ハイスクールU✕D   作:ボルメテウスさん

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その声が力に変わる

「ここが、地図にあった街か?」

 

 そう言いながら、麻中達が辿り着いたのは、街だった。

 

 それは、まるでイギリスの街を思わせる光景であり、周りにいる住人もまた、それに合わせた格好をしていた。

 

 だが、そこに描かれていた文字は、まるで見た事はなかった。

 

「ウルトラマンの皆さんだったら、何か、分かるか?」

 

「どうだろうねぇ」

 

 それと共に聞こえた声。

 

 同時に、後ろを振り返る。

 

 半分黒、半分白のブラウスのような服を常に着用し、無表情ながらもどこか不気味な雰囲気を漂わせた青年。

 

 その青年に、麻中は、話だけならば聞いた事がある。

 

「お前はっ、トレギア! 

 

 なんでっ」

 

「ふふっ、なんでだろうねぇ。

 

 まぁ、どちらでも良いじゃないか」

 

 それと共に、そのままゆっくりと近づく。

 

「何よりも、今は、私に構っている場合かな? 

 

 街の人々を守らなくて良いのかなぁ?」

 

「何っ」

 

 そう疑問に思っていると、トレギアが取り出したのはディメンションカード。

 

 それに描かれていたのは、暴君怪獣タイラントだった。

 

「ふぅ」

 

 そのままトレギアが、カードにそっと息を吹き、そのまま投げる。

 

 すると、空中からカードが闇に包まれ、同時にその姿を現す。

 

「さぁ、どうするヒーロー君」

 

「ぐっ!」

 

 同時にトレギアの姿が消える。

 

 麻中はすぐにディメンションナイザーを取り出すと共に。

 

「頼みます、タイガさん!」

 

『ディメンションロード! ウルトラマンタイガ!』『おぅ!』

 

 麻中の声に応えるように、タイガはディメンションナイザーを通じて、現れる。

 

 街の中に暴れるタイラントの前に現れたウルトラマンタイガは、タロウ一門の独特の構えで、タイラントの前に立ちはだかる。

 

『まさか、タイラントを相手に戦うとはな』

 

 かつて、ウルトラ兄弟を5人倒した事があり、タイガの父であるタロウと戦った事もあるタイラント。

 

 だからこそ、タイガは決して油断せずに構える。

 

 それと共に、戦いが始まる。

 

 タイラントは、右腕のハンマーを振り回すが、その攻撃を軽く避けると、そのまま、飛び蹴りを放つ。

 

 だが、タイラントはその攻撃を受け止めると、そのまま振り回し地面に叩きつける。

 

『ぐわぁあああ』

 

 地面へと激突したタイガだったが、すぐに立ち上がる。

 

『まだまだ!』

 

 そのままタイガは走り出すと、今度はパンチを放ち、そしてキックを放った。

 

 だが、その攻撃を受けてもタイラントはびくともしない。

 

 逆に、タイガの方もダメージを受けてしまう。

 

 そこで、タイガは一旦距離を取る。

 

 だが、それが悪手だった。

 

 タイラントは、その口から炎を吐き出して、タイガにダメージを与える。

 

 さらに、腕から電撃を放ち、それを喰らったタイガの動きを止める。

 

 そこに、強烈な一撃を叩き込む。

 

 それは、今までのタイラントの攻撃の中で一番威力のある攻撃であり、それをまともに受けたタイガは大きく吹き飛ばされて倒れこむ。

 

 それでも、タイガはすぐに立ち上がり構えるが、既にダメージが大きいのか動きが鈍い。

 

 しかし。

 

『負けてたまるかよ!!』

 

 タイガの、その叫び声と共に反撃を始める。

 

 タイラントからの激しい攻撃に対して、タイガは素早く動いて回避し、カウンターを決めるように攻撃を繰り返す。

 

 だが、そのタイガの猛攻を受けてもなお、タイラントにはダメージらしいダメージを与えられていない。

 

 やがて、胸元のカラータイマーが赤く点滅を始めた。

 

 だが、タイガはそのまま真っ直ぐと走る。

 

 それに合わせるように、タイラントの攻撃がタイガに当たりそうになる。

 

