戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達 作:宇宙刑事ブルーノア
新リディアン音楽院………
この日は学祭である『秋桜祭』の開催日で有り、学園内は大勢の人で賑わっていた。
「…………」
そんな中で、響は踊り場の手摺に寄り掛かって、学祭の様子を見下ろしていた。
その脳裏には、マリアとの会合した後の作戦会議での事が思い起こされていた………
回想………
仮説本部・指令室にて………
二課の一同と雷は全員難しい顔を浮かべていた。
一同の視線の先には、モニターに映し出されているセレナが変身したサイコラーの姿が在った。
「では、このサイコラーと言う怪人は、マドーのボス………魔王サイコの半身だと?」
「ええ。嘗てのデータのままならですが………奴は魔王サイコと命を二分して持っていて、片方が倒されても、もう片方が即座に命を注ぎ込む事で復活出来る」
弦十郎の問いに、雷がそう返す。
「そんな事が出来るんですか!?」
「事実上、不死身じゃないですか………」
サイコラーと魔王サイコの特性に、朔也とあおいも驚きの声を挙げる。
「けど、前は倒せたんだよな?」
しかしそこで、クリスがそう指摘する。
彼女の言う通り、マドーは1度壊滅しており、魔王サイコとサイコラーは倒されている。
「ああ、その時には初代宇宙刑事ギャバンと初代シャリバンが協力して、魔王サイコとサイコラーを同時に倒したんだ。それよって片方が復活する事を防いだんだ」
「成程。片方を倒すと復活するなら、
雷の説明に、奏が合点が行った表情となる。
「その通りだ。しかし、俺はそれよりも、このサイコラーに変身した人物が気になるな………」
雷がそう言うと、モニターの映像がサイコラーからセレナの姿に変わる。
「確か、マリアさんの妹でしたよね? セレナって………」
「彼女の妹が魔王サイコの半身? 如何言う事なんだ?」
響がそう言うと、翼が首を傾げる。
「つーか、そもそもアイツ等、一体何者なんだ?」
「マリアの素性は一切謎にされてたからなあ………あのチビ2人も何もんなんだか………」
そもそもとして、マリア達の素性が良く分からない事を指摘するクリスと奏。
「廃病院での戦いでウェル博士が居た事から、恐らくF.I.S.に関わりが有るのだと思われますが………」
慎次がそう言った時………
「ああ、そうだ。彼女達はF.I.S.に居た人間だ」
「「「「「!?」」」」」
突然聞き覚えの無い声が聞こえて来て、一同が注目すると、そこには………
頭巾と身体の部分に稲妻状の紋様が入った水色の忍装束姿で、背中に刀を背負い、左腰にリボルバー式拳銃の入ったホルスターを身に付けた人物が、何時の間にか立って居た!
「!? 何だとっ!?」
「うええっ!? 誰っ!?」
「何者だ!? 何時の間に忍び込んだ!?」
弦十郎と響が驚きを露わにし、翼が即座にギアペンダントを構えて警戒態勢になる。
「アレ? 何かこんな奴見た気が………?」
そんな中で、その珍妙な忍者の姿に既視感を感じる奏。
「アンタ、ひょっとして………世界忍者か?」
クリスが脳裏にロケットマンの姿を思い浮かべながら、その珍妙な忍者に言うと………
「『雷忍・ワイルド』さんじゃないですか!?」
「よう、緒川。久しぶりだな」
慎次がそう声を挙げ、珍妙な忍者………世界忍者『雷忍・ワイルド』が陽気そうに挨拶する。
「世界忍者だったのか。しかし、如何やって潜水艦であるこの基地に?」
「ハハハ! 世界忍者にとっちゃ、これぐらい朝飯前よ」
(せ、説明になってない………)
弦十郎の問いにまたも陽気に笑いながらそう返すワイルドに、翼は内心でツッコミを入れる。
「はあ~、世界忍者さんでしたか」
「彼はアメリカの世界忍者、雷忍・ワイルドさんです。先代共々銃の腕は忍びの世界に知れ渡っていて、『雷忍』の称号も百発百中かつ電光石火の早撃ちを雷に例えての表現しています」
響にワイルドを紹介する慎次。
「忍者が射撃の名手って………」
「世界忍者にその辺ツッコミ出したらキリがねえぞ」
ブッ飛んだ経歴の持ち主であるワイルドに奏が困惑していると、クリスが苦笑いしながらそう言って来る。
「それよりも、ワイルドさん。彼女達について何か知ってるんですか?」
「ああ………取り合えず、細かい事はこの書類に書いてある。司令官さんに渡しとくぜ」
とそこで慎次が話を戻すと、ワイルドは何処からともなく書類の束を取り出し、弦十郎に渡した。
