戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達 作:宇宙刑事ブルーノア
ご了承ください。
夕焼けに染まる、研究機関に隣接したビーチにて………
「「…………」」
頭に包帯を巻かれたマリアと、頬に大きな絆創膏を付けたセレナが沈んだ表情で水平線を眺めている。
思い起こされるのは、やはりイグナイトモジュールの起動に失敗し、暴走した事………
そして、嘗てマドーに居た頃の事だ。
(振り切ったと思ってたのに………)
(結局過去に囚われて………情けない)
自分達の情けなさで更に表情が暗くなるセレナとマリア。
(私が弱いばかりに、魔剣の呪いに抗えないなんて………)
(強く………なりたい)
マリアとセレナは固く拳を握り締める。
とそこで………
2人の傍にバレーボールが転がって来た。
「「?」」
「ああ、ゴメンなさい。皆さんの邪魔をしない様に思ってたのに………」
マリアとセレナがそれに気付くと、そのボールを追って現れたエルフナインがそう言って来る。
「邪魔だなんて………」
「なら、2人も練習に付き合ってくれないか?」
マリアがそう返した瞬間に、今度は雷が姿を現し、2人に向かってそう言って来た。
「雷さん………」
「身体を動かしてた方が気も紛れるぞ」
「………そうね。良いかしら」
「ハイ! お願いします」
エルフナインが嬉しそうな返事を返し、4人での実戦形式のビーチバレーの練習が始まる………
「それ! えい!」
「もうちょっとです!」
「頑張れ! エルフナインちゃん!」
エルフナインが打つサーブをキャッチしながら、セレナと雷が声援を飛ばす。
「おかしいな………上手く行かないな、やっぱり」
しかし、エルフナインは自身のイメージ通りのサーブが打てない事に落ち込んだ様子を見せる。
「………色々な知識に通じているエルフナインなら、分かるかな」
と、エルフナインの傍でアドバイスを送る役をしていたマリアが、ふとそう漏らす。
「え?」
「だとしたら、教えて欲しい………強いって、如何言う事かしら」
「! 姉さん………」
マリアの問いに、セレナも反応する。
「「…………」」
やがて、2人の視線は、雷へと向けられた。
2人にとって、雷は………宇宙刑事シャリバンは正に強さの象徴。
弱さなど微塵も無い、自分達とは真逆な存在だと感じていた………
そのままマリアは、エルフナインの答えを待たず、雷にも同じ質問をぶつける。
「ねえ雷………貴方にとっての強さって何?」
「愛だ」
「即答っ!? しかも、何で愛っ!?」
しかし、雷から即答で『愛』と言う答えが返って来た事で、思わずツッコミの様な声を挙げてしまう。
「そんなにおかしいかい? 愛が強さだって事が?」
「べ、別におかしくは無いけど………///」
「///~~~」
「はわわわ………///」
躊躇いも無くストレートに『愛』と口にする雷に、マリアだけでなくセレナとエルフナインも赤面する。
「嘗て先代のシャリバン………伊賀本部長も、先代ギャバンから言われた。本当の強さとは、優しさ………そして愛だと」
そう言いながら、雷は今正に水平線へと沈んで行こうとしている夕陽を見やる。
「強さは………優しさ」
「そして………愛」
それに釣られる様に、セレナとマリアも夕陽に向き直る。
「それに、少なくともマリアはもう知ってるんじゃないか?」
「えっ?」
「そうですよ。強さとは何か………マリアさんはそれを僕に教えてくれたじゃないですか」
と、不意に雷が言った言葉にマリアが驚くと、エルフナインもそう言って来る。
「私が?………」
如何言う事かとマリアが首を傾げていると………
ビーチの一角から水柱が立ち上がった!!
「「「「!!」」」」
「おっ待たせ、ハズレ装者とその妹」
雷達が身構えると、その水橋の上にポーズを執って立って居たガリィがそう言い放つ。
「「!!」」
それを見たマリアが包帯を外し、セレナも頬の絆創膏を引っぺがす。
「オートスコアラーッ!!」
雷が赤射しようとして、その瞬間!!
フィアアアアアアッ!!
丁度反対側の海からも水柱が上がったかと思うと、その中からウミウミが飛び出して来て、ビーチに着地した。
「! 不思議獣っ!!」
咄嗟に雷はそちらに向き直り、イヴ姉妹と雷が間にエルフナインを挟んで守る様にする。
「フンッ、やっと役に立ってくれたわね………さあ、今度こそ歌ってくれるでしょうね?」
「「!!」」
そのウミウミの姿を見たガリィがそう言った瞬間に、イヴ姉妹はギアペンダントを構えた。
「大丈夫です! マリアさんとセレナさんなら出来ます!」
「マリア! セレナ! 任せるぞ!!」
Seilien coffin airget-lamh tron×2
エルフナインと雷がそう言った瞬間に、イヴ姉妹は聖詠を唱え、アガートラームを其々に身に纏う。
「赤射っ!!」
そして雷も赤射を叫び、コンバットスーツを身に纏う。
「宇宙刑事っ! シャリバンッ!!」
宇宙刑事シャリバンは、僅か1ミリ秒で赤射蒸着を完了する。
では、赤射プロセスをもう1度見てみよう!
