戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達 作:宇宙刑事ブルーノア
郊外の廃病院………
「此処か………」
廃墟となっている病院を見上げて、雷がそう呟く。
郊外の廃病院にマドーのアジトが在る事が判明し、装者達と雷は日付も代わった頃に、件の廃病院前に集合していた。
『良いか! 今夜中に終わらせる積りで行くぞ!』
『明日も学校があるのに………夜半に出動を強いてしまい、すみません』
翼が手に持っている通信機から、弦十郎の号令と慎次の謝罪が響く。
「気にしないでください。これが私達、防人の務めです」
「不規則な生活なんて、アーティスト活動で慣れてるって」
慎次の謝罪に、翼と奏がそう返す。
「街のすぐ外れに、マドーのアジトが在ったなんて………」
『僕達もマドーの行方は懸命に追っていたのですが、まさかUFOを追っていて発見するなんて………やっぱり小里さんにはウチに入って欲しいですね』
自分達が必死に追っていたマドーの行方を、偶然ながらも掴んだ小里の事を、慎次は本気でスカウトしようかと苦笑いしながら考えるのだった。
『気を付けて下さい。そこがマドーのアジトである事は確実ですが………中が如何なっているかは全く分からない状態ですので』
「尻尾が出てないのなら、こちらから引き摺り出してやるまでだ!」
そこで、クリスがそう言うと駆け出し、他の装者達もそれに続いた。
『雷くん。君は外で待機していてくれ。万が一と言う事も有るのでな。イザと言う時には、君の判断に突入してくれた構わない』
「分かりました」
とそこで、弦十郎が雷にそう言う。
響達の実力を疑っているワケではないが、相手はマクーよりも強大な宇宙犯罪組織。
万が一と言う可能性を考え、シャリバンである雷には廃病院の外で待機して貰った方が良いと判断したのだ。
雷を残し、装者達は廃病院内へと踏み込む。
廃病院内の一室………
多数のモニターと機材が設置されているその部屋の中には、レイダーとウェルの姿が在る。
「レイダー様! 来ました!」
「慌てるな………予定通りだ」
やや慌てて報告するウェルに、レイダーは冷静にそう言い放つ。
そしてその目が、怪しく輝くのだった………
廃病院内………
突入した響達が通路を奥へと進んで行くと、その行く手を防火扉が遮った。
「行き止まりか?」
「いや、空くぞ、この扉………」
翼がそう言う傍で、防火扉に手を当てた奏が、動く事を確認する。
「何だよ、虚仮脅しかよ………」
「うう………」
と、クリスがそう言う横で、響が何処怖がっている様子を見せている。
「? 如何した?」
「いや~、やっぱり元病院ってのが雰囲気出して………」
クリスの問いにそう返す響。
廃病院と言えばホラーの定番………
真夜中と言う事もあり、雰囲気は抜群だった。
「何だ? ビビってるのか?」
「そうじゃないけど、何だか空気が重いような気がして………」
「お喋りはそこまでだ………入るぞ」
そのまま会話を続けていたクリスと響を翼がそう制す。
「「「「…………」」」」
そこで響を除く装者達は、片手でギアペンダントを握り締めながら、もう片方の手を防火扉に掛ける。
「行くぞ………せー、のっ!!」
「「「!!」」」
そして奏の号令で、一気に扉を開け放ち、突入を果たす。
するとそこには………
遊園地が広がっていた!!
「「「「………は?」」」」
思わず呆けてしまう装者達。
自分達は夜中の廃病院内に居た筈………
それが何時の前にか真昼間の遊園地の中へと出ていた。
「ど、如何なってんだ、コリャッ!?」
1番に我に返ったクリスが困惑したまま辺りを見回す。
「オイオイ! アタシ達は廃病院に居た筈だろ!?」
奏も困惑を隠せぬままそう言い放つ。
「!? ああっ!? さっき入った扉が在りませんよ!!」
とそこで、後ろを振り返った響が、先程開け放って潜った筈の防火扉が無くなっている事に気付く。
「落ち着け! 冷静になるんだ!!」
自身も動揺しているが、翼が皆にそう呼び掛ける。
「んなこと言ったてよぉっ!!」
「如何したら廃病院の中から遊園地に出るってんだ!?」
(何だろう?………この感じ、何処かで………!?)
