戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達   作:宇宙刑事ブルーノア

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第19話『クリスよ、急げ! マヤの遺産の恐怖!!(前編)』

某・空港の待合所………

 

「…………」

 

そこには、ソワソワとした様子で、誰かを待っている様子のクリスの姿が在った。

 

「「クリスー!」」

 

「!!」

 

そこで声が響いて来て、待ち人………雅律とソネットが姿を見せる。

 

バルベルデ共和国での活動が一段落し、帰国して来たのだ。

 

尚、ロケットマンは事後処理が有り、まだバルベルデに残っている。

 

「パパ! ママ! お帰りっ!!」

 

駆け出すとそのまま2人に纏めて抱き着くクリス。

 

「元気だったかい、クリス」

 

「会えて嬉しいわ」

 

雅律とソネットも喜びを露わにしている。

 

「大袈裟だな、ちょっと前に会ったばかり………」

 

と、そこで何かに気付いたクリスの言葉が尻すぼみになって行った………

 

「クリス………」

 

「久しぶり、クリス! あの時はありがとうっ!!」

 

両親の後ろから付いて来た2人の人物………

 

ソーニャステファンだ。

 

気まずそうなソーニャとは対照的に、ステファンは嬉しそうな様子を見せる。

 

「ソーニャ………ステファン………」

 

雅律とソネットから離れると、ソーニャとステファンから目を逸らすクリス。

 

「如何して?………」

 

「すまない、クリス。騙す様な事をして………」

 

「でも、こうでもしないと貴方、2人に………特にソーニャの方には会おうともしなかったでしょう」

 

何故2人が居るのかと言うクリスの最もな疑問に、雅律とソネットがそう答える。

 

如何やら、クリスがソーニャと碌に話さないままバルベルデを去った事を気にして、2人を日本へ招待した様だ。

 

「…………」

 

何かを言おうとするクリスだが、やはり言葉が出て来ない………

 

「クリス、あの………その………」

 

それはソーニャの方も同じであり、何かを言うとしては止めると言うのを繰り返してしまう。

 

「姉ちゃん、何やってるんだよ? クリスと仲直りしに来たんだろ?」

 

「! ステファンッ!!」

 

そんなソーニャに、直接関係無い第三者的な立場故か、ステファンがドストレートにそう言い放つ。

 

「………!」

 

それを聞いたクリスが、意を決したかの様な表情を見せ、口を開こうとしたが………

 

そこで彼女に通信機が鳴った。

 

「! 此方クリス」

 

一瞬驚きながらも、すぐに応答するクリス。

 

『休暇中にすまない、クリスくん。すぐに本部に来て欲しいのだが………大丈夫か?』

 

「…………」

 

通信先の弦十郎からそう言われたクリスは、一瞬ソーニャとステファンの事を見やったが………

 

「………大丈夫だ。すぐに行く」

 

そう言って、弦十郎の返事を待たずに通信機を切った。

 

「クリス!」

 

「ゴメン………仕事だから」

 

「でも………」

 

「ゴメンッ!!」

 

引き留めようとした両親を強引に振り切り、逃げる様にその場を後にするクリス。

 

「あ! クリスーッ!!」

 

「…………」

 

ステファンが走り去るクリスの背中に呼び掛ける中、ソーニャは俯く。

 

「ソーニャ………」

 

「すまない。折角来てもらったのに………」

 

「いえ、良いんです………やっぱりクリスも、私と話すのは気まずいみたいですし」

 

「「…………」」

 

詫びる雅律とソネットに、ソーニャは自嘲する様な笑みを浮かべてそう返し、2人は何も言えなくなる。

 

「…………」

 

そんな雪音夫妻達を覗き見る、怪しい影が在った………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

程無くして………

 

S.O.N.G.本部の潜水艦・発令所にて………

 

「待たせたな………」

 

クリスが入室すると、既に集合していた他の装者達と宇宙刑事達が一斉に視線を向ける。

 

「クリスちゃん………その………ホントに大丈夫?」

 

「確か今日は、お父さんとお母さんが帰って来るんじゃ………」

 

と、響と未来がおずおずと言った様子でクリスにそう問う。

 

「………良いんだよ。どうせ後で会えるんだからな」

 

