戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達   作:宇宙刑事ブルーノア

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蒸着しないシンフォギア その1

『銀河連邦警察のコム長官』

 

 

 

 

 

とある秘密施設の一室………

 

「よう!」

 

「響!」

 

「轟兄! 未来! いらっしゃい!」

 

室内に入って来た轟と未来を、響が出迎える。

 

簡素な部屋の中には他に翼、奏、クリスの姿も在る。

 

「また来たのかよ………暇なのか、お前?」

 

「暇なのはそっちじゃないのか?」

 

呆れた様に言って来たクリスに、轟はそう返す。

 

「さて、今日は何をやるか?」

 

「ハイ! 私、ス〇ブラやりたい!!」

 

「おっし、じゃあやるか!」

 

響が手を上げて提案すると、一同はニ〇テンドースイッチを手にし、ス〇ブラで遊び始める。

 

 

 

 

 

暫く白熱した戦いを続けていると………

 

部屋のドアがノックされ、弦十郎と慎次が入って来た。

 

「失礼するよ。十城士くん、そろそろ時間だ」

 

「おっと! もうそんな時間か………悪い、また後でな」

 

弦十郎からそう声を掛けられると、轟はニ〇テンドースイッチを置いて立ち上がる。

 

「え~、もう?」

 

「響、我がまま言わないの」

 

不満そうな声を挙げた響を、未来が窘める。

 

そんな響に手を振りながら、轟はその部屋を後にした。

 

「轟さん。余り気軽に侵入して来ないでくれますか? 一応此処は政府の秘密施設なんですけど………」

 

「固い事言うなって。響ちゃん達だって、ずっと閉じ込められてて退屈してんだぜ」

 

「それは分かりますけど………ハア~」

 

苦言を言うが、悪びれた様子も無くそう返して来た轟に、慎次は溜息を吐く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ルナアタック』、別名『マクー事変』の後………

 

アレだけの出来事を完全に隠蔽する事は出来ず、各国は事態の一部始終の情報をキャッチしていた。

 

日本政府の極秘事項であるシンフォギア並びに装者を守る為………

 

表向きに響達は月の破片を砕いた際に死亡したと言う事になっている。

 

そしてほとぼりが冷めるまで、こうして二課が管理している秘密施設に軟禁状態となっているのだ。

 

それを不憫に思った轟が、こうして頻繁に未来を連れて無断侵入を繰り返しているのだ。

 

尚、ギャバンの存在自体も露呈したが、その正体までは各国も分からなかった為、日本政府は『謎のヒーロー』であると言う説明でゴリ押した。

 

なので轟は、現在も堂々と出歩き回り、マクーの残党を倒して回っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二課仮本部・司令室………

 

「よし! コレで良いな」

 

弦十郎のデスクにモニターの様な物を置いた轟がそう言う。

 

「それじゃあ、繋げますよ」

 

「ああ、頼む」

 

弦十郎とそう遣り取りすると、轟はそのモニターのスイッチを入れる。

 

するとモニターが点灯し、傍らに秘書らしき女性を控えさせた制服に身を包んだ高齢の男性の姿が映し出された。

 

『コム長官』

 

『十城士 轟、話はギャバンから聞いている。御苦労だった』

 

『流石ですね』

 

「いえ、まだマクーの残党は活動を続けています。その討伐が終わるまで任務終了とは言えません」

 

『うむ、その通りだ。引き続き地球を頼むぞ』

 

「ハッ!」

 

畏まった様子で轟は、モニターの人物達………銀河連邦警察のトップである『コム長官』と秘書の『マリーン』に敬礼する。

 

『さて………貴方が特異災害機動部二課の司令ですね』

 

「ハイ、風鳴 弦十郎と申します。この度はお忙しいところ、時間を頂き、恐縮です」

 

そこでコム長官は弦十郎との会話を始める。

 

今回の騒動で、二課とは浅からぬ仲となった轟は、今後の事も考え、二課と正式に連帯する必要が有ると考え、その意見をコム長官に上申。

 

コム長官はその意見を聞き届け、今回こうして弦十郎と会談する運びとなったのだ。

 

『そう畏まらないで下さい。星と所属は違えど、我々は力無き人々を守る為の組織なのです。そこに上下は無いと私は思います』

 

「………貴方の様な方が長官を務めているという事は、銀河連邦警察は本当に良い組織なのでしょうね」

 

コム長官の人柄に触れた弦十郎は、そんな感想を漏らす。

 

