戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達   作:宇宙刑事ブルーノア

7 / 64
シン・仮面ライダー、いよいよ公開!

令和に改造人間の仮面ライダーが見れるとは………

ありがとう! 庵野監督!!


第5話『未来SOS! マクー地下基地の秘密』

リィデアン地下・特異災害二課本部のトレーニングルーム………

 

「良し! 今日はココまでだな!」

 

「ハア………ハア………ありがとうございました~………」

 

奏から手解きを受けていた響が、息も絶え絶えに返事を返す。

 

「…………」

 

一方、自分の鍛錬を終えた翼は、そそくさとトレーニングルームを後にしようとする。

 

「オイ、翼。お前も少しは響を鍛えてやれよ」

 

「…………」

 

愚痴る様にそう言う奏だが、翼は響を睨む様に一瞥し、去って行った。

 

「やれやれ………」

 

「あの………私、翼さんに嫌われてるんでしょうか?」

 

肩を竦める奏に、響が不安そうにそう聞いて来る。

 

「そんな事ないさ。只、アイツは特殊な家の出身でな。普通のお前が戦いの場に出る事に抵抗が有るのさ」

 

「………やっぱり、誰かを助けたいとかって理由だけで戦うのっていけないんでしょうか?」

 

「そんな事ないさ。寧ろ立派な理由って言えるぜ。あたしだって最初からそう思って戦ってたんじゃないからな」

 

「えっ!? そうなんですか!?」

 

意外な奏の返答に、驚きを示す響。

 

「ああ、実を言うと、あたしがノイズと戦い始めた切っ掛けは………『もう1度会いたい人』が居たからさ」

 

「会いたい人?」

 

「あたしの命を救ってくれた………『ヒーロー』さ」

 

そう言って奏は、あの銀色のカード………『JPカード』を取り出し、ジャンパーソンの事を語り出した………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだったんですか………あのライブの時、そんな事が」

 

「命を助けてくれたアイツにまた会えるかもと思ってシンフォギア奏者になったら、またまた命を救われたってのはちょっと情けない話だけどね」

 

意識が朦朧としていた為、ハッキリと覚えていなかった響がそう言うと、奏が自嘲気味に返す。

 

「けどある時、戦闘で助けた自衛官から言われたんだ………『ありがとう。瓦礫に埋まっていてもずっと歌が聴こえていた。だから、諦めずにいられた』ってな」

 

「歌が………」

 

「その時に気付いたんだ………『あたし達の歌は誰かを勇気付け、救う事が出来る』って」

 

「ハイ! 奏さんと翼さんの歌を聞いてると、何だか元気が出て来るんです!」

 

自らもツヴァイウイングのファンである響が同意を見せる。

 

「嬉しいこと言ってくれるねえ。けど、お前も何時かそうなれるさ」

 

「! わ、私がですか!?」

 

「ああ、まだまだ素人の域を出ないが筋は良いし、何よりお前の歌も良い歌だからね」

 

「! あ、ありがとうございます! これからも、『よろしく勇気』で頑張ります!!」

 

「? 『よろしく勇気』?」

 

「ハイ! 大切な人が教えてくれた言葉なんです!」

 

「へえ~、それってひょっとして………彼氏とかかい?」

 

「!? ふえええっ!?」

 

ニヤニヤと笑いながらそう尋ねる奏に、響は顔を真っ赤にする。

 

「べべべべべ、別に彼氏だなんて、そんな!? その………昔っから色々と助けて貰った幼馴染で、お兄ちゃんみたいな人で………」

 

「つまり、好きなんだろ?」

 

「は、はううう………」

 

頭から湯気を立てながらモジモジとする響。

 

「あ~もう~、お前も翼とは違った意味で可愛いね~」

 

そんな響の姿を見た奏は、響を撫で回す。

 

「わ、わああっ!? ちょっと、奏さ~ん!!」

 

「うりうり、ホレホレ~」

 

弱弱しい抗議の声を挙げるのを無視して、奏は響を撫で回し続けるのだった。

 

「…………」

 

そんな2人の様子、去って行ったと思われた翼が、トレーニングルームの入り口から盗み見ていた。

 

「…………」

 

歯軋りをしながら表情を歪ませる翼。

 

それは正に嫉妬の表情であった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???………

 

『………首尾は如何だ?』

 

「ハッ、前線基地の建設は滞りなく進んでおります。間も無く完成するかと………」

 