そんな響と未来から視線を反らしながら返すクリス。

 

「「「「「…………」」」」」

 

そのクリスの態度から、察しの良い面子は何かが有った事を感じ取ったが、敢えてそれを指摘はしなかった………

 

「………では、話しを始めるぞ」

 

少し空気が重くなったのを感じ取った様に、弦十郎がミーティングを開始する。

 

「先程、メキシコ政府から連絡が入りました」

 

「発掘途中だった()()()()()が無くなっていたそうです」

 

 完全聖遺物………」

 

「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

朔也とあおいからの報告に、宇宙刑事達と装者達に緊張が走る。

 

「………その完全聖遺物と言うのは?」

 

『マヤの遺産』………天変地異レベルの自然災害を引き起こす事が可能な気象兵器です」

 

「つまり、天気を自在に操る事が出来る聖遺物よ」

 

轟が問うと、エルフナインと了子がそう答える。

 

「! 天候を自在に操る!?」

 

「正に神の様な力だな………」

 

天気を操れると言う説明に、未来が驚愕の声を挙げ、雷も冷や汗を流す。

 

「マヤの遺産はその名の通り、メキシコのマヤ文明の遺跡に安置されていました」

 

「メキシコ政府が発掘作業を行っていたそうですが、その最中にバルベルデ共和国の侵攻が開始され、マヤ遺跡は一時バルベルデ軍に占領されていたそうです」

 

「そのバルベルデ軍が撤退し、パヴァリア光明結社の仕業だった事が判明し、再侵攻は無いと確認された事で、発掘が再開されたが、現地に行ってみると………」

 

「マヤの遺産が無くなっていた事に気付いた、と言うワケか………」

 

ナスターシャ、ウェル、キャロルがそう説明を続けると、翼がそう結論を言う。

 

「バルベルデ軍の正体はパヴァリア光明結社だった………」

 

「って事は………マヤの遺産は今、パヴァリア光明結社が持ってるって事か?」

 

「マズイわね………」

 

劾・奏・マリアが、パヴァリア光明結社が完全聖遺物を手に入れていたと言う事に危機感を覚える。

 

「恐らく、マヤの遺産は日本に持ち込まれている筈よ。幸いと言って良いか分からないけど………まだ起動はしていないそうよ」

 

「だったら、パヴァリア光明結社が次に執る手は………」

 

「えっ? 何ですか、調?」

 

了子の言葉に、調がある推測を立てるが、分からない切歌が尋ねて来る。

 

「聖遺物を起動させる為に必要なフォニックゲインを持つ者の拉致ですね」

 

と、調に代わるかの様に、セレナがそう言った。

 

「つまり、私達装者が狙われるかも知れないって事ですか?」

 

「或いは、リディアンの生徒も狙われるかも知れん」

 

響がそう言うと、翼が補足する。

 

「可能性は有るな………」

 

「早速リディアン周辺を重点的にパトロールする必要が有るな」

 

「黒服部隊も総動員して、生徒達1人1人の様子を見て貰います」

 

雷と轟の会話を聞いた慎次が、黒服部隊も動かすと言う。

 

「それから………こちらの掴んだ情報に拠りますと、マヤの遺産の奪取には()()()が居ます」

 

()()()? 誰だよ?」

 

「あおいさん」

 

「ハイ」

 

ターザンが尋ねると、慎次はあおいに頼んで、メインモニターにある人物を映し出す。

 

それは、銀色のアーマーを纏い、口元以外が全て覆われ、義眼の右目に突き刺さる様にナイフを装備した忍者だった。

 

「コイツは………世界忍者か?」

 

「ハイ………『世界忍者・鉄忍 ガメッシュ』、科学を犯罪に利用して世界を制しようと企む鉄忍一族の上忍です」

 

「また奇天烈な奴ね………」

 

奏が問うと、慎次が見たまんまサイボーグな出で立ちの忍者………『世界忍者・鉄忍 ガメッシュ』を紹介し、マリアがツッコミを入れる。

 

「鉄忍一族は、嘗て悪の忍者集団と名高い『妖魔一族』と並ぶ程の一族でした。先代のジライヤの活躍で上忍2人が倒されましたが、未だに一族は健在であり、妖魔一族の没落と代わる様に裏世界で名を上げて行きました」