 だが、タイガは、その攻撃を避けるように跳び上がる。

 

 そのまま空中で腕をT字型に組み、必殺光線であるストリウムブラスターをタイラントに放つ。

 

「タイガストリーム!!」

 

 放たれた光の柱は、タイラントを貫き爆発させる。

 

『やったか?』

 

 そう思った瞬間、タイラントの体が膨れ上がり、そして大爆発を起こした。

 

 だが、それは誤りだった。

 

『なっ!』

 

 だが、タイガは目を見開く。

 

 そこにいたタイラントの身体は大きく変わっていた。

 

 それは、まるでケンタウロスを思わせる4本の脚が特徴的な姿であるEXタイラントとなっていた。

 

『……』

 

 その姿を見たタイガは、驚きつつも冷静さを保つ。

 

 そんなタイガに対して、EXタイラントはその巨体からは想像できない速度で接近すると拳を振り下ろす。

 

 それに対してタイガは咄嵯に反応して両腕をクロスさせて防御する。

 

 だが、その衝撃までは防ぐ事は出来ずに地面に叩きつけられた。

 

 更に、そこから追い打ちをかけるように蹴りを放ってくる。

 

 それに対してタイガは、どうにか転がりながら避ける。

 

「くそ! なんてパワーだ!」

 

 今まで戦ってきたどの敵よりも強い力を感じながらも、タイガは構える。

 

 そんなタイガに対してEXタイラントは再び走りだすと殴りかかってきた。

 

 それをタイガは受け止めると反撃に出る。

 

「ハァッ!」

 

 タイガの連続パンチがEXタイラントに命中するが、それでも怯む様子がない。

 

 逆に、EXタイラントは口から火炎を放つ。

 

 その攻撃を喰らったタイガは地面を転がって火達磨になる。

 

 しかし、直ぐに立ち上がると再び攻撃に転じる。

 

 今度は、EXタイラントも前足を使って攻撃を仕掛けてきた。

 

 それに対しタイガは、前足を掴んで抑え込む。

 

 そして、自分の方に引き寄せようとする。

 

 だが、その体格差では全くと言っていいほど意味がなかった。

 

 EXタイラントは前足の爪を立てて引っ掻こうとする。

 

 それに対してタイガは、それを両手で受け止める。

 

「このままじゃっ!」

 

 既にカラータイマーが鳴り始めて、かなりの時間が経つ。

 

 点滅するスピードも徐々に速まる。

 

 その時だった。

 

「頑張ってっ」

 

 聞こえた声。

 

 振り返った先には、街の子供だった。

 

 タイガを応援する声。それは俺だけじゃない。

 

 街から聞こえる沢山の声援だ。

 

『がんばれー!』『負けるなー!』『頑張れよ! ヒーロー!』『やっちまえ!』『ぶっ飛ばせ!』『負けんなぁ!!』

 

 その声に、タイガは思わず笑みを浮かべてしまう。

 

 先程まで、全身は痛みは、まるで嘘のように起き上がる。

 

『やるぜ、麻中!』

 

「あぁ」

 

 その言葉と共に、麻中はその手にあるウルトラマンタイガのカードは変化する。

 

「輝きの力を手に! バディ──ーゴー!!」

 

 同時に、そのまま変化したウルトラマンタイガのカードをディメンションナイザーにスキャンする。

 

『ウルトラマンタイガ! フォトンアース!』

 

 それと共にタイガの身体は大きく変化する。

 

 黄金の鎧を身に纏った荘厳な姿が特徴で、頭部のウルトラホーンも金色に変化し大振りになった。

 

 それこそ、地球の、大地の光でパワーアップしたタイガの姿。

 

 ウルトラマンタイガフォトンアース。

 

「さぁ、反撃の時間だ!」

 

 タイガはフォトンアースになると両腕を前に突き出す。

 

「ハァアアッ!!」

 

 そして勢いよく跳躍するとフォトンアースとなったタイガはEXタイラントに向けて飛び蹴りを放つ。

 

 その一撃を受けたEXタイラント。

 

 それは、先程までとは違い、大きく吹き飛ばす。

 

「よしっ!」

 

 それを見て麻中もガッツポーズを取る。

 