「! コレは!? アメリカの機密事項!? 一体何処から!?」
「な~に、ちょいとホワイトハウスとペンタゴンから失敬してきたまでさ。今アメリカはマドーのせいで大混乱中だからな。楽な仕事だったぜ」
「「「「「「…………」」」」」」
あっけらかんとそう言い放つワイルドに、一同は苦笑いしながら冷や汗を流す。
「! F.I.S.の設立には米国と通じていたフィーネが関わっていただと!?」
と、そんな中でも書類に目を通していた弦十郎が、書き記されていた情報に驚きの声を挙げる。
「「「「「!?」」」」」
「!………」
その情報に二課の面々、特に了子は強く反応する。
「フィーネと言うと、ドン・ホラーに憑依されていたと言う先史文明の巫女の?」
「ええ………」
直接フィーネとは関りの無い雷が朔也に尋ねる。
「元々聖遺物を研究していたF.I.S.は非常に排他的で機密性が高かった。マドーの連中が隠れ蓑のするには丁度良かったんだろうぜ」
何処か忌々し気に言うワイルド。
母国であるアメリカで、自分も与り知らぬ内に好き勝手されていた事を相当腹立たしく思っている様だ。
「あの………マリアさん達は、如何関わってるんですか?」
とそこで、響が最も気になる事であるマリア達について尋ねる。
「彼女達は、『レセプターチルドレン』と言われるF.I.S.が集めていた孤児やストリートチルドレン達だ」
「『レセプターチルドレン』?」
「簡単に言っちまえば、フィーネの予備の器だ」
「「「「「「!?」」」」」」
「…………」
ワイルドの言葉にまたも二課一同は驚愕し、了子は拳を握り締めていた。
「フィーネって奴は、今宿っている肉体に万が一の事が在った時、時間のロスを少なくする様に自分の遺伝子を引く人間を集めておいたそうだ」
「それがレセプターチルドレン………」
「そのレセプターチルドレンと言うのは、どれ程集められ居たのですか?」
「数1000人ってとこだな。それこそ世界中から集められていたからな」
「そんなに!?」
「そんな多くの人達を………」
朔也が驚きの声を挙げ、あおいも憤りを隠せずに居た。
「………マリア達以外のレセプターチルドレンは如何なったのですか?」
「アメリカ政府にとっちゃ明るみに出せねえ存在だ。秘密裏に処分される予定だったみてえだが、心配するな。俺が世界忍者の仲間達と協力して全員救出した」
「! 良かった~!」
嫌な想像をしながら翼が尋ねたが、ワイルドがそう返すと、響が安堵の声を漏らした。
「………雷忍・ワイルド。セレナと言うレセプターチルドレンについては何か知らないか?」
とそこで、雷がワイルドにそう尋ねる。
「ああ、マリアの妹だな………今から6年程前に、F.I.S.で事故が起きている。詳細は不明だが、研究していた完全聖遺物が暴走したらしい。それをF.I.S.所属の装者であるレセプターチルドレンが静めたらしいが、それが原因で亡くなったと記録されていた」
「それが………セレナ?」
「ああ」
「そうか………そう言う事か」
ワイルドと話し合っていた雷が、納得が行った様な表情となる。
「オイ、何1人で納得してんだよ」
「アタイ達にも説明してくれよ」
そんな雷に説明を求めるクリスと奏。
「推測だが、6年前に起きたその事故の時に、マドーはF.I.S.を乗っ取ったんだ。そしてその際に死ぬ筈だったセレナを魔王サイコがサイコラーへと変えた。マリア達は事実上、セレナを人質に取られているワケだ」
「! じゃあ! マリアさん達はマドーに従いたくて従ってるワケじゃないんですね!」
「飽く迄推測だけどな」
何処か嬉しそうに言う響に、雷はそう釘を刺す。
「だが、もしこの予想が当たっていたとして………気になる事が有る」
「? それは?………」
「彼女が言っていたマドーの従っているもう1つの理由………嘗て無い危機から人類を救うと目的だ」
「人類を救う………」
「宇宙犯罪組織に組みしといて、人類を救うなんざ、お門違いも良いとこだぜ」
吐き捨てる様に言うクリス。
「そう言ってやるな。レセプターチルドレンはF.I.S.の閉鎖的な環境で育てられたせいで、人間不信な上に考えが偏っちまってるところがあるからな」
「ワイルドさん。その危機に関しては何か分かりませんか」
ワイルドにそう尋ねる慎次。
「それに付いちゃあ、まだ情報が集まってない。だが、マリア達は日本に来る寸前、『NASA』のホストコンピューターに頻繁にアクセスしていたらしい」
