戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達 作:宇宙刑事ブルーノア
夕方・日本の某海岸………
そこには二課の仮設本部である潜水艦、ドルギラン、グランドバース………
更に、見慣れない宇宙船が1隻停泊していた。
その宇宙船………初代シャリバンが乗って来た銀河連邦警察の船に、ストレッチャーに寝かされたセレナとナスターシャが、銀河連邦警察職員の手で搬送されようとされていた。
「セレナ………マム………」
「「…………」」
その2人を見送ろうとしていたマリア・切歌・調が寂しそうな顔を浮かべている。
「姉さん………切歌ちゃん………調ちゃん………」
「そんな顔をするんじゃありません、マリア、切歌、調。今生の別れでというワケでは無いのですから」
そんなマリア達を見て、セレナも寂しそうな顔をしたが、ナスターシャは心配するなと言う様に返す。
以前雷が言っていた通り、ナスターシャは身体に治療の為にバード星に搬送される事となり、またセレナも長期間サイコラーに身体を乗っ取られていた為、どの様な影響が出ているかも分からない為、メンタルケアも兼ねてバード星で検査を受けて入院する手筈となった。
「姉さん………私は………」
「良いのよ、セレナ。無理しないで。今はゆっくりと休むのよ。全てはそれから考えましょう………皆で一緒にね」
表情の暗いセレナの手を握り、そう励ますマリア。
サイコラーに身体を乗っ取られていたセレナは、サイコラー自身やマドーが行った数々の悪逆非道な行為を全て間近で見ていた。
それ等は全てサイコラーやマドーが行ったモノで、彼女自身には何の責任も無いのだが、生来心優しい性格であるセレナに、それを気にするなと言うのは無理な話だった。
「姉さん………」
「私達も居るデスよ、セレナ」
「だから………馬鹿な事を考えたりしないでね」
切歌と調も懇願する様にそう言って来た。
2人はセレナが罪悪感から自殺でもするんじゃないかと心底心配しているのだ。
「切歌ちゃん………調ちゃん………」
そんなマリア達の姿や言葉で、幾分か心が軽くなるのを感じるセレナ。
「失礼、そろそろ時間ですので………」
とそこで、銀河連邦警察職員が申し訳無さそうに口を挟む。
「あ、すみません………それじゃあ、セレナ、マム………養生してね」
「ハイ、姉さん………」
「貴方達も身体には気を付けるのですよ………」
マリア達が離れると、セレナとナスターシャは、改めて船内へと運び込まれて行った。
「お願いします、本部長」
「ああ、任せておけ」
そして最後に、雷と挨拶を交わした電が乗り込むと、宇宙船は発進。
そのまま夕焼けの空を上昇して行き、やがて見えなくなったのだった。
「「「…………」」」
マリア・切歌・調は、宇宙船が消えた方向をジッと見上げる。
その後ろで、雷が敬礼していた。
とそこへ………
「いや~、まさか響ちゃんだけじゃなくて、未来ちゃんまで密航してたとは気づかなかったぜ。オマケにドルギランの操縦までしちゃって………」
「えへへ、響を助けたくて、無我夢中だったから………」
「でも、そのお陰で助かったよ。ありがとう、未来」
そんな会話を交わしている轟・未来・響を先頭に、翼・奏・クリス・慎次・弦十郎が姿を見せた。
「「「…………」」」
それに気付いたマリア達は、一同の方へ向き直る。
「あ! マリアさん!」
と、響が前に出ると、ギアペンダントを差し出した。
「コレ、ありがとうございました」
「………それは、貴方にこそ相応しいわ」
ガングニールを返却しようとした響だったが、マリアはそれを断る。
「!………ありがとうございます」
それを受けて、響はギアペンダントを握り締めた。
「一応、マドーを倒して一件落着だが………」
「地球と人類が受けた被害は計り知れないな………」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
