戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達 作:宇宙刑事ブルーノア
二課仮説本部・指令室………
「ガングニールだと!?」
ライブ会場での一連の出来事は二課もリアルタイムで掴んでおり、黒いガングニールを纏ったマリアの姿を見て、弦十郎が驚きの声を挙げる。
「アウフヴァッヘン波形、確認! 本物です!!」
朔也が得られたデータから、マリアのシンフォギアが本物である事を確定させる。
「了子くん!」
「………残念だけど、私の記憶に無いわ」
「ならばフィーネかドン・ホラーだった時の事か………」
弦十郎の問い掛けに、了子がそう返す。
了子は12年前にフィーネとドン・ホラーに意識を乗っ取とられていた為、その間の記憶が朧げなのだ。
それでも、シンフォギアを製造出来るのは、世界中で了子只1人。
つまり、マリアの纏っている黒いガングニールは、フィーネかドン・ホラーが関わっているだろうと推測された。
とそこで、モニターしているマリアが『マドー』なる組織を名乗り、全人類に『魔王サイコ』に平伏せと宣言する。
「!? マドーだと!?」
「銀河連邦警察からのデータに在りました! モニターに出します!!」
再度弦十郎が驚きの声を挙げると、朔也が銀河連邦警察から得たマドーのデータを表示する。
宇宙犯罪組織マドー………
嘗てのマクー壊滅後に地球に現れた巨大な宇宙犯罪組織だ。
『幻夢界』と呼ばれる異次元空間に浮かぶ『幻夢城』を拠点に、全銀河の征服を企んだ。
その頂点に立つのが、強大な超能力を持つ首領………
『魔王サイコ』である。
最終的には、初代宇宙刑事ギャバンと宇宙刑事シャリバンの活躍によって壊滅させられた………
「新たなる宇宙犯罪組織………」
マクーに続いて現れた新たなる宇宙犯罪組織に、弦十郎が戦慄を覚えていると、防衛省から通信が入る。
モニターには、何故か蕎麦を食べている白髪の老人が映し出される。
「斯波田事務次官!」
それは二課の後ろ盾であり、本国外務省の事務次官・斯波田 賢仁だった。
日本政府の人間では、唯一二課以外に銀河連邦警察の存在を認識している人物でもある。
『マドーか………またその名を聞く事になるとはな』
「! マドーを御存知なのですか!?」
『ああ、昔奴等の起こした事件に巻き込まれた事があってな………その時に宇宙刑事って奴に助けて貰ったのよ』
「そうでしたか………」
『と、それよりも厄ネタが暴れてるのはコッチだけじゃないぜ。ソロモンの杖を移送した岩国基地が、謎の戦闘機軍や空飛ぶ戦艦に襲撃されて壊滅した』
「!!」
斯波田事務次官からの情報に、弦十郎は目を見開く。
『更にもう1つ………米国連邦聖遺物研究機関が、突然研究所ごと消えちまったらしい。いや、研究所だけじゃねえ。政府の中核に居た閣僚や政治家達、オマケに幾つか軍の部隊が同じ様に基地ごと消えちまったそうだ』
「………そんな事が出来るのは、宇宙犯罪組織の様な連中だけですね」
『ああ、如何やらアメリカは相当内部に巣くわれていたらしい。国の中心に居た主な人物が居なくなっちまって、今向こうは大混乱中だ』
(我々がマクーの対処で手一杯だったのに対し、マドーは何時の間にかアメリカを影から操っていた………そして今この瞬間に、その存在をアピールしてきたのか………)
弦十郎はモニターのマリアの姿を見やる。
(だが………俺には如何しても思えん………彼女が宇宙犯罪組織の一員などと………)
これだけの事をしているにも関わらず、何故かマリアが宇宙犯罪組織の一員だとへ思えない弦十郎だった………
◇
ライブ会場………
「マドー………だと」
「オイオイ、また宇宙犯罪組織だってのか!?」
「…………」
驚愕に目を見開く翼と奏に対し、マリアは何処か表情が暗く、マイクを握り締めている手にも力が入っている。
「………もし貴様が言う事が本当なのだとしたら………貴様は人類の裏切り者だ!!」
「そうだ! 宇宙犯罪組織が人類に未来を与えるだと!? 冗談も休み休み言えっ!!」
「! 黙れっ!!」
そこでマリアは、ハウリングが起きる程の怒鳴り声を挙げた!!
