絶望の物語の作り方   作:羽織の夢

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 多分、普通のゲームだったら余裕でストーリークリアするくらいの時間ゼルダやってるけど、まだメイン2つくらいしか進んでない。寄り道が止まらねぇ。


神の子と呼ばれた少女

『中々見応えのある遊戯であった』

 

 神域の最奥にて、エヒトルジュエは満足げな表情で笑みを浮かべていた。

 エルフェウスからの報告で判明した南雲ハジメをリーダーとした神代魔法の会得者達。

 かつて自らに牙を向いた解放者以来の使い手の出現に、エルフェウスが用意するメインディッシュの前の前菜程度には楽しめるかとノイントを当ててみれば、想像よりもレベルの高い戦い(一般人を基準にした場合)にエヒトは機嫌を良くしていた。

 

『貴様の出番も近い。準備は万全だな、アルヴヘイト?』

「は! 勿論でございます!」

 

 エヒトの言葉にアルヴヘイトは傅いたまま肯定した。

 

『エルフェウスからの報告では、奴らは神代魔法を集めている。自ずと氷雪洞窟……魔人領へと足を踏み入れるだろう。その時こそ、我が器を手に入れる時だ』

「ついにその時がやってきたのですね」

 

 その言葉にアルヴは歓喜の表情を浮かべる。

 三百年前の屈辱はアルヴも忘れてはいない。アレーティアの情報を得るためにディンリードの肉体を奪ったはいいが、肝心のアレーティアの隠し場所の記憶は消去されており、足取りは完全に途絶えてしまった。

 半ば諦めていたことだったが、再びチャンスが巡ってきたことにアルヴも使命感に燃えていた。

 

『ククク……それにエルフェウスが脚本した演劇も大詰めだ』

「エルフェウス……ですか」

 

 エルフェウス。その名前にアルヴは他の神の使徒とは雰囲気の全く違う少女のことを思い出す。

 直接言葉を交わしたことは無いが、その特異性はアルヴも聞き及んでいた。神の使徒が持つ筈の無い自我と感情を持ち合わせた特殊個体。

 

「我が主よ。一つ発言をお許し下さい」

『良いだろう。述べてみよ』

「エルフェウスとは一体何者なのですか?」

『何者とは?』

「私はあの個体について詳しく知りません。何故あれだけが他の神の使徒達が持たない自我や感情を持っているのか疑問に思っておりました」

 

 アルヴにとってエヒトは自分という存在を生み出した親であり、絶対の神だ。その存在全てを肯定し、疑問を持つことすら許されない立場故に、今まで尋ねることはしてこなかった。

 しかし、ここ数百年でも類を見ない程に上機嫌のエヒトの姿に、今なら不躾に思われないのではと思ったアルヴは疑問をぶつけてみることにした。

 

 

『ああ、そういえば話したことは無かったな。いい機会だ。教えてやろう』

 

 そう言うと、エヒトは玉座で足を組み直し……語りだした。

 

『あれは、神の使徒の()()であり……』

 

 

───私の器になる筈だった失敗作だ。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 もう随分と前の話になる。

 

 神代魔法。

 それは私と同じ、到達者と呼ばれた者達の血を継ぐ家系で受け継がれる、一子相伝の秘技だった。

 

 当代の長達だけがその力を受け継ぐ資格を持ち、私の承認を得ることで初めて会得することが許される魔法。そうすることで神の力を有象無象に撒き散らすことを防ぐと同時に、私の支配下に全ての神代魔法を保管する為の策だった。

 人間共に管理させずに、我が全てを所有しても良かったが、奴らは中々便利なのでな、利用する方が有用だと判断したまでだ。

 

 とは言え、時代と共に各一族の血は枝分かれていき、薄く弱くなっていった。いっそのこと全てをリセットしてしまおうかと考えていた時だ。偶然にも同じ代の神代魔法の相伝者全員が十全にそれを扱える時代があった。

 珍しいこともあるものだなと思っていたのだが、驚いたのはその後だ。

 

 神代魔法の相伝者の一人……“魂魄魔法“の使い手。その娘が我の器にふさわしい力を持って生まれたのだ。

 

 我は歓喜した。同時に理解した。この時代に神代魔法を十全に扱える相伝者が揃った意味を。

 神代魔法はそれを扱える者であればあるほど、その力を余すこと無く他者に受け継がせることが出来る。

 

 そう……娘に全ての神代魔法を会得させ、我の器とすることを決めたのだ。

 

 神代魔法は一子相伝と言ったが、そんなもの我の一言でどうとでもなる。すぐに協会の連中に神託を伝えた。『その子供は【神の子】だ』とな。

 そうして器がある程度まで成長した後、全ての神代魔法を会得させ、我がその肉体を奪う……全てが完璧だった。

 

 

 

──“ミルザム・バーン“がしゃしゃり出て来るまでは……!!