とそこで、奏と翼がそう言うと、一同の表情が険しくなる。
「まだ詳細な被害状況は分かっていませんが、恐らく………人類の総人口の3割は犠牲になったと思われます」
「コレだけの被害に加え、政府機能を失った国も在る………復興にも時間が掛かるだろう」
「「「…………」」」
慎次と弦十郎の言葉に、マリア・切歌・調の顔に影が差す。
「唯一の朗報は、月の軌道が元に戻りつつある事ですかね………」
「だが、その為に月の遺跡を再起動させてしまった………」
続く慎次の言葉に、マリアが欠けている月を見上げる。
「バラルの呪詛か………」
「人類の相互理解が、また遠のいたってワケか………」
翼とクリスが不安げにそう呟く。
「平気、へっちゃらです!」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
しかしそこで、響が明るくそう言い放った事で、一同の視線が集まる。
「だってこの世界………ううん! この銀河には、歌が有るんですよ!」
「ああ、よろしく勇気だ!」
響にその言葉に、轟もお約束の言葉を返す。
確かに、今回地球と人類が受けた痛手は余りにも大きい………
だが、月の遺跡を再起動させるのにフォニックスゲインを集めようした瞬間………
地球人類だけでなく、銀河の全ての人々が歌を送ってくれた。
あの瞬間だけは、地球人類だけでなく、銀河に生きる全ての人々が1つに繋がった。
「歌………よろしく勇気デスか」
「何時か人は繋がれる………だけどそれは、何処かの場所でも、何時かの未来でも無い………」
「そうだ。様は分かり合おう言う気持ちを持ち続ける事が大事なんだ」
切歌と調が呟くと、雷がそう言って来る。
「取り合えず、今の所はコレで良いじゃないか………そう、『明日が有れば』」
「良いじゃないか………明日が有れば」
続く雷の言葉に、マリアは胸に下げていたアガートラームのギアペンダントを握り締める。
「さて………マリア・カデンツァヴナ・イヴ、暁 切歌くん、月詠 調くん。君達の身柄を二課で預からせてもらう。建前上は拘束となるが、身の安全は保障する」
「ハイ、寛大な処置、ありがとうございます」
弦十郎に向かって深々と頭を下げるマリア。
「立花 響、君に会えて良かった………そして甲賀 雷。本当にありがとう。貴方のお陰で、私も妹も救われた」
「…………」
「当然の事をしたまでさ」
マリアに向かって笑顔を返す響と雷。
そして、弦十郎と慎次よって、マリア達は連れて行かれるのだった。
後に『フロンティア事変』………
別名『マドー大災害』と呼ばれる事になる、人類史上類を見ない災厄は………
人類の総人口の3割と言う途方も無い犠牲者を出し………
文明にも大きな被害を与えた。
だが、この出来事により………
人類は宇宙犯罪組織の恐ろしさを十二分に理解する事となり………
皮肉にもそれが………
人類と地球の文明を更に飛躍させる事となる切っ掛けとなったのだった………
◇
宇宙刑事達と装者達が、マドーとの決着を着けていた丁度その頃………
ヨーロッパの某所………
パヴァリア光明結社の本拠地にて………
「ガハッ!?………」
醜悪な異形の怪物が派手な吐血と共に床に倒れる。
すると、その姿がボロボロの白いスーツを着た男性に変わる。
「ハッ! やっぱり大した事無いねぇ………期待はしていなかったがね」
倒れている男性を見下ろしながら、つまらなそうに呟く暗黒銀河女王。
「ば、馬鹿な………完全な存在である筈の僕が………」
男性………『パヴァリア光明結社』のトップである統制局長『アダム・ヴァイスハウプト』が信じられないと声を挙げる。
「フンッ!」
「ガッ!?」
倒れているアダムの頭を、暗黒銀河女王は容赦無く踏み付ける。
「何にが完全だい。所詮お前は、カストディアンから失敗作と見なされた不良品だよ」
「ガアアアアッ!?」
頭を踏み躙られ、アダムが悲鳴を挙げる。
実はアダムの正体は、嘗てカストディアンがヒトのプロトタイプとして作った人形であり、言わば『原初のアダム』