「「!?」」
「「「「「!!」」」」」
翼と奏、そして観客達は思わず耳を押さえる。
「ハア………ハア………ハア………」
肩で息をする程の大声を挙げたマリアが、ゆっくりと息を整えると、観客達の方に向き直る。
「………会場のオーディエンス達は解放する! ノイズに手出しはさせない! 速やかにお引き取り願おうか!」
「「!!」」
そう言ったマリアに、翼と奏は驚く。
彼女は自ら自分の優位を捨て去ったのだ。
「如何言う積りだ?」
「私の狙いは貴方達シンフォギア装者………それ以外は眼中に無い」
「へえ? 正面切ってやろうってのかい? なら最初からそうして欲しかったね」
「…………」
奏の皮肉に、マリアは僅かに顔を背ける。
そんなマリア達の遣り取りを余所に、観客達はライブ会場から避難しようとする………
………しかし!!
「「「「「コワッコワッ!」」」」」
「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!」
「ウワアッ!?」
突然全ての出入り口にファイトロー達が現れ、武器を手に逃げようとしていた観客達を威嚇する!
「!? ファイトロー!? 如何して!?」
「謀ったか! マリア!!」
「人質は解放するんじゃなかったのか! 卑怯者!!」
ファイトローの出現にマリア自身も驚く中、翼と奏が罵声を浴びせる。
「ち、違う! 私は本当に………」
「手緩いぞ、マリア!!」
と、弁明しようとマリアの声を遮る様に声が響くと、舞台袖からV字状に逆立った頭髪が特徴的な鎧を来て剣を携えた男が、2人の色違いのコスチュームを纏った女性と、数体のファイトローを従えて現れた!
「!! 『ガイラー将軍』!!」
その人物………マドーの幹部『ガイラー将軍』の姿を見たマリアが、畏まる様子を見せる。
「今宵は蘇った我らマドー、そして魔王サイコ様の復活祝いの日であるぞ! マドーと魔王様の力を愚かな人間共に見せつけねばならん! 人質を解放するなど、以ての外だ!!」
「し、しかし! この者達も何れは魔王様の臣下になるやも知れない存在! 無暗に殺してしまっては………」
「何を言うか、マリア。人間など放って於いても勝手に生まれて来るではないか」
「少しばかり数が減ったところで如何だと言うのだ」
ガイラー将軍の言葉に反論しおうとするマリアに、黒いコスチュームの女………『ミスアクマ1』とピンクのコスチュームの女………『ミスアクマ2』が観客達を見下ろしながらそう言う。
その目はまるで虫けらを見るかの様な目であった。
(将軍………と言う事は、アレがマドーの幹部か)
(見た目からでも分かる………相当強いぞ、アイツ)
翼と奏は、ガイラー将軍の強さを肌で感じ取る。
「貴様がやらぬと言うなら、儂がやってやるわ!」
とそこで、ガイラー将軍は腰に下げていた剣を鞘から抜き放つと、観客達に切っ先を向けた!!
「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」
その凄まじい殺気に、観客達は悲鳴を挙げる事さえ出来ず、顔を青褪めさせる。
「! 待って下さい!!」
するとそこで、マリアがガイラー将軍の足元にしゃがみ込み、ガイラー将軍に向かって頭を下げて土下座した!
「この会場での作戦は私に任されています! お願いです! 私のやり方でやらせて下さい! お願いします! 将軍!!」
恥も外聞も無く必死に頼み込むマリア。
「「!………」」
そんなマリアの姿に、翼と奏は僅かに困惑する。
「…………」
一方で、ガイラー将軍は土下座しているマリアを冷たい目で見下していたが………
「………良いだろう」
やがてそう言うと、剣を下ろす。
「あ、ありがとうござ………」
マリアは感謝を告げようとしたが………
「戦闘母艦、出撃ーっ!!」
それを遮ってガイラー将軍が叫ぶ!!
すると、突然夜空に暗雲が立ち込め………
その中からまるで頭蓋骨を思わせる様なデザインの巨大な戦闘用母艦………『マドー戦闘母艦』が出現した!!
「!? アレは!? 宇宙船か!?」
「あんなデカい物が空を飛ぶのか!?」
「「「「「「「「「「!?!?」」」」」」」」」」
翼と奏が驚愕し、観客達の顔も恐怖で引き攣る。
とそこで、マドー戦闘母艦の歯を思わせる部分が開いたかと思うと、そこからカナード付きのダブルデルタ翼機………『マドー戦闘機』が次々に発進する。
3機での編隊を組み、ライブ会場の在る街に向かって降下して行ったかと思うと、機首から鏃状の光線を連射し、空爆を始めた!!