まだ困惑しているクリスと奏だったが、響は肌から感じる気配を何処からで感じた事があると思い、そこである結論に至る。
「ひょっとして、コレ………
「「「!?」」」
響がそう声を挙げると、翼・奏・クリスもハッとした様子を見せる。
今まで居た場所から突然何の繋がりも無い筈の場所へと出現する………
それは正にマクーが使っていた魔空空間と似通っていた。
「成程………奴等も同じ宇宙犯罪組織………」
「似た様なモンを持っててもおかしくないか………」
「まんまと罠に嵌ったって事かよ………」
その言葉で冷静さを取り戻す翼と奏に、罠に嵌ってしまった事を歯嚙みするクリス。
良く見れば、遊園地内はアトラクションこそ稼働しているものの、人っ子1人居らず、不気味な雰囲気が漂っていた………
と、その時!!
突然陽気な音楽が聞こえて来た。
「「「「!?」」」」
装者達が驚きながら音楽が聞こえて来た方向を見やると………
「「「「「「「「「「~~♪」」」」」」」」」」
そこには音楽に乗って大道芸を披露しているピエロ達の姿が在った。
「「「「…………」」」」
突然現れたピエロ達に、装者達は思わず注目してしまう。
その間にも、ピエロ達は音楽に乗って大道芸を続ける。
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
するとそこで、不意に音楽が止まり、ピエロ達も動きを止めた。
「「「「?………」」」」
何だ?、と装者達が思った瞬間………
「!!」
ジャグリングをしていたピエロが、使っていたボールを次々に投げつけて来た!
飛んで来たボールが、途中で投げナイフへと変わる!!
「「「「!?」」」」
慌てて散会すると、投げナイフは先程まで装者達が居た場所を通り抜ける。
「!!」
今度は、玉乗りをしていたピエロが、乗っていた玉を蹴り飛ばして来た!
蹴り飛ばされた玉が、装者達の傍に落ちたかと思うと、大爆発する!
「キャアッ!?」
「うわっ!?」
直撃はしなかったものの、爆風に煽られて響とクリスが転倒する。
そこで、ピエロ達が一斉に衣装を脱ぎ捨てたかと思うと………
「「「「「「「「「「コワッコワッ!」」」」」」」」」」
全員がファイトローの姿となった!!
「! 確かコイツ等は………ファイトローッ!?」
「へっ、お出迎えってワケかい………2人とも、大丈夫かい!?」
翼がマドーのデータを思い出しながら声を挙げ、奏が不敵に笑いながらも、転倒した響とクリスに声を掛ける。
「な、何とか………」
「チキショウッ! やってくれたなっ!!」
響が頭を振りながら、クリスが怒声を漏らしながら起き上がる。
「行くぞっ!!」
「「「!!」」」
Balwisyall nescell gungnir tron
Imyuteus amenohabakiri tron
Croitzal ronzell gungnir zizzl
Killiter Ichaival tron
そこで装者達は一斉に聖詠を唱え、シンフォギアを身に纏う。
「「「「「「「「「「コワッコワッ!」」」」」」」」」」
そこでファイトロー達は、ハンドアックスを手に、響達へと一斉に襲い掛かる。
「ハアッ!」
「「「「「コワッコワッ!?」」」」」
そのファイトロー達の中を、翼がアームドギアの剣を振り回しながら駆け抜けたかと思うと、多数のファイトロー達が斬られ、倒れると同時に怪しい光を放って消滅する。
「ハアッ! せいっ! トオオッ!!」
「「「コワッコワッ!?」」」
続いて響が、肘打ち・裏拳・正拳を流れる様なコンビネーションで繰り出し、3体のファイトローを葬り去る。
「ハッ! そりゃりゃりゃりゃりゃりゃーっ!!」
「「「「「「「「「「コワッコワッ!?」」」」」」」」」」
そして奏が、アームドギアの槍を地面に突き刺したかと思うと、それで身体を支えながら、マ〇リックスの様に周りのファイトロー達を蹴り飛ばして行く。
「「コワッコワッ!!」」
とそこで、アトラクションの上に現れたファイトロー達が、手にしていたバズーカを装者達へと向けたが………
「気付かないと思ったのかよっ!!」
それが発砲されるよりも早く、クリスが両手のガトリングガンを発砲!!