「赤射っ!!」
雷がそう叫び、赤射ポーズを取ると、それは直ちに地球の衛星軌道上で待機している超次元戦闘母艦グランドバースへと伝わる。
すると、灼熱の太陽エネルギーが、グランドバースの増幅システムにスパークする!
増幅された太陽エネルギーは、赤いソーラーメタルに転換され、シャリバンに赤射蒸着されるのだ!
もう1度言おう!
この一連の動作………僅か1ミリ秒!!
「ハズレで無いなら、戦いの中で示して見せてよ!!」
フィアアアアアアッ!!
ガリィはそう言いながら、イヴ姉妹に襲い掛かり、ウミウミもシャリバンへと襲い掛かるのだった!!
研究所の応接間………
「アルカ・ノイズの反応を検知!」
「! マリア達がピンチデス!」
「すぐに行くぞっ!!」
朔也からの報告を聞いて、応接室を飛び出して行く装者達と宇宙刑事達。
その直後、入れ違いの様に『何か』が応接室の前を通り過ぎて行った様に見えた………
「!?」
それに気付いた慎次が飛び出すが、廊下には誰も居なかった………
「風?………」
「如何したんですか?」
「いえ、大丈夫です………きっと」
残っていた未来の問い掛けに、慎次は気のせいだと思い、そう返すのだった………
再び、研究機関に隣接したビーチでは………
フィアアアアアアッ!!
「ケアァッ!!」
ウミウミが振って来たハルバードを蹴りで弾くと、カウンターでパンチを叩き込むシャリバン。
フィアアアアアアッ!?
「クライムバスターッ!!」
怯んだウミウミの頭に、クライムバスターを叩き込む!
フィアアアアアアッ!?
「スパークボンバーッ!!」
駄目押しとばかりにスパークボンバーが決まる。
ウミウミに対し、優位に戦闘を進めるシャリバン。
一方、イヴ姉妹の方は………
「「ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」」
ガリィに向かって、小太刀とビームダガーを手に斬り掛かろうとするマリアとセレナ。
対するガリィは、両手を掲げて頭上に魔法陣と水球を形成。
先ず左手を2人に向けたかと思うと、水球が水流となって襲い掛かる!
「「!!」」
マリアとセレナは小太刀とビームダガーを目の前に投げたかと思うと、それを基点にバリアを形成して防ぐ。
するとガリィは、今度は右手を向けたかと思うと、魔法陣がガリィの正面に移動。
そこから水球から発生した以上の水流が飛び出す!
「グウッ!」
「クッ!」
バリアの位置をずらして防ぐマリアとセレナだったが、水流はバリアを破って2人に直撃する。
(強く!………)
(強くならないと!………)
マリアとセレナの身体が氷に包まれて行く。
「マリアさん! セレナさん!」
「「強くっ!!」」
エルフナインの悲鳴の様な声を挙がると、マリアとセレナは気合で氷を砕き、脱出する。
しかし、ダメージが大きかったのか、両者共に膝を着いてしまう。
「てんで弱過ぎる!」
不満そうにガリィがそう言うのを聞いて、マリアとセレナの手がギアコンバーターに伸びる。
「その力、弱いアンタ達に使えるの?」
「「!?」」
だが、続くガリィの言葉で2人とも手が止まる。
「私はまだ弱いまま………」
「如何したら強く!………」
マリアとセレナの悲痛な声が漏れた、その時………
「マリア! セレナ! 強さは愛だ!!」
レーザーブレードを抜刀し、ウミウミのハルバードと斬り結んでいたシャリバンがそう叫ぶ。
「!? 雷っ!?」
「雷さんっ!?」
「ハ、ハアッ!? 何小っ恥ずかしいこと言ってんだっ!?」
マリアとセレナが驚き、ガリィも余りにストレート過ぎる言葉にたじろぐ。
心無しか、人形である筈の彼女の頬が赤く染まっている様に見える………
「マリアさん! セレナさん! 大事なのは、自分らしくある事です!!」
「もう君達は答えを知っている! 悲しみに微笑み、喜びに頷いて、思い切り生きるんだ!!」
そこでエルフナインもそう言って来て、シャリバンがそう続けた!
