戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達   作:宇宙刑事ブルーノア

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第22話『不器用な父と娘に涙脆い金太郎』

風鳴邸・とある一室………

 

「………う………うう………! お父様っ!!………!? ッ!!」

 

布団に寝かされていた翼が目を覚ましてガバッと身を起こすが、途端に身体に走った鈍い痛みに悶える。

 

「翼っ!!」

 

「オイ、無理すんなって!」

 

傍で控えていたマリアと奏が、慌てて翼の身体を支え、再度寝かしつける。

 

「! マリア! 奏! お父様! お父様は!?………」

 

「落ち着きなさい!」

 

「今雷と轟に緒川さん達も全力で捜索してくれている。今は自分の身体を労われって」

 

「そうは行かん! お父様を助けなければ!!………! グウッ!!」

 

マリアと奏の声掛けも届かずに逸る翼だが、気持ちに身体が付いて行けず、また短く悲鳴を漏らす。

 

「ホラ、言わんこっちゃない」

 

「今は兎に角待ちましょう。それまでに動ける様、回復に努めるのが今の貴方のやるべき事よ」

 

そんな翼に、奏とマリアは再度そう言う。

 

「…………」

 

それを聞いた翼が漸く大人しくなる

 

2人の言う通り、先ずは動ける身体にならなければと思った様だ。

 

「お父様………」

 

だが、八紘の身を案じるその表情は暗い………

 

「………それにしても、お前って昔っから片付けられない奴だったんだな」

 

とそこで、奏が今居る部屋の中を見回しながらそう言う。

 

「えっ?………

 

そこで翼も辺りを見回すと、今自分達が居るのが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()………

 

翼の子供時代の部屋である事に気付く。

 

「最初見た時は驚いたわよ。敵にやられたかと」

 

「………すまない。私の不徳で………」

 

マリアの言葉に、翼は恥ずかしさで頬を染めて顔を背ける。

 

「だが………10年間もそのままとはな」

 

しかし、すぐにまた表情に影が差す………

 

「幼い頃にはこの部屋で、お父様に流行歌を聞かせた思い出も有るのに………」

 

やはり父にとって、自分は邪魔者なのか………

 

そんな思いが翼の胸中に過る………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風鳴家は代々日本を陰ながら守護してきた一族であり、その血筋の人間は何かしらの護国への貢献を行っている。

 

そんな家系に生まれた翼であったが、幼き日の彼女はそんな事は露知らず、好きな歌を大勢の人達に聞いて貰いたい………歌手になりたいと言う、年相応な夢を抱いていた。

 

だが、そんな夢を否定したのが他ならぬ父・八紘であった。

 

歌手になる積りならば家を出るのかと………

 

風鳴家に生まれた者には須らく護国の使命があり、役割を課せられる………

 

それは翼も例外ではない。

 

果たす積りが無いならば、風鳴の名は捨てて貰うと………

 

然ながら、幼少の翼にそんな決断など出来るワケも無く、如何すれば良いのかと問う彼女に、八紘は………

 

『他人に決めさせる程度の夢ならば諦めてしまえ。お前も大きくなれば分かる。今、抱いている夢がどれだけ小さなものなのかを』

 

と言う冷たい言葉を投げ掛けた。

 

歌手になりたい………

 

何より父に歌を聞いて貰いたいと思っていた翼はショックを受け、八紘に反発。

 

風鳴の使命を果たし、歌を唄う事も諦めないと。

 

それが原動力となり、今や翼はトップアーティストとして世界に名を轟かせている。

 

しかし、八紘の言う通り、成長した翼は風鳴家に生まれた事への使命を理解して行った。

 

そして、アメノハバキリへの適正が認められると、シンフォギア装者として名乗りを挙げた。

 

アーティストとしても活動こそ続けているが、イザという時はそれを捨て去る覚悟を決めている。

 

その事を八紘に何度も告げている翼だったが、八紘の態度は今日まで全く変わらない………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やはり私は半端者だ。だからお父様も………)

