結社を抜ける事となった出来事を語り始める………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗黒銀河女王の襲撃を受け、アダムがマッドギャランへと変えられたあの日から………

 

パヴァリア光明結社は大きく様変わりした。

 

アダムが表向きは『神の力を以てヒトの相互理解を阻むバラルの呪詛を消し去り、完全へと至ること』を目的としていた組織だったが、今や完全なる悪の秘密結社と化していた。

 

殺人・強盗は当たり前。

 

非人道的な人体実験や兵器の開発とそれを売り捌く死の商人………

 

更には新兵器の実験、酷い時には単なる暇潰しとして紛争などに介入して、破壊と殺戮を振り撒く………

 

その行いはテロ等と生易しいモノでは済まなかった。

 

当然、騙されていたとは言え、『人は何者にも支配されるべきではない』と言う信念の元にパヴァリア光明結社に入ったサンジェルマンにとって、それは許せる事ではなかった。

 

同志のカリオストロ、プレラーティと共に、秘かにファウストローブの開発を進め、志を同じくする錬金術師達を集め、マッドギャラン達に反旗を翻そうと計画。

 

しかし………

 

同志と思って仲間に迎え入れた錬金術師の中に、マッドギャランからのスパイが紛れ込んでおり、その計画は全て筒抜けとなっていた。

 

決行のその日に逆に強襲を掛けられ、完全に虚を突かれた同志の錬金術師達は、彼女の目の前で無残に皆殺しにされ………

 

更にはサンジェルマンが革命の為にと錬金術で分解した7万人の人間の命のエネルギーも、サタンゴースと巨獣復活の為にと奪われてしまう。

 

それでも、カリオストロ・プレラーティと共に最後まで抵抗を続けていたサンジェルマンだったが………

 

「サンジェルマン………逃げて」

 

「!? 何を言うんだ、カリオストロ!!」

 

追い詰められた中、カリオストロからの思わぬ提案にサンジェルマンは驚きを露わにする。

 

「カリオストロに同意なワケダ………」

 

「! プレラーティまで!!」

 

更に、プレラーティもカリオストロに同意する。

 

「残念だけど、あーし達の負けよ………」

 

「けど、サンジェルマンには叶えたい理想が有る………だったらこんな所でくたばってしまうワケには行かないワケダ」

 

「馬鹿を言うな! もうコレ以上、同胞を見殺しに出来るものか!!」

 

諦めているかの様な態度の2人にサンジェルマンが怒鳴る。

 

既に多くの同胞を失ってしまった今、長い付き合いであるカリオストロとプレラーティまで失ってしまう事は、サンジェルマンにとって耐え難い事だった。

 

しかし………

 

「ゴメンね、サンジェルマン………」

 

カリオストロがその一瞬の隙を衝いて、隠し持っていたテレポートジェムを、サンジェルマンの足元へと落とした。

 

サンジェルマンの足元に転送用の魔法陣が展開する。

 

「!? カリオストロッ!! プレラーティッ!!」

 

「例え恨まれても………」

 

「お前には死んで欲しくないワケダ………」

 

慌てるサンジェルマンが最後に見たのは、寂しそうに笑うカリオストロとプレラーティの姿だった………

 

直後に、転送用魔法陣が起動し、サンジェルマンはパヴァリア光明結社のアジトから脱出させられた………

 

勿論、大急ぎですぐにアジトへと戻ったが、そこで見たのは………

 

アジトが巨大な炎に包まれ、燃え盛る光景であった………

 

その光景にサンジェルマンはガックリと膝から崩れ落ち、声にならない絶叫を響かせた………

 

数時間後………

 

炎が消えて、すっかり焼け落ちたアジト内に、せめて遺体だけでも回収しようと入ったサンジェルマンだったが………

 

余りの激しい炎に包まれ、遺体は全て炭となって崩れ落ちており、最早遺灰なのか只の燃えカスなのか判別出来ない状態だった………

 

全てを失ったサンジェルマンは再び崩れ落ち、数日間の間、焼け落ちたアジトの中で風雨に晒されるがままになっていた………

 

普通の人間ならば死んでしまうが、錬金奥義の果てに完全な身体を得ていた彼女は死ぬに死ねなかった………

 

だが、生ける屍と化していた彼女の心に………

 

激しい感情が湧き上がり始める。

 

その感情の名は………『復讐』

 

全てを失った彼女を再び動かしたのは、自分に付いてくれたばかりに無残に殺されてしまった錬金術師の同志達………

 

何よりも最愛の友人であったカリオストロとプレラーティの仇を討つ事だった!

 

そして彼女は復讐鬼となり、次々にパヴァリア光明結社のアジトを単身襲撃。

 

マッドギャランの姿を追い求めていたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの日以来、私は復讐だけを考えて生きている………今の私に有るのはそれだけだ」

 

そう全てを語り終えるサンジェルマン。

 

(私は何故この子達にこんな話を………)

 

そして、内心で今までも誰にも言った事の無い話を弓美達にはしてしまった事に、自分でも不思議に思っていた。

 

先程の弓美達の遣り取りを見て、カリオストロとプレラーティの事を思い出してしまっていたからかも知れない………

 

「う、ううう………」

 

「?………」

 

とそこで、泣いている様な声が聞こえてサンジェルマンが視線を向けると………

 

「うううう………」

 

さめざめと泣いている弓美の姿が在った。

 

「「「…………」」」

 

創世・詩織・小里も全員が目に涙を浮かべている。

 

「な、何故貴方達が泣くの!?」

 

「だって、だってぇ~………」

 

戸惑うサンジェルマンに何か言おうとする弓美だが言葉にならない………

 

「…………」

 

そんな弓美達の姿を見て、サンジェルマンの方が申し訳ない気持ちになってしまう。

 

「すみません………ちょっと外しますね」

 

「ホラ、ユミ、ワンちゃん………」

 

「ううう………」

 

「だべ~………」

 

流石にちょっと気まずくなったのか、1度席を外す弓美達。

 

「………本当に………何であんな話をしてしまったのか」

 

弓美達が居なくなった後、1人になったサンジェルマンがそうごちる。

 

「…………」

 

そして、怪我をしている左腕に右手を当てたかと思うと、錬金術を発動。

 

「! グウッ!!」

 

苦悶に顔を歪めながらも、錬金術で無理矢理怪我を治療する。

 

「クウッ!………ハアッ! ハアッ!………」

 

脂汗を浮かべ、息を荒げながらも包帯を外すと、無傷の左腕が露わになる。

 

「…………」

 

それを確認したサンジェルマンは、徐に立ち上がるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

パヴァリア光明結社への復讐を続けていたサンジェルマン。
しかし、不覚を取ってしまい、そこを弓美達に助けられます。

そして彼女の口から語られた事情………
サンジェルマンがパヴァリア光明結社に復讐を誓ったのは、受けて屈辱を返す為、そして同胞達………
何より親友でもあったカリオストロとプレラーティの仇を討つ為です。
さて、感の良い皆様ならもうお気づきでしょうね………
そう、2人の安否はハッキリと確認されていません………

さて次回は、XDU要素が登場です。
弓美達が登場しているので何かはお察しできると思いますが、設定は大幅に変わります。
ある東映特撮作品を参考にした形になるかと。
お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。