ヒロインは救われました。   作:そこらへんの競走馬

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書けしだい投稿していこうと思います。なので投稿時間は不定期です。まぁ1週間に少なくとも1つは出したいですね。


タダほどコワいものはない

「秋葉くん。お願い助けて」

 

 あの日から丁度八日後の放課後、僕の目の前には絶望を身に包み希望の眼差しを僕に向ける渋谷さんの姿があった。教室には他に誰もおらず、僕と渋谷さんの二人きりという、普段なら最高とも言える状況だったが彼女の様子を見るに、どうやらそんなことは言ってられないらしい。あらかた予想はつくが違うと恥ずかしいので聞いてみた。

 

「どうしたの。顔色悪いよ」

 

「また、あそこに連れていかれたの。もう解放されたと思ったのに」

 

 どうやら予想は的中していたらしい。まぁ僕に頼るあたりそれしかないか。

 

「そうか、それで僕に助けを求めに来たんだね」

 

「うん。お願い、もう一度あのクマを倒して欲しいの」

 

 僕は一瞬迷った。確かに僕にとってあのクマを倒すのは造作もないことだ。しかし突然よく分からないところに連れていかれて何が起こるのかも分からない。怖くないわけが無い。恐らく頼って来るのが渋谷さんで無ければ断っていただろう。

 

「分かった。手伝うよ」

 

「あ、ありがとう」

 

 渋谷さんの頼みならば仕方がない。それに彼女が僕を頼ってくれていることが嬉しかった。

 

「秋葉くんがいてくれてほんとに良かった」

 

 泣きながら僕の胸に飛び込んでくる渋谷さん。普通なら少し疑ってしまうが、彼女の体の震えが本心からの気持ちであることを伝えた。あとやっぱりめっちゃくちゃ良い匂いがする。

 

「ほら、泣かないで渋谷さん。それよりも聞きたいことがあるんだ」

 

「聞きたいこと?」

 

「そう。まずは次にいつ転送されるか。そして前回の転送で何があったのか」

 

 状況の把握はいつでも大切だ。情報は最強の武器とも言える。

 

「えっと、前の転送ではクマが二体出てきた。あと転送がおきたのは昨日の事だった。ただまだいつ転送が起こるかは分からない」

 

「なるほど。ありがとう」

 

 とりあえず敵は複数体いると考えよう。そして転送は一週間毎っぽそうだ。これについては情報が足りないので正しいとは言えないが、

 

「次いつ来るか分からないからとりあえず昼と放課後は一緒にいた方がいいと思うけど、どうかな」

 

「分かった。それで大丈夫。むしろお願いします」

 

 よしっ! 一緒にいる時間を作ることができた。しかし言ってることは筋が通っていて正しいのだが、なんだか彼女の隙につけ込んでいるようで悪い気がしてくる。

 

「それじゃあ。一緒に帰ろうか」

 

「うん」

 

 ──────────────────────

 

 渋谷さんと行動を共にし始めて四日が経った。僕達は今いつもの屋上への階段で一緒に昼ご飯を食べていた。あれから特に何も起きてはいない。やはり一週間毎なのだろうか。

 

「どうしたの。秋葉くん」

 

「いや、なんでもないよ」

 

 どうやら集中しすぎていたようだ。てか顔近! まつ毛長! この二人きりで昼ご飯と言う状況。もう四日目にも関わらずまだ慣れない。ちょっと童貞には刺激が強すぎる。そんなことを考えていると渋谷さんに話しかけられた。

 

「あのね。ひとつ聞きたいことがあるんだ」

 

「ん? なに」

 

「どうして秋葉くんは私を助けてくれるのかなって。助けてくれることは凄く感謝してるし嬉しいけど、秋葉くんのリスクを考えるとやっぱりちょっとね」

 

「そ、それは、、、。クラスメイトが困ってるのに助けないなんて選択肢はないからさ」

 

 見栄を張った。ここで渋谷さんのことが好きだからと言えないところがダメなんだろうな、僕は。

 

「優しいね秋葉くんは。優しすぎるよ。 ただ、私だけが一方的に助けて貰っていて、なんだか申し訳なくて、、、ちょっと罪悪感を感じてるの」

 

「つまり、渋谷さんは僕に何かを要求して欲しいってこと?」

 

「うん。まぁ、そういうこと」

 

 なんだなんだなんだ。どういうことだ。それって僕の願いを叶えてくれるってこと。好きな子が? あの渋谷さんが? 