「「コワッコワッ!?」」
バズーカを構えていたファイトロー達は蜂の巣にされて、誘爆したバズーカの爆発に呑まれたのだった。
「今更戦闘員如きに遅れは取らん!」
「束になって掛かって来やがれ!!」
「「!!」」
翼と奏がそう言って見栄を切り、響が拳を、クリスがガトリングガンを構える。
しかし、ファイトロー達との戦闘に夢中になり、装者達は何時の間にか遊園地の彼方此方から
廃病院内の一室………
「『サイコゾーン』内に『Anti_LiNKER』の散布、完了しました」
「よし………」
ウェルの報告にレイダーが頷く。
とそこで………
部屋の片隅に置かれていた大型犬が入りそうなくらいの檻がガタガタと揺れ始めた。
「『ネフィリム』も聖遺物の存在を感じ取っている様ですね」
その檻を見ながらウェルがそう言う。
「暫し待て、『ネフィリム』よ………貴様の出番はシンフォギア装者共が弱ってからだ」
続いてレイダーがそう言ったかと思うと、檻の揺れが治まる。
「ウェルよ………次の手だ」
「ハッ! 畏まりました!」
そこでウェルは、白衣の下からソロモンの杖を取り出す。
填められている宝玉の様な部分が怪しく発光し始める………
サイコゾーン内………
「セヤアッ!!」
「コワッコワッ!?」
最後の1体のファイトローを響が殴り倒し、辺りに静寂が戻る。
「コレで一段落か?」
「いや、そうではないらしい………」
奏がそう呟くが、何かを発見した翼がアームドギアを構えながら返す。
その視線の先には、自分達に向かってノソノソと歩いて来るノイズ達の姿が在った。
「今度はノイズのお出ましか………」
「あのノイズ達、制御されてるんでしょうか?」
クリスと響がそう言った瞬間、ノイズ達は走り出し、一気に接近して来た!
「戦ってみりゃ分かるだろ!」
「行くぞっ!!」
「「!!」」
そこで装者達も駆け出し、ノイズ達と激突するのだった。
「ハアッ!!」
気合の掛け声と共に、ノイズを1体両断する翼。
しかし、次の瞬間………
炭に成ると思われたノイズが、まるで映像を巻き戻したかの様に再生する!
「!? 何っ!?」
「オリャアッ!!」
翼が驚いていると、奏が別のノイズを1体、槍で串刺しにした。
だが、ノイズは身体を貫かれているにも関わらず、腕を振って奏に攻撃して来た!
「!?」
慌てながらも槍を引き抜いて後方へ飛んで回避する奏。
直後に、ノイズの身体に空いていた穴が再生する。
「!? 如何なってんだ!?」
「こっちもです!」
「チキショウッ! ノイズ如きに!!」
奏も驚愕していると、殴り飛ばしたノイズが平然に起き上がるのを見た響と、蜂の巣にしたノイズが再生するのを見たクリスも声を挙げる。
「! まさか………ギアの出力が!?」
そこで翼がハッとして纏っているシンフォギアを見やる。
如何やらこの状態は、シンフォギアの出力が下がってしまっている為に起きている様だ。
「! この赤い霧!?」
「コイツのせいか!?」
そこで響とクリスが、何時の間にか園内に赤い霧の様な物が充満しているのに気付く。
そんな装者達に、ノイズ群は容赦無く襲い掛かって来る!