何者かの通信を受けている、巨大な肩と鎖状の尻尾を持つ怪人。

 

『気を付けろ。必ず宇宙刑事ギャバンが嗅ぎつけて来る』

 

「宇宙刑事ギャバン。如何やら我々の知るギャバンとは別人の様ですが、厄介な相手には変わりありません」

 

『作業を急がせるのだ、『アシュラーダ』よ。もし秘密を知った者が居た時は………必ず消せ』

 

「承知致しました。『ドン・ホラー』様」

 

怪人………『アシュラーダ』は、通信先の相手………

 

マクーの首領『ドン・ホラー』にそう返事を返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

下校している未来・創世・詩織・弓美の一同………

 

「今日もビッキーは別の用事?」

 

「そうみたい………」

 

創世の言葉に、沈んだ様子で返す未来。

 

「確か、ノイズ災害時の避難誘導や被災者支援のボランティアに参加されてるんでしたっけ?」

 

「あの子の人助け魂も凄いよね~。ホントにアニメみたいじゃん」

 

詩織と弓美もそう言い合う。

 

尚、ボランティアと言うのは二課が用意したカバーストーリーの設定である。

 

「響………」

 

しかし未来は、その説明に何処か納得が行っておらず、本能的に響が何か大きな出来事に関わっているのではと言う予感がしていた。

 

「………ん? アレ、ワンちゃんじゃない?」

 

とそこで、創世がそう言ったので、一同が視線を向けるとそこには………

 

「UFOちゃ~ん、宇宙人ちゃ~ん、何処ですか~? 出てらっしゃ~い?」

 

相変わらず首からカメラを提げ、レーダーの様なアンテナの付いた機械を手にうろうろとしている小里の姿が在った。

 

「小里?」

 

「何やってるの、アンタ?」

 

その奇妙な様子に、未来と弓美が首を傾げながら訪ねる。

 

「ん? おお~、皆さん、お揃いで~」

 

そこで未来達の存在に気付いた小里は近寄って来る。

 

「何ですの? その機械は?」

 

「フッフッフッ、良ぐぞ聞いてぐれますたぁー。こぃぞ夢の機械、UFO探知機よ」

 

詩織が尋ねると、小里は得意げにその機械………『UFO探知機』を見せる。

 

「「「「UFO探知機?」」」」

 

「んだ。地球さ来てらUFOや宇宙人ば見づげでける優れものよ。通販で買ったんだ」

 

「そ、そうなんだ………凄いね………」

 

若干引き攣った顔で何とかそう返す未来。

 

「ねえワンちゃん。言ったら悪いけど、騙されてんじゃないかな?」

 

「そんなアニメみたいな機械、有るワケないじゃない」

 

逆に創世と弓美はキッパリとそう言い放つ。

 

「何を仰る! この偉大の発明サケチば付つもっけるっての!?」

 

「いえ、そうではないのですが………」

 

抗議の声を挙げる小里に、詩織が何か言おうとしたところ………

 

突如UFO探知機が音を鳴らし始めた!

 

「「「「!?」」」」

 

「!? おおっ!? 遂に反応がっ!?………アッチだべ!!」

 

未来達が驚いていると、小里は喜々として反応がする方向に駆け出した。

 

「あ! 犬山さん!」

 

「アッチって確か………廃区画の方じゃ………」

 

詩織が声を挙げる横で、創世が小里が向かった先の事を思い出しながらそう言う。

 

廃区画は基本的に立ち入りが禁止されている場所である。

 

「ど、如何しよう?」

 

「行こう。流石に放っておいたらマズイからね」

 

「もし本当に宇宙人に出会えたらアニメみたいだしね」

 

放っておくワケにも行かず、未来達も小里を追って廃区画へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃区画の一画………

 

「反応がドンドン強くなってるべ~」

 

「ねえ小里。此処廃区画だよ。引き返した方が良いって」

 

UFO探知機の反応が益々強くなっている事に興奮している小里に、創世がそう言う。

 

「でも確かに、アニメなんかだとこういう場所に秘密基地とかありそうだよね~」

 

「そうなんですか?」

 

「いや~、それは如何かな?………」

 

アニメ基準で考える弓美に、首を傾げる詩織と苦笑いを零す未来。

 

「お! 此処だっ!!」

 

やがて小里は、1つの廃ビルの前でそう声を挙げる。

 

数有る廃ビルの1つの筈だが、何故か妙な気配が漂っていた。

 