しかし、完全な性能を発揮したが故に、発展が見込めないと判断され、廃棄処分が決定。
カストディアンはその後、今の人類………ルル・アメルを創り上げた。
その事を恨んだアダムはカストディアンの元から逃亡し、『神の力』と呼ばれる超エネルギーを手に入れ、カストディアンと同等となる事で復讐を決意。
その為に表向きは『神の力を以てヒトの相互理解を阻むバラルの呪詛を消し去り、完全へと至ること』を目的に謳い、現代科学とは別次元に進化してきた異端技術の一種である『錬金術』を使う『錬金術師』達を集め、『パヴァリア光明結社』を結成したのだ。
「きょ、局長………」
と、少し離れた場所で、同じ様にボロボロの状態で倒れていた3人の女性の内、白いスーツに男装の麗人と言った女性………『サンジェルマン』がアダムと暗黒銀河女王の方に視線を向けながら呟く。
「な、何なの、アイツ?………」
「全く歯が立たないワケダ………」
同じ様に傍で倒れていた妖麗な女性………『カリオストロ』と、眼鏡にお下げの少女………『プレラーティ』がそう言い合う。
3人共、パヴァリア光明結社のアダムに次ぐ地位の大幹部達だ。
突如として本拠地に現れた暗黒銀河女王に応戦したが、まるで歯が立たなかったのだ。
そのまま暗黒銀河女王はアダムとも戦い始め、結果はご覧の通りである。
戦闘の際、アダムの正体やその真の目的も暴露されていたが、今はそれよりも暗黒銀河女王の強大な戦闘力への驚きが勝っていた。
(せめてファウストローブが完成していれば………)
「さて、終わりにしようかねえ。お前もシェム・ハと同じ様に………いや、待てよ?」
と、サンジェルマンがそんな事を考えている間に、暗黒銀河女王はアダムにトドメを刺そうとしたが、ふと動きを止めたかと思うと、邪悪な笑みを浮かべる。
「良い事を思い付いたよ」
そう言って、暗黒銀河女王が右手の杖を掲げたかと思うと、その先端が怪しく輝き始め………
黒いオーラの様なエネルギーが溢れ、アダムに纏わり付き出した!!
「!? ガアアアアアアアアアッ!?」
アダムの悲鳴が挙がる中、その身体が変化を起こし出す。
全身が黒く変色し始めたかと思うと盛り上がって行き、まるで
「「「!?」」」
アダムに起こった変化に、サンジェルマン達が目を見開く。
やがて、アダムの姿は完全に黒いアーマーを纏っているかの様なモノへと変わった。
「気分は如何だい、アダム? いや………『マッドギャラン』」
「………最高だ」
アダム………否、『マッドギャラン』は、黄色い目を発光させてそう言う。
「ソイツは良かった。さて、今日からパヴァリア光明結社にはアタシの為に働いて貰うよ」
「仰せのままに、女王様」
そして、暗黒銀河女王の前に、忠誠を誓うかの様に跪いた。
この日………
パヴァリア光明結社は、暗黒銀河女王の物となった………
◇
再び、日本………
グランドバースの船内にて………
『シャリバン、そしてギャバン。良くやってくれた』
雷と轟が、マドー撃破の報告をコム長官に通信していた。
「「…………」」
しかし、雷と轟の表情は険しい………
「コム長官………」
『ああ、君達が言いたい事は分かっている』
「ハイ………フィーネからの警告も有ります。マクーだけでなく、マドーまで復活していたとなると、恐らく『フーマ』も」
そう言い合う轟、コム長官、雷。
『不思議界フーマ』………
マクー、マドーに続いて現れた宇宙犯罪組織であり、規模だけならば前者達を遥かに上回る戦力を有していた。
様々な方法でその星の住人を凶暴化させて内戦で自滅させる、怠け者にして退化させて滅亡させる、と言った間接的なアプローチによる侵略を得意としており、搦め手が多い。
嘗ては銀河中でフーマ旋風が巻き起こり、対抗する為に銀河連邦警察は宇宙刑事訓練生達の卒業を早めると言った対応をせざるを得なかったが、その候補生を含めた多くの宇宙刑事達が殉職。
