絶望の物語の作り方   作:羽織の夢

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突然のエンカウント

 遡ること数ヶ月前。

 

 魔人族を扇動しての王都襲撃が間近に迫っていたある日、私とアハトの二人はノイントに呼び出しを受け、神域の一角で顔を合わせていた。

 

「話とは何でしょうか、ノイント」

「……一つ、頼まれてもらえますか?」

「? それが主のお望みならば命令すれば良いことでは……」

「これは私個人としての頼みです」

 

 当時の私は未だに人だった頃の自我を取り戻しておらず、ノイントの言葉に訝しげな表情を浮かべるしかなかった。

 

「私はこの後、王都にてイレギュラーと接敵。交戦の末、敗北します」

 

 知っていた。事前にエルフェウスが手に入れたイレギュラー達の情報を元に考えれば、到底ノイント一人で対処できる範囲を大きく超えていた。

 

「私亡き後、少しで良いのです。エルフェウスのことを見てあげてください」

「エルフェウスを? どういうことでしょうか?」

 

 アハトが疑問を投げかける。当然だ。ノイントの話は唐突過ぎて意味が分からなかった。

 

「エルフェウスは私達の誰よりも主に信頼されています。今更何を見ると言うのですか?」

「……申し訳ありません。私自身、何故それが必要なのか分かっていないのです。ですが……何か、胸騒ぎがするのです」

「ノイント。貴女の説明はあまりにも抽象が過ぎます。それでは命令を正確に実行できません」

「……」

 

 黙り込むノイントにどこか既視感を覚えたのは、今考えれば至極当たり前の事だった。

 汎ゆる事態を想定し、冷静沈着を体現したかのような人物だったが、突発的なトラブルに弱く、自身の処理能力を越えると黙り込む癖があった。

 だから自然と言葉が出たんだと思う。

 

「何故、それを私達に頼むのですか?」

「エーアスト?」

「神の使徒はいくらでもいます。何故貴女は私達二人を選んだのですか?」

「……すみません。それもよく分かりません」

 

 しかし、と続ける。

 

()()()()()()と、そう思ったのです」

 

 その時のノイントの顔つきは今でも鮮明に思い出せる。

 よく知っている。何度も見てきた。

 

 あの子を傷つける世界に絶望した日。

 親友の母親を殺し、その妹をも奪おうとする神を名乗る畜生と対峙した日。

 

 

 紛れもない。

 

 

 妹を想う姉の表情そのものだった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「皮肉ですね。あの子が私達を指揮下に置く為の細工が発動したことで記憶を思い出すなど」

「ですが、これでようやく過去の遺恨を果たせそうです」

「アハト。そちらの援護は出来そうにありません」

「問題ありません。所詮は中身のない人形。私の敵ではありません」

「その言い方は以前までの私達へのブーメランです。止めてください」

 

 何だろう。ものすごく淡々としているのにどこかふわふわしているこの奇妙な感覚は。

 無表情なのにドヤ顔をしていると分かってしまうのが何か嫌だなと全員の心の意見が一致した。

 

「イレギュラー」

「ッ!?」

 

 すると、背中を向けたままエーアストがハジメに声を掛ける。

 

「背後の使徒はアハトに任せれば大丈夫でしょう。貴方達は前だけに集中しなさい」

「おいっ、いきなり現れて何を勝手に……!!」

「時間がありません。簡潔に説明します。あの主砲は私が止めましょう。その隙に貴方達は弾幕をすり抜けゲートへ」

「俺に指図してんじゃ──」

「敵増援多数。前方は光弾とレーザーの嵐。さらにゲートをこじ開けるにも時間が必要。それら全てを貴方達だけで為せますか? それとも他に妙案が?」

「……」

「無いなら黙って従ってください」

「お、おい!? くそっ!!」

 

 ハジメの返答を聞かずに主砲目掛けて飛翔を始めるエーアストに、苛立ちを浮かべながらハジメは“スカイボード“に魔力を流し込んだ。

 

「行くぞお前ら!!」

「し、信じるんですかハジメさん!?」

「どのみちここで退けば終わりだ! やるしかねぇんだよ!!」

 

 困惑しながらもハジメの後を追う面々を見送ったアハトは目の前に広がる天使の大群を視界に入れた。

 

