戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達   作:宇宙刑事ブルーノア

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第25話『復讐に、少女は歌を捨てる………』

暫く時は遡り………

 

入院している響の元に居た未来は………

 

「ホラ、コレ! 小学校の運動会の写真! 響、かけっこで転んで泣き出しちゃって………」

 

響の記憶を取り戻させようと、アルバムの写真の1枚を指して響に見せている未来。

 

「…………」

 

見ている響は若干困惑気味な表情を浮かべている。

 

「でもね、轟お兄ちゃんがすぐに駆け寄って来てくれてね。私も一緒に行って、3人で最後まで走り切ったんだよ」

 

未来は続いてその隣の転んで泣いていた幼い響を助け起こしている轟が写っている写真を指す。

 

「この人………」

 

「そう、十城士 轟………私達にとってお兄ちゃんみたいな幼馴染で、私達2人がその………す、好きな人だよ///

 

少し口籠りながらも、頬を染めて言い放つ未来。

 

「私が………この人の事を?」

 

だが、今の響にとって、それは他人事に聞こえていた………

 

轟が想い人だと言われてもピンと来ない………

 

(コレって………()()()()()()()()?)

 

それどころか、轟と未来に支えられて、涙を浮かべたままながらも明るく笑って居る幼き日の自分の姿が、自分でない様にすら感じられていた………

 

「響………轟お兄ちゃんの事も思い出せないの? ホラ、コレ!」

 

とそこで、未来は響のスマホを取り出すと、待ち受け画面に設定してある再会を記念して取った轟・響・未来のスリーショットを見せる。

 

「………分からない」

 

だが、響は翳りの在る表情のままそう返す。

 

「響………」

 

そんな響の態度に、未来は気落ちしたかの様な様子を見せる。

 

(ううん、駄目駄目! 落ち込んでなんて居られない! 私が響の記憶を取り戻させないと!)

 

しかし、響の記憶を取り戻せるのは自分だけだと、すぐに気合を入れ直す。

 

「…………」

 

そんな未来の姿に、響の表情の翳りが若干濃くなる………

 

「大丈夫だよ、響! 今は思い出せなくても、必ず思い出せるから!」

 

それを見逃してしまった未来は、響の事を真っ直ぐに見ながら笑顔でそう励ます様に言う。

 

未来は焦ってしまっていた………

 

響の記憶を取り戻せるのは自分しか居ない………

 

一刻も早く記憶を取り戻させる事が響の為になると………

 

だが、それは………

 

彼女にとって()()()()()()を招く事となってしまう………

 

「そうだ! 弓美達に会いに行こうよ! 皆に会えば、記憶も戻るかも知れないよ! 身体はもう良いんでしょう?」

 

良い事を思い付いたと、パンッと手を鳴らしながらそう言う未来。

 

融合症状だった影響か、普段から厳しい特訓を重ねている結果か、瀕死の重傷を負ったにも関わらず、既に殆ど回復しており、入院しているのは記憶喪失の方が主な理由であった。

 

その為、許可さえとれば外出する事は許されている。

 

「弓美?………」

 

「同じ学校の友達だよ。待ってて、お医者さんに許可貰って来るから」

 

「あ、ちょっ………」

 

響の返事も聞かず、未来は主治医に許可を貰うべく病室を出て行く。

 

「…………」

 

1人残された響は、窓の外へと視線を向ける。

 

そこから見える光景を、今の響は知らない………

 

いや、今の響が知って居る場所など、世界の何処にも無い………

 

それはまるで………

 

知らない場所で1人迷子になっているかの様な感情だった。

 

「!………」

 

途端に恐怖を覚え、響は身体を震わせる。

 

(………この世界に………()()()()()()()()が在るの?………)

 

震える身体を自分で抱き締めながら、自問する響。

 

すると………

 

『………立花 響』

 

「!? 誰っ!?」

 

突如聞こえた不気味な声に、響は驚きながら辺りを見回す。

 

しかし、病室内に居るのは響1人だけであり、他人の声が聞こえる筈が無い………

 

「………気のせい?」

 

『………立花 響よ』

 

「!?」

 

幻聴かと思った瞬間に、再び声が聞こえて来て、響は驚愕する。

 

何故ならその声は………

 

響の頭の中に直接聞こえて来たからだ!