『本題に入りましょう。十城士刑事から上申の有った貴方の特異災害機動部二課との連帯ですが………容認します』

 

「ありがとうございます!」

 

『しかし、連帯するのは飽く迄貴方の組織………特異災害機動部二課という事でお願いしたい。失礼だが、地球の文明はまだ未熟であると言わざるを得ない』

 

「ハイ、承知しています」

 

釘を刺す様なコム長官の言葉に、弦十郎は真剣な表情で頷く。

 

バード星や他の星と比べて、地球の文明のレベルは遥かに低い。

 

現在も聖遺物やシンフォギアを巡って各国が水面下で静かな攻防を繰り返している。

 

そんな所に、異星人の存在やその超技術の情報が伝われば、余計な波風を立てかねない。

 

そこで、連帯は飽く迄特異災害機動部二課だけと行うと言う取り決めがなされた。

 

弦十郎はこの事を上層部である日本政府などにも知らせていない。

 

正に極秘の同盟締結なのだ。

 

「マクー以前より、人類はノイズと言う脅威に晒されながらも未だに1つに纏まる事さえ出来ずに居る………お恥ずかしい限りです」

 

『貴方1人が気に病む事ではありません、風鳴司令。それに………私は何時か、地球人達が我々と肩を並べる時が来る。そう信じています』

 

「コム長官………」

 

『だからこそ、我々は地球の危機に、宇宙刑事達を派遣しているのです』

 

「…………」

 

力強くそう言うコム長官を見て、弦十郎の顔には自然と笑みが浮かんでいたのだった………

 

 

 

 

 

この日………

 

銀河連邦警察と特異災害機動部二課の同盟が締結………

 

それは、何時の日か人類が異星人達を肩を並べて歩く日への第1歩であった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『護国の鬼と超人機』

 

 

 

 

 

鎌倉・風鳴家………

 

「………報告は以上となります」

 

純和風の家屋の居間にて、黒服にサングラスの風鳴機関のエージェントが、テーブルを挟んで向かいに居る老人にそう言う。

 

「そうか、分かった………」

 

「今回の事で損壊した二課本部に関しましては、『()()()』の配備を前倒しする様に防衛省に意見して来ます」

 

そう言うと立ち上がるエージェント。

 

「待て………」

 

とそこで、老人がエージェントを呼び止める。

 

「! な、何か?………」

 

エージェントはビビりながら訪ねる。

 

「全壊したリディアン校舎の代わりもすぐに見つける様に文科省に言付けておけ。生徒達を何時までの放置しておくワケにも行くまい」

 

「えっ? あ、ハイ………」

 

老人の言葉にエージェントは少し驚いた様子を見せつつも、退室して行った。

 

「…………」

 

それを見送った後、老人は傍らに置いて在った杖を右手に取って立ち上がり、縁側に歩いて行く。

 

歩く度に、右足からカチャッ、カチャッと言う音がしている。

 

義足の様だ………

 

「…………」

 

そのまま縁側に立つ老人。

 

良く見れば、左の袖が風に棚引いており、本来ならば右目が在る場所は大きな傷跡となっている。

 

「…………」

 

老人………弦十郎の父であり、翼の祖父である、風鳴機関の総帥『風鳴 訃堂』は、草履を履くと庭に降り、何処かへと向かい始める。

 

暫く歩いて行くと、家の裏手の崖の前に立つ訃堂。

 

「…………」

 

その崖の前にあった庭石を押す。

 

すると、崖の一角がスライドし、通路の様な物が現れた。

 

訃堂はその通路に入って行く。

 

岩を削り出した様な通路を進んで行くと金属製の扉が現れる。

 

訃堂が前に立つと、その扉が開く。

 

扉の中は、機械に溢れた小さな部屋となっていた。

 

中心部分にベッドの様な物が在り、その上に人影が在る。

 

「…………」

 

そのベッドの傍に立ち、人影を見下ろす訃堂。

 

それは、身体の右半分が青、左半分が赤い色で、左右非対称なデザインになっているロボットだった。

 

そのロボットの身体の各所には、ケーブルが刺さっており、ベッドや天上の機械に繋がれている。

 

『何だ、訃堂。また来たのか? 風鳴機関の総帥ってのは案外暇なのか?』

 

とそこで、誰かが訃堂に声を掛けた。

 

それは人間では無く、身体の一部が機械となっているドーベルマンだった。

 

『スプリンガー』………相変わらず口の悪い奴だ」

 

ドーベルマン………ロボット犬『スプリンガー』にそう言う訃堂。

 