「! 弱い………」
「………そうです!」
「んん?」
と、そこで立ち上がったマリアとセレナの表情が変わった事に気付くガリィ。
「強くなれない私達に、エルフナインと雷が気付かせてくれた………」
「弱くても、自分らしくある事。そして………」
「「強さは愛だっ!!」」
「!? ハアッ!? とち狂ったのかっ!?」
またも『愛』と言う言葉がストレートに出た事に、狼狽するガリィ。
「行こう、姉さん!」
「ええ………」
「「イグナイトモジュール! 抜剣っ!!」」
そんなガリィの様子など微塵も気にせず、マリアとセレナはイグナイトモジュールを起動する!
魔剣の呪いが、彼女達に襲い掛かるが………
「らしくある事が強さなら!!」
「私達は弱いまま、この呪いに反逆してみせます!!」
そう言いながら、手を握り合うマリアとセレナ。
魔剣の呪いに打ち勝った2人のアガートラームが、黒く禍々しい意匠となり、イグナイトモジュールは起動した!!
「聖なる剣よっ!!」
更に、マリアが右手を天に向かって掲げたかと思うと、光と共に聖なる剣が現れる!
「ああもう! どいつもこいつも愛、愛、愛! 恥ずかしいんだよぉっ!!」
そこでガリィがキレ気味にスケートの様な動きで先ずセレナを肉薄!
右手に出現させた氷の刃で斬り付けようとしたが………
「フッ!」
「なっ!?」
何と!
セレナはその氷の刃を素手で掴んで止める。
「ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」
「ぐえっ!?」
そしてそのまま、1本背負いの様な投げで、ガリィを砂浜に叩き付ける!
「クッ!!」
するとガリィの身体が、無数の泡となって弾ける。
その泡に向かって、小太刀を前方に差し入れた左手のガントレットから光弾をマシンガンの様に放つマリア。
全ての泡が弾けたかと思うと、マリアの背後を執る様に巨大な泡が現れ、そこからポーズを執ったガリィが現れる。
「アタシが1番乗りなんだから!!」
意味深な言葉と共にマリアの背中に飛び掛かるガリィ。
だが、そのガリィに赤い稲妻状の光線が直撃する!
「!? ガアッ!?」
「姉さん! 今だよっ!!」
頭上に掲げたビームダガーからその光線を放っていたセレナが、マリアに呼び掛ける!
「「レーザーブレードッ!!」」
マリアが聖なる剣にフォニックスゲインを注入し、同じタイミングでシャリバンもレーザーブレードの刀身を輝かせる!
「「オオオオオオォォォォォォッ!!」」
シンクロしながら、マリアがガリィ、シャリバンがウミウミに斬り掛かる!
「「シャリバン・クラッシュッ!!」」
そして、夕陽を背に、其々のシャリバン・クラッシュが決まった!!
フィアアアアアアッ!?
「1番乗りなんだからああああぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」
ウミウミの断末魔と、ガリィの意味不明な叫びが木霊し、両者共に爆散!
「マリアさんっ!!」
「「「…………」」」
やっとこ駆け付けた響達が見たのは、残心の様にポーズを執りながら、夕陽のビーチに佇むシャリバン・マリア・セレナの姿だった。
「オートスコアラーを倒したのか?」
「セレナと協力して、如何にかこうにかね………」
「コレで敵の戦力を少しは削れたワケか………」
翼の問いにマリアがそう返すと、敵の一角を崩せたと言う奏。
「コレがマリアさんとセレナさんの強さ………」
「弱さかも知れない」
「え?」
「でも、それは自分らしくある力………」
エルフナインの言葉にマリアがそう返すと、セレナが言葉を続ける。
「ありがとうございます、エルフナインさん」
「それに、雷も」
そこでセレナとマリアは、雷にお礼を言う。
「ハイ」
「気にするな。だって強さは………」
「「愛だから!!」」
雷の言葉に、マリアとセレナは揃ってそう返す。
「フッ………」
「あ、愛って………」
「デース………」
「な、何言ってやがんだ、お前等!!」
それを聞いて満足そうに笑う雷に対し、装者達は赤面する。
「うんうん」
只1人、響だけが『分かる』と言う様に頷いていたのだった。
「お疲れ様、ガリィ………無事に私は目的を果たせました」
と、その様子を、研究所の屋上に音も無く現れたファラが見ていた。
研究所内に侵入していたのは彼女だった。
その舌の上には、マイクロチップが張り付いている。
同時刻………
チフォージャー・シャトーのキャロルの間では………
ガリィが待機する場所であった台座が光を放ち、その真上に在った垂れ幕に何かの紋様が浮かび上がった。
それを見て、キャロルと彼女に修理されているミカ、そしてレイアが笑みを浮かべる。
「先ずは1人か………大帝王クビライ様が地球を手に入れる日も近い」
そして、覗き見をしていたギャル1が、そんな事を呟いたのだった。
◇
それから少し時が流れ………
すっかり闇に包まれたビーチで、装者達と宇宙刑事達は最後の催しである花火を楽しんでいた。
その後、また買い出しに行こうと言う話となり、ジャンケンで1人負けした轟に、響と未来が付き合う形で同行。
3人は、近くのコンビニで手早く買い物を済ませ、帰路に着いている。
「…………」
そんな中で、車を運転している轟が、難しい顔をしていた。
「轟兄?」
「如何したの?」
その様子を見た響と未来が問い質す。
「いや、雷から聞いたあのガリィってオートスコアラーの最期が気になってな………」
1番乗りだと言う事を叫びながら散ったガリィ。
轟にはその言葉が只の戯言だとは思えず、引っ掛かっていた。
「それって………」
と、響が何か言おうとした瞬間!!