「な、何か、雰囲気有るね………」

 

「さあ~、UFOちゃ~ん、宇宙人ちゃ~ん、出て来てね~。大丈夫~、地球人は友達だよ~」

 

何となく異様な空気を感じ取っている創世を余所に、小里はそう言いながら廃ビルの中に入って行く。

 

「あ、ちょっと! 小里!」

 

すぐに未来達も後を追って廃ビルに入る。

 

廃ビルの中も当然荒廃しており、瓦礫や物が散乱している。

 

「宇宙人ちゃ~ん、出ておいで~」

 

「やっぱり、只の廃ビルだよ………宇宙人の基地なんてあるワケ………」

 

宇宙人の事を呼びながら歩く小里に、創世がそう言った瞬間………

 

「アレ?」

 

弓美が何かに気付いた様に声を挙げた。

 

「板場さん? 如何しました?」

 

「このエレベーター………動いてる」

 

詩織が尋ねると、弓美が目の前に在ったエレベーターの扉を見ながらそう返す。

 

「えっ?………」

 

それを聞いた未来も、そのエレベーターを見やると、確かに僅かながら駆動音の様な物が聞こえて来た。

 

「ホントだ、動いてる………」

 

「如何言う事? この辺って電気も来てない筈だよね?」

 

そこで、エレベーターから聞こえて来ていた駆動音が止んだかと思うと、扉が開き………

 

中からクラッシャー達を引き連れたダブルマン・ゾンビAが現れた!

 

「「「「「!?!?」」」」」

 

「ぬうっ!? 地球人だと!?」

 

お互いの姿を見て驚愕し合う未来達とダブルマン・ゾンビA達。

 

「で、ででで、出たぁっ! 宇宙人!! う~ん………」

 

小里がいの一番に反応し、色々なショックで気を失ってしまう。

 

「ちょっ!?」

 

「犬山さん! しっかり!」

 

未来と詩織が慌てて支える。

 

「マ、マジで宇宙人!? アニメみたい!!」

 

「ま、まさかそんな………コ、コスプレですよね?」

 

やや興奮している弓美に対し、創世はそうであって欲しいと言う様にダブルマン・ゾンビAに尋ねる。

 

だが、ダブルマン・ゾンビAは無言で拳銃の様な物を構え、目の前に居た弓美に向けた。

 

「へっ?」

 

「! ユミっ!!」

 

思わず呆けてしまった弓美の身体を、本能的にヤバイと感じ取った創世が引っ張る。

 

直後にダブルマン・ゾンビAが持っていた拳銃の様な物からレーザーが発射され、さっきまで弓美が立って居た空間を通り過ぎて、壁に着弾!

 

爆発と共に大きな焦げ跡を形成した。

 

「「「「!?」」」」

 

「我々の姿を見たからには死んでもらう!」

 

驚愕する未来達に向かって、ダブルマン・ゾンビAは殺気を放ちながらそう言い放つ。

 

「! 逃げろっ!!」

 

「「「!!」」」

 

その殺気を感じ取り、創世が叫んだ瞬間に未来達は廃ビルの外へ駆け出した!

 

「追えっ! 逃がすなぁっ!!」

 

「ギーッ!!」

 

「ギギッ!!」

 

ダブルマン・ゾンビAが叫ぶと、クラッシャー達が未来達を追う。

 

「な、何なのアレ! こんなの本当にアニメみたいじゃん!」

 

「兎に角今は逃げよう!!」

 

必死にクラッシャー達から逃れようと走る弓美と創世。

 

「犬山さん! 起きて下さいっ!!」

 

「小里!」

 

「う~ん………」

 

しかし、詩織と未来が気絶したままの小里を連れている為、そのスピードは遅い。

 

「ちょっ! しっかりしてよ!」

 

「このままじゃ追い付かれる!」

 

慌てて弓美と創世も手を貸すが、それでも大してスピードは上がらない。

 

「! 皆! そこに隠れよう!!」

 

とそこで、未来が道端に廃コンビニが在るのを目にしてそう言う。

 

「「「!!」」」

 

すぐさま廃コンビニ内へ入ると、バックヤードに隠れる弓美達。

 

直後に、複数の足音が聞こえて来る。

 

「ギーッ!!」

 

「ギギッ!!」

 

「「「「…………」」」」

 

時折奇声の様なモノも聞こえて来る中、未来達は必死に息を潜めてやり過ごそうとする。

 

「ギーッ!!」

 

「ギギッ!!」

 

しかし、足音は近場で鳴り続けており、奇声も止まらない。

 

この付近に居るのだと見破られている様だ。

 

(駄目だ………全然居なくならないよ………)

 

(私達………殺されてしまうんでしょうか?)