 

「にしても、お前の親父さん。お前と違って器用なとこ有るな」

 

ネガティブな思考と共に気持ちが沈んで行く翼だったが、不意にそこで奏がそんな事を言う。

 

「えっ?………」

 

「奏、如何言う事?」

 

奏の発言の意味が分からず、翼だけでなくマリアも首を傾げる。

 

「だって見ろよ、この部屋。確かに散らかってるけどよ………」

 

そこで奏は立ち上がると、お膳の傍に寄り、物が無い箇所をスーッと指で撫でた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

撫でた指が綺麗なのを見せながら、そう言う奏。

 

「え?………」

 

「成程………貴方達、親子揃って不器用者なのね」

 

困惑する翼に対し、マリアは合点が行った様な表情を見せる。

 

「貴方の事を疎んでるなら、こんな事はしないわ。寧ろ逆………パパさんは貴方との思い出を無くしたくなかったのよ。だからこの部屋はそのままの状態で保たれてるのよ」

 

「!!」

 

マリアの言葉にハッとする翼。

 

自分はトンでもない勘違いをしていたと………

 

八紘の突き放すかの様な言動と態度………

 

それは風鳴家の使命に捕らわれず、自分の夢を追い掛けて欲しいと言う不器用な気遣いだっただと。

 

自分は八紘に………父親に愛されていたと。

 

「まさかお父様は………私が夢を僅かでも追い掛けられるよう………風鳴の家より遠ざけて来た?………ならば、私は!!

 

涙が溢れ出て来る翼だったが………

 

「泣くな、翼」

 

奏がその傍らに座り込み、翼を見下ろしながらそう言う。

 

「奏………」

 

「今のは私とマリアの推測だ。ひょっとしたらお前の考えていた通り、本当に疎んでたかも知れないぜ」

 

「! 奏っ!?」

 

何を言うのかと慌てるマリアだったが………

 

「だから………本当のところは如何なのか、親父さんをフーマから助け出したら、直接問い質してやれ」

 

「! うんっ!!」

 

続く奏の言葉で、翼は溢れて来ていた涙を払う。

 

「…………」

 

そんな翼と奏の長年デュエットを組んで来た絆を羨ましそうな目で見つめるマリアだった。

 

「さてと、後は肝心要の親父さんの居場所だが………」

 

と、奏がそう呟いた時………

 

~~~♪~~~♪

 

何処からともなく、ギターの音色が聞こえて来た。

 

「? ギター?」

 

「あん? 何だコレ?」

 

「誰か居るの?」

 

翼と奏が首を傾げる中、誰かが居るのかと部屋の襖を開けるマリア。

 

~~~♪~~~♪

 

そこには、何時の間にか庭に佇んで白いギターを弾いている黒いテンガロンハットを被り、赤いシャツの上に黒いレザージャケットを来た人物が居た。

 

「………何者かしら?」

 

明らかに不審者だと思い、警戒を露わにギターの人物に問い質すマリア。

 

「………俺が誰かって?」

 

そこで男はギターを弾くのを止めると、人差し指と中指を立てた右手を突き出し左右に振ると………

 

「お父さんに聞いてみな?」

 

そう言いながら顔を見せ、左手でネックを部分を掴んで肩に担ぐ様にした。

 

「「「…………」」」

 

そんなキザな男の姿に、翼・奏・マリアの視線が呆れの混じったものとなる。

 

「皆さん、如何かしましたか………!? 早川さんっ!!」

 

とそこへ、八紘の捜索から一旦帰還して来た慎次が現れると、男の事を『早川』と呼び、驚いた様子を見せる。

 

「よう、緒川。久しぶりだな」

 

「緒川さん、知り合いですか?」

 

早川と呼ばれた男が挨拶をしていると、翼がそう問い質す。

 

「ハイ、此方は私立探偵をなさっている………」

 

「『早川 健』………人呼んで、地獄から来た渡り鳥さ」

 

