綾小路がグループに入り、その後7人で遊びに行ったり、俺と綾小路がスタメン入りしたりと色々あったが、ついに4月も終わりを迎える。
ポイントが変動する可能性を考えて5万ポイントほど残してあるが、真鍋たちは大分使ったようだ。まあでも4月中似合ったテストなんて抜き打ちの小テストくらいだし大丈夫だろう。
にしてもあのテスト、どの教科も最後の3問だけやけに難しかったな…数学と理科はその3問が全く解けなかった。英語と社会は多分満点だろうけど。
「仁科くん、カラオケいこー」
「悪い、今日部活ある」
「そっかあ…」
あれから真鍋たちとは毎日のようにどこかへ遊びに行ってたが、四月の半ばごろから部活動が始まり、なかなかそれも難しくなっていた。
「明日埋め合わせするからさ。ポイントも入るしなんかおごるよ」
「ほんとに!?やりぃ」
綾小路は平田とそれなりに仲良くなったようで、クラスだとよく一緒にいるらしい。最近だとDクラスの2大イケメンだとチラホラ言われている。その分男子からの嫉妬で、友達はより一層出来なくなったとか。
最近はよくサッカー部男子でも部活後とかに遊びに行くこともあり、そんなことは気にもしてなさそうだったけど。
綾小路ってカラオケも上手いんだよ。1回100点出した時はマジでビビった。それもラヴイズオーヴァー。渋すぎる。
最近は諸藤さんといい感じになってるけど、もう一押しかな。
部活が終わり、帰り道。
ほとんどのサッカー部員がヘロヘロで、俺と平田も少し疲れた顔をするなか、いつも通りの無表情で疲れた様子など一切見せない綾小路。こいつのスタミナはどうなってるんだろうか。
「なあみんな、提案なんだが」
「どした?」
綾小路から提案なんて珍しいな。一緒に帰っている園田と平田も、興味深そうな顔をして綾小路を見る。
「その、なんだ…オレたち、名前で呼び合わないか?」
確かに、こんなに仲良くなっているのに、未だにメンバー間で誰も名前で呼んでない。
「それ俺も思ってたわ。ずっとタイミング伺ってたけど、なかなかみんな苗字呼び辞めないから、合わせちゃってた」
「そうだね。僕も名前で呼び合いたいな」
園田に続き、平田も同意する。
「じゃあ、清隆、正志、洋介。改めてよろしくな」
「ああ、よろしくな」
「よろしくぅ」
「よろしくね」
いい感じの雰囲気になって解散した
あれ…俺だけ名前呼んでもらってないきがする。
5月1日、朝起きて携帯端末を確認すると、ポイントは増えていた。だが、
「明らかに少ないな。6万弱くらいしかもらえてない」
まさかこんなもらえるポイントが減るとは。まだ原因はよく分かんないけど、清隆と正志にも聞いてみるか。
「俺は亮介と同じくらい増えてる」
「……オレは1ポイントも増えてないな」
「嘘だろ!テスト白紙で出したん?」
「いや、普通に解いたんだが」
サッカー部内では、ポイントが変動する可能性の話をしていたので、清隆ももちろん知っている。その時に、南雲先輩がやけに面白そうな顔をしていたが、いつもニヤニヤしているのは変わらないので気にしないことにした。
あの人、生徒会に入るために部活やめたらしいけど、暇なのかな。いつも女の子と一緒にいるの見かけるし。性格がクソなにおいがプンプンする。
その後はかわいそうな綾小路にファミレスでおごる約束をし、学校に着いた。
教室に入ると、もらったポイントの話題で持ちきりだった。
「仁科くんは何ポイントもらったの?」
「6万弱くらいかな」
「やっぱり仁科くんもそうなんだ!」
やっぱりってどういうことだ?もしかして、
「あのね、私たち、っていうかこのクラスの全員のもらったポイントが6万ポイントくらいだったの」
「ポイントの増減はクラスごと!?」
やっぱりそうか。正志は驚いているが、考えればわかることだ。なんでわざわざ3年間同じクラスにするのか。
クラスごとで評価するためだろう。
「多分そうじゃないかな。Bクラスの人に聞いたら、みんな7万ポイントをもらってたらしいし」
「……清隆は1ポイントももらえなかったって言ってたな」
「Dクラスやばくね」
入学した時の違和感はこれか。今どきの高校で珍しい、数字ではなくアルファベットでのクラス分け。中学の先輩からアルファベットでのクラス分けをする学校は聞いたことがない。アルファベット順だと、順位がついているように感じるからだろう。つまり、アルファベット順であるということは、順位がついているということ。
A、B、C、Dの順に。
そう考えると、部活に入って自己紹介をするとき、俺がCクラスだと言ったときに一部の先輩たちが馬鹿にしたような顔をしたことにも説明がつく。
ただ腑に落ちないのが、クラス分けの仕方。
こんなことを言うのはどうかと思うが、Bクラスに所属しているサッカー部の柴田颯よりも俺の方が勉強はできる。
もちろん勉強ができるから入試の結果がいいとは限らないが、それにしても差がある。この前の小テストの自己採点でもそうだった。
そしてそんなことより重要なのは、すぐにこのシステムに気づき、今頃看破しているであろうロン毛。入学式からクラスの腫物扱いではあったが、石崎くんは舎弟、山田アルベルトくんはボディーガードのようになっていて、完全にアンタッチャブルな存在になっている。
中学でのことからあの手の人種のすることはなんとなくわかる。クラスで争うと分かった時点で、争って得るものものがなんにせよ、ただ争いに勝つことを追及する。だからこそ、クラスを暴力で支配しようとする。
学業がメインとなる(少なくとも今のところはそう思っている)この学校で、バンをはろうとするかは確信が持てないけれど、今日はいつもに増してギラギラした目をしている。