 

(そんなの嫌ぁっ!!)

 

小声でそう言い合う創世・詩織・弓美。

 

3人供、恐怖で顔が引き攣っている。

 

「…………」

 

そんな中で未来は、3人と小里の姿を一瞥する。

 

「………!」

 

そして何かを決意したかの様な表情になると立ち上がった。

 

(!? ヒナ!?)

 

(私が囮になる。その隙に皆は逃げて)

 

(!? そんな!? いけませんわ、小日向さん!)

 

(そうだよ! それ、アニメじゃ死亡フラグじゃん!)

 

自ら囮になると言い出した未来を止めようとする弓美達。

 

(大丈夫。私、元陸上部だから………上手く逃げてね。よろしく勇気!)

 

しかし、未来は笑みを浮かべてそう返すと、バックヤードから飛び出した!

 

「コッチだよ!!」

 

「! ギギッ!!」

 

「ギーッ!!」

 

飛び出した未来が声を挙げて走り出すと、クラッシャー達が一斉に追って行った。

 

「! 未来っ!!」

 

「いけません! 板場さん!」

 

追おうとした弓美を詩織が止める。

 

「! 詩織! 何で止めるの!」

 

「小日向さんの気持ちを無駄にしてはいけません! 今私達に出来るのは、一旦この場を離れて助けを呼ぶ事ですわ!」

 

非難する弓美に、詩織は真っ向からそう言い返す。

 

「!!………」

 

「………テラジの言う通りだよ。今は逃げよう。それで助けを呼ぶんだ」

 

黙り込んだ弓美に、創世もそう言って来る。

 

「未来、死なないで………ホラ、小里! いい加減起きてよっ!!」

 

「ふにゃ~………」

 

後ろ髪を引かれながらも、未だに気絶し続けている小里を連れて、未来が逃げたのとは反対方向に逃げ出す弓美達だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度、その頃………

 

廃区画付近にて………

 

「この辺りの筈だが………」

 

廃区画に面している道路で車を走らせている轟。

 

マクーが前線基地を建設していると言う動きをキャッチし、捜査していたのだ。

 

「もう~! 何時まで気絶してるのよ~!」

 

「いい加減起きて欲しいなぁっ!」

 

「ん?」

 

そこで、声が聞こえて来たので車を止めると、廃区画から小里を抱えて弓美・創世・詩織が飛び出して来る。

 

「如何したんだ?」

 

車から降りると、弓美達に声を掛ける轟。

 

「! 助けて下さいっ! 友達が危ないんです!!」

 

轟の姿を見た詩織がそう言って来る。

 

「何があったんだ?」

 

「それが、その………何て言って良いか………」

 

如何説明すれば良いのか分からず、創世は言葉を詰まらせるが………

 

「宇宙人よ! 宇宙人に襲われたの!!」

 

「ちょっ! ユミ!」

 

弓美がそのまま説明をし、慌てる創世。

 

宇宙人に襲われたなどと言っても信じて貰えるワケがない………

 

「! 宇宙人!?」

 

だが宇宙刑事である轟は、即座にそれがマクーである事を察する。

 

と、そこで………

 

「ギーッ!!」

 

「ギギッ!!」

 

数人のクラッシャー達が姿を現した!

 

「!? うわあっ!? 出たっ!!」

 

「! まだ居たの!?」

 

「ギーッ!!」

 

「ギギッ!!」

 

弓美と創世が悲鳴の様な声を挙げる中、クラッシャー達は次々にナイフを取り出す。

 

「「「!!」」」

 

弓美達の顔が恐怖に引き攣る。

 

………だが!!

 

「チュウッ!!」

 

「ギギッ!?」

 

轟は素早く手近に居たクラッシャーの顔面に蹴りを叩き込んで倒す!