 

慎次がそう説明を続けると、メインモニターの映像に様々な国でのテロ事件の記事やニュースの映像が追加される。

 

「まさか、この事件に全て?」

 

「ハイ。疑いが有るモノも含めれば更に多くなります」

 

「トンでもねえ悪党だな」

 

余りにも膨大な鉄忍一族の被害に、セレナとターザンが憤りを覚える。

 

「それと………コレはクリスさんに言っておいた方が良いでしょうね」

 

「あん? 何だよ?」

 

「クリスさんの御両親が負傷されたあの事件ですが………如何やら、それにも鉄忍一族が関わっていた様です」

 

「!!」

 

慎次から齎された思わぬ情報に、クリスは思わず驚きで目を見開いた。

 

「クリスちゃん………」

 

「クリス………」

 

「…………」

 

響と未来が心配の声を掛けるが、クリスは拳を血が出んばかりに握り締め、メインモニターに映るガメッシュの姿を睨み付けていた。

 

「現状、誰が狙われるかは分からん、装者の諸君は決して単独行動はせず、必ず誰かと一緒に行動を………」

 

と、弦十郎が話を締めようとしたところ、慎次の通信機のコール音が鳴った。

 

「あ、すみません………緒方です………ハイ………ハイ………」

 

断りを入れ、通信に出る慎次。

 

「!? 何ですってっ!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

と、不意に大声を挙げた事で、その場に居る者達が全員、慎次に視線を集める。

 

「分かりました………引き続き情報収集をお願いします………クリスさん」

 

「うん?」

 

「落ち着いて良く聞いて下さい………雪音夫妻が何者かに誘拐されました」

 

「!? 何だとっ!?」

 

慎次の報告に、クリスは仰天の声を挙げるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某所………

 

「ようこそ、雪音雅律、そしてソネット・M・ユキネ」

 

「「…………」」

 

そう言って来たマッドギャランに、雅律とソネットは険しい視線を向ける。

 

「姉ちゃん………」

 

「大丈夫よ、ステファン………」

 

その後ろには、一緒に居た為、序とばかりに連れて来られたソーニャとステファンの姿が在った。

 

「「「「…………」」」」

 

「「「「「ギーッ!!」」」」」

 

「「「「「コワッコワッ!!」」」」」

 

「「「「「シュワシュワッ!!」」」」」

 

マッドギャランの両脇には四天王が控えており、戦闘員達が4人を取り囲んで、威嚇する様に奇声を挙げている。

 

「そう身構えなくて良い。貴様達にやって貰いたい事があるのだ」

 

「やって貰いたい事?」

 

「一体何ですか?」

 

「オイ!」

 

マッドギャランが声を挙げると、奥から鉄忍・ガメッシュが現れ、その後ろからマヤの遺産を運ぶ彼の部下達も姿を見せる。

 

ガメッシュの部下達が、マヤの遺産を徐に雪音夫妻の前に降ろす。

 

「コレは?………」

 

完全聖遺物・マヤの遺産………気象をコントロールし、自在に天変地異を起こす事が出来る優れ物だ」

 

「!? 気象をコントロールするだって!?」

 

雅律が驚きを露わに言う。

 

「だが、コイツに起動にはフォニックゲイン………つまり、歌が必要でな」

 

「!? まさか!? 私の歌を!?………」

 

「その通りだ。あの雪音 クリスの両親である貴様等ならば不足はあるまい」

 

「ふざけないで下さい!」

 

「僕達の歌と音楽は世界を平和にする為の物だ!! お前達の悪事の道具では無いっ!!」

 

マヤの遺産の起動に自分達の歌と音楽を利用する積りのマッドギャランに、雅律とソネットは怒りを露わに拒否を示す。

 

「フン、歌で世界を平和にか………相変わらずの夢想家だな。救援物資に紛れて送り込まれた爆弾での重傷を負いながら、尚そんな夢を追い掛けているとは、馬鹿としか言いようがないな………」

 

そんな雪音夫妻の姿を見て、ガメッシュが露骨に馬鹿にする。

 

「! 何故君がその事を知っているんだ!?」

 

とそこで、雅律が驚きながらガメッシュに問う。

 

