駒王町は、今、たった一日だけだが、まさに危機的状況に陥っていた。
アブソリューティアンによって、張られた結界内では、未だに多くの人々が残っている。
彼らが無事なのは、主にアブソリューティアン達が、利用価値のある者達を見つけるまで殺さない為に行っているから。
だからこそ、犠牲者はそれ程、多くはなかった。
そんな、アブソリューティアンが放ったと思われる怪獣、ファイブキングを見ながら、アザゼルはため息を吐く。
「これまで、化け物相手には慣れたつもりだったけど、まさかそれ以上がいるとはな」
そう言いながら、ファイブキングのこれまでの行動を纏めた資料を確認する。
怪獣としては既に当たり前のようにある巨大な体格。
そこから出る力はかなり大きく、ファイブキングに対抗する為に応戦要請をしたタンニーンを真っ向から勝負できる程の力を持つ。
さらには、超高速で飛行する能力。
身体からは無数の光線を放つ。
さらには強固な鋏を持つ腕に、ありとあらゆる光線を吸収し、そのまま撃ち返す。
はっきり言えば、反則級の怪物を前に、困り果てていた。
「それで、そいつはまだ目覚めないのか」
そう言いながら、今は寝ている麻中と共にいる新条に対して、尋ねる。
ファイブキングが現れたのを察知し、先に戻ってきたアザゼル。
そこには、これまで、どの種族でも見た事のないメトロン星人がおり、当初は敵だと思った。
だが、話を聞けば、麻中の知り合いであり、彼らを助ける為に来たらしい。
それと共に、彼女の手にあるディメンションナイザーによく似た装置であるダークディメンションナイザー。
それらから、アザゼルは味方だと判断した。
「まぁな、基本的にウルトラマンとリンクしているからな。
そのダメージはそのまま麻中にも来る。
だからこそ、ウルトラマンが倒されれば、そのまま麻中もまた気絶する」
「目覚めるのか?」
「それはこいつ次第だ。
こいつが目覚めた時に、本当の意味で、こいつを使いこなせれば、あいつにも勝てるはずさ」
「本当にあんな化け物に勝てるのかよ」
「あいつよりも化け物にも勝ったんだったら、大丈夫だろ」
マルゥルのその一言に疑問に思うアザゼル。
そんな対話の間、麻中の意識は。
「それにしても、まさか気絶して、こんな所にいるとは思わなかったです」
「なんというか、狭い所で、ごめんね」
そう言いながら、麻中は周りを見る。
そこは光で埋め尽くされている空間だが、麻中と目の前にいる人物が座る為に作られたのか、畳とちゃぶ台があった。
「それはそうと、いつも、お世話になっています、ハルキさん」
「いや、そんなに気にしないで」
そう、麻中は目の前にいる人物、ナツカワハルキに土下座をしながら言う。
彼、ナツカワハルキは、ウルトラマンZと一体化している地球人であり、別次元の人間である。
「それにしても、麻中君は、大変だね。
他のウルトラマンの先輩達と一緒に戦って」
「俺は、ただ呼ぶ事しかできません。
戦うと言っても、それ程たいした事はできていないと思います」
「そうかな。
俺は、それでも十分凄いと思う。
だからこそ」
同時にハルキは真っ直ぐと見る。
「君は、自分がやっている事に、少しは自信を持つべきだ」
「自信なんて。
それこそ、俺は人の事を言えません。
ほとんどの戦いをウルトラマンの皆さんに任せているような状況だから」
「それでも、戦う時、逃げなかった」
その言葉と共に、見つめる。
「ウルトラマンと一緒に戦う時も。自分で戦う時も。何よりも、目の前に悩んでいる人がいれば正面から逃げずに立ち向かった。ウルトラマンと一緒に戦う時、一番必要な事は、それだから」
「一番必要な事」
「今の君だったら、できるはずだ。
俺とZさんの力を。
他のウルトラマンの皆さんの力を十分に」
その言葉を最後に、目の前の光景は瞬く間に変わっていく。
同時に、麻中の意識は、現実に戻る。
「麻中君!」
麻中が目を覚ますと、目の前には泣いている新条の姿があった。
「どれぐらい、寝ていたんだ」
「丸一日だ。
その分、被害は、かなりあるがな」
「すいません、情けない所を見せて」
そう言いながら、麻中は立ち上がる。
「やれるんだな」
そう、アザゼルが問いかける。
対して。
「勿論!」
同時に麻中ははっきりと応える。
「それだったら、十分だぜ。
こっちも準備はできたぜ!」
同時にマルゥルが取り出したのはディメンションカード。
だが、それは麻中が持つディメンションカードとは、どこか違った。
「これが」
「おうよ。
ディメンションナイザーにあるエネルギー問題を解消するには、もう1つのディメンションナイザー。
つまりはダークディメンションナイザーを同時に使う事で解決するはずだ。
それによって、これまではできなかったウルトラマン達の最強の姿が使えるはずだ」
「つまりは、光と闇。
2つの力を1つにするんだ」
「おうよ、トリガートゥルースのデータを参考にできたからな。
だけど、この状況は誰にするかは決まっているようだな」
「あぁ、勿論。
新条、力を貸してくれ」
「勿論。
まぁウルトラマンとして戦うのは少しどうかと思うけど、やる時はやるよ」
同時に2人は同時に同じディメンションカードを手に待ち、構える。
「「闇を飲み込め!黄金の嵐!」」