 

「「「!?」」」

 

「チュウッ!!」

 

弓美達が驚いていると、今度はナイフで斬り掛かって来たクラッシャーの腕を掴んで、裏拳を叩き込んだ後にフックを食らわせて倒す。

 

「トアッ!!」

 

更に別のクラッシャーに肩に掴み掛かると、地面に投げ飛ばした後に素早く顔面にパンチを連続で喰らわせる。

 

「ギーッ!!」

 

「チュウッ!!」

 

再度ナイフを突き出して来たクラッシャーを躱すと、道路と歩道の間に在った鉄柵を掴んだまま跳び上がり、両足での蹴りを叩き込む。

 

「ギギッ!」

 

「おっ! ハアッ!!」

 

最後の1人のクラッシャーが横薙ぎに振ったナイフをしゃがんで躱したかと思うと、そのまま後方宙返りすると共に顔面を蹴り付けた!

 

アッと言う間にクラッシャー達は全員倒され、怪しい光を放って消え失せた。

 

「す、凄い………」

 

「本当にアニメみたい………」

 

轟の大立ち回りに呆気を取られる創世と弓美。

 

「もう大丈夫だ」

 

「! あの! 小日向さん………まだ友達が1人!」

 

と、轟が声を掛けて来た瞬間に、詩織が未来の事を言う。

 

「! 小日向っ!?」

 

「わ、私達を逃がす為に囮になって………」

 

「お願い! 助けてっ!!」

 

轟が驚きを示す中、創世と弓美も懇願して来る。

 

「………分かった! 君達は此処から出来るだけ離れるんだ!!」

 

そう言うと轟は、廃区画の方に向かって駆け出す。

 

「蒸着っ!!」

 

そして弓美達から見えない距離まで離れると、蒸着して光の玉となって舞い上がるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その未来は………

 

「ハア………ハア………」

 

「ギーッ!!」

 

「ギギッ!!」

 

息を切らしながらも必死に逃げる未来だが、クラッシャー達は追い続けて来る。

 

(弓美達………逃げられたかな?)

 

自分も危ない状況にも関わらず、弓美達の事を案ずる未来。

 

と、その時!!

 

ケエエエエエェェェェェェーーーーーーーッ!!

 

未来の前に、ベム怪獣『コンドルモンスター』が降り立って来た!

 

「!? キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

目の前に現れた化け物の姿に、未来はその場に尻餅を着いてしまう。

 

「逃げられると思っていたのか?」

 

更にダブルマン・ゾンビAも姿を現す。

 

「あ、あああ………」

 

「殺れ、コンドルモンスターッ!」

 

ケエエエエエェェェェェェーーーーーーーッ!!

 

恐怖で顔が歪む未来に、ダブルマン・ゾンビAはコンドルモンスターを嗾ける。

 

何処かともなく取り出したトライデントを手に、ゆっくりと未来へと迫るコンドルモンスター。

 

(! 響っ!!)

 

心の中で響の名を叫ぶ未来。

 

と、その時!!

 

突如現れた光の玉が、未来を掻っ攫って、廃ビルの屋上に降り立った!

 

ケエエエエエェェェェェェーーーーーーーッ!?

 

「!?」

 

コンドルモンスターとダブルマン・ゾンビA達が驚いている中、光が弾けて、未来をお姫様抱っこしたギャバンの姿が露わになる。

 

「あ………」

 

「もう大丈夫だ」

 

「…………」

 

ギャバンがそう言うと、未来は気が抜けたのか気絶する。

 

「…………」

 

その未来を廃ビルの屋上に寝かせると、ダブルマン・ゾンビA達に向き直るギャバン。

 

「宇宙刑事! ギャバンッ!!」

 

そしてポーズを決めながら高らかに名乗りを挙げた!

 

 

 

 

 

宇宙刑事ギャバンが、コンバットスーツを蒸着するタイムは、僅か0.05秒に過ぎない!

 

では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう!

 

「蒸着っ!!」

 

轟がそう叫び、蒸着ポーズを取ると、それは直ちに地球衛星軌道上の亜空間内にいる超次元高速機ドルギランへと伝わる。

 

『了解! コンバットスーツ、電送シマス!』

 

そして、ドルギランより粒子状に分解されたコンバットスーツが轟へと電送される!

 

その粒子状となったコンバットスーツが、轟の体に吹き付けられる様にスーツを構成していき、蒸着は完了する。

 

もう1度言おう!

 

この一連の動作………僅か0.05秒!!