「クッ! 通信も通じないか!」
「皆、持ち堪えろ! 外に居る雷が異変に気付いて助けに来てくれる筈だ!」
通信も通じない事を確認している翼の横で、奏が一同を檄する様にそう言うのだった。
一方、その頃………
廃病院の外に待機していた雷は………
「コチラ雷。響ちゃん、翼、奏、クリスちゃん、応答してくれ」
通信機で響達に呼び掛けているが、返って来るのは雑音だけだった。
「駄目だ、通じない………」
『コチラからも呼び掛けてますが、駄目です!』
『装者達のシグナルロスト! 病院内に空間の歪みの様なモノを確認!』
そこで、指令室の朔也とあおいの声が響いて来る。
「空間の歪み………! サイコゾーンか!」
『サイコゾーン?』
「マドーが使う異空間の一種だ。多分、響ちゃん達はその中だ」
『マクーが使っていた魔空空間の様なモノか………』
「弦十郎さん! 俺もすぐに突入して………」
と、自分の廃病院内に突入すると言おうとした雷だったが………
クエエエエェェェッ! ケエエエエェェェェェーーーーッ!!
そこで奇声と共に何かが飛び掛かって来た!!
「!?」
雷は咄嗟に地面を転がる様にした飛び掛かって来た者を躱す。
クエエエエェェェッ! ケエエエエェェェェェーーーーッ!!
飛び掛かって来た者………エイビーストは着地を決めると、雷に向き直りながら奇声を挙げる。
「! 魔怪獣っ!!」
クエエエエェェェッ! ケエエエエェェェェェーーーーッ!!
雷が身構えると、エイビーストは槍の様な武器を出現させ、切っ先を突き付けて来る。
「病院内には行かせないって事か………」
クエエエエェェェッ! ケエエエエェェェェェーーーーッ!!
「フッ! ハッ!」
連続で振られるエイビーストの槍を、身軽な動きで躱して行く雷。
クエエエエェェェッ! ケエエエエェェェェェーーーーッ!!
ちょこまとした動きに、エイビーストが苛立った様に槍を垂直に振り下ろす!
「トアッ!!」
しかしそこで、雷は大きく跳躍し、廃病院の建物の上に降り立つ。
クエエエエェェェッ! ケエエエエェェェェェーーーーッ!!
そして奇声を挙げるエイビーストを見下ろしながら………
「赤射っ!!」
そう叫ぶと、雷の身体が赤い光に包まれ、コンバットスーツを纏った!!
「宇宙刑事! シャリバンッ!!」
そして、ポーズを取りながら、高らかに名乗りを挙げたのだった。
宇宙刑事シャリバンは、僅か1ミリ秒で赤射蒸着を完了する。
では、赤射プロセスをもう1度見てみよう!
「赤射っ!!」
雷がそう叫び、赤射ポーズを取ると、それは直ちに地球の衛星軌道上で待機している超次元戦闘母艦グランドバースへと伝わる。
すると、灼熱の太陽エネルギーが、グランドバースの増幅システムにスパークする!
増幅された太陽エネルギーは、赤いソーラーメタルに転換され、シャリバンに赤射蒸着されるのだ!
もう1度言おう!
この一連の動作………僅か1ミリ秒!!
クエエエエェェェッ! ケエエエエェェェェェーーーーッ!!
「行くぞ! 魔怪獣っ!! ケアアッ!!」
威嚇する様に咆哮に挙げる魔怪獣目掛けて、シャリバンは廃病院の上から跳躍するのだった。
つづく
新話、投稿させて頂きました。
廃病院のマドーアジトへ突入した響達。
そこで待っていたのはサイコゾーンとアンチリンカーの洗礼だった。
宇宙刑事シリーズで良く場所が唐突に変わったりするのがあり、それは空間を操る宇宙犯罪組織ならではの芸当でしたよね。
後の特撮作品でも良く使われる所謂『特撮ワープ』ですね。
転移先が遊園地だったり、ピエロに扮した敵が襲って来るのも宇宙刑事シリーズっぽかったと思いましたが、如何だったでしょう?
ピンチに陥る響達。
雷の前にも魔怪獣が立ちはだかる。
果たしてシャリバンはエイビーストを突破して救援に向かえるのか?
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。