ビルや建物が次々に爆発し、街の彼方此方から火の手が上がり始める。
「「「「「キャアアアァァァァァーーーーーーッ!!」」」」」
「「「「「ウワアアアァァァァァーーーーーーッ!!」」」」」
大勢の人の悲鳴が響き渡り、消防車や救急車のサイレンがけたたましく鳴り響く。
「将軍! 何を!?………」
「この会場の事は貴様に任せる………だが! 街に手出しをするなとは言っておらんかっただろう!」
「そ、そんな………」
ガイラー将軍の言い分に、マリアは顔を青くして酷く狼狽する。
その間にも、マドー戦闘機の編隊は、次々にライブ会場を避けて街を空襲して行く。
「如何した、人間共!」
「もう逃げても構わんだぞ? アハハハハハハッ!」
そこでミスアクマ達が観客達に向かって笑いながらそう言い放つ。
「「「「「コワッコワッ!」」」」」
彼女達の言葉に呼応するかの様に、会場の出入り口を塞いでいたファイトロー達が道を開ける。
「「「「「「「「「「!!………」」」」」」」」」」
だが、逃げ出す観客は1人も居ない。
好き好んで空爆がされている街へと逃げ出す者は居ない………
観客達は事実上、人質にされたままだった。
VIPルーム………
「アイツ等ぁっ!」
「クリスさん! 待ってっ!!」
「まだ観客が人質にされたままです!」
マドーの卑劣な行為に、クリスが怒りのままに飛び出して行こうとするのを、弓美と詩織が止める。
「これじゃ私達も逃げられない………」
「ひえええっ! お助けーっ!!」
創世がそう呟く横で、小里が床に伏せて頭を押さえている。
「………轟兄が居てくれたら」
「響………」
同じ様に動けない響がそう呟くの聞いたが、何も言えない未来。
と、その時………
ジェットエンジンの音が聞こえて来る。
「! 自衛隊だ!!」
それを聞いて空を見た弓美の目が、航空自衛隊のF-15Jの編隊の姿を確認するのだった。
謎の戦闘機群の爆撃を受けている街の上空へと侵入した航空自衛隊のF-15Jの編隊は、マドー戦闘機群に向かって直ちに攻撃を開始した!
空対空ミサイルが、白煙の尾を引いて次々に放たれる。
しかし、マドー戦闘機は通常の戦闘機では有り得ない、まるでUFOの様な飛行軌道で、空対空ミサイルを次々に回避してしまう。
ならば機銃でとF-15J達はマドー戦闘機を肉薄しようとしたが、やはりその機動性に翻弄され、逆に後ろを取られて光線で撃墜されてしまう。
空戦は終始マドー戦闘機群の有利で進み、F-15Jはまるで蠅の様に次々に叩き落され、火の玉となり黒煙を吐きながら墜落して行った。
「ああ、自衛隊が………」
「もう駄目だ………お終いだ………」
その光景に、ライブ会場の観客達は絶望し始める。
「ああ、神様………」
1人の母親が、幼い我が子を抱き締めながら只祈る。
「………宇宙刑事ギャバン」
そしてその幼子は、只々宇宙刑事ギャバンの登場を待ち望んでいた。
「フアハハハハハハッ! 良いぞ! マドーの力を思い知らせてやれ!!」
そんな中で、ガイラー将軍は1人得意そうに笑う。
「「!!………」」
翼と奏は怒りの形相でガイラー将軍を睨み付けるが、動く事は出来ない………
「あ、あああ………」
そしてマリアは、空爆される街の様子を見て震えていた。
(私は………私はこんな事がしたいんじゃないの! でも! 逆らう事は出来ない!!)
こんな事をしたくないと思いながらも、逆らう事が出来ないと思うマリア。
一体如何言う事なのか?………
(お願い………誰か………誰でも良い………助けて!!)
マリアは心の中で思わず助けを求める。
………と、その時!!
マドー戦闘母艦の出現で立ち込めていた暗雲から、突如雷の様な音が鳴り響いた。
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
「!? 何だっ!?」
その音に、マリアも翼達に響達、そしてマドーの連中と観客達も空を見上る。
その瞬間!!
暗雲を切り裂く様に、航空機を思わせる形状をした巨大な『超次元戦闘母艦』が現れた!!
「こ、今度は何だっ!?」
「!? 馬鹿なっ!? アレはっ!?………『グランドバース』ッ!?」
「「!?」」
奏が驚きの声を挙げるが、それ以上に驚愕しているのがガイラー将軍を始めとしたマドーの面々だ。
暗雲が切り裂かれ、月夜となった空から、その巨体からは信じられないスピードで降下してくる超次元戦闘母艦………『グランドバース』。
と、すぐさまマドー戦闘機群がグランドバースを取り囲み、光線を浴びせ始める。
マドー戦闘機群の攻撃が直撃し、グランドバースの船体から火花が散る。
しかし、自衛隊機を全滅させたマドー戦闘機群の攻撃にも、グランドバースはビクともしない!