 

 

 

 

 

「おのれ、ギャバン!」

 

「行くぞ、マクーッ!! チュウッ!!」

 

廃ビルの上から飛び降りるギャバン。

 

「ギャバンキックッ!」

 

「ギーッ!」

 

跳び蹴りでクラッシャーを1人葬る。

 

「ギャラクティカクラッシュッ!!」

 

更に、エネルギーを腕に集中させ、脚部のブースターで加速しながらクラッシャーの集団に突進!

 

次々と強烈な肘打ちを食らわせ、薙ぎ倒す!

 

「ギギッ!!」

 

「ギーッ!!」

 

とそこで、クラッシャー達が一斉にギャバンへと取り付いた!

 

「むうっ!?」

 

「ギギッ!!」

 

「ギーッ!!」

 

数を頼みに、ギャバンの動きを抑え込むクラッシャー達。

 

「ギャバン・フルパワーッ!!」

 

しかし、ギャバンは全エネルギーを全身に集中させ、クラッシャー達を一気に弾き飛ばした!

 

「ギギッ!?」

 

「ギーッ!?」

 

弾き飛ばされたクラッシャー達は地面や廃ビルの壁に叩き付けられ、消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???………

 

「魔空空間に引き摺り込め!」

 

そこで、また大型モニターでギャバン達の様子を見ていたアシュラーダがそう命じる。

 

「ギーッ!!」

 

傍に控えていたクラッシャー達が地軸転換装置を操作する。

 

地球の地軸が操作され、廃区画に魔空空間が形成され始めた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃区画………

 

ケエエエエエェェェェェェーーーーーーーッ!!

 

「チュウッ!!」

 

コンドルモンスターが振って来た鞭を躱し、パンチを叩き込むギャバン。

 

とそこで、魔空空間が発生!

 

ケエエエエエェェェェェェーーーーーーーッ!!

 

コンドルモンスターが魔空空間へと吸い込まれる。

 

「サイバリアーンッ!!」

 

ギャバンはサイバリアンを呼ぶと、側車部分に飛び乗り、自らも魔空空間へと突入。

 

「トオオッ!」

 

やがてサイバリアンから飛び降りると、足元に霧が立ち込める場所に着地する。

 

頭上には巨大な肋骨が、トンネルの様に鎮座し、辺りには骨で出来た木が生えている。

 

「むっ!?」

 

とそこで、突如空から巨大な骨の欠片が、ギャバン目掛けて飛んで来る!

 

「!!」

 

ケエエエエエェェェェェェーーーーーーーッ!!

 

ギャバンがそれをしゃがんで躱すと、コンドルモンスターが姿を現す!

 

その手には、トライデントが握られている。

 

ベム怪獣は魔空エネルギーを得て、地上の3倍のパワーを持つ事が出来るのだ。

 

ケエエエエエェェェェェェーーーーーーーッ!!

 

「チュウッ!」

 

ギャバンは繰り出された縦斬りを躱すと、続いて繰り出された突きを回し蹴りで弾いて往なす。

 

更に続けて来た足元への薙ぎ払いもジャンプして躱して、地面を転がって距離を取る。

 

再度の突きを今度はパンチで弾くと、コンドルモンスターにジャンプしての蹴り上げを喰らわせる。

 

ケエエエエエェェェェェェーーーーーーーッ!!

 

だがコンドルモンスターは怯まず、トライデントの刃と刃の隙間にギャバンの首を挟み込んで持ち上げようとする。

 

「うおっ!? ドオッ!!」

 

だが、ギャバンはコンドルモンスターの顔面を蹴り飛ばして逃れる。

 

するとコンドルモンスターは、再び鞭を取り出し、骨の木の枝に巻き付けたかと思うと、枝を引き千切ってギャバン目掛けて投擲した!

 

「!!」

 

ケエエエエエェェェェェェーーーーーーーッ!!

 

躱すギャバンだったが、コンドルモンスターは更に骨を投げつけて来る!

 

「チュウッ! レーザーZビームッ!!

 

最初に飛んで来た骨を蹴り砕くと、残りをレーザーZビームで一気に粉砕する。

 

だがそこで、突然足元の地面が無くなった!!

 

「!? おわっ!?」

 

ギャバンは落下したかと思うと、今度は採石場の様な場所へと落ちる。

 

ケエエエエエェェェェェェーーーーーーーッ!!

 

コンドルモンスターが姿を現すと、またもトライデントを持って襲い掛かって来る。

 

「チュウッ!!」

 

下段の攻撃をジャンプで躱し、上段への攻撃は転がって躱す。

 

ケエエエエエェェェェェェーーーーーーーッ!!