慎次が紹介しようとしたのを遮る様に、男………私立探偵『早川 健』はそうキザに挨拶する。

 

「地獄から来た渡り鳥ねえ………」

 

キザ全開な態度を崩さない健の姿に、奏が胡散臭そうな顔をする。

 

「で、その地獄から来た渡り鳥さんが、一体何の用かしら?」

 

と、いい加減うっとおしくなって来たマリアが、急かす様にそう尋ねる。

 

「フッ………緒川」

 

そんなマリアの態度を気にする事も無く、健は懐から折り畳んである紙を散り出すと、慎次に投げ渡す。

 

「と………! 早川さん! コレは!?

 

その紙を受け取った慎次が、広げて中を確認すると、それは地図で有り、ある地点に〇印が付けられていた。

 

「フーマのアジトはそこの地下だ。八紘のダンナもそこに居る」

 

「「「!?」」」

 

何と、八紘が居るフーマの地下アジトを見つけて来たと言う健に、翼・奏・マリアは驚愕する。

 

「じゃ、後は任せたぜ」

 

「えっ? 行ってしまうのですか? 早川さんが一緒なら心強いのですが………」

 

そこで健が去ろうとすると、慎次が引き留めようとしたが………

 

「オイオイ、緒川。無粋な事を言うんじゃないぜ。八紘のダンナを助ける役は俺じゃないだろう?」

 

「!!」

 

健がそう言い返すと、慎次はハッとした顔で翼の方を見やった。

 

「じゃあお嬢さん方。健闘を祈ってるぜ」

 

最後までキザな態度を崩さず、健は再びギターを弾きながら去って行った。

 

「最後までキザな奴だったなぁ………」

 

「緒川さん。彼は一体?」

 

『日本一』の男ですよ。昔、ワケ有って戦った事があるのですが………『お前さんの忍術は日本じゃあ二番目だ』って言われて、全然敵いませんでしたよ」

 

「!? 嘘でしょっ!?」

 

慎次から告げられた言葉に、思わず信じられないと言う声を挙げてしまうマリア。

 

「と、兎に角! コレで親父さんの居る場所が分かったんだ! 助けに行くぞっ!!」

 

「わ、私も………」

 

と、奏が気を取り直す様に言うと、翼が身体に走る痛みに顔を歪めながらも起き上がる。

 

「翼っ!」

 

「だからお前は無理だって………」

 

「頼む! ココで連れて行ってくれなかったら………2人の事を末代まで恨むぞ」

 

無理をすると言おうとした奏とマリアだったが、翼はそんな2人に力の籠った目を向ける。

 

「「…………」」

 

そんな翼の目を見た奏とマリアは、止めるのは無理だと悟る。

 

「ったく、しょうがねえな」

 

「後で何か奢ってもらうわよ」

 

そしてそう言うと、翼に左右から肩を貸して立ち上がらせた。

 

「2人供………ありがとう」

 

「車を回します! それと、轟さんと雷さんにも連絡を!」

 

翼が2人に感謝をする中、慎次もテキパキと役割を全うするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃………

 

八紘が捕らえられているフーマの地下アジトでは………

 

「グアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

椅子に拘束され、頭にヘッドギアの様な機械を取り付けられている八紘が悲鳴の様な叫びを挙げている。

 

ヘッドギアからはコードが伸びており、モニターが付いた機械へと繋がっているが、そのモニターはスノーノイズを映し出している。

 

「ええい! まだ情報を渡さん積りか! しぶとい奴めっ!!」

 

そのスノーノイズのモニターを見ながら、ヘスラー指揮官が忌々し気にそう言い放つ。

 

「グウッ!………ハアッ!………ハアッ!………」

 

と、ヘッドギアに付いていたランプが消えたかと思うと、八紘が項垂れ、脂汗を浮かべながらも、必死に呼吸を整えようとする。

 

「流石は風鳴の人間か」

 

「並みの人間ならばとっくに廃人となってると言うのに」

 

