戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達 作:宇宙刑事ブルーノア
某所に在る不気味な洋館………
元はフィーネのアジトであり、今はマクーの物となっている洋館に、1台の車が停まる。
「………此処か」
車から降りた轟が、洋館を見上げながらそう呟く。
捜査の末にこの洋館の存在を掴み、辿り着いたのだ。
「人の気配が無いな………」
しかし、洋館からは何の気配も感じられなかった………
「…………」
それを確認した轟は、大胆にも正面入り口から洋館内へと入って行った。
踏み込んだにも関わらず、出迎えは無く、やはりネズミ1匹見当たらない………
「既に引き払われた後か………ん?」
慎重に辺りを見回しながら進んで行く轟。
そこで足元に何かが有るのに気付き、屈み込むと拾い上げる。
「! コレは!?」
『貴様が新しいギャバンか………』
「!?」
その拾った物に驚いていると、何処からともなく声が響いて来て、すぐさま立ち上がる轟。
『嘗てのギャバンも若造であったが、貴様に至っては小僧ではないか………』
「貴様! ドン・ホラーか!!」
『如何にも………我こそはドン・ホラー。マクーの首領よ」
それはドン・ホラーの声であった。
『貴様の様な小僧が、我等マクーの野望を阻めると思っているのか?』
「黙れ! お前達は1度ギャバン教官に負けた! 今度はその名を受け継いだ俺がお前達を倒す!」
『威勢は良い様だな。だが、カ・ディンギルが完成した今、我等が野望は達成されたも同然よ』
「カ・ディンギルだと? 何の事だ!?」
『知る必要は無い! 貴様は此処で死ぬのだ!!』
「何っ!?」
ドン・ホラーがそう言った瞬間………
洋館の各所が爆発を起こし始めた!
「!? うおっ!?」
小爆発が次々に発生し、遂には洋館全体が大爆発!!
一瞬にして洋館が瓦礫の山と化し、黒煙を上げる。
と、その黒煙の中から光が飛び出して来る。
「チュウッ!!」
洋館を見下ろせる丘の上に降り立った光が、ギャバンの姿へと変わる。
危機一髪で蒸着し、難を逃れたのだ。
0.05秒でコンバットスーツを装着する事が出来るギャバンならではの芸当だ。
「ドン・ホラーめ………」
跡形も無くなった洋館を見ろしながら、ギャバンが呟いていると………
その頭上を巨大な影が通り過ぎて行く。
「!?」
見上げたギャバンが見たのは、何処かへと向かっている超大型ノイズ群の姿だった!
「ノイズ! あのサイズの奴で一体何を………!? そうか! 響ちゃん達を誘い出す積りか!!」
一心不乱に何処かへと向かうノイズ群を見て、ギャバンはそう推測し、先程洋館で見つけたモノを取り出す。
それは
「奴等は最初から二課に潜り込んでいたのか。となるとカ・ディンギルとやらは恐らく二課に在る………邪魔な響ちゃん達を二課から遠ざける積りか!!」
更にそう推察しながら、名札を握り潰すギャバン。
「思い通りにはさせんぞ、マクー! サイバリアーンッ!!」
そして、サイバリアンを呼び、側車部分に飛び乗ると、ノイズ群を追って飛ぶのだった。
◇
時間は少し遡り………
轟が洋館を訪れた丁度その頃………
リディアン地下・特異災害二課本部の指令室にて………
「既に知っていると思うが、我々に新たな仲間が加わった」
「………雪音クリスだ」
説明する弦十郎の横で、クリスが気まずそうな様子で、顔を背けながらぶっきら棒にそう言い放つ。
「クリスちゃ~ん!」
「!? うわっ!? 馬鹿、止めろ! 抱き着くなっ!!」
そんなクリスに響が抱き着く。
「良かったな、クリス。早速友達が出来たではないか」
その様子をあたたかい目で見ていたロケットマンが、しみじみとした様子でそう呟く。
「ちげーよ! こんな奴友達じゃねえよ!!」
「も~、そんな照れなくても良いじゃな~い、クリスちゃ~ん」
「そうだぞ、クリス。友達をそんな風に邪険にするもんじゃない」
「だ~っ!! いい加減にしろーっ!!」
反論するクリスだったが、2人に揃ってボケ倒され、ウガーッ!と言った具合に叫びを挙げる。
「…………」
「納得行かないかい、翼?」
クリスに複雑そうな視線を向けていた翼に、奏が声を掛ける。