「どういうつもりですか、アハト」

「見ての通りです」

「この人数を相手に一人でどうにか出来るとでも?」

 

 白銀に輝く使徒が十人。背後に控える通常の使徒が数十万。人数差は絶望的だ。

 

『ならば、我も加えてもらおうか』

 

 その時、頭上より紅色に輝く閃光が使徒の一部を薙ぎ払った。

 

「アドゥル・クラルス」

『ふむ、よく分からぬが、貴殿は味方と考えても良いのか?』

「目的が同じだけです。味方になったつもりはありません」

『十分。すまないが、白銀に輝く者達は任せる』

 

 そう告げて空を駆けるアドゥルに続き、竜人族と魔人族が続き、地上からは幾つもの弾丸が使徒達に襲いかかった。

 そんな彼らを一瞥した後、アハトは大剣を白銀の使徒に向けて構えた。

 

「この人数を一人で相手に出来るのか、ですか……」

 

 全身を覆う白銀のオーラがバチリと火花を散らした。

 

「中身の伴ってない貴方方ではリハビリにもなりませんよ」

 

 まばゆい白銀の流星が上空で衝突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 四方から放たれる光弾の雨を掻い潜りながら、エーアストは“熾天使の唄(ララバイ)“の表面を滑るように駆けていく。

 そのまま砲身にまで到達すると、砲身の内部に向けて“分解“を発動した。

 

 本来は魔力の完全反射によって“熾天使の唄(ララバイ)“への魔力を伴った攻撃は効かない。だが、放出されるエネルギーそのものは別だ。

 砲身に無限にチャージされるエネルギー。それを分解し続けることで砲撃を抑える。

 

「イレギュラー!!」

 

 砲身の稼働が停滞した瞬間を狙い、ハジメ達が光弾を弾きながらゲートへと到達する。

 

「……ちっ、お前ら一分で良い! 持ちこたえろ!」

 

 ハジメの言葉に、やはりゲートの解錠に時間が掛かると判断した面々は、迫る光弾を撃ち落としてその時間を稼ぐ。ハジメは自身を守るように広がるシア達を尻目に、懐から“劣化版クリスタルキー“を取り出し、閉じたゲートに突き刺した。

 その様子にエーアストは小さく息を吐く。

 

(一分。その程度なら何とか……)

 

 いける、そう考えた時だった。

 

「なっ!? 出力が……!!」

 

 分解でエネルギーの収束を抑えていたエーアストだったが、それを上回る勢いで砲身へとエネルギーが蓄積されていく。その総量は今までの比ではない。

 

「ま、ずい……! 抑えきれな……!!」

 

 瞬間、エーアストの体が後方に吹き飛び、砲身を崩壊させるまでの極大のエネルギーの塊が撃ち出された。

 

「しまっ──!? イレギュラー!!」

 

 空を呑み込まんとする閃光がハジメ達に迫る。光弾の対処で精一杯の彼らにそれを何とかする余裕は無く、ハジメはゲートの解錠から手が離せない。

 万事休すかと思われた時、彼ら視界を横切る影があった。

 

「この者達はやらせん!!」

「ッ!? フリードか!?」

 

 フリードを乗せたウラノスは迫るエネルギーとハジメ達の間に割り込み、その翼を大きく広げた。

 

「──“斬空(ざんくう)“」

 

 フリードは詠唱を終えていた魔法名を発する。

 その瞬間、目の前の空間そのものが()()()

 

 空間魔法“斬空“。

 空間に亀裂を与えてずらすことで汎ゆる攻撃から身を守る防護魔法。

 それはフリードが神代魔法を手に入れてから初めて生み出した、誰かを守るための魔法だった。

 

「ぐぅうううっ……!!」

 

 しかし、天を衝かんとする閃光は、ずれた空間ごと押しつぶさんとジワジワとフリードに迫っていく。

 

「やらせるものか……!! この者達だけは必ず送り届ける!!」

 

 エネルギーの余波でフリードの体に決して浅くない傷が増えていく。それでもフリードは力を緩めない。

 

「それが私に出来る唯一の贖罪だ!!」

「クルァアアアアアアアアアアッ!!」

 

