戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達 作:宇宙刑事ブルーノア
仮設本部・医務室………
「………う………ううん?………」
響が重い瞼を如何にか開けると、明るい電灯が備え付けられた医務室の天井が目に入る。
「医務室?………私?………!! 未来っ!!」
寝起きでボンヤリとしていた響だったが、すぐに何があったのかを思い出し、未来の姿を探そうとベッドから跳び起きる。
「う、ううん………」
「!」
そこで横から呻き声の様な声が聞こえて視線を向けると………
隣に在ったベッドに、自分と同じ様に寝かされていた未来の姿を見つける。
「未来っ!!」
響は病院着に裸足のままでベッドから飛び降りると、すぐさま未来の傍に駆け寄る。
「未来! 未来!」
「ううん………」
顔を近づけて呼び掛けると、未来がゆっくりと目を開ける。
「未来!」
「………響?………! 響!」
響の姿を確認した未来もすぐさま身を起こす。
「響! 大丈夫なの!?」
「うん! 私は大丈夫! 未来は!?」
「私も平気………それより………」
「! そうだ!」
「「轟兄(お兄ちゃん)!!」」
2人が揃って轟の名を口にした瞬間………
「俺を呼んだかい?」
医務室の扉が開いて、轟が入室して来た。
「! 轟、兄………」
「轟お兄ちゃん………」
「2人共、大丈夫か………! おっと!」
轟が具合を尋ねようとした瞬間に、2人は突撃する様に轟に抱き着いた。
「「轟兄(お兄ちゃん)!! 帰って来たんだね!!」」
泣き笑いしながら、抱き着いたまま轟の顔を見上げてそう言う響と未来。
「………ああ、すまないな、2人共。遅くなっちまった」
「謝らないで、轟兄!」
「うん! 轟お兄ちゃんのお陰で、私達助かったんだよ!」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「「…………」」
轟が笑いながらそう返すと、2人は轟の胸に顔を埋め、更に強く抱き着く。
その存在を全身で確かめる様に………
(轟兄………)
(轟お兄ちゃん………)
((………大好き))
2人の胸中に、改めて轟への想いが湧き上がる。
と………
「あ~、うんっ! うんっ!」
「「!?」」
業とらしい咳払いが聞こえて、響と未来が慌てて確認すると………
「若者の青春を邪魔して申し訳ないが、そろそろ良いかな?」
気まずそうにしている弦十郎を先頭に、翼・奏・クリス・了子・雷の姿が在った。
「///」
「にしししし………」
翼はほんのりと赤くなっている顔ごと視線を反らし、奏は面白そうに笑って居る。
「そう言うのは家でやれ!」
「若いわね~」
クリスは真っ赤な顔でツッコミを入れ、了子は微笑ましそうに笑う。
「「~~~~!!」」
トマトよりも顔を赤くし、頭の上から湯気を噴き出しながら、響と未来は慌てて轟から離れ、そのまま俯いて縮こまるのだった。
「何だよ、弦さん。もう少し浸らせてくれても良いじゃないか」
「そうさせてやりたいのは山々だが、色々と話さねばならん事もあるのでな」
お道化て言う轟にそう返す弦十郎。
「さて、響ちゃん。先ずはコレを見て頂戴」
そして今度は了子が前に出たかと思うと、医務室に在ったモニターに1枚のレントゲン写真を写し出す。
「! コレって!」
「響の?………」
それを見た響と未来が、少し驚きながらそう言う。
それは確かに響を撮影したレントゲン写真であったが………
以前撮った際に在ったモノ………浸食を続けていたガングニールが綺麗サッパリ無くなっていたのだ。
「神獣鏡の光を浴びたお陰で、2人のギアだけでなく、響ちゃんの身体を蝕んでいたガングニールも除去出来たの」
「正に怪我の功名だな」
了子の説明に、雷が口を挟む。
「つまり、未来ちゃんが響ちゃんを救ったってワケだ」
「私が………響を?」
「ああ。結局俺は役立たずだったがな………」
今一実感の湧かない様子の未来に、轟が自嘲しながら言う。
「そんな事無いよ! やっぱり最後の最後で助けてくれたのは轟兄だよ!」
だが、即座に響がそれを否定する。
「確かにな。あん時、お前が現れなきゃ、ギアを失って無防備になった2人が危険だったと思うぜ」
「余り自分を卑下するな、十城士」
「そう言って貰えると気が楽になるよ」
奏と翼もそうフォローし、轟はフッと笑う。
「未来ちゃんの方もLiNKERの洗浄は完了。後遺症は見られないわ」
「あ、ありがとうございます」
続けて了子は未来に向かってそう言い、未来はペコリと頭を下げる。
