踊る宝石との戦闘後、バーバラは借りていたはがねのムチと魔法の盾を返却した。
そして彼女は宝石を3人で均等に分けることを提案したが、ガルシアが「僕は仕事中ですから受け取るわけにはいきません。君達で分けてください。」と言ってきたため、2人はそれに従うことにした。
その後、サラは自信をつけたのか、さらに口笛を吹いてバットマジック2匹、ダンスキャロット2匹、カメレオンマン一匹を呼び出した。
数に加えて種類も多かったが、サラは先制攻撃でイオラを唱え、一瞬で戦闘を終わらせてしまった。
次の戦闘はラリホーン一匹で、彼女は早速メダパニダンスを踊り、相手を混乱させた。
次のターンでは遊びとばかりにラインダンス(効果は武器を装備していない状態での2~4回攻撃)を踊り、3回攻撃を披露した。
しかしKOには至らなかったため、彼女はとどめとばかりにメラミを唱えてヒットさせ、戦闘を終わらせた。
「サラさん、賢者の父親とダンサーの母親の血を見事に引き継いでいますね。さすがです。」
「いえ、ガルシアさんが一緒にいてくれたおかげです。おかげで安心して戦えました。ありがとうございます。」
サラは自分の能力を存分に発揮出来たことに大満足しながら、母親直伝のハッスルダンスを踊り、ガルシアのHPを20程度回復させた。
「それじゃ、私は城に戻ることにします。君は?」
「あたし?あたしはもう少し外にいるわ。」
「一人であまり外をウロウロしていたら危ないわよ。大丈夫?」
「大丈夫。少し気になることがあっただけだから。」
「そう。じゃあ、気を付けてね。」
サラはそう言うと城の中に入っていき、ガルシアは再び門番になった。
一人になったバーバラは先程の戦闘でデビルアーマーに呼び出され、戦闘もせずに後ずさりしていったホイミスライムのところに向かって歩いていった。
すると、隠れていた彼も人間が近づいてくることに気が付き、茂みから飛び出しておびえながら後ずさりをした。
そして一目散に逃げようとしたが、つまずいて転んでしまい、触手で自分の頭を抱えた。
「待って。あたしはあんたを攻撃したりはしないわ。」
しかしそのホイミスライムはそれが信じられないのか、その場にうずくまったままだった。
するとバーバラはホイミを唱え、すでに体のあちこちにあった傷を回復させた。
「人間が、回復?」
ホイミスライムは人間そのものを敵だと認識していたのだろう。その呪文に驚いていた。
「どうして僕にホイミを?」
「こういう時は人間もモンスターも関係ないわ。困っていれば助けてあげるまでよ。」
「本当にそう考えてくれる人間がいるの?」
「うん。あたし達だってむやみに痛めつけたりはしないわ。だから安心して。あたしはバーバラ。あなたは?」
「名前?ホイミスライムという種族としての名前しか…。」
「あら、そうなの。じゃああたしが名前を付けてあげるわね。えっと、ホイミスライムだから…、そうだわ!ホイミンなんてどう?」
「ホイミン?」
「うんっ!どうかしら?」
「…分かりました。じゃあ、僕、ホイミンって名乗ることにします。」
「ありがとう!」
バーバラとホイミンはそれからお互いのことについて色々話し合った。
そしてお互いが寂しい時を過ごし、心に傷を抱えていることを知った。
「君もつらかったのね。」
「うん…。もう耐えられなかった。一匹でいる時が一番幸せだった。」
「えっ?どうして?」
「だって、誰からもいじめられなくて済むから…。」
「そう…。そこまで追い詰められていたのね…。」
バーバラはホイミンのことを放っておけなくなり、仲間に加わってくれないか問いかけてみた。
「仲間?」
「そうよ。どう?」
「……。」
ホイミンは人間と果たしてうまくやって行けるのか、悩みこんでしまった。
「すぐに決めなくてもいいわ。しばらくあたしと一緒に行動する?」
「でも、いじめの相手に会ったら…。」
「大丈夫よ。一人じゃないんだから。」
「じゃあ…。分かりました。」
ホイミンはまだ半信半疑の気持ちながらも、自分に手を差しのべてくれた人間に恩返しをしようという気持ちになった。
一人と一匹が城に行こうとすると、かつてホイミンをいじめていたホイミスライム5匹が現れた。
「お前、何で人間と一緒にいるんだよ!」
「俺達を裏切る気か!こっちに来い!」
「そして人間をぶっ飛ばしに行くわよ!」
彼らはホイミンに対し、こちらに来るように促した。
「僕…、この人と一緒にいる!」
彼は勇気を振り絞って言い切った。
「何だと!この裏切り者!」
「やっちまうぞ、こら!」
ホイミスライム達は敵意をむき出しにして戦闘態勢に入った。
「こらこら!あんた達やめなさい!もしかかってくるならニフラムを唱えるわよ!」
バーバラは左手を伸ばして呪文を唱える準備をした。
「ニフラム!?これは嫌だ!」
「消えたくない!それは勘弁してくれ!」
「おのれ!人間なんかに頼りやがって!」
「デビルアーマーに言いつけてやるわ!」
彼らは口々に叫ぶと、一斉に逃げ出していった。
「ふう…。良かったわ、戦闘にならなくて…。」
バーバラはほっと胸をなでおろした。
「あの、バーバラさん。もう一度聞きますが、本当に仲間に加えてもらってもいいですか?」
「いいわよ。喜んで。」
「本当ですか?」
「うんっ!あたし達のパーティーには、モンスターに変身出来る人間だっているから。今度見せてあげるわね。」