「『NASA』に?」
「アメリカの歌姫さんは宇宙に興味が有ったってのか?」
「言っただろう。まだ情報が集まってないってな」
奏の問いに、ワイルドはそう返す。
「それと何を意味するかは分からないが、その機密書類にも度々『フロンティア』って単語が出て来ている。それも連中に関わっているらしい」
「『フロンティア』………」
「如何やらマドーの連中が日本へ進出して来たのもそれが狙いらしい」
「何かの聖遺物或いは完全聖遺物でしょうか?」
そう推測する慎次だが、思い当たるモノは出て来ない。
「………とまあ、俺からの情報はこんなところだ」
「ワイルドさん。ありがとうございました」
「気にするな。世界忍者の務めだ。じゃあ俺はまたアメリカに戻るぜ。まだまだ情報を集めておきたいからな」
そう言って、指令室を後にしようとするワイルド。
「あ、あの!」
「うん?」
と、そのワイルドをクリスが呼び止める。
「小父さん………ロケットマンに会ったら、よろしく言っておいてくれ」
「ああ、お前さんがロケットマンが言ってたダチの娘か。分かった、伝えとくぜ。じゃあな、グッバイ」
クリスに頼みを快く了承すると、ワイルドは何時の間にか姿を消すのだった。
「!? 消えたっ!?」
「段々と慣れて来てる自分が怖いな………」
翼が驚き、段々と慣れて来ていると感じている自分に思わず苦笑いを零す奏だった。
◇
現在………
新リディアン音楽院………
(マリアさん達とはまた………戦わないといけないのかな?)
そんな事を考えながら黄昏る響。
心優しい彼女は、マリア達の事情を知り、戦う事に躊躇が生まれていた。
(………いや、戦う事を恐れちゃいけない。マドーからマリアさん達を解放する為にも………戦わないといけないんだ!)
しかしすぐにそう己を奮い立たせる。
(………轟兄だったら、そう言うよね)
その思考が轟の事へと至った瞬間、響は空を見上げる。
青空に轟の顔が幻視される。
(轟兄………)
今は遠い星で戦っている轟に思いを馳せる響。
「響」
とそこへ未来が現れた。
「未来………如何したの?」
「『如何したの?』じゃないわよ。もう直ぐ、板場さん達のステージが始まる時間よ」
「うわ! もうそんな時間だっけっ!?」
「行こう。きっと楽しいよ」
「うん、ありがとう未来」
そして未来は響の手を引き、歌唱大会が行われている大講堂へと向かうのだった。
一方、その頃………
校門では………
「…………」
クリスがソワソワとした様子で、誰かを待っていた。
「「クリス!」」
「!」
と、待望の声が聞こえたかと思うと、クリスは満面の笑みを浮かべて待ち人……雅律とソネットを迎える。
「パパ! ママ! 来てくれたんだ!!」
「当たり前だろう。折角の娘から招待なんだから」
「クリスの学校も見ておきたかったしねえ」
和気藹々とした雰囲気が流れる雪音一家。
「雪音さ~ん!」
とそこで、クリスのクラスメート達がやって来る。
「もうすぐ登板だよ! 急いで!」
「何っ!? もうかよ!?」
「何か前の人がすぐに落選しちゃったみたいで、出番が早まったの!」
「マジかよ………」
そう言われたクリスが落選した前の登板者………弓美達に軽く呪詛を飛ばす。
「パパ、ママ、ゴメン! 急いで大講堂に行かないと!」
「分かった! 娘の晴れ舞台を見逃すワケには行かないからね」
「後でロケットマンさんにもちゃんと見せてあげないと」
そこでソネットがそう言いながらビデオカメラを取り出した。
「えっ? 小父さんにも見せるの?」
「アラ? 駄目なの、クリス?」
「ロケットマンさんも今日の事を楽しみにしていたんだよ。流石に仕事に穴を開けられなくて、来られなかったから代わりに撮影を頼まれたけど」
軽く気後れしたクリスに、ソネットと雅律はそう返す。
「うう………」
「ホラ、雪音さん、早く!」
クリスは気恥ずかしさで頬を赤くするが、もう時間が無いとクラスメートの1人がクリスの手を引いて大講堂へと向かう。
「うわっ!? ちょっ!? オイ!?」
「雪音さんのお父さんとお母さんは私達がご案内しますね」
「こちらへどうぞ」
「ありがとう」
「何時もクリスがお世話になっております」
戸惑ったままクリスは連れて行かれ、雅律とソネットは残るクラスメートに案内されて大講堂に連れられたのだった。
そんな中………
学園祭で訪れている人々に紛れて込んでいる者達が居た………
「楽しいデスな~。何を食べても美味しいデスよ」