 

そこでコンドルモンスターは、トライデントをギャバン目掛けて投げつける!

 

「ムンッ!………! ぐああっ!?」

 

飛んで来たトライデントをキャッチするギャバンだが、途端にトライデントから電流が流れる!

 

堪らず投げ返したトライデントをキャッチし、再度投げつけて来るコンドルモンスター。

 

「むうっ!!」

 

今度は躱すギャバンだったが、トライデントは独りでに浮かび上がり、ギャバンに襲い掛かる!

 

「チュウッ!!」

 

だが、ギャバンはジャンプすると飛んで来たトライデントにキックをお見舞い!

 

弾かれたトライデントがコンドルモンスターにぶつかり、もつれ合う様に倒れる。

 

ケエエエエエェェェェェェーーーーーーーッ!!

 

と、立ち上がったコンドルモンスターは、トライデントの先端から怪光線を発射!

 

「!!」

 

躱すギャバンだが、更に今度は先端が光ったかと思うと、ギャバンの周辺で次々に爆発が起こる!

 

「チュウッ!!」

 

ギャバンは大きく跳躍し、高所に着地する。

 

「! 消えた!? レーザースコープッ!!

 

すると、コンドルモンスターが姿を消したので、レーザースコープを起動。

 

ケエエエエエェェェェェェーーーーーーーッ!!

 

姿を消していたコンドルモンスターが、トライデントを振り回して突撃して来るのを見破る。

 

「レーザーZビームッ!!」

 

そのコンドルモンスター目掛けてレーザーZビームを発射!

 

直撃を受けたコンドルモンスターは大爆発して四散したのだった。

 

「ギャバンッ!!」

 

「!!」

 

と、そこで背後から響いて来た声に振り返ると、崖の上に曲刀と盾を手に頭部をシールドで覆ったダブルマン・ゾンビAの姿が在った!

 

「フハハハハハハハッ! 今度は俺が相手だっ!!」

 

そう言ってダブルマン・ゾンビAは崖の上から飛び降りて来て、ギャバンと対峙する。

 

「!!」

 

縦の1撃を躱すと背中にキックを叩き込むギャバン。

 

続いて低い位置での横薙ぎを側転して躱す。

 

「ハアッ!」

 

「グウッ!?」

 

だが続けて盾で殴られ、ギャバンは地面を転がった。

 

「むんっ!」

 

ギャバンは起き上がると同時に、レーザーブレードを取り出す。

 

「デヤアアッ!」

 

「チュウッ!」

 

斬り掛かって来たダブルマン・ゾンビAに応戦する様にレーザーブレードを振るい、鍔迫り合いとなるギャバン。

 

と、不意を衝く様に一旦距離を離すと、強烈な斬り上げを繰り出す。

 

「おうわっ!?」

 

盾で防ごうとしたダブルマン・ゾンビAだったが、衝撃で盾が弾き飛ばされる。

 

「デヤアアッ!!」

 

「チュウッ!!」

 

崖の上へと跳躍したダブルマン・ゾンビAを追い、ギャバンの崖の上へ飛ぶ。

 

そのまま距離を取っての睨み合いとなる………

 

「レーザーブレードッ!!」

 

そこでギャバンは、レーザーブレードにエネルギーを注入し、刀身を発光させる!

 

「ヌアアアアアアッ!!」

 

最後の勝負だとばかり、曲刀を振り回したかと思うと、雄叫びを挙げて突撃して来るダブルマン・ゾンビA。

 

「ヌアアアッ!!」

 

「ギャバン・ダイナミックッ!!」

 

だが、ダブルマン・ゾンビAの攻撃よりも先に、必殺のギャバン・ダイナミックが決まった!!

 

「うああっ!? あ、あああ………アアアアアアァァァァァァァァッ!?

 

断末魔の叫びを挙げて真っ二つになったダブルマン・ゾンビAの身体が爆発四散!

 

それと同時に魔空空間も消滅し、ギャバンは未来が居る廃ビルの上へと戻った。

 

「レーザースコープッ!」

 

と、ギャバンは廃ビルの縁に立つと、レーザースコープを起動。

 

辺りを見回し、マクー地下基地を発見する。

 

「あそこが地下基地か………ギャビオーンッ!!