「………いや、彼女もマクーに利用されていた身だ。複雑な感情は有るが、それを向けるのは筋違いだと分かってる」
「そうかい………」
すぐに穏やかな表情となってそう言う翼の姿を見て、奏はそれ以上は追及せず、安心した笑みを浮かべるのだった。
「さて、それでは情報を整理するとしよう」
「「「「「…………」」」」」
とそこで、弦十郎がそう言うと、一同は彼の方に向き直る。
「クリスくんからの情報に拠り、ここ最近に異常発生していたノイズを操っていたのが完全聖遺物であるソロモンの杖を持つフィーネなる人物である事が分かった。フィーネはマクーに協力していたと思われていたが………」
「? 叔父様?」
「如何したんだい、ダンナ?」
口籠る様子を見せた弦十郎に、翼と奏が尋ねる。
「………そのフィーネと言う人物の身体は、マクーの首領………ドン・ホラーに乗っ取られているらしい」
「「「!?」」」
再度口を開いた弦十郎から言葉に、響・翼・奏が驚愕する。
「…………」
クリスもその時の事を思い出し、苦い顔を浮かべる。
「乗っとられたって………」
「詳しい事は分からない………だが、重要なのはココからだ」
「ココから?」
「そのフィーネなる人物の正体は………了子くんだ」
「「「!?」」」
弦十郎の口から出た言葉に、響・翼・奏は一瞬耳を疑った!
「そんな………了子さんが………」
「本当なのか、ダンナ!?」
「俺も最初は信じられなかった………だが、事実だ。現に了子くんはクリスくんが彼女の元を離れる数日前から連絡が取れていない」
信じられないと言う響と奏に、弦十郎は自身も信じたくないと思いながらもそう告げる。
「二課に敵の首領が入り込んでいたという事ですか」
そんな中で、翼は冷静にそう言葉にする。
「ああ、現在何か細工されたの形跡が無いか調べている。了子くんが敵だったのなら、二課の深い所にまで食い込めるからな」
と弦十郎が告げた、その時!!
指令室内に警報が鳴り響いた!!
「「「「「!!」」」」」
「如何した!?」
「飛行型の超大型ノイズが出現! 数は4!!」
弦十郎が問い質すと、あおいがそう報告を挙げ、メインモニターに街の上空を飛んでいる超大型ノイズの姿が映し出される。
「全ての超大型ノイズは、全て同じ方向を目指しています!………! 進行方向に東京スカイタワーが在ります!!」
続けて朔也がそう報告を挙げ、超大型ノイズ群の進行方向先に有る東京スカイタワーを映し出す。
「スカイタワー………まさか、カ・ディンギルとはスカイタワーの事か!?」
「カ・ディンギル?」
「フィーネ………いや、ドン・ホラーが言っていた、そいつの力でこの地球どころか宇宙を自分達の物にするって」
初めて聞く単語に響が首を傾げると、クリスがそう説明する。
「先史文明シュメールにて用いられた言葉であり、その意味は『高みの存在』。 転じて、天を仰ぐほどの塔を意味しているとも伝えられている」
更にロケットマンもそう補足する。
「………なあ、あおいさん。敵はノイズだけか? マクーの連中は?」
とそこで、奏がマクーの姿が無く、ノイズだけな事に違和感を抱き、あおいに尋ねる。
「いえ、確認出来てないわ」
「妙だ………もしカ・ディンギルがスカイタワーの事なら、マクーにとって切り札と言える存在の筈」
あおいがそう返すと、翼も思案顔となる。
「! 超大型ノイズより多数の小型ノイズが放出され始めました!」
とそこで朔也がそう声を挙げ、メインモニターに映し出されている飛行型の超大型ノイズが、次々に小型ノイズを放出している光景が映し出される。
「! あんな数のノイズが街に散らばったら!!………」
「クッ! どの道対処せんわけにはいかんか! スカイタワーには俺達二課が活動する際に使用する映像や交信といった電波情報を統括制御する役割を持っている!! 装者は全員スカイタワーへ急行だ!!」
響が声を挙げると、弦十郎の指示が飛ぶ。
例えこれが何らかの罠であったとしても、二課の重要施設であるスカイタワーを守らねばならず、もっと言えば出現したノイズを放置するワケにも行かなかった。
「クリス、私は此処に残る」
「えっ?」