「ったく、心配掛けやがって………」
ぶっきら棒にそう言うクリスだったが、その顔には笑みが浮かんでいる。
「2人共、無事で何よりだ。兎も角、暫くは安静にしている事だ。我々はコレからマドーとフロンティアへの対策会議を始める」
響と未来が問題無いと言うのを確認した弦十郎は、マドーとフロンティアの対策会議に移る為、医務室を後にしようとする。
「! わ、私も参加します!」
「! 響!」
「イカン! 君にはもうシンフォギアは無いんだぞ!」
それを聞いた響が自分も参加しようとするが、弦十郎にそう返される。
そう………
浸食していたガングニールが無くなったという事は、響はもうシンフォギアを纏う事が出来ないのだ。
「でも! 何か出来る事が!………」
「ギアが無きゃノイズと戦えないだろ!」
「う!………」
食い下がる響だが、クリスが正論で制す。
「弦さん、会議くらいは参加させてやってくれよ」
とそこで、轟が弦十郎にそう言って来た。
「しかしだな………」
「今までずっと一緒にやって来た仲だろ? せめて事の成り行きを最後まで見届けさせる権利くらいは有ると思うぜ」
そう言って真っ直ぐに弦十郎の目を見据える轟。
「………分かった。だが、戦闘には決して参加させないぞ」
「当然でしょ」
やがて折れた様に弦十郎が言うと、轟は再びフッと笑って見せた。
「それじゃあ2人共。着替えが終わったら指令室まで来てくれ」
「「! ハイッ!!」」
響と未来が弦十郎に返事を返すと、一同は医務室を後にして行く。
「響ちゃん、未来ちゃん、また後でな」
「うん」
「また後で」
最後に轟がそう言って手を振りながら退室して行った。
「「…………」」
全員が居なくなった後、響と未来は顔を見合わせる。
「響………」
「未来………私………」
とそこで、響が身体ごと未来の方に向き直る。
「私………轟兄の事が好き」
「!」
「勿論、未来の事も好きだよ。未来は?」
「私は………」
そう問われて、未来は一瞬口籠った様子を見せたが………
「………私も………轟お兄ちゃんと響の事が好き!」
やがて意を決した様にそう言い放った。
「うん、やっぱりそうだよね。じゃあさ………」
そこで響は未来の手を取る。
「私と未来と轟兄………皆で幸せになろうよ!」
晴れやかな笑顔でそう言う響。
「………うん! そうだね! 皆一緒が良いよね!」
それを受けて、未来も響の手を握り返しながら笑う。
「でも、今は………」
「マドーだね」
だが、そう言うとすぐに表情を引き締めた。
そして、2人揃って病院着から着替え始めるのだった。
数十分後………
仮説本部・指令室………
「「お待たせしました!」」
共に制服に着替えた響と未来が入室して来る。
「おう、2人共、コッチコッチ」
2人の姿を見た轟が手招きすると、すぐにその傍に立つ響と未来。
見れば、ロケットマンとジャンパーソンの姿も在った。
「では、状況を整理する」
そして、弦十郎がそう言うと、メインモニターに現在のフロンティアの様子が映し出される。
その上に出現していた幻夢城は垂直に直立して、まるで本当の搭の様にフロンティアの上にくっ付いていた。
「フロンティアの傍に出現した幻夢城は、我々が離脱した直後に垂直状態となってフロンティアに接続。現在の所、目立った動きは無い」
「反応兵器を送り返されたアメリカは壊滅状態です」
「その様子を見せられていた各国は完全に及び腰になっています。どの国も動くに動けない状態です」
弦十郎、あおい、朔也が次々と状況を説明する。
アメリカが放った反応兵器を自国へと送り返された光景は魔王サイコによって全ての国で生中継されており、人類最強最悪の兵器が事実上無力化された事は衝撃を与え、現在どの国もマドーに対しアクションを起こしていない。
仮に戦ったとしても、アメリカの二の舞になるのが見えているからだ。
「やはり私達が行くしかない………」
「この戦いに日本どころか、世界………いや、地球の命運が掛かってるワケだな」
「たった数人が世界の行く末を決めるワケか………責任重大過ぎるぜ」
翼・奏・クリスからそんな声が挙がる。
(マリアは大丈夫なのか?………)
そんな中で、雷はマリアの事を気に掛ける。
「! フロンティアに動きが有ります!!」
「!? 何だとっ!?」
とそこでフロンティアの異変を察知した朔也が声を挙げ、弦十郎が驚きを示した瞬間………
フロンティアの中心に在る遺跡の様な構造物の頭頂部に在った3つの柱から、光が空に向かって伸びて行ったのだった!