 

「何コレ!? 頭の中に声が!?………」

 

『居場所が欲しければ我が元へ来い………この世界はお前を受け入れぬぞ』

 

「! 誰っ!? 一体誰なの!?」

 

「響!? 如何したのっ!?」

 

誘惑する様な声に響が怒鳴り返すと、戻って来た未来が仰天する。

 

「あ………」

 

「大丈夫!? 何かあったの!?」

 

様子のおかしい響に未来は駆け寄り、心配する。

 

何時の間にか、響の頭の中に直接響いていた声は聞こえなくなっていた………

 

「………ううん、何でも無い」

 

「何でも無いって、そんな事………」

 

「何でも無いって言ってるでしょっ!!」

 

「!?」

 

詳しく聞き出そうとした未来だったが、そこで響はしつこいと言う様に怒鳴った。

 

「………ゴメン」

 

が、すぐに謝ると気まずそうに未来から視線を反らす。

 

「! う、ううん! 私の方こそ、ゴメンね! さっ、お医者さんから許可は貰って来たよ! 弓美達もすぐ来てくれるそうだから、行こうっ!!」

 

「…………」

 

未来も取り繕う様にそう言うと、余り乗り気な様子に見えない響に出かける支度を促すのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10数分後………

 

病院近くの公園………

 

未来から連絡を貰って駆け付けた弓美達が、公園のベンチに座る響を前に、彼女の事に付いて話していた。

 

「でね、その時のアンタったら、おばちゃんのお好み焼きを5人前もペロリと平らげてさあ。流石は好きなものはごはん&ごはんなんて言う食欲の化身だよね!」

 

「ごはん………」

 

「響さんは明るく楽しいお方でした。何時も楽しそうに笑顔を浮かべて、見ているこちらも安心して笑みを浮かべてしまう素敵な笑顔を」

 

「笑顔………」

 

「ビッキーと言えば、やっぱり人助けだよね。困ってる人は絶対に見過ごさない。まるでヒーローみたいでさ」

 

「人助け………」

 

弓美・詩織・創世が口々に響の事を語るが、やはり響にはそれが自分の事であるとは思えない………

 

まるで他人の話を聞いているかの様に感じられた………

 

「響さん、私も最近のばりじゃばって、写真があるのすうはんで見でけろ」

 

とそこで、小里が数枚の写真を取り出す。

 

それは全て、響がシンフォギアを纏って戦っている姿の写真だった。

 

本来ならば没収されてもおかしくない代物だが、彼女に関して記事にしない条件で特別に認められていた。

 

「………コレ、私?」

 

その中の1枚を手に取り、見つめる響。

 

「そうだよ。響は皆を守る為に戦ってたの」

 

「皆を守る………!? うっ!? ぐうっ!?

 

だが、未来がそう言ったのを聞いた途端、激しい頭痛に見舞われ、写真を落とすと両手で頭を押さえて苦しむ。

 

「!? 響っ!?」

 

「ど、如何したんだべっ!?」

 

「ちょっ! 大丈夫っ!?」

 

突然頭を押さえて苦しみ出した響に、未来達が慌てる。

 

と、その時………

 

「アレ~? ひょっとして、響ちゃんじゃな~い?」

 

「ホントだ、人殺しじゃん」

 

「まだ生きてたんだ?」

 

そんな言葉と共に、ガラと頭の悪そうなリィデアンではリディアン音楽院のではない数人の女子高生達が響達の傍に寄って来た。

 

「! 貴方達は!?」

 

その女子高生達を見た未来の表情が歪む。

 

彼女達は、響と未来の嘗ての同級生であり………

 

あのライブの悲劇を響を迫害し、虐めていた連中だった。

 

妖魔一族の裏工作で始まった生存者狩りと呼ばれるライブ生存者への迫害だったが、生存者狩りの支援で利益を得ている者達が居た事の暴露と、国際社会からの非難に政府が重い腰を漸く挙げた事で何とか騒動は終結した。

 

しかし、生存者狩りに参加していた者達の中には未成年も多く居り、その大半は少年法によって守られ、軽い処罰で済まされていた。

 

この連中も学校を退学になったものの、御覧の通りに当人達に反省の意思は無く、オマケに揃って親が権力者だった為、別の学校へ編入し、平然且つのうのうとしていた輩だ。

 

「………誰?」

 

当然ながら、今の響には、彼女達が何者なのか分からない。

 

「はあ? ふざけてんの、アンタ?」

 

