とあるオタク女の受難(インフィニット・ストラトス編)。リメイク 作:SUN'S
「織斑一夏、篠ノ之箒、次はどっちだ?」
そう言うと先輩はIS学園の指定制服のブレザーを投げ捨て、ゆっくりと歩み寄ってくる。千冬姉と向き合ってるときと似た感覚、いや威圧感だけなら先輩のほうが上かもしれない。
「白鴎、紅椿!」
「…良いだろう、来い」
俺の隣を抜け出した箒が左右の手にIS主力武器の二振りの太刀を呼び出す。今まで真っ直ぐに正道を進んでいた箒が二刀流を駆使し、生身の先輩と渡り合っている。
篠ノ之流の足捌き、先輩に教えられた剣術、それらを織り混ぜた篠ノ之箒の完全独自の我流によって先輩の身体に傷跡が出来た。
「今だ、一夏ァ!!」
「ああ、分かってる!」
俺は箒が後退すると同時に駆け出す。
ひとりじゃ先輩に勝てない。だけど、俺には箒がいる。先輩の突きを太刀で受け止め、刀身を殴って押し返す。ふわりと先輩が宙に押し出され、そこを箒が狙って斬りつけるも避けられる。
まだ、先輩はISの腕部分を展開しているだけ。俺達はほとんどISを展開した状態、辛うじてスラスターや脚部は展開していないけど。もう完全展開しても可笑しくない。
「どうした、私に勝つんじゃなかったのか?」
少しガッカリしたようにつぶやき、俺の胸元を掴んで持ち上げるとボディにえげつない威力のパンチを叩き込まれる。千冬姉に予め見せてもらったシュトロハイム家の伝統芸の一つだ。
「ごほっ、ごえぉっ!?」
「だ、大丈夫か…?」
ああ、マジでやばい。
ただのボディに一発で死にかけた。俺のそばに駆け寄ってきた箒に大丈夫だと伝えながら立ち上がり、未だに静観を続けている先輩を見る。
さっきもそうだ。
先輩は攻めれば勝てる瞬間を、わざと見逃している。俺達が弱いから、そうやって調整しているんですか?と言いかけ、すぐに思い止まる。先輩がそんなことするはずがないからだ。
「カイザアァァァッ……ウェイブッ!!」
俺が考え込んでいると先輩は両の手を大きく左右に広げ、地震と錯覚する程の踏み込みと同時に突き出された両手から光弾が放たれ、俺達を呑み込んだ。
『カイザーウェイブ』
どの試合でも必ずと言っていいほどトドメとして繰り出される先輩のとっておきの必殺技が俺達を吹き飛ばした。千冬姉の一撃より重たくてキツい衝撃に蹲ってしまう。
ああ、やっぱり先輩は強いなぁ…。
「まだ立つのか」
「えぇ、私は強くなったと…まだ伝えきっていません。なにより私は貴女に勝ちたい。この
「は、ははっ、そうだよな。まだまだ先輩に強くなったって伝えきってないもんな。先輩、俺達は何がなんでも勝ちに行きます。覚悟してください!」
「そうか。ならば私も本気になろう」
そう言うと先輩はフルスキンのISを纏った。ラウラのシュバルツェア・レーゲンにも見えるが違う。武装が一つもついていない。
こじつけるように言えば爪だ。
先輩の専用機の武器は鋭利な爪しかない。
「さあ、来い。
俺達は顔を見合わせた。だって、この数ヵ月間ずっとフルネームで呼ばれていた。それが初めて、名前だけで呼ばれたんだ。嬉しくないわけがない。
「「はいっ!!」」
俺達は先輩に向かって駆け出す。
縦横無尽に振るわれる三振り太刀を簡単に捌き、先輩は刀身を弾いて反撃してくる。顔面を殴られながら切り返し、腹部を蹴られながら突き返し、だんだんと先輩に太刀が掠り始める。
「ギガティックサイクロンッ!!」
十数回も連続で行われるタブルラリアットを受け、俺と箒は空中に放り出される。マジかっ。先輩、こんなこともできるのかよ。
「これでトドメだ…カイザアァァァッ!!!」
「箒イィィッッ!」
「ああ、任せろ!!」
俺は箒を太刀で打ち出す。
「良い動きだ。だが、甘い!」
「なっ、があぁぁぁっ!!?」
先輩がカイザーウェイブを繰り出すよりも先に箒の袈裟斬りが彼女の身体を裂き、夥しい量の鮮血が舞い上がる。
しかし、先輩はこれも予想していたのか。勝ったと油断した箒を打ちのめし、さっきのダブルラリアットで吹き飛ばした。
「ありがとう、箒。ようやく先輩に近づけた」
俺は先輩の腕を掴んで力任せに投げ飛ばし、ゆっくりと太刀が下段に構える。この技は先輩に使うってずっと決めていた。
「百鬼乱閃」
すべての技を解き放つ。無数の俺の幻影が先輩に飛びかかり彼女を翻弄する。
「これが蜃気楼の到達点。俺のとってきです!」
「確かに良い技だ。しかし、お前も甘いな…」
そう言うと先輩は真っ正面から突き進んで俺を殴り飛ばした。ああ、くそ、勝てると思ったんだけどな。薄れていく意識の中で楽しそうに笑う先輩を見たような…気がした。
今回のお話で最終回です。
読んでくれてありがとうございました。
次回作も出したら読んでくださいね。