 フリードの決意に応えるようにウラノスから放たれたブレスがエネルギーを押し戻さんと衝突する。

 それでも出力は未だ足りない。そのことに歯を食いしばって耐えていたフリードだったが、不意に感じる圧力が軽減するのを感じた。

 

「気張りなさい、フリード・バグアー!!」

 

 フリードの肩に手を置いたエーアストは、フリードを通して“斬空“に分解能力を付与する。

 しかし、それでもエネルギーの勢いは衰えること無く、表面を削り取られながら、徐々にフリード達に迫っていく。

 

「くそっ! まだか、南雲!!」

「もうこっちは限界だぞ!!」

 

 迫り来る命の危機に、焦燥感を募らせた光輝と龍太郎が声を上げる。

 

「ッ!! おぉおおおおおおおおおおッッ!!!」

 

 ハジメの口から絶叫が迸った。

 ハジメから膨大な魔力が流れ込み、悲鳴を上げるように“劣化クリスタルキー“が崩壊を始める。

 それと同時に“劣化クリスタルキー“の穂先がゲートへと食い込み始める。

 

 あと少し。あと少しで開く。

 

 そんな希望を打ち砕くかのように、放出するエネルギーが勢いを増し、“斬空“によってずらされた空間を打ち砕いた。

 砲台から一直線に伸びるエネルギービーム。限界点まで圧縮、解放されたエネルギーは通過点にあるありと汎ゆるものを消し飛ばさんと迫り──

 

 

 フリードとエーアストを掠めるように()()()()()()

 

 

「──あっ」

 

 戦場に漂う魔力の残滓。数多の魔力がひしめき合う中、鈴は僅かに感じた懐かしき魔力に目を見開いた。

 

「ッ、空いたぞ!! 全員飛び込め!!」

 

 その瞬間、ハジメからの怒号に我に返った面々が一斉にゲートに突入する。

 全員がゲートをくぐると、瞬く間にこじ開けた穴が閉じていく。

 

 姿は見えない。声も聞こえない。

 それでも、その想いは鈴に届いていた。

 

(ありがとう、恵里……!!) 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん、ようやく行ったか」

 

 ゲートに飛び込んだハジメ達の姿を見送った恵里は、その口から大量の血反吐を吐き出しながら呟いた。

 

 降霊術“縛魂“

 それは恵里が自らの野望を叶えるために編み出した魔法であり、魂にまで干渉するという神代魔法の領域まで足を踏み入れたまさにチートと呼ぶに相応しい魔法だ。

 

 本来は遺体に向けて発動することで機能する力だが、恵里はそれを“熾天使の唄(ララバイ)“に向けて発動した。

 “熾天使の唄(ララバイ)“が完全な無機物で構成された兵器であったのなら効果は無かった。しかし、仮にも神の器となる存在だ。中身が未だに宿っていない空の肉体。恵里はそれを遺体と見立てることで“縛魂“を発動させた。

 

 制御を奪えたのは僅か一瞬。たったそれだけで肉体をズタボロにされる程の代償を受けた。

 

 だが、その一瞬がハジメ達の生死を分けた。

 

「……ああ、くそっ、痛いなぁ」

 

 その場に立っていることも出来す、座り込む恵里の頭上を幾つもの光弾が取り囲む。

 躱す力などとうに残っていない恵里はそれを受け入れるように瞼を閉じ……

 

「──ッ!?」

 

 突然感じた浮遊感に思わず体を縮こまらせた。

 

「無事か、中村恵里」

 

 聞こえた声に恐る恐る目を開けると、そこに広がるは視界いっぱいの青空。そして自分の身体を支える傷だらけのフリードの姿だった。

 

「……触んな、変態」

「それだけの憎まれ口が叩けるのなら問題なさそうだな。ウラノス、全速力で離脱だ」

「クルァアア!!」

 

 フリードの命令を受けたウラノスは、スピードを上げて飛翔する。その背後にそびえ立つ“熾天使の唄(ララバイ)“はみるみる内に遠ざかっていく。

 

「追撃の様子は無いな」

「あれに組み込まれているのは近づく者に対する迎撃のみです。ここまで離れればもう大丈夫でしょう」

 

 途中までフリード達をしつこく追っていた光弾も、ある程度距離が空くとそれ以上は興味を失くしたように消えていった。

 