 

 

 

 ミルザム・バーン。当時の“魂魄魔法“の相伝者にして、器の母親だった女だ。

 奴は我の思惑に気付き、娘の内から“魂魄魔法“を除く全ての魔法を奪い取った。奴が稀代の“魂魄魔法“の使い手だと言うことは知っていたが、魂に刻み込まれた魔法の術式を取り除く程までの練度であったことが誤算だった。

 

 とは言え、奴一人の抵抗などあっけないものよ。我が直接手を下すまでも無く、何も知らない人間共によって殺されたわ。

 想定外の事態ではあったが、奪われたのなら再び授ければ良いこと。そう判断した我がもう一度相伝させようとした時、それは判明した。

 

 娘の魂が劣化していたのだ。

 ミルザム・バーンが娘に“魂魄魔法“を使用していたのだろう。人間として生活する分には問題はないが、とても我の器としての機能を果たせる状態では無かった。

 0のモノを1にすることは出来ないが、1だったモノを再び1にすることは難しくない。そう判断し、娘の魂を無理矢理昇華させようとしたが、娘が受け継いだ“魂魄魔法“が発動して防護を固めた。恐らく、我という上位存在をその身にを宿すという行為を無意識に脳が攻撃を受けていると判断したのだろう。

 

 歴史上最高の“魂魄魔法“の腕を持つ女と、その血を受け継ぐ娘。認めるのは癪だが、その力は魂という概念においては我ですら上回った。

 

 ああ、あの時の怒りは今でも覚えている。思わず世界を壊し尽くすところであった。

 器としての役割を失った娘が勝手に期待を抱いていた人間共に裏切り者のレッテルを貼られ、奴らに半殺しにされている光景を見ても我の怒りは収まらなかったが……ある時、思いついたのだ。

 

 

──あの娘を永遠に我の手駒にしてやろうとな。

 

 

 命を掛けても救いたかった娘を我の永遠の奴隷にすることで(ミルザム)の全てを否定してやろうと思った。

 

 既に人間共を改造し、我の私兵として運用はしていたが、我の力に魂が耐えきれずに理性を失った獣に堕ちるものがほとんどだった。人の形に似た魔物共はその成れの果てになるな。

 

 殺したミルザムの遺体からは何も情報を得られなかった。我に利用されまいと生前に何か仕掛けていたのだろう。しかし、娘は別だ。我の憑依を防ぐために娘に“魂魄魔法“を使った以上、必ずその身体には痕跡が残る。

 

 死に体の娘を連れ帰り、その身体を調べ上げた。

 そこから我はミルザムが娘に使用した魔法の正体──“魄離(はくり)“にたどり着いた。

 

 それは対象の魂に干渉し、その機能を剥奪する魔法だ。奴はこれを使用し、娘の魂の縮小……つまり容量を奪い取ったわけだ。

 

 その特性を利用し、駒となる人間共から感情、記憶、常識……ありとあらゆるものを取り除いた。初めは拒絶反応が強かったが、既に“魄離“に適合している娘の細胞を媒介にすることで定着率を安定させた。

 

 

 そうして完成したのが、今の『神の使徒』だ。

 

 

 残念ながら神の使徒が“魄離“を会得するまでには至らず、対象となる有機物の構成を分離、粉々にするだけの“分解(劣化版)“にはなったが、概ね成功と言えるだろう。

 

 その我の器になるはずだった娘と言うのが……

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「エルフェウス、というわけですか」

『ああ。過去の失敗を繰り返さぬよう、アレーティアの時は両親の懐柔から始めたのだが……ちっ、ディンリードめ……!』

「ッ!?」

 

 エヒトから放たれる殺気がアルヴに突き刺さる。

 向けられているのが自分では無いと分かっているが、その重圧に無意識に身体が恐怖に震える。

 

「で、では……エルフェウスが他の使徒と異なるのもそれが理由なのですか?」

 

 母親から受け継いだ“魂魄魔法“を持ち、例え今はその役目を無くしつつも、神をその身に宿しても崩壊しない特別な肉体。その特異性が他の使徒との差異を生み出しているのかとアルヴは推察する。

 

『知らん』

「……はい?」

 

 しかし、返ってきたのは肯定でも否定でもなかった。

 

『そもそもエルフェウスを使徒に改造したばかりの頃は、他の者との差異は無かった』

「そうなのですか……?」

『奴はミルザムから我の正体については聞いてはいなかったようでな。それならば感情を残す必要は無いと判断したまでだ』

 

 仮にエルフェウスがエヒトの正体についてミルザムから聞いていた場合、あえて感情や記憶を残し、無理矢理従わせようと思っていたエヒトだったが、エルフェウスはエヒトの真実を知らされていなかった。