「席についてください。SHRを始めます」
席に座って考え事をしていうちに、坂上先生がやってきた。気のせいか、いつもよりご機嫌ななめだ。
「少しは察しのついている生徒もいるようですが、一応すべて説明させてもらいます」
そう言って小テストの結果の書かれた紙を黒板に張る。
俺は…、よし、英語と社会は満点だな。国語は90ちょい、理科と数学は80点前後って感じだ。
園田、社会60点はやばいだろ…
いや、真鍋の英語30点の方がやばかった。ほぼ最下位やん。
「もしこれが定期テストなら、真鍋さん、石崎くん、野村くんは退学になっていたでしょう」
真鍋の顔が一気に蒼白になる。
「定期テストでは、1教科でも赤点を取ったら退学になります。次からは気をつけてくださいね。もっとも、次のテストでそんな心配は必要ないでしょうが」
赤点で退学!でも、次のテストで絶対に回避する方法があるってことか…
なんとか真鍋を安心させるためにも見つけなきゃな。
「そしてみなさん、今月支給されたポイントの額について疑問を持っていることだと思いますが、まずはこれを見てください」
小テストの結果の上に、さらに紙が貼りだされる。
Aクラス 940ポイント
Bクラス 700ポイント
Cクラス 590ポイント
Dクラス 0ポイント
なるほどやはり、きれいに並んでいる。
「まず入学当初、君たちCクラスには、クラスポイントとして1000ポイントが与えられていました。そのポイントによって入学初日、君たちには10万ポイントが支給されたのです。しかし、この1か月を通して、我々学校が君たちの日頃の生活態度を採点し、それに応じてクラスポイントが減らされていきました。その結果がこれですね。君たちは310ポイント減点され、590ポイント。それに100をかけた59000ポイントがプライベートポイントとして一人ひとりに支給された、というわけです」
突然の説明にまだ理解が追い付いていないのか、クラスメイトから疑問の声が上がる。
生活態度かよ…
それ大事だけどさ、この学校の謳ってる実力とあんまり関係なくない?でもそうか、この学校の言う実力っていうのは、集団の中で力を発揮できる実力ってことか。
「もうお分かりだと思いますが、入学時点での成績順で、A、B、C、Dとクラスわけがされています。そして、このクラス名は、クラスポイントが入れ替わると、自動的に入れ替わります。例えば今回なら、Cクラスが700ポイントより多く残したなら、CクラスがBクラスに、BクラスがCクラスになるというわけです。最後に稚拙なことは、進学、就職の願いを100パーセント叶えることができるのは、卒業時点でAクラスに在籍していた生徒のみ、ということです」
「嘘だろ!」
「そんなの詐欺じゃん!」
「Aクラスになれなかったらどうなっちまうんだよ!」
阿鼻叫喚。しかし、クラスメイトの言いたいこともわかる。これは立派な詐欺ではないのか。
「ゴチャゴチャうるせえ!」
一言で、クラスがシンと静まる。
坂上先生の説明で、ほとんどの生徒が龍園の入学式での発言の理由を理解したのだろう。その視線に混じるものは、恐怖だけではなくなっている。
「坂上、質問をさせろ」
「この際、敬語に関しては何も言いません。いいでしょう、答えられる範囲でなら答えます」
「まず一つ目、生活態度での減点ってのはこれからも続くのか?」
「その質問には、はいともいいえとも答えられるでしょう。生活態度での減点はありますが、先月ほど厳しいものではなくなります」
「つまり、授業を真面目に受けてなかった奴は、これからもクラスポイントを下げる可能性があるってことだな」
龍園の言葉に、何人かの生徒の顔がこわばる。心当たりがあるのだろう。
「次だ。クラスポイントが増えることはあるのか」
「あります。直近では、次の定期テストですね。さらに言えば、これから様々なイベントで増える機会があるでしょう。クラスポイントが減るようなイベントばかりではありません」
テストだけじゃないとすると、体育祭とか文化祭か。いや、この学校は文化祭はないから、ほかのイベントが…
「そうか。じゃあ、他クラスのクラスポイントを買うにはプライベートポイントはどれくらい必要だ」
「…それは私たち学校側が決めることではありません。もしそのようなことをしようとした場合、クラス全員の同意を得たうえで、代表者同士での取引ということになるでしょう」
「なるほど。相手クラス全員の承諾を得られればタダで得られることもあるわけだな」
「万に一つもないでしょうが、そういうことになりますね」
プライベートポイントで買えないものがないっていうのは、そういうことか…
あのロン毛、勉強できないと思っていたし、実際小テストの結果もそこまでよくなかったが、相当頭が回る。地頭のいいヤンキーなんて、厄介すぎる。
「それじゃあ、いろいろ気になることはあるが、これが最後だ。1人がクラスを移動するには、どっちのポイントが何ポイント必要だ?」
「プライベートポイントが2千万だ。ただ、歴代でこれを達成した生徒は存在しない」
「結構だ。十分だから帰れ」
坂上先生がため息をついて何も言わずに去った後、ロン毛は教卓に手をつき、クラス中を見渡す。その後ろには、石崎くんと山田アルベルトくんの姿もある。
そして、机をたたいて言った。
「今日から俺がCクラスの王だ。文句のあるやつはかかってこい」
これから我らが王になる男は、厨二病だった。
各クラスのクラスポイントが多少増えているのは、主人公がサッカー部で柴田に言ったのが一ノ瀬に共有され一ノ瀬教に布教されたのと、多分減点の大きな原因だっただろう真鍋グループの授業態度が少し改善された影響です。