指令室から飛び出して行く響達に続こうとしたクリスに、ロケットマンがそう言い、思わずクリスが足を止める。
「コレが罠ならばこの二課本部にも何らかの攻撃が有るかも知れん。万が一に備えなければならん」
「小父さん………」
「心配するな、クリス。あの者達は信用出来る。もう既に心からお前を受け入れてくれている筈だ。何も心配する事は無い」
そう言いながら、クリスの頭を優しく撫でるロケットマン。
「後は、お前が正直になれば良い話だ」
「…………」
「行け、クリス………仲間達と共に」
「!………うん!!」
クリスはロケットマンに頷いて見せると、改めて指令室から飛び出して行ったのだった。
「感謝します、ロケットマン」
「気にしない下さい。弦十郎殿の言葉を借りるなら………これも大人の務めと言うモノです」
「…………」
ロケットマンの言葉に、弦十郎は一瞬笑みを浮かべたが、すぐに表情を引き締めてメインモニターを見据えるのだった………
東京スカイタワー付近………
タワーの周囲を旋回しながら、まるで爆撃の様に小型ノイズをばら撒いている超大型ノイズ。
とそこへ、装者達を乗せた二課のヘリが到着する。
Balwisyall Nescell gungnir tron
Croitzal ronzell gungnir zizzl
Imyuteus amenohabakiri tron
Killter Ichaival tron
響・奏・翼・クリスが次々に空中で飛び降りると聖詠を唱え、光と共にシンフォギアを纏う。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」
最初に降下した響が、気合の声と共に地面を殴り付けると、拳から放たれたエネルギーが地割れの様に地面を伝い、次々とノイズ達を飲み込んだ!!
「オリャアッ!!」
「ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」
LAST∞METEOR
蒼ノ一閃
続けて着地した奏と翼が、LAST∞METEORと蒼ノ一閃を放つ。
青い斬撃波と槍の先端から発生した竜巻が、ノイズ達を蹴散らす。
「ちょっせええええぇぇぇぇぇい!!」
最後に着地したクリスが、両手のガトリングガンと腰部の小型ミサイルを一斉発射!!
残っていた小型のノイズが一気に薙ぎ払われる!
「良し! 後はあのデカブツだな!!」
「でも、あそこまで如何やって行けば………」
上空の超大型ノイズ達を見上げながら奏が言うが、響がそう口を挟む。
響・翼・奏のアームドギアは基本的に接近戦用であり、更にシンフォギアには単独での飛行能力は通常は無い。
遥か上空に居る超大型ノイズを攻撃するのには難儀する。
「アタシに任せな! ギアの出力を高めて放出を抑えれば………」
と、長射程広域攻撃を得意とするイチイバルを纏ったクリスが役を買って出ようとした時………
ギャオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーッ!!
「「「「!!」」」」
空から咆哮が響いて来て一同が見上げると………
頭部にギャバンを乗せた電子星獣ドルが飛来する。
「! ギャバンさん!!」
「装者の諸君! すぐにリディアンに戻るんだ! コレは陽動だ!!」
響が声を挙げると、ギャバンは装者達にそう呼び掛けた!
「!? えっ!?」
『響! リディアンがノイズとマクーに………』
驚きの声を挙げる響の耳に、未来からの通信が聞こえたかと思うと、すぐに途切れて雑音しか聞こえなくなる。
「!? 未来っ!?」
「まさかっ!?」
「本部! 応答願います! 本部っ!!」
奏と翼も即座に本部に通信を送るが、返って来るのは雑音だけだった。
「クソッ! コッチは囮かよ!!」
と、クリスはそう悪態を吐いた瞬間………
今まで旋回しながら飛んでいるだけだった超大型ノイズの1体が、まるで装者達を狙った様に突っ込んで来た!!
「「「「!?」」」」
「ドルレーザーッ!!」
慌てる装者達だったが、直後にギャバンの掛け声でドルレーザーが放たれ、突っ込んで来ていた超大型ノイズは爆散する!!