ギャル1とギャル2がそんな八紘を見ながらそう言い合う。

 

八紘に取り付けられている機械は、人間の脳から直接情報を引き出す装置だ。

 

内閣情報官である八紘は、国内外の様々な重要情報を握っており、フーマはそれに目を付けた。

 

だが、八紘も風鳴の人間。

 

拷問に近い装置からの反動ダメージに耐え、決して情報を渡そうとしなかった。

 

「………貴様等の思い通りにはならんぞ」

 

顔を上げ、ヘスラー指揮官達を睨み付けながら、八紘がそう言い放つ。

 

「貴様ぁっ!!」

 

それを聞いたヘスラー指揮官が八紘を何度も殴打する。

 

「…………」

 

その光景を不快感を露わに見ているファラ。

 

八紘誘拐はフーマ側の独断で行われており、ファラには一切通達が無かった。

 

それを抗議にアジトを訪れたのだが、当然の様に無視され、只々八紘が痛めつけられている光景を見せつけられている。

 

(幾らマスターのスポンサーとは言え、コレ以上は………)

 

と、最早我慢の限界が近づいていた時………

 

「お止めなさい、ヘスラー指揮官」

 

そう言う台詞と共に、神官ポーが音も無く現れた。

 

「ポー………」

 

「その男は護国に心身を捧げている者………どの様な拷問に掛けたところで無駄でしょう」

 

「では、如何しろと?」

 

「簡単です。如何に強靭な精神を持って居ようと、この男も人の親………それが弱点です」

 

「!?」

 

神官ポーの言葉に、八紘の顔色が変わる。

 

とそこで、アジト内に警報が鳴り響いた。

 

「!? 如何した!?」

 

「「「「「シュワシュワッ!!」」」」」

 

ギャル3の声で、ミラクラー達がコンソールを操作すると、壁に備え付けられていたモニターにアジトの出入り口を見張っている監視カメラの映像が映し出される。

 

そこには、停車した慎次の運転する車から降りて来る翼・奏・マリアの姿が在った。

 

「! 装者共!?」

 

「何故この場所が!?」

 

アジトの場所が突き止められた事に、ギャル4とギャル5が驚きの声を挙げる。

 

「丁度タイミングですね………ヘスラー指揮官」

 

「フッ、成程。そういう事か………」

 

神官ポーの言葉に、ヘスラー指揮官は納得が行った表情を見せた後、モニターの映る翼達を見て、不敵な笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フーマの地下アジトの出入り口………

 

「此処がフーマのアジトか………」

 

「如何にもな感じだな………」

 

一見洞穴に見えるアジトの出入り口を見ながら、翼と奏がそう言い合う。

 

「お父様、今行きます!」

 

「待ちなさい、翼。パパさんが人質にされてるかも知れないのよ。慎重に行きましょう」

 

「もうすぐ轟さんと雷さんも来ます。それを待って………」

 

逸る翼をマリアが止め、慎次がそう言いかけた、その時!!

 

「「「「「シュワシュワッ!!」」」」」

 

何処からともなくミラクラー達とアルカ・ノイズ達が飛び出して来た!

 

「!? ミラクラーッ!?」

 

「アルカ・ノイズも居るぞ!」

 

「気付かれた!?」

 

「! お父様が危ないっ!!」

 

マリア・奏・慎次が驚きの声を挙げる中、翼は接近に気付かれてしまったので八紘に危険が及ぶと考え、ギアペンダントを握る。

 

Imyuteus amenohabakiri tron

 

「退けええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」

 

聖詠を唱えてシンフォギアを纏うと同時に、進路上のミラクラー達とアルカ・ノイズ達を剣で斬り捨てながら、アジトへと突入した!!