「……なんで助けたのさ」

 

 ウラノスの背の上で僅かだがフリードと距離を取った恵里が問いかける。

 

「どうせ生きてたって無駄なだけなのに……あそこで終わっていれば」

「……ならば、何故この場に来た? 死にたいのなら自死すれば良い。楽になりたいのなら“ゴスペル(そんなもの)“を持たなければ良い」

「それは……」

 

 フリードの言葉に恵里は言葉を返せなかった。言いたくないわけでは無い。自分自身でも何故ボロボロになってまでハジメ達をサポートをしたのか分からなかった。

 

「悩んでいるのなら生きろ。生きて、その答えを見つけろ。命を断つのはそれからでも遅くはない筈だ」

 

 俯き考え込む恵里から視線を外し、フリードは側で飛翔するエーアストに視線を向けた。

 

「一つ聞いておきたい。何故我らに手を貸した? 今のお前達の主はエルフェウスだろう」

「何度も言いますが、貴方達を助けたつもりはありません。目的が同じだった為に利用しただけです」

「ならば言い方を変えよう。何故エルフェウスを裏切った?」

「‥‥エルフェウスが人類を救おうとしているからです」

「何だと?」

 

 エーアストもアハトも、エルフェウスが人類を憎み、殺し尽くしてやりたいと願っていたのなら、たとえ感情を取り戻していようとも命令に従順に従っていた。虐殺すら許される程の苦しみをエルフェウスは世界から受けていたのだから。

 だが、『誰もが泣けない世界を作る』というエルフェウスの真の目的を知り、過去も思い出した今となっては話が変わる。

 

「私もアハトも、そしてノイントも何も分かっていなかった……」

 

 今は亡き親友の姿を思い浮かべ、エーアストは自重するように呟いた。

 

「ノイント。きっと貴女が生きていたら一目散にあの子を止めようとしたでしょうね」

 

 悲しげな表情で俯くエーアストの心境を、フリードは理解することが出来ない。理解するにはあまりにも互いを知らなさすぎた。

 

「私も、お前達も……全てを知っていたつもりでいただけなのかもしれないな」

 

 友を忘れ、その妹の真意に気付けなかったエーアストとアハト。

 何の為に強さを追い求めるようになったのか、その理由を忘れてしまったフリード。

 

 神々しい輝きに魅せられ、足元の大切なものを見失ってしまった。

 気付いたときには、既に守るべきものは踏み潰されていた。

 

「何とも儘ならぬものだな」

 

 フリードの物言いにエーアストは言葉を返そうとしたが、結局は何も口に出ることはなかった。

 

「後は託したぞ……南雲ハジメ」

 

 

 ◇

 

 

 

 極彩色で彩られた世界。

 

 一面が様々な色が入り乱れて流れる様は、人間の平衡感覚を乱し、立っているのか横たわっているのか。果ては前を見ているのか後ろを見ているのかすら曖昧にさせる。

 ハジメ達が降り立った足元からまっすぐ伸びる白い通路が無ければ気がおかしくなってしまうような光景だった。

 

「気味が悪い光景ですね」

「あからさまにこの道を進めって言わんばかりだけど、このまま進んで良いのかな?」

 

 道が一本しかない以上、この道を頼りに進むしかないのだが、罠の可能性も十分あり得る。そのことに香織が不安そうな表情を浮かべると、ハジメは懐から“導越の羅針盤“を取り出した。

 

「どのみちエルフェウスを見つけないと話になんねぇんだ。罠だろうと行くしかねぇよ」

 

 そう言いながらハジメは“導越の羅針盤“を使い、エルフェウスの居場所を探る。

 ハジメの意志に反応を示し、羅針盤がエルフェウスの居場所を指し示す。

 

 

 

 ()()()()()()()()()()

 

 

 

 気配は無かった。魔力も感じなかった。

 それでも、夢でも幻でもない。地平線の彼方まで続く一本道の先を見つめる彼らの背後に──

 

 

 

 エルフェウスが居た。

 

 

 

「う、おぉおおおおおおおおッ!!」

 

 思考する暇は無かった。武器を構える余裕も無かった。今すぐに動き出さなければここで全滅だと本能が悟っていた。

 気合一閃。ハジメはシア達を突き飛ばして、魔力で強化したその身をエルフェウスにぶつけた。

 

 抵抗は驚くほど無かった。する必要など無かったから。

 

「いきなり抱きついてくるなんて随分と情熱的ですね。そんなに私が恋しかったんですか?」

 

 道を外れ、極彩色の空間へと身を投げるハジメとエルフェウスの背後の空間が歪み、ゲートが出現する。

 

(くそっ!? 誘われた……!?)