「…………」

 

訃堂は再びロボット………『超人機メタルダー』に視線を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風鳴 訃堂は100歳を超える高齢………

 

詰り、『第二次世界大戦』………『太平洋戦争』を経験している。

 

風鳴の家は由緒有る国防の家系であり、訃堂もまた戦争時は軍に在籍し、諜報機関『風鳴機関』を設立していた。

 

苛烈なまでに国を護る事に拘った訃堂は、上層部の覚えは良かったが、同期の仲間達からは敬遠され、孤立していた………

 

そんな訃堂の只1人の親友だったのが、古賀 竜夫(こが たつお)だった。

 

苛烈な性格である訃堂に対し、竜夫は元は音楽をこよなく愛する心優しい性格………

 

2人はまるで水と油であったが、不思議と気が合った………

 

しかし、戦況は徐々に悪化………

 

敗戦濃厚となって行く中、訃堂によって特攻作戦が提案された。

 

人よりも国を優先する訃堂にとって、それは当然の作戦だったが、竜夫はそれを咎めた。

 

『人が在っての国だ。国民の居ない国なんて、只の空っぽの箱だ』と………

 

この事での訃堂と竜夫の意見は平行線であり、結局歩み寄る事は無かった………

 

そして遂に特攻作戦が開始されると………

 

竜夫はそのメンバーに()()()()()()

 

これには訃堂も仰天した。

 

彼は親友への情けとして上層部に手を回し、竜夫だけは特攻に行かせない様にしていたが、アレだけ反対していた竜夫が、まさか自分から志願するなどとは思っていなかった。

 

すぐに手を回して特攻中止命令を出したが、その時には既に彼の乗った機体は敵艦に突入していた………

 

自らが立案した作戦で親友を死なせてしまった………

 

気持ちの整理も出来ぬまま、竜夫の遺品を整理していた訃堂は、自身に宛てた竜夫の遺書を発見。

 

そこには、竜夫が特攻に志願した理由………

 

親友として、自らの命を持って、訃堂の過ちを正したかったと言う思いが綴られていた………

 

それを見た瞬間、訃堂は泣いた………

 

この日、護国の鬼と言われた男は、只の人間として親友の死に涙したのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

程無くして、戦争は終わった………

 

戦後も訃堂は風鳴機関を維持し、占領軍から日本の立場を陰ながら守り続けた。

 

そんなある日、風鳴機関はある驚くべき情報を入手する。

 

それは、謎の秘密結社『ネロス帝国』の存在だ。

 

『帝王ゴッドネロス』を首魁とする大軍団であり、戦闘ロボットやサイボーグ、バイオモンスターなどの超科学技術を有していた。

 

経済・軍事両面から世界を支配せんとしており、その本拠地が日本に在ると。

 

そんな組織が日本に在るなど許せる筈も無い訃堂は、直ちに自らも参戦し、風鳴機関の全力を以てして、ネロス帝国を壊滅させんとした。

 

しかし………

 

壊滅させるどころか、ネロス帝国の圧倒的な力の前に、逆に風鳴機関が壊滅寸前の状態となり、訃堂自身も右目、左腕、右足を失う重傷を負った。

 

最早風鳴機関は組織としての維持が困難な状態で、とてもネロス帝国と戦えなかった………

 

絶望しかけた訃堂だったが、そこへロボット工学の世界的な権威であり、亡き親友の父親である古賀(こが) 竜一郎(りゅういちろう)博士が秘密裏に急遽帰国したと言う情報を入手。

 

それを聞いた訃堂は、旧日本軍の『()()()()』を思い出す。

 

その名も『超人機計画』

 

不足していた兵力を高い戦闘能力を持つロボット………超人機達で置き換え、戦局を逆転させると言うものだった。

 

しかし、戦況の悪化は急激に進み、超人機は1体しか完成せず、その1体も敗戦後に破棄されたとなっていた。

 

だが、訃堂は古賀博士がネロス帝国に狙われていると言う情報も掴んだ事で、完成した超人機が破棄されていなかった事を確信。

 

すぐさま負傷を押して、自ら古賀博士を追った。

 

そこで訃堂が見たのは、目覚めたばかりで生死の概念すら分からない超人機メタルダーと、既にネロス帝国に殺された古賀博士の姿だった。

 

ネロス帝国に敗れたメタルダーを回収した訃堂は、その人間態………剣 流星(つるぎ りゅうせい)の姿を見て驚愕。

 

