気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
手にまだ人を殴った感触が残っている。ぐにゃりとした血と肉の混ざるような感覚。思い出すとまた吐き気がしてきた。
「どうして、どうしてこんな目に!」
どうしようもないやるせなさが募る。それなのにそれをぶつける相手がいない。
コンパクトにはマッチング完了の文字が浮かび上がっている。また6日後にあのゲームが始まるということだ。憂鬱でしかない。それでも私はマシな方なのかもしれない。
「秋葉くん」
私には彼がいる。彼に助けて貰っている。そう、助けて貰っているのだ。つまり彼の優しさに甘えているということ。彼が私を助ける理由も分かっている。私はそこまで鈍感じゃない。
彼は私のことが好きなのだろう。友達だからと言っていたがそんなはずが無い。ただの友達にあそこまでできる人なんて一種の変人だ。
それでもあえて私は聞かない。聞いてはいけない。それがトリガーとなり私を助けなくなるかもしれない。
最近になって思うが彼の振る舞いは優しさがある。また顔も童顔なので少しイメチェンすればなかなかの美形になるだろう。
どうやら少なからず私も彼のことを意識しているらしい。これは嬉しい誤算だ。だって私は彼に縋るしかない。彼がいるから生きていけてるのだ。
縋る相手が嫌いな奴より好きな人の方がいいに決まっている。
ああ、本当によかった。もう私は秋葉くん無しでは生きていけない。けれども秋葉くんなら大丈夫。彼に嫌われてはならない。それが今の一番。
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部屋の中をアラームが鳴り響く。窓からは朝日が降り注いでいた。
「朝、か」
1日が経過したが頭の中は昨日のことでいっぱいだった。もちろんゲームのこともある。だがやはり渋谷さんのことがどうしても気になっていた。確実に彼女の心はすり減っている。たが、僕が彼女を心の面で支えることができるとしたら圧倒的勝利を捧げることぐらいだ。逆にそこだけは譲ってはいけない。
色々な思いを胸に学校へ向かった。
僕は今、再び呆気に取られている。以前と同じように、いやそれ以上に元気な渋谷さんがそこにはいたからだ。彼女の心は鋼で出来ているのだろうか。
まさか、そんなはずは無い。あの状態からこうなることなんてありえない。
不思議でならなかったがとりあえず自席につく。すると
「おはよー秋葉くん」
と渋谷さんに声をかけられた。臆することなく僕も返事をする。
「おはよう渋谷さん」
このやり取りはもうだいぶ慣れてきた。初めて朝に話しかけられた日から渋谷さんは朝の時間と昼の時間に話しかけて来るようになったからだ。
「この前秋葉くんが話してた【ソードアート・オンライン】読んだよ。まだ2巻の途中だけど設定が細かくて凄く面白いね!」
「そうなんだよ。それにその設定はあとの話にも繋がっていてね。なんとここから」
「ブー。もうダメだよ。ネタバレ禁止! また私が読んだら続きについて話そうね。あ、もうチャイムが鳴っちゃう。また後でね」
そう言いながら彼女は自席に戻って行った。
ブーって、いや、ブーって。口に指当てられながらブーって。可愛いの化身か何かですか? それに今日はなんだかいつもより押しが強くてそれも凄く良い。
幸福の中に漂っていると先生が入ってきて授業の挨拶を始めた。げ、1限古典じゃん。別に苦手な教科とかないけど古典はなんの役に立つか分からなすぎて嫌いだ。
この幸福感を邪魔されたくなかったので僕は夢の中に入っていった。
はっ! 、、、気づいたら古典が終わっていた。まだ少し意識がボーッとしている。すると後ろから声が聞こえてきた。
「秋葉くん。寝てたでしょ」
「し、渋谷さん。まぁ寝てたよ」
「もう! 頭が良くても授業はちゃんと受けないと。次移動教室だから一緒に行こ」
「ああ、うん。分かった」