そして、艦橋らしき部分が旋回したかと思うと、備え付けられていた砲門から赤い鏃状の光線が連射!
マドー戦闘機群の編隊が撃墜される!
グランドバースはそのまま艦橋らしき部分が自在に旋回し、赤い鏃状の光線を放ってマドー戦闘機群を次々に撃墜して行く。
先程自衛隊機を一方的に撃墜したのが嘘の様に、マドー戦闘機群は一方的に数を減らされて行く。
そこで、上空に控えていたマドー戦闘母艦が戦線に加わる。
頭蓋骨の歯の様な部分から機銃の様に砲撃を連射。
グランドバースの周辺で次々に爆発が起こり、衝撃が船体を揺さぶる。
するとそこで………
グランドバースに変化が起こった!!
機首部分が船体中央部に格納されたかと思うと、艦橋部分を含めた船尾上部が起き上がりる。
2つのバーニアノズルが下部へと折れ曲がり、足の様に変形する。
そして両主翼も上部へ90度折れ曲がると、先に変形した船尾上部と合わさり、上半身となる。
主翼が折り畳まれて露出した側面部から砲門の様な物が飛び出す。
そして、折り畳まれた主翼の下部部分から、手の様な物が出現!
やや不格好ながら、人型の形態へと変形した!!
「! 変形した!?」
翼が驚きの声を挙げると、人型となったグランドバースの肩部………母艦形態では主翼の先端に在った砲門から、赤いイナズマ状の光線が発射!
その光線の薙ぎ払いに拠り、残っていたマドー戦闘機群が全て撃ち落とされる!!
残ったマドー戦闘母艦が、人型となったグランドバースに突撃して来るが………
そこで人型となったグランドバースの腰部に在った砲門の照準が合わせられ………
その砲門から凄まじい赤いエネルギーの奔流が放たれた!!
それを喰らったマドー戦闘母艦は忽ち大爆発!
船体の半分以上が消し飛び、残る半分は濛々と黒煙を上げながら落下して行き、郊外の山中へ墜落して大爆発した!!
アッと言う間に空に静寂が戻る………
とそこで、人型となったグランドバースから………
赤い光の玉が飛び出して来た!!
「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」
一同が驚く中、赤い光の玉はライブ会場へと降下して来る。
そして、ライブ会場の上空で制止したかと思うと………
光が弾けて、中から赤く輝くアーマーを纏った人物が出現し、ライブ会場中心部に在ったアーチで吊り下げられた世界各国のライブ中継の様子を映し出しているモニター群の上に降り立った。
その様子は、全世界に中継されている。
「! アレって!?」
「『コンバットスーツ』………」
VIPルームの未来と響が驚きの声を挙げる。
何故なら、その人物が纏っているアーマーは、宇宙刑事ギャバンと同じ………『コンバットスーツ』だったからだ!
「! 貴様はぁっ!!」
ガイラー将軍がその赤いコンバットスーツの人物を指差しながら、忌々し気な声を挙げた瞬間………
「宇宙刑事! シャリバンッ!!」
赤いコンバットスーツの人物………
新たなる勇者『宇宙刑事シャリバン』は、全世界の注目を一身に浴びて、高らかに名乗りを挙げたのだった!!
つづく
新話、投稿させて頂きました。
マドーを宣言したマリア。
翼と奏から人類の裏切り者と非難されますが、何故かムキになって言い返す。
そして、原作通りに観客は解放しようとしましたが………
それをマドーの幹部達、『ガイラー将軍』と『ミスアクマ』達に阻止されます。
それでも何とかガイラー将軍に食い下がり、指揮権を維持したかに見えたマリアでしたが………
ならばとガイラー将軍はライブ会場の在る街を空襲!
それにより観客達も事実上逃げられなくなります。
今回ので分かったかと思いますが、マリア達のマドー内での立場は低いです。
それでも組みしている理由は後程………
響達も動けず、マドーの勝手を許すしかないのかと思われたその時!
『超次元戦闘母艦グランドバース』が登場!
バトルバースフォーメーションを駆使し、マドー戦闘母艦と戦闘機隊を瞬く間に撃墜!
そしてそのグランドバースから現れたのは………
新たなる宇宙刑事!
その名は!!
『宇宙刑事シャリバン』!!
次回ではシャリバンの奮闘。
そしてマリア達がマドーに組みしている事情の一端が見れます。
更に、原作では調に偽善者と言われてショックを受けていた響でしたが………
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。