「知っているも何も………あの爆弾を送ったのはこの俺様だ」

 

「!? なっ!?」

 

「!?」

 

得意げにそう言い放つガメッシュに、今度はソネットが驚愕を示し、ソーニャの表情も険しくなる。

 

「我等鉄忍一族は平和になれば稼ぎの手段が無くなってしまうからな。しかも貴様等は無駄に知名度も有った。だから消えて貰おうとしたが………爆忍・ロケットマンに所為で失敗してしまったわ。忌々しい」

 

苦々し気な様子でそう語るガメッシュ。

 

その願いは何処までも自己中心的かつ、自己利益的である。

 

「だが、そのお陰で今は役に立つとは幸いだ。さあ! マヤの遺産を起動して貰おうか!!」

 

「断るっ!! 僕等がそんな話を承服するとでも思っていたのか!!」

 

「そうです! 例えどんな目に遭おうと、私達は貴方達に協力する積りはありませんっ!!」

 

毅然とした態度で、ガメッシュやマッドギャラン達にそう言い返す雪音夫妻。

 

「どんな目に遭おうとも、か………それは、そっちのゴミ共を片付けると言ってもか?」

 

するとマッドギャランは、剣でソーニャとステファンの事を差す。

 

「「!!」」

 

「!? なっ!?」

 

「ソーニャさんとステファンくんは関係無いじゃないですか!?」

 

「貴様等の様な輩は自分が殺されるよりも、そう言う無関係な奴が巻き込まれる方が堪えるだろう………戦闘員共! その2人をなぶり殺しにしてやれっ!!」

 

「「「「「ギーッ!!」」」」」

 

「「「「「コワッコワッ!!」」」」」

 

「「「「「シュワシュワッ!!」」」」」

 

ソーニャとステファンが硬直し、雅律とソネットが驚愕する中、マッドギャランがそう言い放ち、戦闘員達がナイフを手にソーニャとステファンにジワジワと近づいて行く。

 

「「「「「ギーッ!!」」」」」

 

「「「「「コワッコワッ!!」」」」」

 

「「「「「シュワシュワッ!!」」」」」

 

「ね、姉ちゃんっ!!」

 

「ステファンッ!!」

 

恐怖を煽るかの様に戦闘員達が奇声を挙げ、手にしているナイフを振り回すと、ステファンとソーニャはお互いに抱き締め合いながらその場にしゃがみ込む。

 

「ま、待てっ!!」

 

「待って下さいっ!!」

 

「では我々に協力するのだな!?」

 

止めてくれと訴え掛ける雪音夫妻に、マッドギャランが畳み掛ける様にそう言い放つ。

 

「だ、駄目です、雅律さん! ソネットさん! こんな奴等の言いなりになっちゃっ!!………」

 

「ギーッ!!」

 

ソーニャがそう言った瞬間、傍まで寄って来ていたクラッシャーの1体が、ステファンの足を軽く斬り付けた!!

 

「! ウワアアアアアアッ!!」

 

「! ステファンッ!!」

 

「わ、分かった! 協力するっ!!」

 

「だからもう止めて下さいっ!!」

 

ステファンとソーニャから思わず悲鳴が挙がると、遂に雅律とソネットはマッドギャランにそう言ってしまう。

 

「フフフ、それで良い。それでな………フハハハハハハハッ!!」

 

ガックリと俯く雪音夫妻の姿を見ながら、マッドギャランは勝ち誇る様に高笑いを挙げるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

バルベルデでの活動が一段落したので一時帰国して来た両親を出迎えるクリス。
すると、2人はソーニャとステファンを連れて来ていた。
思わぬ和解のチャンスが訪れたかに思われたが、急な呼び出しを受け、クリスは逃げる様に去ってしまう。

そして呼び出された先で、パヴァリア光明結社が完全聖遺物『マヤの遺産』を手に入れて居た事が判明。
更に、世界忍者 鉄忍・ガメッシュが協力している事も。
警戒を強化しようとした先に、クリスの両親がパヴァリア光明結社に拉致される。

雪音一家とガメッシュとの因縁も明らかになる中、脅迫によってマヤの遺産を起動させようとするマッドギャラン。
果たして、クリスは両親とソーニャとステファンを助け出せるのか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。
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