なにこれ。僕まだ夢の中にいる? いつもは朝と昼の時間以外は別々に行動してるのに、今日はどうしたんだ。まぁ嬉しいからこちらとしてはウェルカムだけど。
渋谷さんはその次の時間もその次の時間も僕のところにやってきた。流石に周りもおかしいと思ったのかザワザワし始める。正直僕もおかしいとは感じている。が、理由が分からない。
不思議に思いながらお昼になったのでいつもの場所に向かった。
「渋谷さん。今日もはやいね」
そこには既に彼女がいた。これで2日連続だ。
「早く2人きりになりたくて急いじゃった。そんなところにいないでほら、こっちおいでよ」
そう言いながら彼女は自分の隣を軽く叩いた。特に断る理由もなく言われるがまま隣に座る。すると突然肩を捕まれ、そのまま膝の上に倒された。俗に言う膝枕と言うやつだ。いつものとはまた別のフローラルな花の匂いがする。
「ふふ、びっくりした。あ、いつもと違う匂いでしょ。今日はアイビーの香水なんだ」
理解が追いつかず固まってしまっていた。脳のキャパシティを超えたのだ。頭からは柔らかい太ももの感触、目には2つの山とその奥で微笑む彼女、耳からは心地の善い囁き、幸せの情報量が多すぎる。身動きが取れないでいると僕の頭を撫でながら彼女は言った。
「昨日もねマッチング完了ってきたんだ」
その言葉を聞いた途端、僕は落ちかけていた瞼を開いた。恐らくこれを聴き逃してはいけない。固唾を飲んで待っていると続きを話される。
「それでね、私このゲームのこと何も知らないなーって思ったんだ。だからさ今日の放課後ゲームセンターに行かない?」
「へ、?」
思わずマヌケな声が出てしまった。だってそれって捉え方によってはデートじゃん。変に身構えていたぶん驚いた。
「嫌、かな」
「全然! 全然大丈夫だよ!」
少し食い気味だったかもしれないが放課後にゲーセンに行くことは確定したわけだ。
その後は軽くドレスタの操作方法を教え、実践はゲーセンでということでお開きになった。
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放課後の帰り道、僕達はゲーセンに来ていた。渋谷さんがドレスタをやってみたいと言い出したのだ。僕としては放課後デートみたいなことができてとても嬉しい。
「結構むずかしいね。これ」
「でも渋谷さん。初めてにしては凄い上手だよ」
「ほんと! 頑張ってみようかな」
やばい。純粋で可愛すぎる。なにこれ天使?
「ふー、なんとか勝てたー。結構疲れるね。うん? なにこれ、ランキング?」
「あぁ、それはね全国でのドレスタの強さの順位みたいなものだよ」
「そーなんだ。じゃあここにいる人があのゲームに参加してたら大変そうだね」
「そ、そうだね」
恐らく、ランキング上位勢でも僕ならなんとか勝てると思う。なんてったって僕はランキング2位だからな。ただ、それを渋谷さんに言うのはなんだかイキってる奴みたいでダサいからやめておいた。
コマンド入力のコツやアイテムの効果など細かいところをレクチャーをしているとあっという間に時間が過ぎていった。粗方出来るようになったので、少し早いが帰ろうとした時だった。
「なぁ、あんた達って」
突然背後から声をかけられる。知らない声だと思いながらふりかえると、そこには僕より少し大きい金髪の男がいた。見覚えがある。つい最近あったようなと記憶を辿って気がついた。
こいつ、この前の対戦相手だ
「渋谷さん!」
咄嗟に手を掴んで走り出す。まずいまずいまずい。何されるかわかんないぞ。必死に走っているがなかなか振りきれない。これは僕を囮にして渋谷さんを逃がすしかないかと考えていると、金髪が悲痛な声で言った。
「待ってくれ。違うんだ。助けてくれ、このままだとユウが、ユウがっ!」
メンヘラっていいですよね。友達には理解して貰えませんでしたが。
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