 平然を装っているが脳内の僕は狂喜乱舞していた。

 お、落ち着け秋葉歪。焦るんじゃない。これは選択肢を間違えると全てが無に帰す可能性もある。つまり、ここでの最適解は

 

「分かったよ。じゃあ次のゲームで勝てたら一つ願いを言うよ」

 

「分かった。それじゃあ待ってるね」

 

 よし、これで考える時間が作れた。この間に何を頼むか慎重に決めよう。

 

 今日はそのまま午後の授業を受けて、渋谷さんと一緒に帰った。ちなみに授業は全く頭に入ってこなかった。

 

 ──────────────────────

 前回のゲームから一週間がたった。予測が正しければ恐らく今日がゲームの日だ。僕達は緊張した面持ちでいた。空はもう夕暮れどきである。

 すこし緊張をほぐそうと思い声をかけようとしたその時だった。ピピピピとコンパクトが音を立てる。

 

「「きた」」

 

 視界が急に切り替わる。どうやら前回と変わらず森のようだ。

 

「いくよ、渋谷さん!」

 

「う、うん」

 

 僕がカードをスキャンすると渋谷さんの姿が変わった。クマの数は一体。落ち着いた気持ちでコマンド入力をする。クマの上半身が吹き飛ぶ。それと同時に森の中からもう一体クマが飛び出してきた。

 

「秋葉くん!」

 

 大丈夫。事前情報でクマが複数体いる可能性は考えてある。僕は全く焦ることなくコマンドを再び入れる。もう一体のクマの腹に大穴が空いた。だが先程とは違い消滅はしない。どうやら頭を殺るしかないようだ。

 

「ジャンプしてキック」

 

 決まった。完璧といえるだろう。キックによりクマの頭は吹き飛んでいた。

 

クエストクリア

 

 

「やった! これで終われる」

 

 渋谷さんが喜び溢れた声でそう言った。どうやらこれが最後だと思っているようだ。だが本当にそうだろうか。恐らくこれはまだ続くという予感が僕の中にはあった。

 そんな僕たちの心を見透かすかの如く、突然音声が聞こえてくる。

 

【クエストクリアおめでとうございます。本ステージのボス(クマ×2)をクリアしましたのでこれにてチュートリアルを終わりたいと思います】

 

「え、なに? チュ、、、?」

 

「ゲームとかの最初にやる基本操作の練習みたいなものだよ」

 

「それってつまり」

 

 そう。つまりこのゲームは終わっていない。寧ろここからが始まりと言っていいだろう。

 説明を聞いた渋谷さんの顔は真っ青だった。それもそうだ。終わると思っていたことがまだまだ続くのだから。

 

【今回からはクリアするたび、新しいドレスカードが排出されるので頑張ってください】

 

 音声と共に光の玉がこちらに降ってくる。その玉に触れるとカードが一枚現れた。このカード、僕でも見たことがない。それに僕の知ってる中で一番強い。本当にどうなっているんだ、これは

 

 視界が切り替わる。どうやら現実に戻ってきたようだ。気になることは沢山ある。だが今はそんなことよりも渋谷さんだ。そう思い振り返ると

 渋谷さんの身体は震えていて、顔からは絶望が滲み出ていた。

 

「渋谷さん」

 

 声をかけると彼女は泣きながら僕には抱きつく。ちょっと色々とまずいがシリアスな空気でなるとか耐えながら僕は口に出した。

 

「この前のこと覚えてる。一つ願いを聞いてくれるってやつ」

 

 その言葉を聞いた途端、彼女は泣きやみ、すぐさま僕から離れ、硬直していた。なんて言うかちょっとザンネン。

 

「渋谷さん。僕の願いは、、、」

 

 顔を強ばらせながら聞く彼女に僕は大きな声で言った。

 

「僕と友達になって欲しい!」

 

「え、、、」

 

 呆気に取られた顔をする渋谷さん。ちょっと心外だが無理もないだろう。この状況では彼女に拒否するという選択肢などない。つまりなんでもできるということだ。

 だが僕は思う。そんなのは卑怯者のすることだし、真に僕が望むものは手に入らない。それに僕はそこまでクズじゃない。

 

「嫌なら断って欲しい」

 

「い、嫌なわけない。寧ろそんなことでいいの?」

 

 どうやら無理はさせていないようだ。安心した。というかその驚いた顔可愛すぎね。

 

「そんなことも何もこれは僕が望んだことなんだ」

 

「でも、、、」

 

「いいんだよ、これで。それよりも今日は疲れたでしょ。送ってくから家に帰ろう」

 

「、、、うん。ありがと」

 

 渋谷さんは微笑みながらそう返事をする。どうやら少し落ち着いたようだ。今日はもう大丈夫だろう。あれこれと考えるのは明日だ。色々あったがなんとか今日を乗り越えた。外の景色は相変わらず夕暮れだった。

 

 




秋葉くんが別人すぎる。まぁそういうコンセプトなんですが、

誤字脱字あれば報告お願いします。
評価や感想等頂けるとモチベが上がります。批評もあれば教えてください。
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