キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン
授業が終わり昼休みの時間がやってくる。騒々しい教室を抜け出し僕はいつもの屋上への階段に向かった。別に一人でいることは嫌いでは無いが少し退屈に思っていた時だった。
目の前に彼女が現れたのだ。
「珍しいね渋谷さん。どうしてこんなとこに? いつもは友達に囲まれているのに。今日は1人でお昼なの?」
「誰?」
流石に傷ついた。僕は渋谷さんのこと好きなのに。
「同じクラスなのに酷くないかい」
「思い出した。秋葉くんだ。ごめん最近ちょっと疲れてて」
そう言った彼女からは確かに疲れを感じたがそれ以上に焦りと絶望感を感じた。まるでこの先に何か用があるようだ。
まぁ名前を覚えていてくれたことは普通に嬉しい。
「それじゃあ。またね」
振り返って立ち去ろうとする彼女のカバンから何かがこぼれ落ちる。
僕にはそれに見覚えがあった。
「あ、それ」
「え、これの事知ってるの!」
突然僕の肩を押しながら大声で叫んだ。めちゃくちゃいい匂いがするが今はそれどころでは無さそうだ。
「ど、どうしたんだよ急に」
「いいから、なんでもいいからこれについて知ってること教えて!」
「なんでもって、それ【ドレスタ】のコンパクトじゃん」
「ドレ、スタ、?」
そう。彼女が持っていたのは【ドレス・スタイルバトル】略してドレスタと呼ばれるアクション型DCゲームのアイテムである。
読者の方にはプリキュア風の格ゲーを思い浮かべて貰えばいいだろ。ところで読者って誰だ?
「ゲーム、全然関係なかったみたい」
そのまま帰ろうとする彼女は今にも死んでしまいそうな顔をしていた。どうにもほっとけなかった僕はつい彼女の袖を掴んでしまう。
「待って」
そう呼び止めた瞬間だった。突然ピピピピと音がなり始める。そして
と音をたてながら僕と彼女の体がブレはじめた。
「うわっなんだこれ」
ビビって声を荒らげてしまう。そして次の瞬間僕達は森の中にいた。
「どこだここ」
「どうしてあなたまで、もしかして私に触れていたから」
どうやら僕がここにいるのは彼女に原因があるようだ。だがそんなことよりも僕はこの場所に既視感を感じていた。
「あれ、でもここ」
「あぶない」
その言葉が聞こえた瞬間に僕は彼女に押し倒されていた。やっぱりいい匂いがする。
振り返るとぬいぐるみのクマが拳を振り下ろしていた。殴られた地面はえぐられていて当たれば即死は免れないだろう。
「走って、逃げるよ」
彼女に手を掴まれたまま森の中に逃げ込んだ。どうやらうまく撒いたらしい。少し落ち着いたところで状況把握をするために彼女に質問した。
「ねぇ渋谷さん。これはどういう状況なの? 全然よく分からないのだけど」
「私だって分からない。でも私の身に起きたことは説明できる」
それから彼女は気づいたらコンパクトを持っていたこと、定期的にここに連れてこられること、もう何度もあのクマに殺されていることを涙ながらに語ってくれた。
「ありがとう、渋谷さん。辛かった出来事を語ってくれて。よく頑張ったね」
「秋葉君」
「さてと。恐らくだけどこの状況、僕なら何とか出来ると思う」
「ほんとに!」
うーん今日一の笑顔。可愛すぎる。写真に収めて額縁に飾りたいくらいだよ。
「とりあえずこれを見て欲しい」
そのまま僕は近くにあった樽を壊す。すると中からアイテムが出てきた。どうやらビンゴのようだ。
「どういうこと?」
「初めから既視感はあったんだ。見覚えのあるクマ、マップ、アイテム。
多分この世界はドレスタのゲームの世界だ。その証拠に渋谷さんのコンパクトと僕のカードがずっと反応している。これから僕の指示通りに動いて欲しい」
「っわかった!」
まず渋谷さんがコンパクトを開く。すると筐体が現れ始めた。そこに僕はカードをスキャンする。これにより渋谷さんは変身した。なんだそれ、可愛すぎるだろ。
「よし、渋谷さん。クマに攻撃するんだ」
僕の合図で攻撃しようとする渋谷さんは次の瞬間、クマに吹っ飛ばされていた。
「渋谷さん! どうして」
「身体が動かないの。でも変身のおかげか頑丈にはなってる」
そういうことか! どうして筐体まで出たのか不思議に思ったが今、完璧に理解した。これは僕が渋谷さんを操作するんだ!
「渋谷さん。これはどうやら僕が渋谷さんを操作してあいつを倒すしくみらしい。ただ、、、僕が下手をうてば渋谷さんが」
「大丈夫だよ。確かに怖いけど、今まで何も出来ずに殺されていたのに、秋葉くんのおかげで希望が見えてきたし」
笑いながらそういう彼女の身体は震えていた。ただそういう意味では彼女は幸運かもしれない。自慢じゃないが操作するのが僕だからだ。
「任せてよ、渋谷さん。僕が完璧に操作してあいつを倒してみせる」
「ははっ、とっくに任せてる」
期待には答えてみせる。そんな強い思いを胸に僕はパンチをくりだした。
次の瞬間、轟音と共にクマの上半身は吹っ飛んでいた。この時の僕達の気持ちは完璧に一致していたと思う。
いや
「や、やったの」
「うん。多分これで終わりだ」
空中にクエストクリアの文字が見えるので間違いはないだろう。
「やったー!」
渋谷さんはそのまま勢いで僕にハイタッチをしてくる。そして僕の手を握って言った。
「ありがとう! 秋葉くんのおかげ初めて死なずに済んだよ」
彼女の手は震えていた。だが先程の言葉は訂正しよう今日一の笑顔が今僕に向けられていた。なんとも言えぬ幸福感でボーとしているといつの間にか現実に戻されていた。
現実に戻って気づいたがどうやら時間が止まっていたようだ
「はい。これ私の連絡先」
「ありがとう。初めてもらった」
好きな人の連絡先を思わぬ形で手に入れてしまった。
「なにそれwじゃあまたね」
「うん。また」
あれから3日ぐらいが経過した。絶望感に溢れていた彼女はもう居なく、いつも通りの渋谷さんがそこにはいた。渋谷さんと喋ることはなくなって少し残念に思うこともあるが、彼女が笑顔でいられているだけでなんとなく満足していた。
だがその5日後、僕は絶望した彼女と再び出会うことになる。
拙い文章ですみません。ただ自分としては頑張ったとは思っています。
原作を知らない方はぜひ先に原作をご覧下さい。評価、感想等頂けると嬉しいです。