「何か最近活躍してるみたいだけどさあ………何ソレ? 償いでもしてる積りなの? 人殺しがさあ」

 

「申し訳ないと思ってるならアンタが死になさいよ。それが1番死んだ人達の為になるっての」

 

そんな響に向かって罵詈雑言を浴びせる女子達。

 

「!?………」

 

「ちょっ! 何言ってんのよ!!」

 

「幾ら何でも酷過ぎます!!」

 

「君達、何様の積りなんだい!!」

 

それの響が衝撃を受けた様な表情を見せた瞬間、弓美・詩織・創世が響を庇う。

 

「何よ、アンタ達? 人殺しを庇うの?」

 

「コイツはねえ、あのライブで自分だけ助かりたくて他人を踏み潰して殺した女なのよ!」

 

「その上、国からお金まで貰ってるのよ!」

 

「そ、それは誤解だったって、後かきや報けんどがあっだ筈じゃし。それサ、生存者狩りは裏の人間が私腹ば肥やす為サ煽っていたって………」

 

そんな弓美達にまで敵意を向ける女子達に、小里が生存者狩りの真実を説明するが………

 

「五月蠅いわね! 少なくてもコイツのせいで私達はいい迷惑してんのよ!」

 

「あの学校、結構気に入ってたのに、退学する羽目になって!」

 

「何よ、ソレ! 只の逆恨みじゃない!!」

 

結局のところ、彼女達は響のせいで自分達が嫌な目に遭わされたと逆恨みをしているだけであり、未来の怒りの声が挙がったのを皮切りに、両者は激しく揉め出す。

 

「う、うううう………」

 

だがその時、響が再び頭を押さえて苦しんでいる様子に誰も気付かなかった………

 

(あ、頭が………頭が痛い!………如何して!?………)

 

『見たか立花 響………コレが人間の本性だ』

 

(!?)

 

激しい痛みに苦しんでいた響の頭の中に、再びあの不気味な声が聞こえて来た。

 

『貴様が守ろうとしていた人間が、貴様に何をしたのか………良く思い出すのだ!!』

 

「!?」

 

と、不気味な声がそう言った瞬間………

 

響の脳裏に、ある記憶が甦る。

 

そう………

 

あのライブの悲劇の後に、自分の身に起こった理不尽な仕打ちの事が………

 

『生き残った』、只それだけの理由であらゆる人々が彼女を罵倒し、嫌がらせを行い、恰も自分達が正しいと吹聴する様………

 

本来ならば、響は残された母と祖母、未来の存在、そして轟の言葉でそれを乗り越えていた。

 

だが、今の響にその記憶は無く………

 

只生存者狩りの迫害を受けた記憶だけが鮮やかに甦って行く。

 

(如何して?………如何して私がこんな目に遭うの!?………私は只生き残っただけ………それだけなのに!!)

 

『それが人間だ………自分こそが正しいと嘯き、他者を平然と乏しめ、死にすら追い遣る………実に愚かな生き物だ』

 

(辛い………苦しい………誰も傍に居てくれない………)

 

『その苦しさから解放されたいのならば、貴様を受け入れなかった人間共に復讐するのだ』

 

()()?………)

 

『そうだ、復讐だ………我が元にくればその為の力と手段を与えてやる』

 

(貴方は………誰?)

 

『我が名はクビライ………フーマの大帝クビライ』

 

響に向かって復讐を促す声………クビライ大帝

 

(復讐………そうだ、復讐だ!………アイツ等に………私を受け入れなかったこの世界に………復讐してやる!!)

 

怒りと悲しみ、そして憎悪の感情に支配された響の心は流されるがままに復讐を決意してしまう。

 

「謝って! 響に謝ってっ!!」

 

「人殺しを人殺しといって何が悪い………!? ゲバッ!?」

 

未来に詰め寄られていた女子が、そう言い返していた時………

 

突然頬に衝撃が走ってブッ飛ばされ、地面に倒れた。

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

「…………」

 

仰天した一同の視線が、その正体………女子を殴った響に集まる。

 

「ひ、響っ!? 何を………」

 

「や、やってくれたわね! この人殺………!? ガバッ!?」

 

「…………」

 

未来の困惑の声を遮る様に声を挙げた別の女子に、響は無言でボディブローを見舞う。

 

「ウゲエエエエエッ!?」

 

