You Are There   作:地球の星

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Quest.12 手術の日

 翌日。リベラはバーバラにルーラを唱えてもらって再度トルッカに行き、エリザ達が集めたお金を受け取った。

 さらに町長から痛み止めの薬をもらうことも出来たため、早速その場で使用した。

 彼は深々とお辞儀をしながらお礼を言うと、これまでに集まったお金を持ちながらアークボルトに行き、再度医師の診察を受けた。

 そして、手術代は確保出来たが、その後の入院費用を考えるともう少しお金が必要であることを教えてもらった上で、手術の内容や日程などについて相談した。

「先生、色々教えていただき、ありがとうございます。今、仲間達がお金やアイテム集めをしていますので、今日中に入院費用も用意出来ると思います。」

「分かりました。では、2日後に手術ということで調整をしておきます。」

 リベラは生れて初めての体験に対して不安を感じていたが、勇気を振り絞って同意をした。

 

 その日の夜。ライフコッドに今度はアモスがやってきて、お金と命の木の実を一つ持ってきた。

「どうもありがとう。これだけあれば入院費も出せるよ。そして早速実をバーバラに渡すことにするよ。」

「よろしくお願いします。では、手術頑張ってくださいね。」

「うん、頑張るよ。では、これからもバーバラのために命の木の実を集めてくれますか?」

「分かってますよ。詳細はチャモロさんから聞いていますから。」

「ありがとうございます。では、よろしくお願いします。」

「かしこまりました。では、早いですが私はこれで失礼させていただきます。」

 アモスは一礼をすると、キメラの翼を使って帰路についた。

 彼の姿が見えなくなった後、リベラはバーバラに実を手渡した。

 彼女はすぐその場で実を食べ、最大HPを上昇させた。

 

 手術当日。リベラは朝から飲食をせずにアークボルトに向かうことになった。

 しかし痛み止めを使えないがために表情はたびたびゆがみ、さらにずっとガタガタと震えていたため、見かねたバーバラは何度も彼をなだめていた。

 そして彼女は笑顔を見せながら、右手でリベラの左手をつかみ、そのまま一緒に外に出ていった。

「それじゃ、ターニア。行ってくるよ。」

「行ってらっしゃい。しばらく会えなくなるけれど、きっと元気な体になってね。」

「うん。なるべく早く退院出来るようにするからね。」

 彼らはまるで名残惜しむように会話をした後、にっこりと微笑んだ。

「じゃあ、行くわよ。せーの、ルーラ!」

 バーバラが左手で呪文を唱えると、2人は空へと舞い上がっていった。

 

 アークボルトの入口では、今日もガルシアが門番のように立っていた。

 再び勝負をしに来たのかと問いかけてきた彼に対し、リベラは手術を受けるためにやってきたことを告げた。

 そして自分達は戦える状態ではないため、無条件で通してほしいと要望した。

 すると、看護師の女性が入口にやってきて、中に入るように言ってきた。

「おっと、これは失礼しました。では、お通り下さい。」

「ありがとうございます。」

「では、失礼しまーす!」

 リベラとバーバラは並んで仲良く城内に入っていった。

 

 内部では現役の兵士達や、これから兵士になるために集まってきた人達が訓練をしていた。

 隣の部屋では何人もの人達がいて、これから柔道の試合が始まるところだった。

 その中にはポニーテールをしている赤毛の少女がおり、彼女は素早い動きをいかして、あっという間に相手の女性から一本背負いで一本を奪った。

(あの人、小柄だけれど凄い腕前を持っていそうだな。)

 リベラが彼女の腕前に注目していると、バーバラが徐々に震え始め、左腕にしがみついてきた。

「えっ!?どうしたんだよ!」

 彼はビックリして彼女を見た。

「やっぱりまだ戦うのを見るの怖いよお…。」

 震えながら自分の腕をしっかりとつかむ姿を見て、リベラは彼女が未だに心に深い傷を背負っていることを実感した。

 すると近くから「ヒューッ!君達、熱いねえっ!」という声が飛んできた。

「えっ?」

 リベラははっとして声のした方を見た。

 すると、試合をしていた人達がこちらを見て、「君達、付き合っているの?」と言ってきた。

「い、いえ。あの…、僕達は、その…。」

 リベラがあたふたしながら言い返したのに対し、バーバラは何も言わず、腕にしがみついたままだった。

(とにかく、この場を早く通り抜けてしまおう。)