 

そして空に向かって叫ぶと、ドルギランから宇宙戦車………『高次元戦闘車ギャビオン』が発進する。

 

「スクーパー発進っ!」

 

ギャビオンが廃区画内に着地すると、後部のハッチが開き、格納されていた2つのドリルを持つ小型ドリルタンク………『スクーパー』が発進する。

 

スクーパーはそのまま地中へと潜行し、マクー前線基地へ突撃!

 

体当たりで施設を次々に破壊し、完全に崩落させたのだった。

 

「良し! 後は………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃区画の入り口からやや離れた公園………

 

「ホントだって! 宇宙人に襲われたの! 友達がまだ追われてて………!? ちょっと! もしもしっ!? ああ、もう! 切られたっ!!」

 

スマホを手に警察に電話していた弓美が地団駄を踏みながらそう言う。

 

「やっぱり宇宙人だなんて信じてくれないよ………」

 

「如何しましょう?………」

 

「ああ、私のせいで未来さんが~………」

 

創世・詩織・漸く気が付いた小里も途方に暮れている。

 

「こうなったら、戻って私達で未来を………」

 

「? アラ? アレは何でしょう?」

 

弓美がそう言いかけた時、詩織が自分達の方に向かって飛んで来る光の玉に気付く。

 

光の玉は弓美達の前に降り立つと、未来をお姫様抱っこで抱えたギャバンの姿となった。

 

「「「「!?」」」」

 

仰天して固まる弓美達。

 

「う、う~ん………アレ? 私………」

 

とそこで、気を失っていた未来が目覚める。

 

「気が付いたか?」

 

「!??!」

 

ギャバンに声を掛けられ、その姿に一気に意識が覚醒する。

 

「ヒナッ!」

 

「未来っ!」

 

「小日向さん!」

 

「未来さん!」

 

「! 皆!」

 

続いて創世達に声を掛けられて気付くと、ギャバンは未来を降ろした。

 

「あ、ありがとうございます………」

 

「無事で何よりだ」

 

「あの………貴方は?」

 

戸惑う未来にギャバンがそう返していると、創世が尋ねて来る。

 

「宇宙刑事ギャバン」

 

「宇宙刑事?………」

 

「ギャバン………?」

 

ギャバンが名乗りを挙げると、詩織と小里が首を傾げる。

 

「さらばだ………チュウッ!」

 

とそこで、ギャバンは大きく跳躍したかと思いと、何処からとも無く飛んで来たサイバリアンの側車部分に跳び乗る。

 

「「「「「!!」」」」」

 

驚く未来達を尻目に、そのまま空の彼方へ消えて行った………

 

「夢………じゃないよね?」

 

「凄い………ホントにアニメみたいっ!!」

 

唖然と呟く創世とは対照的に、目を輝かせて興奮する弓美。

 

「ああっ!? しまったぁっ!! 折角のシャッターチャンスをぉっ!?」

 

世紀のスクープを取り逃した事に気付いて項垂れる小里。

 

(宇宙刑事ギャバンさん………私………あの人を知ってる気がする………如何して?)

 

そして、胸の中に一抹の疑問が浮かぶ未来であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

オリジナルエピソードで、未来達とギャバンの出会いになります。
特撮で良くある『敵の基地を偶然発見』→『狙われる』→『寸前のところでヒーロー登場』と言うパターンです。

そして魔空空間を発生させている怪人の正体も判明。
『ゴーカイジャーVSギャバン』に登場したアシュラーダです。
何故奴が出て来たかと言いますと、考えている無印終盤での展開で、戦闘力が有る幹部クラスの敵が欲しいと思っていたのですが、ギャバンでマクーの幹部だったハンターキラーは現場指揮官の役割が強く戦闘描写が無くて強さが分かり難いのと元宇宙刑事と言う裏切り者の立場なので、蘇ってまでマクーに付くかな?と言う疑問があり、後半登場した幹部のザン・ドルバは戦闘力はありましたがそれ程でもなく、何よりドラ息子で最終的には反逆してますので、やはり蘇ってもドン・ホラーに付くとは考え難いと思い、ドン・ホラーの血縁であると言う設定があるアシュラーダを登場させてみました。

予告通りに小里が活躍(?)しました。
今後もこんな感じで未来達共々に色々と巻き込まれたりする様な話がある予定ですので、ご了承ください。
すぐ気絶するのも大山小次郎さんリスペクトです(笑)

この作品で翼が響に対してつっけんどんな理由はズバリ嫉妬です。
そしてその感情が大変な事態を招く事に………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。