時間は少し遡り………
仮説本部の指令室に響と未来が姿を見せた頃………
フロンティアの内部では………
「アレです! アレがフロンティアのジェネレーターです!」
ガイラー将軍・ドクターポルター・軍師レイダー・ミスアクマ達、そしてマリアとウェルが、ファイトロー達を引き連れて巨大な球体の構造物………
フロンティアのジェネレーター室を訪れていた。
「おお、アレが………」
「軍師レイダー」
「…………」
ガイラー将軍が反応していると、ドクターポルターがレイダーに呼び掛け、レイダーは懐からネフィリムの心臓を取り出す。
そのネフィリムの心臓にエクトプラズムが纏わり付いたかと思うと浮かび上がり、ジェネレーターに張り付く。
すると………
ネフィリムの心臓からまるで木の根の様な物が伸び、ジェネレーターと融合する。
途端に、ジェネレーターが光始めた。
「ネフィリムの心臓が………」
「心臓だけとなっても、聖遺物を喰らい、取り込む性質はそのままとは………」
「全く、卑しい奴だ」
マリアが驚いた様に呟くと、ミスアクマ達が愉快そうに笑う。
「コレでフロンティアにエネルギーが行き渡った」
「では次はブリッジだな」
そこで、ドクターポルターとガイラー将軍がそう言うと、ジェネレーター室を後にしようとする。
「あの、確か制御室も在る筈です。そちらには誰か行かなくて良いのですか?」
「必要無い………行くぞ」
そこで、ウェルがそう疑問を呈したが、レイダーが一蹴し、お馴染みのホバリング移動でジェネレーター室を後にして行く。
「「…………」」
その光景に一抹の疑問を覚えながらも、マリアとウェルはそれに付いて、フロンティアのブリッジへと向かうのだった………
フロンティア・ブリッジ………
「上手く行ったようですね」
紫色の結晶の様な構造物が張り巡らせられているその部屋の中心に在る半分埋まっている様な球体の構造物の前に居たセレナが、やって来たガイラー将軍達にそう言う。
「セレナ………」
「全ての準備は整っています」
マリアが呟いたが、それはドクターポルターの声に搔き消された。
「結構………では、始めるとしましょうか」
セレナがそう言った瞬間………
その周りに多数の球体………
魔王サイコの超能力を増幅させている人工知能が現れる!
(! 魔王サイコの人工知能でフロンティアを制御する気ですか! 成程………それなら制御室を使う必要も無い)
まさかそんな方法でフロンティアを制御するなど思いも寄らなかったウェルが内心で驚く。
その次の瞬間、人工知能群が怪しい光を放ち始めたかと思うと、ブリッジの結晶状の機械も反応する。
「! 何を………」
する気なの、とマリアが問い質そうとした瞬間………
フロンティアの中心に在る遺跡の様な構造物の頭頂部に在った3つの柱から、光が空に向かって伸びて行き、それが絡み合い1つに合わさったかと思うと………
巨大な手の形となって、遂には月へと到達!
そのまま月を鷲掴みにした!!
月を鷲掴みにした巨大な手が引っ張られ、それによってフロンティアが宙に浮かぶ。
そして、鷲掴みにされた月の落下速度も、加速した!