数々の惑星がフーマの手に落ち、あわや銀河がフーマの物となるかと思われたが………
当時地球を担当していた伝説の『戦士シャイダー』の血を引く『沢村 大』こと『宇宙刑事シャイダー』が、フーマのトップである『大帝王クビライ』を倒す事に成功。
クビライの求心力が大きかったフーマは、忽ち士気崩壊を起こし、銀河連邦警察は逆転勝利を納めたのだ。
『もしフーマまで復活していたとなれば事態は深刻だ』
「最悪、また銀河にフーマ旋風が吹き荒れる事になります」
轟の言葉に、コム長官の顔も険しくなる。
『うむ、君達は引き続き地球に留まり、フーマの存在を探ってみてくれ』
「「ハイッ!」」
『それから、『彼』にも今の任務が終わり次第、地球に向かってもらう積りだ』
「! 『アイツ』ですか!」
「1つの惑星に『3人』の宇宙刑事を派遣ですか………」
コム長官が言う『彼』の事を思い越した轟が笑みを浮かべ、雷は異例の対応に驚きを示す。
「それだけではない。私は今回のマドーにより甚大な被害を受けた地球を、銀河連邦へ加盟させる事を連邦政府へ進言している」
「! ええっ!?」
「ホントですか!?」
続くコム長官の言葉に、今度は轟も驚く。
『魔王サイコが齎した被害は大きい。地球の独力では復興まで長い年月が掛かってしまうだろう。迅速な復興の為に、銀河中の惑星から支援を受けられる態勢を作らねばならない。まあ、当面は仮加盟と言った所になると思うが………』
「しかし、地球の文明レベルは………」
『だからこそ、君達と特異災害二課が架け橋となり、地球の人々を導いて欲しい』
「俺達と二課が………」
「懸け橋に………」
轟と雷の表情が引き締まる。
『それに………』
とそこで、コム長官の表情が変わる。
「? それに?」
『コレは私の直感に過ぎないが………マクーやマドー、そしてフーマの復活。それ等全てに、
「裏で糸を引く者………』
あのマクーやマドー、そしてフーマを復活させた上に、裏で操る者………
もし、そんな者が本当に存在するとしたら、想像を絶するの強大な力の持ち主であろう。
『頼むぞ………宇宙刑事ギャバン、宇宙刑事シャリバン』
「「ハイッ!!」」
モニターのコム長官に向かって、轟と雷は敬礼を送るのだった。
つづく
新話、投稿させて頂きました。
マドーとの戦いを終えた宇宙刑事達と装者達。
しかし、地球と人類が受けた痛手もかなり大きかった………
それでも響達は希望を信じ、明日を夢見る
セレナもナスターシャと共にバード星で心と身体の治療を受ける事になります。
次回のGX編でシャイダーと共に戻って来ますので、ご安心を。
そして久々の登場となる暗黒銀河女王。
シェム・ハに続いて、アダムまで降します。
しかし、何と………
暗黒銀河女王の気まぐれで、アダムがマッドギャラン化!?
そしてパヴァリア光明結社は、暗黒銀河女王の物となります。
スペーススクワッドで、2代目ギャバンがマッドギャランと対決していたので。この作品でも対決させたいと思いまして。
で、マッドギャランをどんな感じで登場させるかと考えたところ、アダムをマッドギャランにするってのは如何だ?ってのに至りまして。
実を言うとアダムを如何扱うかで結構悩んでいたのですが、マッドギャラン化する事で、堂々たる悪役として散って貰おうと言う、ある意味での優遇での扱いにしました。
本格的に活躍を見せるのはやはりAXZ編からとなります。
そしてマッドギャランが出るという事は、当然『あのヒーロー』も出ます。
お楽しみに。
懸念されていた地球の復興ですが、コム長官の働きかけで、地球を銀河連邦に仮加盟させる事で、各惑星から支援を受けられる様にする事で解決します。
これは、やがて訪れる地球どころか宇宙最大の危機を迎え撃つ為でもあります。
今後の動向にご注目です。
さて、次回は赤射しないシンフォギア。
3本立てでお送りしますので、お楽しみに。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。