 彼らは冷やかされながらも、奥の部屋へと歩いていった。

「ブラストさん、あの2人は誰ですか?」

 先ほど一本を奪った少女は、審判をしていたブラストに質問をした。

 彼から説明を受けると、彼女は「そう。あの人がバーバラという人なのね。」と言った。

「はい、そうです。後で彼女と話をしてみませんか?」

「そうですね。そうします。」

「では、2回目の勝負に行きましょう。」

「分かりました。」

 彼女は次の試合が始まると、今度は10秒で相手を固め技で動けなくし、あっさりとカタをつけてしまった。

 

 手術室に入ったリベラは上半身の服を脱ぎ、手術台の上に横になった。

 医師の男性は必要な道具がそろっていることを確認すると、リベラに心の準備が出来ているか問いかけてきた。

「大丈夫です…。」

 彼は言葉では強がっていたものの、実際は怖さでガタガタと震えていた。

 そんな姿を見て、バーバラは自分も彼のそばにいたいと申し出た。

「申し訳ありませんが、手術中、外部の人は中に入れません。」

 看護師さんはバーバラに対し、外で待機するように促してきた。

「でもあたし…。」

「つらいかもしれませんが、ご協力お願いします。」

「あたし、邪魔しないから…。」

「僕なら大丈夫だよ。きっと乗り越えてみせるからね。」

「えっ?でも…。」

「君のおかげで勇気がわいてきたよ。だから、心配しないで。」

「わ、分かったわ…。」

 リベラに説得されて、彼女はやっと外に出ることに同意した。

「それならあたし、代わりにこれを渡してあげるね。」

 バーバラは自分の両手の手袋を外した。

「これを持っていて。」

「うん、分かった。」

「あたし、ここにいられなくても、応援しているから。」

「ありがとう。きっと乗り越えてみせるよ。」

 リベラは笑顔で手袋を受け取った。

「それではバーバラさん、お願いします。」

「分かりました…。」

 バーバラはそばにいてあげられない悔しさをこらえながら部屋を後にしていった。

 

 彼女は廊下の長椅子に座り、トレーニングの参加も断って手術の終了を待った。

 その間の一分一秒は、彼女にとって非常に長く感じられるものだった。

(早く終わらないかな…。早く時間が過ぎてくれないかな…。)

 そう考えながらひたすら待ち続けていると、ふと廊下から誰かがのっしのっしと歩く足音が聞こえてきた。

(誰かしら?)

 彼女はその方角を見た。

 やってきたのはハッサンで、彼はいかずちの杖をつきながら、顔をしかめてこちらにやってきた。

「えっ?ハッサン!?」

 バーバラは驚きながらスクッと立ち上がった。

「おお…、バーバラ…か…。」

「うん。でも、ハッサンがどうしてここに?それに、どうしてそんな歩き方をしているの?」

「ああ…、ちょ…ちょっと、俺も…診察を受けにな…。」

「診察って、どこか痛いの?」

「腰がな。実は今日…、地底魔城にいる時に…、やっちまってな…。」

 ハッサンは痛みを我慢しながらそう話しかけると、ゆっくりとバーバラと一緒に座り、それまでの経緯を話した。

 

『ぐおおおおっ!』

チャモロ『ちょっとハッサン!どうしたんですか?』

『腰が!腰がああっ!』

アモス『これはYo!2(ツー)!のようですね。』

チャモロ『何ですか、その言い方は。』

『いやあ、普通に言うよりもYo!2!の方が面白いし、前向きかなと思って。』

『そんなのんきな言い方している場合じゃねえだろ!とにかくよ、医者の所に連れていってくれ。』

 ハッサンは腰に手を当てながらお願いをした。

 とはいえ、ここは地底魔城の中で、リレミトを唱えられる人がいないため、歩いて外に出るしかなかった。

 しかもその途中でキメラの翼を盗まれるハプニングにも見舞われてしまった。

『ぐ、ぐおおおおっ!』

 ハッサンは最初こそ何とか2本の足で歩いたが、次第に症状が悪化してしまった。

 そのため、いかずちの杖をつき、痛みを懸命にこらえながら、一歩ずつゆっくりと歩き続けた。

 