 

 離れようにもエルフェウスがハジメの体を強く掴んでいるせいで退避できない。

 ハジメがエルフェウスと共に別空間に消えるのをシア達は見ていることしか出来なかった。

 

「ハジメさん!!」

「ご主人様!!」

 

 シアとティオが一目散にゲートに飛び込もうとするも、ゲートは瞬く間にその姿を消してしまった。

 

「南雲!?」

「南雲くん!?」

「落ち着け、龍太郎、鈴!!」

「そうよ!! ここで冷静さを失えば相手の思う壺よ」

 

 ハジメという最大戦力といきなり分断されたことで龍太郎と鈴が酷く動揺するが、光輝と雫のフォローで何とか落ち着きを取り戻す。

 

「とにかくすぐに先に進もう!! 一刻も早くハジメくんと──」

「その必要は無い」

 

 合流しないと。香織の言葉は頭上から響いた声に遮られた。

 

 彼らが上を見上げると、そこには悠々と空に浮かぶ金髪の少女と巨大な騎士ゴーレムが存在感を放っていた。

 

「貴方達は、ここで終わる」

『悪いけど、言った通り手加減は無しだよ』

「……ユエ、さん」

「ミレディ・ライセン……」

 

 ユエとミレディ。

 神に祝福されし吸血鬼の姫と神に反逆せしライセンの姫。

 

 己が願いを懸けて、賢者達がシア達の前に立ち塞がった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 見渡す限りの純白の世界。

 上も下も、見渡せる全てが白で塗り固められたような世界。

 

 その世界に、距離を取って向き合う一組の男女が居た。

 

「いきなり先制攻撃とはやってくれるな。ラスボスはラスボスらしくラスダンの終点でふんぞり返ってろよ」

「古いですよ、ハジメ様。最近のゲームはラスダン無いんですよ。イベント終わったらいきなりラスボス戦ですよ」

「それFFだろ? 悪いが俺はドラクエ派だ。ラスダンが無いラスボスなんて俺は認めねぇ」

「現実を見てください。自分の城に勇者達の最強装備置いとく間抜けなんて普通は居ないでしょう?」

「ゲームに現実(リアル)を求めんな。仮にそうだったとしても開幕バックアタック仕掛けてくるラスボスなんてクソ食らえだ」

 

 何やら意味不明なことで言い争っているのは、つい先程二人仲良くゲートにダイブしたハジメとエルフェウスだ。

 

「何にせよ……少し意外でした。完全に折ったと思ったのですが」

「ああ、お陰様で色々あったよ……本当に、色々な」

「へえ? それで? ここには何をしに来たんですか? 人類を守る為? それとも元の世界に帰る為?」

「……」

 

 煽るような物言いにハジメは黙って何も答えない。

 

「まあ良いです。どのみち私のやることは変わらないので」

 

 エルフェウスが片手を天に向かって伸ばす。

 すると、金属を擦るような異音と同時に、二本の巨大な大剣がエルフェウスの背後に突き刺さった。

 

 鍔も柄も無い。両刃の剣身だけの歪な剣。その容貌は神の使徒が扱うものとは大きく異なっていた。

 元がファンタジーに良くある西洋剣だとすれば、それは近代的なゴツゴツとした剣。本来は柄が取り付けられるべき場所から青白い線が血管のように枝分かれして鋒まで伸びている。

 

「何を企んでいようと関係ない。どうせ貴方を殺せばそれで終わりでしょう?」

 

 人類の未来を掛けた決戦がここに勃発した。

 

 

 

 




>エルフェウスがバックアタックを仕掛けてきた!!

 ラスダンに一歩足を踏み入れると背後から襲いかかってくる系ラスボス。ダンジョン内に無数にある宝箱は全部トラップか空箱。勇者の最強装備を売ったお金で設置した。
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