その姿は古賀 竜夫と瓜二つだったからだ。

 

戸惑いながらも、訃堂はまだ自分の生まれた意味すら知らないメタルダーを支え、ネロス帝国と戦い続けた。

 

途中、カメラマンの仰木 舞(おうぎ まい)とモトクロス選手権を目指す新人GPライダーである北 八荒(きた はっこう)、そしてネロス帝国を裏切った戦闘ロボット軍団の『トップガンダー』が仲間に加わり、戦いは激しさを増して行った。

 

そして、トップガンダーが犠牲になりながらも、遂に帝王ネロスを倒し、ネロス帝国は滅亡した。

 

だが………

 

帝王ネロスとの決戦で、メタルダーは自身の動力である超重力エネルギー装置の制御装置である超重力制御システムを破壊された。

 

このままでは、超重力エネルギーが暴走し、地球を吹き飛ばすほどの大爆発を起こしてしまう………

 

それを防ぐ為、メタルダーは自身の超重力エネルギー装置を完全に破壊を訃堂達に懇願した。

 

しかし、それは………

 

()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()………

 

訃堂も舞も八荒も、そんな事は出来ないと拒んだが………

 

親友としての最後の願いだと懇願され………

 

訃堂達は遂に………

 

メタルダーの超重力エネルギー装置を破壊………

 

人間・剣 流星は死に、メタルダーは機能を停止………

 

訃堂は再び、親友を失う事となった………

 

その後、舞と八荒は自分の道を進んで行き、訃堂は機能停止したメタルダーを立て直した風鳴機関の力を使って懸命に修復を試みた。

 

しかし………

 

メタルダーは、未だに目覚める気配を見せなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

『オイオイ、何て顔だ。護国の鬼の名が泣くぜ』

 

寂しく、そして悲し気な顔で物言わぬメタルダーを見下ろす訃堂に、スプリンガーがそう言う。

 

「放っておけ………」

 

訃堂は力無くそう返し、只々メタルダーの姿を見つめる。

 

『そうかい。ま、好きなだけ居ると良いさ。お前はメタルダー………剣 流星の親友なんだからな………』

 

スプリンガーはそう言うと、その場に寝る様に伏せる。

 

「…………」

 

それを横目に、訃堂はメタルダーを見つめ続ける。

 

何時までも、何時までも………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

予告していた短編集………蒸着しないシンフォギアです。

今回の内容は2つ。

先ずは二課が正式に銀河連邦警察と協力関係となります。
この作品では、まだコム長官がトップを務めています。
ぶっちゃけ、原作だとコム長官の後の長官って不祥事が続いたりしてましたから、ならまだコム長官に健在であったもらおうと思いまして。

轟はマクー残党と戦う傍ら、軟禁されてる響達の元へ細目に訪問してます。
慎次が若干苦労されてますが(笑)


そしてもう1つは………

何と、あの護国の鬼こと風鳴 訃堂がメタルダーの親友となっています。
訃堂は多分嫌いな人が多いと思いますし、私も好きではありませんが、XV編での行動の原因はアメリカを始めとした外国の過剰なまでの干渉や武力行為に対し、日本が弱過ぎたというのがあっての事と言う点は忘れてはいけないですからね。

最大の理由は、彼が年齢的に第二次世界大戦、太平洋戦争を経験していると思われている点ですね。
超人機メタルダーは旧日本軍の秘密兵器と言う設定でしたから、訃堂が何か関りを持っていてもおかしくないもではと考えた所からドンドンアイデアが湧いて………
最終的にこんな感じの設定に仕上がりました。
遂にタグについている『一部のキャラ綺麗化』の発動です。

訃堂はあんな性格だから心酔する人や付き従う人は居ても、対等な友達なんていないだろうなと思い、メタルダーこと剣 流星とそのモデルである古賀 竜夫を親友に設定してみました。
人間を一番変えるのは友の存在だと思うので、流星や竜夫から影響を受けた訃堂は原作の様な外道ではなく、かなりマイルドな性格になってます。
更に親友を2回も失ってしまったという事から、ちょっと悲しみを背負っているキャラでもあります。
勿論、八紘の妻を寝取ったりもしてません。
因みに身体の彼方此方を欠損している事で、戦闘力は大幅に落ちていますが、それでも弦十郎が全力で戦ってやっと勝てるってレベルです。

メタルダーが目覚めるか如何かは、訃堂が表立って登場するXV編までお待ちください。

来週も蒸着しないシンフォギアをお送ります。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。
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