「そういうわけでな…、俺は戦力になれない中で…モンスター達に…何度も遭遇しながら…どうにか外に…出て…、キメラの翼を手に入れて…、やっとの思いで…ここに来たんだ。」

「そうなの。それで、お医者さんには会ったの?」

「ああ…。」

 ハッサンか苦しそうな表情をしながら診察の結果を話した。

「そう。しばらくの間治療と安静が必要なのね。」

「ああ…。俺…、今までのバチが当たったようだな…。」

「バチって?」

「実はな…。」

 ハッサンはこれまでバーバラをさんざん足手まといとか、役立たずと思っていたことを正直に打ち明けた。

「それでな…、俺…、自分が戦えない状態になって…、やっと気づいたんだ…。これまで…お前に…何てひどいことを言っていたんだってな…。ごめんな、バーバラ。」

 彼は痛みをこらえながらゆっくりとお辞儀をして謝った。

「でも、弱いのは事実だから…。」

 バーバラは怒ることもせず、ただうつむくばかりだった。

「本当に…すまなかった…。そして…、これからは…チャモロとアモっさんに…お願いして…、何とか…2人だけでも…命の木の実を手に入れてもらうぜ…。そして…お前の…最大HPを…伸ばしてやるからよ…。」

「うん、ありがと…。」

 バーバラもまだ心の整理が出来ていない状態ではあったが、ハッサンが謝ってくれたことで少なくとも心の重荷は軽くなった。

 そして、彼のために役に立ちたいという思いから、その場でリレミトを唱え、さらにルーラで一緒にマーズの館へと向かっていった。

 

 その直後、チャモロとアモスが2人のいたところにやって来た。

アモス「あちゃー、遅かったですね。またリレミトの後になってしまいましたか。」

チャモロ「そうですね。こういう時、瞬時に移動出来ると本当に便利ですね。」

「全くその通りです。リレミトとルーラを両方使えるバーバラさんがいれば、ハッサンの腰がここまで悪化しなくて済んだはずでしたからね。」

「結果的に彼女が離脱して、やっと彼女の大切さを理解する形になりましたね。ルーラはキメラの翼で代用出来るとはいえ、今回はハプニングに見舞われましたし、ましてリレミトはアイテムで代用出来ませんからね。」

「とはいえ、ハッサンはこのまま離脱でしょうか?」

「ミレーユさんのおばあさんなら何かいい方法があるかもしれませんが…。」

「せめて、コシの強いうどんか何か食べたら腰が治りませんかねえ。」

「こんな時に何を言い出すんですか!」

 チャモロはアモスの空気読めない発言に思わずツッコミを入れていた。

 

 その頃、アークボルトではテリーがやってきて、入口でガルシアと交代で門番をしていたネルソンと勝負していた。

 彼はライデインやはやぶさぎり、まじんぎりを駆使し、相手にどんどんダメージを与えていった。

 勝負は次第に一方的な展開になっていき、ネルソンはHPが危険域に達するととっさに降参を宣言した。

「頼む。これ以上の攻撃はやめてくれ。」

「フンッ!断る!」

「これは勝負なんだ。殺し合いなんかじゃない!」

「だったらお前の装備品をもらう。そうすれば命は助けてやる。」

「わ、分かった…。」

 全身傷だらけになったネルソンは、命乞いをしながら持っていた剣と盾を差し出した。

「フンッ!こんな程度の装備品か。まあ売ればそれなりにお金になるだろうからこれで勘弁してやる。じゃあな。」

 テリーはネルソンの手当てもしないまま彼に背を向け、ルーラで飛び去っていった。

(…あの少年、一言で言うなら危険だ。もしかしたらモンスターの側に寝返ってしまうかもしれん。そうなったら、取り返しのつかないほどの過ちを犯してしまうぞ。)

 彼は心の底から嫌な予感を感じ取っていった。 




 今回、途中に出てきた赤毛の少女は、僕が独自に考えて登場させたオリキャラで、次回で名前も登場します。
 この作品を書いていると、どうしても女性キャラ不足になりがちだったため、こうしてみました。
(同様の状況は前作でもあり、その時はマンガ版の3巻に登場したセリーナや、ドラクエ7の風の精霊を出しました。)
 容姿はスターオーシャン2のプリシスをモデルにして考えています。
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