 

「翼!? ああ、もう!」

 

「しょうがねえな、オイ」

 

Seilien coffin airget-lamh tron

 

Croitzal ronzell gungnir zizzl

 

それを見たマリアと奏も、聖詠を唱えてシンフォギアを纏うと、先ずは生身の慎次の安全を確保する為、周りのアルカ・ノイズ達を片付ける。

 

「緒川さん! 今の内に!!」

 

「すみません! 後は頼みます!」

 

槍でアルカ・ノイズ達を薙ぎ払いながら奏が言うと、慎次は車に乗り込んでその場から退避して行った。

 

「奏! 翼を追うわよ!!」

 

「おう!」

 

程無くして、ミラクラー達とアルカ・ノイズ達を蹴散らしたマリアと奏は、先に突っ込んで行った翼を追って、アジトに突入する。

 

その後を、『光る球』が追う様に浮遊して追従していたのに気付かず………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、先に突入して行った翼は、勢いのままにアジトの最深部まで到達しようとしていた………

 

「ハアアッ!!」

 

鋼鉄製の扉を切り裂き、部屋の中へと突入する翼。

 

グガアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

そこが八紘が拘束された装置が有る部屋であり、待ち構えていたギャル軍団とミラクラー達、そしてグリグリが身構える。

 

「待って居たぞ、風鳴 翼」

 

「…………」

 

ヘスラー指揮官がそう言う横で、ファラが複雑そうな表情で佇んでいる。

 

「つ、翼………」

 

装置に拘束されている八紘が、苦しそうにしながら翼に視線を向ける。

 

「! お父様っ! 貴様等あああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

ボロボロな八紘の姿を見て翼が激昂して、ヘスラー指揮官に斬り掛かろうとしたが………

 

「動くなっ!!」

 

「!?」

 

ヘスラー指揮官が剣を八紘に突き付けると、ピタリと動きを止める。

 

「風鳴 八紘の命は我々が握っているのだぞ。忘れないで貰おうか」

 

「クッ!………」

 

「翼………私に………構うな………」

 

「黙れっ!!」

 

自分の事など気にせずに戦うよう言う八紘を、ヘスラー指揮官が殴りつける。

 

「グウッ!!………」

 

「お父様っ!!」

 

「翼!………!」

 

「大丈夫かっ!?………!」

 

それを見た翼が悲鳴の様な声を挙げた瞬間に、マリアと奏が追い付いて来たが、2人も目の前の状況を見て、動きを止める。

 

「風鳴 翼………武器を捨てて貰いましょうか」

 

「…………」

 

神官ポーがそう言うと、翼は剣を投げ捨てる。

 

即座に、ギャル1とギャル2が、左右から翼を拘束し、マリアと奏から引き離す。

 

「「翼っ!!」」

 

「「「!!」」」

 

そして、ギャル3・ギャル4・ギャル5が間に割って入り、武器を構えてマリアと奏を牽制する。

 

「………私を如何する積りだ」

 

「貴方には風鳴 八紘から情報を引き出す為の役に立って貰います」

 

翼が睨み付けながらそう問い質すと、神官ポーは涼しい顔のまま何かの液体が入ったビーカーを取り出す。

 

「何だ、それは?」

 

「コレは不思議獣の血液に手を加えた物………コレを飲めばその人間は喉を焼かれ、二度と声を出す事が出来なくなるでしょう」

 

「!? 何っ!?」

 

「!?」

 

「!!」

 

神官ポーの言葉に、翼と八紘、更にファラにも動揺が走る。

 

「さて、風鳴 八紘………貴方の持つ情報を渡して頂きましょうか。断った場合、貴方の娘は二度と歌を唄えなくなるでしょう」

 

グガアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

神官ポーが八紘にそう言っていと、グリグリがビーカーを受け取り、翼の方に近づくと、片手で顎を押さえて無理矢理口を開かせる。

 

「!!」

 

グガアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!