「行けっ! コッチは俺に任せろっ!!」
「! 皆、行くぞっ!!」
「「「!!」」」
ギャバンが再度呼び掛けると、翼がそう言い、響達はリディアンに引き返して行くのだった。
「良し………」
それを確認すると、ギャバンは残る3体の超大型ノイズに向き直る。
超大型ノイズ群は一直線にギャバンと電子星獣ドルに向かって来る。
先行していた1体が、小型ノイズを放出しながら突進する。
「しゃらくさい! ドルファイヤーッ!!」
だが、ギャバンの叫びと共にドルファイヤーが放たれ、超大型ノイズは周りに展開していた小型ノイズ諸共に焼き尽くされた!!
しかし、間髪入れずにもう1体の超大型ノイズが接近!
その後ろには最後の超大型ノイズも続いている。
「スクリューアタックッ!!」
ギャバンは慌てず、ドルの全身の撓りを利用したスクリューアタックを繰り出し、接近して来た超大型ノイズを弾き飛ばす!
すると、その弾き飛ばされた超大型ノイズが、残る1体の超大型ノイズに激突!
「ドルレーザーッ!!」
そこでギャバンは、ドルの前脚からのリング状のドルレーザーを発射!
超大型ノイズは2体纏めて葬り去られた!
「すぐにリディアンに向かわなくては………」
ノイズを全て片付けたギャバンが、自分もリディアンに向かおうとする。
と、その時!!
『何か』がギャバンに飛び掛かって来て、組み付いた!!
「!? うおわっ!?」
不意を衝かれたギャバンは、『何か』に組み付かれたままドルの頭の上から落下する。
すると、落下したその先に、魔空空間が出現!!
そのまま『何か』諸共に魔空空間へと引き摺り込まれてしまったのだった………
魔空空間内………
採石場の様な場所に着地を決めるギャバン。
「っ! 一体何が?………」
何が起こったのかと確認しようとした時………
前方に『何か』が着地した!
「!!」
その『何か』の姿は、ギャバンに酷似しており、僅かに機械の稼働音がする事から、アンドロイドであると思われる。
「『ギャバンブートレグ』だと!?」
ギャバンは驚きの声を挙げる。
それは嘗て、宇宙帝国ザンギャックが初代ギャバンの能力を複製した造り出したコピーアンドロイド………『ギャバンブートレグ』だった。
『フハハハハハハハッ! まんまと罠に嵌ったな、ギャバン!』
「! アシュラーダッ!!」
そこで、何処からとも無くアシュラーダの声が響いて来る。
『装者の小娘共など我々の敵では無い。我々の本当の狙いは貴様だったのだよ。最も厄介な貴様さえ隔離してしまえば勝ったも同然よ』
「黙れっ! こんな奴、すぐに倒して脱出してやる! それに………響ちゃん達を、シンフォギア装者を侮るなよ!!」
得意げに語るアシュラーダに、ギャバンはそう返す。
『フン、精々ほざくが良い。冥途の土産に教えて遣ろう………そのギャバンブートレグは以前の物よりも更に強化・改造を施されている。尊敬する教官の偽者に倒されるが良い!』
『…………』
そう言ってアシュラーダの声が消えると、ギャバンブートレグは駆動音を立てながらブートレグブレードを構えた。
「むんっ!!」
それに対し、ギャバンもレーザーブレードを出現させ、構える。
「如何に強化・改造しようと、所詮は魂無き人形………人間の心を持った俺に勝てると思うなよ」
『………!』
ギャバンがそう言った瞬間、ギャバンブートレグが突撃して来る。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
それに対し、ギャバンも咆哮を挙げながら突撃!
「チュウッ!!」
『!!』
両者は互いにレーザーブレードとブートレグブレードをぶつけ合って、激しい鍔迫り合いを展開するのだった!
つづく
新話、投稿させて頂きました。
いよいよ無印最終決戦開幕です。
マクーのアジトを突き止めた轟ですが、そこは既にもぬけの殻。
残されていた了子の身分証から、マクーが二課に潜り込んでいた事を知り、カ・ディンギルについても推察する轟。
超大型ノイズの相手を引き受け、装者達をリディアンに戻させますが、そこに現れたのはまさかのギャバンブートレグ!!
果たして轟は、如何するのか?
そしてマクーに襲われたリディアンと二課の運命は!?
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。