その言葉が、2人が重なると同時に、そのままディメンションナイザーとダークディメンションナイザーを上に翳す。
「「ウルトラマンZ!!」」
『トゥルーディメンションロード!ウルトラマンZ!デルタライズクロー!』
その瞬間、麻中を中心に黄金の嵐が吹く。
襲い掛かろうとしたファイブキングは、その黄金の嵐に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられると共に、嵐の中からその姿が現れる。
赤、青、金を中心に、ヒロイックな姿。
Zの文字が特徴的なカラータイマーが、その人物がウルトラマンZだという事を僅かに教える。
「あれがウルトラマンの最強の姿」
その姿を見て、アザゼルは、目を見開きながら言う。
同時に麻中達が、ここにいない事に気づく。
「麻中達は」
「あそこだよ。
本当の意味で、ウルトラマンと一緒に戦う意味でな」
「まさか」
それと共に、その言葉の意味が分かる。
それは、ウルトラマンZのインタースペースの中。
そこには、麻中が。
新条が。
そして、ウルトラマンZの変身者であるナツカワハルキがいた。
「うぅ、なんだか広いような、狭いような」
「タイガ先輩達も、結構狭いと言っていましたが、ここまでとは」
「ウルトラマンが3人と人間1人では、結構違うけど」
「なんだか、身体が変な感じがする」
そう、中で会話をしているとは、アザゼル達は思わなかった。
だがそうしている間にも、ファイブキングはウルトラマンZの存在に気づくと共に、雄叫びと共に、身体から無数の光線を真っ直ぐと放つ。
「なっ攻撃がっ!
3人共、ウルトラ気合いを入れるぞ!」
「「オッス!」」
「おっおぉ、なんだか熱血系だなぁ」
それに対して、ウルトラマンZはその場で構え、走り出す。
襲い掛かる光線に対して、薙ぎ払いながら、真っ直ぐと進む。
その光線がまるで効果がないように、そのまま接近すると同時に強烈なアッパーをファイブキングに食らわす。
威力は凄まじく、動きを止める。
それと共に額にあるランプが光る。
「「「「デルタクロスショット」」」」
3人の声が重なると共に、ランプから放たれた光線は、そのままファイブキングの鋏を破壊する。
「「「「デルタカッティング」」」」
それに追撃するように、腕のクリスタルから光の刃を出して、ファイブキングのガンQの部分を真っ二つに斬り裂く。
瞬く間に、ファイブキングを構成する2つのパーツを破壊する。
その一連の動作は、まさしく嵐を思わせる動きだった。
そして、電撃を纏った強烈なパンチを、ファイブキングに次々と放っていく。
残像ができる程の速さで放たれた拳によって、ファイブキングは空へと吹き飛ばされる。
そして
「「「「ゼスティウム光線!」」」」
その叫びと共に放たれた必殺光線。
それは、ファイブキングの胴体を貫き、巨大な爆発を起こした。
駒王町で行われた地上最大の危機。
それは、ウルトラマンの活躍によって、まさに3分で全てが終わった。
そして。
「合体怪獣。
どうですか、試運転は」
そう言いながらアブソリューティアンの巫女は目の前にいる人物に尋ねる。
それに対して、その人物は何も応えなかった。
むしろ、目の前にあるメダルを目にしている。
タイラント、ゴモラ、エレキングなど、様々な怪獣が描かれたメダルだった。
「・・・十分なぐらいだ。
あとは、戦いに有利な場所だ」
「あら、こういうのは、叩き込むかと思ったわ」
「・・・奴らには、最も深い絶望を与えないと気が済まないからな」
「ふふっ、わざわざ、スカウトした甲斐があったわ。
あなたのような最低な存在を」
「お褒めに預かり光栄だ」
そう言いながら、その人物はアブソリューティアンの巫女を見つめる。
「これからも、あなたの活躍を期待しているわ、セレブロ」
麻中と一体化しているウルトラマンは
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ギンガ
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ビクトリー
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X
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オーブ
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ジード
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ロッソ
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ブル
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タイガ
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ゼット
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トリガー
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デッカー