 だが……。

 

『グオォオオオッ!!』

 

 それでもEXタイラントはまだ倒れない。

 

 そのまま前足を地面に叩きつけると周囲に衝撃波を放ちながら地面を砕きながら立ち上がる。

 

 その姿を見たタイガもまた、走る。

 

 既にエネルギーも限界に近かった。

 

 戦うのも限界のはずだった。

 

 しかし、タイガはまるで負ける気はしなかった。

 

 子供達からの声援が。

 

 信じられる存在が。

 

 フォトンアースの光を増大させる。

 

『決めるぜ!』

 

 それと共に、タイガはそのまま構える。

 

 それは、先程までのストリウムブラスターと同じ構えだった。

 

『オーラムストリウム!』

 

 その叫び声と共に放った光線。

 

 それは、光線の一つ一つが金色の長剣の形状をしており、EXタイラントの全身を斬り裂いた。

 

「グォオオオオッ!」

 

 痛みと怒りの声を上げるEXタイラント。

 

 そのまま、倒れ込み、爆散する。

 

「はぁはぁ、なんとかなったか」

 

 同時に、麻中はゆっくりと倒れ込む。

 

 それに合わせるように、タイガもまた光となって消える。

 

 気絶する直前、麻中を受け止めた人物がいた。

 

 その人物は、そのまま麻中を抱えたまま、路地裏へと回る。

 

 その行く先には、既にトレギアが待ち構えていた。

 

「やぁ、黒猫ちゃん。

 

 その姿で見るのは久し振りだねぇ」

 

「それはどうも。

 

 まったく、あんたは会った時から胡散臭いにゃ」

 

 そう、女性は麻中を抱えたまま、トレギアを睨み付ける。

 

「そうかね? 

 

 まぁ、私としては、どうでも良いがね。

 

 私の雇い主が、すぐにでも返して欲しいと言われてねぇ。

 

 だから、渡してくれたら嬉しいが」

 

「あんな悪夢を見せたお前の言う事を誰が聞くかにゃ」

 

「けど、そのせいで、その少年は傷ついた。

 

 君にとっては、それは不本意じゃないのかなぁ」

 

 その言葉に対して、女性は苦虫を噛んだように言う。

 

「始めはただ都合が良かったよなぁ。

 

 なんだって、怪獣という脅威が来ても、絶対に倒してくれる存在が護衛だからねぇ。

 

 けど、君は彼と過ごす内に情が湧いた。悪夢を見せられて、辛い中、傍にいてくれた。

 

 久方ぶりの穏やかな時間だったよな。

 

 まぁ、それももうすぐ失うけどねぇ」

 

 そう言って、トレギアが、その手を真っ直ぐと女性に向けて、雷を放つ。

 

 雷は、真っ直ぐと女性に向かって行く。

 

 しかし、まるで霧のように、その姿が消えた。

 

「幻術か。

 

 私相手に、いや、まさか」

 

 そう言いながら、トレギアはため息を吐く。

 

 そうしながら、トレギアから逃げながら、女性はため息を吐く。

 

「はぁ、まったく。

 

 厄介な事に巻き込まれたにゃ。

 

 それも、これも、あいつらが落としたこんなのを拾ったからにゃ」

 

 そうしながら、女性が胸元に手を入れて、取り出す。

 

 それは、現代では作る事はできない代物だと思われ、タブレット端末を思わせる。

 

 その横には、カードを読み込む為の箇所があった。

 

「これを拾ってから、厄介な奴らに狙われるようになったし、まぁこの子に聞けば、すぐに分かるかもしれないけど」

 

 そう言いながら、女性は抱き抱えている麻中を見つめる。

 

 先程の戦いで疲労しているのか、起きる気配はなく、その様子をモーラットは心配そうに見つめている。

 

「……もう少しだけ。

 

 もう少しだけ、せめて、安全な所まで行くまで、この旅を」

 

 そう言いながら、女性は、麻中を抱き締める。

麻中と一体化しているウルトラマンは

  • ギンガ
  • ビクトリー
  • X
  • オーブ
  • ジード
  • ロッソ
  • ブル
  • タイガ
  • ゼット
  • トリガー
  • デッカー

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