「わわわわわっ!?」
「何をしたの!?」
フロンティア全体に激しい振動が走り、ウェルが狼狽し、マリアが問い質す。
「何って? 決まってるじゃないですか………月の落下を速めたんですよ」
「「!?」」
あっけらかんとそう言い放つセレナに、マリアとウェルは驚愕する。
「落下を速めたって………まだ救済の準備はまだ何も出来ていないのに!?」
「こ、コレでは人類は絶滅してしまいますよ!?」
「? それに何の問題が有るんですか?」
マリアとウェルの言葉に、セレナは心底不思議そうに首を傾げて見せた。
「! くうっ!!」
すぐさまマリアは、セレナを押し退ける様にし、ブリッジのコンパネを操作する。
しかし………
「如何して………如何して私の操作を受け付けないの!?」
幾らマリアが操作を行っても、フロンティアは何の反応もしなかった。
「無駄ですよ、姉さん。今やこのフロンティアは完全に魔王サイコ様の物………全ての操作は魔王様の意思が優先されます」
「約束が違う! フロンティアを手に入れたら、人類を救ってくれるって!!………」
「ハッ! おめでたい娘だな! そんな話を信じていたのか!?」
喚き立てるマリアを、ドクターポルターがそう嘲笑する。
「………最初からこうする積りだったと言うの?」
「フン、地球人が絶滅しても、この宇宙には数多くの人類が存在しておる! フロンティアが手に入った今、貴様も! この星も! もう用済みだ!!」
睨み付けて来たマリアに、ガイラー将軍がそう返す。
「! マドーッ!!」
そんなガイラー将軍達に掴み掛かろうとしたマリアだったが………
「!? ガッ!? あっ!?」
「フフフ………」
その身体にレイダーの放ったエクトプラズムが纏わり付き、宙に浮かぶ。
そして不意にエクトプラズムが消えたかと思うと、マリアの身体は床に叩き付けられた!
「! ガハッ!! ガハッ!!」
「マリア!」
「ウェル………お前にはまだ利用価値が有る。マドーに従い続けると言うのなら生かして置いてやるぞ?」
咳き込むマリアをウェルが助け起こすと、レイダーがそんな勧誘をして来た。
「! そ、それは………」
即答はしなかったが、悩む様子を見せるウェル。
「まあ、良い………コレから始まるショーの間に良く考えておくのだな」
「? ショー?」
「こ、コレ以上、何を………」
突如レイダーの口から出たショーと言う言葉に、ブリッジの空中に、大型モニターが展開。
幾つにも分割された画面の中に、地球全土の様子が映し出されている。
『カオーッ!!』
その全てのモニターに映っていた空に、魔王サイコの姿が出現する!
アメリカが壊滅させられた様子を見せられていた世界中の人々が、再び現れた魔王サイコの姿に戦慄していると………
『愚かなる人間共よ………今こそ我の力を見せてやろう』
魔王サイコがそう宣言する。
そしてその次の瞬間………
世界中で天変地異が発生した!!
マグニチュード50の地震………
100以上の超大型台風やハリケーン………
死火山であった筈のモノを含めた全ての火山が噴火………
沿岸部には高さ50メートルもの大津波が押し寄せ………
空は全て暗雲に覆われ、落雷が雨の様に降り注ぎ、滝の様な豪雨と共に、幅10キロにも及ぶ竜巻が彼方此方で発生!
その光景は、まるで地獄の様だった………
「あ、あああああ………」
「こ、コレが………フロンティアを手に入れた魔王サイコの力なのですか!?」
マリアは恐怖に震え、ウェルは冷や汗が止まらなくなる。
「地球最後の日だな………」
「フアハハハハハハッ!!」
「ハハハハハハッ!!」
「フフフフフ………」
そんな光景をレイダー・ガイラー将軍・ドクターポルター、そしてセレナは心底愉快そうに笑うのだった………
つづく
新話、投稿させて頂きました。
救助された響と未来の意識が戻り、轟と再会。
ガングニールの浸食の問題も無くなって一安心。
そして、改めて轟への好意を認識した響と未来は、3人で幸せになる事を決意します。
それはさて置き、遂にフロンティアを手に入れたマドー。
そしてもう地球には用は無いと言う様に凶行に出ました。
増幅された魔王サイコの力で、地球全土に未曽有の災害を巻き起こします!
シャリバン原作の1話で、魔王サイコが超能力で天変地異を起こしている描写があったので、パワーアップしたら地球全土に規模を広げられると思いまして。
一瞬にして地獄となった地球。
これでアメリカ以外の国も壊滅的な被害を受ける事になります。
果たして、この魔王サイコを止められるのか?
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。