蹲った女子が吐瀉物を撒き散らし、その上に倒れる。

 

「ヒッ!?」

 

「!!」

 

それを見て悲鳴を漏らした別の女子の横っ面に、今度は蹴りを叩き込む響。

 

蹴られた女子は先程殴り飛ばされた女子の元へブッ飛び、上に積み重なる。

 

「キャアアアアアアッ!!」

 

「ウワアアアアアアッ!!」

 

忽ち残っていた女子達が悲鳴を挙げ、倒れた仲間を放っておいて逃げ出す。

 

「…………」

 

響は逃げて行った面子には目もくれず、積み重なっている女子達に近づくと、拳を握った右腕を振り被る。

 

「駄目! 響っ!!」

 

と、その右腕に未来がしがみ付いた!

 

「………放せ」

 

「響の手は誰かを傷つける手じゃない! 響の手で今日に繋がってる人、沢山いるよ!!」

 

「放せっ!!」

 

「キャアッ!?」

 

説得を試みた未来だったが、響はそんな未来を強引に振り解いた!!

 

「ヒナ!」

 

「小日向さん!」

 

「大丈夫だか!?」

 

「ちょっと、響! 何やってるのよっ!?」

 

振り払われて倒れた未来に、創世・詩織・小里が駆け寄り、弓美が響に向かって叫ぶ。

 

「…………」

 

だが響は、そんな弓美達を睨み付ける。

 

「うっ!?」

 

「立花さん!」

 

「如何したんだよ、ビッキー! ()()()()()()()()()()!」

 

「………()()()()()?」

 

弓美が怯んでいると、詩織と創世が声を挙げるが、創世の言葉に響がピクリとしてそう呟く。

 

「私らしくないって何?」

 

「えっ?………」

 

「響! 響の手は、誰かを傷つける手じゃないよ!! 私は知ってる! 私だから知ってる!! 響は皆を守る為に………」

 

立ち上がった未来が、響にそう訴え掛けたが………

 

「じゃあ何っ!? 今の私は私じゃないって言うの!?」

 

「!?」

 

響のその叫びで、未来はハッとなる。

 

響の記憶を取り戻させようと躍起になる余り、今の響の人格や性格と言ったものを蔑ろにしてしまっていたと。

 

「ち、違う! 私は………」

 

「…………」

 

慌てて何か言おうとする未来の目の前で、自分のスマホを取り出すと、さっき未来が見せて来た待ち受け画面を見せつける。

 

「アンタなんか………大っ嫌いだっ!!」

 

そしてそう叫ぶとスマホを地面に叩き付けた上に踏み潰した!!

 

「!?!?」

 

その光景を見た未来がガクリと膝から崩れ落ちる。

 

「未来っ!?」

 

「ヒナッ!?」

 

「………誰かを守る事なんかに意味は無い………あんな愚かな連中を何で守らないといけないだ………復讐してやる………私を虐げた連中とこの世界に! 復讐してやる!!」

 

弓美や創世達が慌てる中、響が宣言するかの様にそう言い放つ。

 

『そうだ、立花 響………貴様のその怒りは正当な権利だ』

 

とそこで、不気味な声が響いて来たかと思うと………

 

空中に半透明なクビライの顔が浮かび上がった。

 

「!? アレはっ!?」

 

「フ、フーマのク、クビライ大帝だぁっ!?」

 

詩織と小里が驚愕の声を挙げる。

 

『復讐の為の力を与えて遣ろう………』

 

そこで、クビライの額の第3の目が怪しく輝いたかと思うと、そこから光球が出現し、それが響の右腕に停まると、ブレスレットの様な物となる。

 

「! エレクライト、スイッチオンッ!!」

 

響がそのブレスレットを構え、そう叫んだかと思うと………

 

彼女の身体を、紫色をした翼の付いたアーマー………『エレクライト』が装着された。

 

「! ひ、響………」

 

「「「!!………」」」

 

『さあ来い、立花 響………今こそ復讐の時だ』

 

弓美達が唖然となっている中、クビライがそう言い放つと空間が歪み、不思議時空に似た空間の穴が開く。

 

「…………」

 

エレクライトを纏った響は、その穴の中へと歩いて行く。

 

「! 響! 行っちゃ駄目っ!!」

 

「…………」

 

弓美が叫んだが、響は振り返る事もせず、穴の名へと消える。

 