 

その翼の口に、ビーカーの液体を無理矢理流し込もうとする。

 

「待ちなさい! それでは………」

 

「お前は黙って居ろっ!!」

 

翼が歌えなくなってしまうとキャロルの計画が頓挫してしまう為、ファラが抗議の声を挙げようとしたが、ヘスラー指揮官の怒声に掻き消される。

 

「! 待てっ! 待ってくれっ!!」

 

「では、情報を渡すのですね………」

 

「!!………」

 

慌てて声を挙げた八紘に、神官ポーはそう言い放ち、途端に八紘は力無く項垂れる。

 

「………出来ん………私には出来ん………翼の………夢を潰す事など!」

 

「お、お父様………」

 

「すまない、翼………お前には風鳴の使命など気にせず、自分の夢を追って欲しかった………だから敢えて突き放す様な事ばかりを言って来たしまった………許してくれ」

 

「! やっぱり………そうだったのですね」

 

八紘の真意を知り、翼の目に涙が溢れる。

 

「何をゴチャゴチャと言っている! さっさとせんかっ!!」

 

と、そんな感動の場面など知った事じゃないとばかりに、ヘスラー指揮官が再度怒声を挙げる。

 

「!!………」

 

そんなヘスラー指揮官を八紘は睨み付ける。

 

その時………

 

あのマリアと奏を追う様に付いて来ていた光球が、八紘の身体に入り込んだ。

 

「!?」

 

すると、八紘の身体から砂の様な物が零れ堕ち始める。

 

「! 何だ、ソレは!?」

 

八紘の異変に気付いたヘスラー指揮官がそう言い放った瞬間………

 

「フンッ!!」

 

何と八紘が拘束を力任せに無理矢理破壊して脱出した!!

 

「!? なっ!?」

 

「どすこいっ!!」

 

更に、驚きの声を挙げたヘスラー指揮官に張り手を喰らわせたかと思うと………

 

「!? グアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

グガアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?

 

すると、ヘスラー指揮官はまるで人形の様にブッ飛び、翼に液体を飲ませようとしていたグリグリを巻き込む。

 

両者はそのまま床に転がり、ビーカーは叩きつけられて割れ、液体が床に広がる。

 

「「!? ヘスラー指揮官っ!!」」

 

「「「!?」」」

 

翼を拘束していたギャル1とギャル2が慌てて駆け寄ってヘスラー指揮官を助け起こし、ギャル3・ギャル4・ギャル5も動揺する。

 

「お、お父様?………」

 

翼も信じられないモノを見る様な目で八紘を見ていると………

 

「親と娘の絆………泣けるでぇっ!!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、()()()()を光らせながらそう言い放ったかと思うと、何処からともなくベルトの様な物を取り出し、腰に巻くと、バックル部の金色のスイッチを押す。

 

すると、ベルトからミュージックホーンの様な音が鳴り出す。

 

「変身っ!!」

 

そこで、八紘がまた何時の間にか右手に握っていたパスの様な物をバックル部にタッチしたかと思うと………

 

その身体が変化し、金色の鎧の様なアーマーが装着された。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

その光景に、その場の居た全員が驚愕していると、何処からともなく懐紙の様な物が舞い散り出す!

 

「俺の強さにお前が泣いた! 涙はコレで拭いとけっ!!」

 

金色の戦士………『仮面ライダー電王・アックスフォーム』は右手で顎を掴んで首を鳴らすと、舞い散る懐紙を差しながらそう言い放つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

気絶していた翼は、自分の幼少期に使っていた部屋で目覚める。
そして部屋の状況から推察したマリアと奏のより、八紘の真意を知ります。
そこへ現れたのは日本一の男!
彼からの情報で、フーマのアジトへ乗り込みます。
早川さんを同行させなかったのは本人の弁である、翼の出番である事なのと………
あの人が出張ると、美味しい場面全部持って行っちゃうので(笑)

八紘から機密情報を得ようとしていたフーマは、突入して来た翼を利用。
卑怯なフーマの手に屈するかと思われた瞬間………
何と、八紘が『K八紘』となり、仮面ライダー電王・アックスフォームに変身!
ココで電王を出したのは、ちょっと後程やりたい事がありまして、その伏線張りです。
それが何かは後のお楽しみで。

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