 感情や記憶を残した状態での使徒の運用が安定していない以上、優秀な駒を使い捨てにするには惜しいと考えたエヒトは従来の使徒と同じ方法でエルフェウスを使徒に作り替えたのだった。

 

『神代魔法の使い手だった故か、他の者よりも魔法に対する高い適正はあるものの、それ以外はいたって代わり映えのしない個体……それが何の吉兆も無く変化した』

 

 ある時を堺に、エルフェウスが自我と呼べるものを形成し、他と違う独立した行動を取るようになったのだ。

 自身の言葉を肯定し、実行するだけだったエルフェウスが、自ら思考し、提案し、実行するようになった時はエヒトも流石に驚愕した。

 

「しかし、自我を持つということは、万が一にも反逆を企てている危険性があるのでは……」

 

 実際に母親が裏切っている手前、その娘のエルフェウスもその思想を無意識に継いでいる可能性を指摘するアルヴだったが、エヒトは問題ないと断言した。

 

『我もその可能性は考えた。だが、反逆の意志が無いかとエルフェウスの思考を読み取ってみたものの、()に対する信仰は変わらず持ち合わせていた。奴の用意する舞台も我好みのものだったのでな。そのまま利用することにした』

 

 神の使徒が無条件に持っている神に対する絶対的な忠誠心。

 それがエルフェウスの中に変わらず存在していた。それ故にエヒトはエルフェウスが敵対する可能性は無いと判断した。感情を持つようになってからの行動や思考が、非常に自身の悦に浸るものばかりだったのも一因だった。

 

「……我が主は、エルフェウスの変質の原因をご存知なのですか?」

『さてな。そもそも正確に何時からなのかすら知ら……』

 

 知らん。そう告げようとしたエヒトだったが、唐突に言葉を止めたかと思うと、じっとアルヴの姿を見つめ始める。

 

「我が主?」

『……そういえば、貴様にディンリードの身体を奪わせた時期と重なるな。その後だ、エルフェウスが感情を表すようになったのは』

「三百年前、ということですか……もしや、同じ器としての役目を得たアレーティアと何か関係が?」

『存在は知り得ているが、接触は無かったはずだ』

 

 今までエルフェウスの変質の原因について深く考えてこなかったエヒトだったが、エヒトの器になり得るアレーティアの出現が感情を呼び覚ますキッカケになった可能性が浮かび上がる。

 

『ふむ、我が肉体を得た暁にはエルフェウスを側に置いておくのもいいかもしれんな』

 

 アレーティアという過去の自分の役目の面影にどのような変化が訪れるのか。自らの駒と良い方向に成長すれば良し。仮に敵対するようなことになれば殺せばいい。

 

『活用しても有用。利用しても有用。全く、ミルザムは良い駒を残してくれたものよ。何にせよ、今は目の前の舞台を楽しむとしよう』

 

 これから世界に降りかかるであろう絶望の結末に、エヒトは笑みを深めた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「もうすぐだよ」

 

 銀翼を生やしたエルフェウスが、大空を浮遊しながらポツリと呟いた。

 本来は肉眼で視認出来る距離では無いが、エルフェウスには白髪に眼帯の少年が率いる集団が、大勢の神の使徒に包囲されている光景が見えている。

 誰もが倒れ伏す中、使徒達の中心で悠々と存在感を放っている金髪の少女が一人。

 

「ようやくだよ。どれだけ待ったかな? いや、そもそも待っては無かったかな?」

 

 眼下を見下ろしながら呟くエルフェウスの表情は能面のように冷たく、感情が読み取れない。

 

「ノイントお姉ちゃん。それに……お母さん」

 

 空を漂っていたエルフェウスが身体を包み込むように銀翼を折りたたむ。

 

「私、頑張るから。きっとやり遂げてみせるから」

 

 浮力を失った真っ白な繭が落下を始める。

 

「見ててね、ノイントお姉ちゃん。見ててね、お母さん……」

 

 

 

──()()()()()()()

 

 

 

 今、絶望の物語が幕を開ける。

 

 

 

 




>原作ラスボスによるネタバレ回

 それなのにまだ全然明らかになってないこと多数。お前それでもラスボスかぁああ!!

>最終章突入

 一気にエヒト降臨までいきました。
 ハジメ達の内面の変化による大迷宮攻略(主に氷雪洞窟)を書こうか迷ったんですが、ハジメが神と恵里絶対殺すマンになったことと、鈴が表立って恵里を助けたいと言えなくなった云々以外はそこまで変化は無いんですよね。何だったらハジメは原作よりも氷雪洞窟はEASYになってる可能性もあります。騙されていることに本人が全く気づいてないと、鏡像もそれを指摘出来ませんし。
 基本の流れは多少会話が変わるだけで原作通りの展開なのでバッサリいくことにしました
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