『フフフフフ………』

 

クビライが不気味な笑い声を残して消えると、穴自体も消えてしまう………

 

「「「「…………」」」」

 

残された弓美達は唯々呆然となる。

 

「…………」

 

とそこで、膝から崩れていた未来が不意に立ち上がったかと思うと、フラつきながら響が踏み潰したスマホの傍に寄る。

 

「…………」

 

その場に座り込むと、スマホを拾い上げる未来。

 

スマホは完全に壊れており、画面部分は罅割れ、何も映っていない………

 

「未来………」

 

「ヒナ………」

 

遅れて弓美や創世達が傍に寄ったかと思うと………

 

「………フ………フフフ………」

 

「? 小日向さん?」

 

「フフフフ………ハハハハ………」

 

「ど、如何しだっ!?」

 

突然笑い声を漏らし始めた未来に、詩織と小里がギョッとすると………

 

「アハハハハハハッ!!」

 

未来は大声で笑い始めた。

 

しかし、その表情は笑って居るどころか目から完全に光が消えており、涙が止めど無く流れ出ていた。

 

「未来っ!?」

 

「ヒナ! しっかりっ!!」

 

「アハハハハハハッ!!」

 

弓美と創世が慌てるが、異変を察知して出動したセレナが駆け付けるまでの間、未来は狂った様に笑い続けるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は戻り、現在………

 

深淵の竜宮内にて………

 

「ウオオオオオオォォォォォォォッ!!」

 

「!………」

 

ガン=カタの様な動きで響に至近距離から発砲するクリスだが、響は二振りの直刀………『エナジーブレイド』でハンドガンを反らし、躱して行く。

 

「!!」

 

「! ゲボッ!?」

 

そして一瞬の隙を衝き、クリスの腹にヤクザキックを蹴り込む!

 

「!」

 

そのまま、腹を蹴られて上体が下がったクリスの首をエナジーブレイドを握ったまま掴んだかと思うと、振り回して投げ飛ばす!

 

「ゴバッ!?」

 

施設の壁に背中から叩き付けられ、クリスが一瞬悶絶する。

 

「ゲホッ! ゲホッ!………コイツゥッ!!」

 

「…………」

 

怒りのボルテージが上がって行くクリスに対し、響は冷め切った表情を崩さない。

 

「何でだ!? 何でだよ!! お前の手は、誰かと繋がって、誰かを守る為のもんじゃなかったのか!!」

 

「誰かを守る? 何故私がそんな事しないといけないの?」

 

「! 何っ!?」

 

「守って何になるの? その誰かが………私に何をしたの!?」

 

「!!」

 

響の言葉に、クリスの脳裏に前日聞いたライブの悲劇での誹謗中傷の事を思い出す。

 

「まさか、お前………」

 

「そうだ! 人が、世界が私を受け入れないのなら………私は復讐してやる! 人と世界に!!」

 

憎悪に溢れた目をしながら響がそう吠える。

 

「! それがフーマに組みした理由かよ!!」

 

「世界の分解………私を受け入れなかったこんな世界なんて………無くなってしまえば良いんだ!!」

 

「馬鹿野郎オオオオオオォォォォォォッ!!」

 

響の言葉に、クリスの悲痛な叫びが深淵の竜宮内に木霊するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

前回、敵となって現れた響。
一体彼女に何があったのか?

失った記憶を取り戻させようと必死だった未来。
しかし、その彼女の行為が、知らずに響をかえって傷付けてしまう事に………
そして運悪く、あのライブの悲劇での生存者狩りを行っていた上に反省の色無しな元同級生に遭遇してしまった事で、最悪の記憶だけが甦ってしまう。
そこへクビライが誘いを掛けた事で、響は自分を虐げた人々と世界へ復讐する事を決意してしまったのです。

これはある意味、響の可能性の1つですね。
原作の響は勿論、所謂グレ響も心根が優しかったのでノイズに対しては怒りと憎しみを持っていましたが、自分を虐げた人間に対して恨みを抱くと言う様な事はありませんでした。
しかし、ウチの記憶喪失となった響はその心根の優しさが消えてしまっていた事でタガが外された状態となっており、そこへクビライの誘惑が来て、復讐を決意してしまったのです。
なので、洗脳とはちょっと違う状態と言えますね。
果たして、復讐を決意した響を止められるのか?
そして、未来のメンタルは?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。
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