「ジー………」
切歌と調だ。
2人とも変装の積りか、伊達メガネを掛けており、飲食系の屋台を食べ歩いている。
しかし、楽しそうにしている切歌を、調はジト目で見つめている。
「な、何デスか、調?」
「私達の任務は学祭を全力で楽しむ事じゃ無いよ、切ちゃん」
切歌に釘を刺す様にそう言う調。
「わかってるデス。これも捜査の一環なのデス!」
「捜査?」
「人間誰しも美味しい物に引き寄せられるものデス。学院内のうまいもんマップを完成させる事が捜査対象の絞込みには有効なのデス」
「…………」
自信満々にそう言う切歌を、調は再度ジト目で睨み付ける。
「し、心配しないでも大丈夫デス。この身に課せられた使命は1秒だって忘れていないデス」
多少たじろぎながらも、表情を引き締めてそう言う切歌。
前日の失態で、マドー内でのマリアの立場は益々悪くなっている………
彼女の名誉挽回の為に、2人はマリアにもナスターシャにも内緒でリディアンを訪れたのだ。
目的は装者達のギアペンダント………
先日の作戦会議で言っていた事を自分達が成し遂げれば、マリアの立場も改善される筈だと。
更に2人にはもう1つ懸念している事が有った………
マリアの中に宿っているとされる『フィーネの魂』の事である。
マリアが力を使えばフィーネの魂が強く目覚め、マリア自身の魂が塗り潰されてしまう………
そう思っている2人は、コレ以上マリアに無理をさせたくないのだ。
只でさえセレナの事で心にダメージを受け続けているマリアにコレ以上の苦難は背負わせたくないと………
「………とは言ったものの、如何したものかデス」
学園祭に潜入する事は出来たものの、肝心の装者達の姿を見つけられず、切歌と調は若干途方に暮れていた。
とそこで、二課の装者達の姿を探してキョロキョロしながら歩いていた2人は、通行人とぶつかってしまう。
「あうっ!?」
「気を付けるデス!」
調が短く声を漏らし、切歌が怒鳴りつけると………
「ああん?」
「何だこのガキィ?」
ぶつかった相手………如何にもなヤンキー達が2人を睨み付ける。
「デ、デース………」
「…………」
途端に冷や汗を切歌と、ゴミを見る様な目になる調。
「切ちゃん、行こう」
関わりたくないと思った調が、踵を返してその場を去ろうとしたが………
「おう、待てや」
「! イタッ! 離して!!」
「人にブツかっといて、何だその態度は? ああん?」
その調の腕を強引に掴んで持ち上げる様にした不良(その1)がそのまま因縁を付けて来る。
「! 調を離すデス!」
「おっと!」
すぐに切歌が掴み掛かろうとしたが、それよりも早くもう1人の不良(その2)が襟首を掴んで猫の様に持ち上げる。
「お、下ろすデース!」
「躾のなってねえガキだな、えーオイ?………お?」
ジタバタする切歌を嘲笑う不良(その2)が、そのポケットから財布を抜き取る。
「! 返すデス! それはアタシのデス!」
「へへへ、慰謝料替わりだ。貰っとくぜ」
「オラ! お前も財布寄こしな!」
そのままカツアゲまでしようとする不良達。
「!!」
思わず調が、衝動的にギアペンダントを取り出そうとしたその時………
「君達! 何をやってるんだ!!」
「「!?」」
そう言う声が響いて来て、切歌と調が視線を向けると………
雷の姿が在ったのだった………
つづく
新話、投稿させて頂きました。
未だにマリア達の素性を調べ切れていない二課に現れたのは………
世界忍者 雷忍・ワイルド!
彼が持って来た情報で、マリア達の素性………レセプターチルドレンについて知る事になり、彼女達がマドーに従っている事にも推察を立てます。
マリア達の素性を知った響ですが、戦う事は躊躇しません。
マクーと言う強大な悪を相手にした響は、原作よりも一回り心が成長しています。
勿論、轟の存在も在って………
そして開催されたリディアン音楽院の文化祭ですが………
クリスが歌唱大会に出る事に前向きになってます。
これは両親が健在なのによる変化ですね。
原作よりも人当たりや付き合いが良くなってる感じです。
そしてその文化祭に潜入してきた切歌と調。
運悪く不良に絡まれてしまいますが、そこに雷が現れます。
マリアに続いてこの2人も雷と関りを持つになります。
次回には今流行りのアレからちょっとしたゲストもでますので、お楽しみに。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。