車の周りに赤い鏃状の光線が次々に着弾!
「!?」
「キャアッ!?」
轟が慌ててブレーキを踏むと、車が横滑りする様に止まり、後部座席に居た未来が前のシートの後部に顔を打ち付ける。
「!!」
そして助手席の響が、進路上に何時の前に姿を現していたバリオゼクターに気付く。
「イタタタ………」
「未来ちゃん! 大丈夫か!?」
「!!」
強かに顔を打った未来を轟が心配していると、バリオゼクターが赤いレーザーブレードを抜いて突撃して来る。
「!!」
Balwisyall nescell gungnir tron
響は反射的にシートベルトを外すと同時に座席から跳び、シンフォギアを身に纏う。
「ウオオオオオオォォォォォォォッ!!」
そして、突っ込んで来るバリオゼクターに向かって、カウンターで拳を繰り出す。
「! うっ!?………ええいっ!!」
その際に、またの奇妙な感覚が襲って来て、また拳を止めてしまいそうになったが、気合で無理矢理捻じ伏せる。
響の拳が、バリオゼクターの顔面に完全に決まる!
「!!」
真面に喰らったバリオゼクターは、ヘルメット部分に罅が入り、よろけながら後退る。
「ハアッ!!」
チャンスと思った響が、ガントレットを引っ張り、更に追撃を掛けようとする。
とそこで………
罅が入っていたバリオゼクターのヘルメットの一部が砕け、装着者の顔が露出した。
「………えっ?」
途端に、響は拳を降ろして呆然となる。
「!? アレは!? まさかっ!?」
「嘘っ!? そんなっ!?」
轟と未来も、信じられないモノを見ている様な様子となる。
「お父………さん?」
呆然としたまま、響が呟く。
砕けたヘルメットから露出した装着者の顔………
それは、響・轟・未来が良く知っている人物………
家族を捨てて蒸発した筈の響の父………
『立花 洸』だった。
「…………」
光の無い目と能面の様な無表情で響達に向き直るバリオゼクターこと洸。
やがてその姿が煙の様に消えてしまう。
「バリオゼクターの正体は………洸小父さん?」
「嘘だ………」
唖然としたまま轟が呟くと、響が膝から崩れ落ち、シンフォギアが解除される。
「! 響っ!!」
それを見た未来が、慌てて車から降りて傍に駆け寄るが………
「そんなの嘘だああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」
響は悲痛な慟哭を、夜空の下に響かせたのだった………
つづく
新話、投稿させて頂きました。
イグナイトを暴走させてしまった事………
振り切ったと思っていた過去に悩むイヴ姉妹。
そんなイヴ姉妹に、エルフナインが原作通りに自分らしさが大切だと言い、雷は『強さは愛』と説きます。
宇宙刑事シャリバンのエンディングテーマでもある『強さは愛だ』
シャリバン原作でもそう語るエピソードがあったので、強さとは何かと悩むイヴ姉妹に説いてみました。
愛が強さと言うのは宇宙刑事シリーズに限らず、ヒーローの根底でもありますし。
某超人プロレス漫画でも、『心に愛がなければ、スーパーヒーローじゃないのさ』と言ってますし。
キャロルの計画の内ながら、ガリィを撃破に成功。
しかし………
多くの人が予想が付いていた通り、バリオゼクターの正体が判明。
何と、立花 洸その人がバリオゼクターだったのです。
響は正に、ダースベイダーが父だと知らされたルークの心境ですね。
果たして、立花 洸を救出する事は出来るのか?
ここから、原作のGX編を大きく変える要素が出て来ます。
お楽しみに。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。