「ぜひ見たいです。じゃあ、お願いします!」
こうしてホイミンが新たに仲間に加わった。
それから間もなく、ガルシアがこちらに駆け寄ってきた。
「えっ?僕と戦いに来たの?」
「違うわ。あの人はさっきあたしと一緒にいた人だから、心配しないで。」
彼女がそう言うと、ガルシアが看護師さんからの伝令で、リベラの手術が終わったことを伝えてくれた。
バーバラはそれを聞くと「ほんと?わーい!」と言い、笑顔で駆け出していった。
「あっ!待ってよ!」
置いてけぼりになりそうになったホイミンは、慌てて彼女の後を追った。
「あっ、ごめんねえ。」
バーバラはその場で立ち止まると、自身が持っていた身かわしの服をホイミンに着せて、一緒に城に入っていった。
病室に入ると、そこにはリベラが右肩におびただしい程の包帯を巻いた状態でベッドに横たわっていた。
まだ麻酔が効いているのか、目はうつろながらもすでに意識は戻っており、彼は「ここは…。」と声を出した。
「リベラ!気が付いたのね!良かった!」
「バーバラ…。」
彼は意識もうろうとしていたが、彼女の笑顔を見て、自分の顔にも少しずつ笑みがこぼれた。
しばらくすると、リベラはバーバラのそばにホイミスライムがいることに気が付いた。
「その…モンスターは…?」
「あっ、彼のこと?ホイミンっていうの。今日からあたし達の仲間になったのよ。」
「ホイ…ミン…?」
「うんっ!」
バーバラは自分達が最初にアークボルトにやってきた時に出会った6匹の中の一匹であることを話し、いじめられていた彼を助けたことがきっかけで仲間になったことを話した。
「そうか。あの時の…ホイミスライムだったんだね…。僕は…、リベラ…。」
「ホイミンと言います。よろしくお願いします。」
「こちらこそ…、よろしく…。」
リベラもホイミンを仲間として迎え入れてくれた。
「良かったあっ!受け入れてくれてっ!」
バーバラは心から喜んでくれた。
これまで落ち込むことが多かった彼女の笑顔を見て、リベラは自分もうれしくなった。
それを見てホイミンも笑ってくれた。
その後、リベラは意識がはっきりとしてきたため、会話もスムーズに出来るようになってきた。
そして手術の直前にバーバラから受け取った手袋を返却した。
会話の中で、バーバラははがねのムチの攻撃力について打ち明けた。
「へえ。君でも通常攻撃でそこまでのダメージを与えられたんだね。」
「うん。あたしもびっくりだったけれど、何だか自信がついたわ。それにムチというからにはグループ攻撃が出来そうだから、相手が複数ならさらに威力を発揮すると思うの。」
彼女はさらに、魔法の盾が踊る宝石のギラを軽減してくれたことも話した。
「そんな効果があるんだったら、ぜひ人数分そろえたいね。」
「うん。お金はその分かさむけれどね。」
バーバラは少し苦笑いをしながらも、表情は明るかった。
2人と一匹は、その後も病室で楽しく会話をした。
すると、ミレーユがお見舞いの目的で部屋に入ってきた。
「こんにちは。手術、無事成功したのね。」
「うん。不安もあったけれど、無事に終わって良かったよ。ところで、ミレーユは立ち直ってくれたの?」
「ええ、何とかね。あれからハッサンが精神面で色々支えてくれたおかげで、気持ちが楽になったわ。私もいつまでも落ち込んでばかりはいられないし、彼のためにもパーティーメンバーに復帰するわ。」
「それは良かったね。」
「ええ。ハッサンには本当に感謝しているわ。ところで、そのホイミスライムは?」
「ああ、ホイミンっていうんだ。バーバラが仲間として迎え入れてくれたんだよ。」
「そう。そんなことが出来るなんて、すごいわね。」
「まあ、あたしも彼も寂しい思いをしてきたから、お互いのことを話したら意気投合しちゃったのよ。というわけで、ヨロシクッ!」
バーバラは笑顔でおてんばぶりを発揮した。
そしてパーティーメンバーに加えてもらえるようにミレーユにお願いをした。
「そうねえ…。」
「お願いします。決して悪いことはしません。きっと役に立ちますから!」
ホイミンは頭を下げてミレーユにお願いをした。
「まあ、バーバラの頼みなら断る理由もないから、いいわよ。」
彼女は笑顔でOKを出してくれた。
「ありがとうございます!必ず戦力になってみせます!」
ホイミンはレベルもHPもMPも低い状態だったが、やる気は満々だった。
「それなら、これから私の仲間達に会いに行きましょう。そしてダーマ神殿にも行って転職し、能力を伸ばしてあげるわ。」
「本当ですか?お願いします!」
「じゃあ、ついてきて。」
「ありがとうございます!」
ホイミンはうれしそうにミレーユのそばにやって来た。
「あっ、神殿に行くんだったら、あたしも行くわ。」
「えっ?でも私はキメラの翼を持っているのに?」
「あたしも再び魔法使いに転職するつもりだから、ちょうどいいわ。一緒に行きましょう。」
「分かったわ。じゃあ、お言葉に甘えるわね。」
バーバラの提案を受けて、ミレーユとホイミンはルーラで行くことになった。
「じゃあリベラ。少しの間留守にするけれど、すぐに戻ってくるからね。」
「分かった。行ってらっしゃい。」
リベラはベッドに横になったまま、バーバラ達が部屋を後にするのを見届けた。
僕は仲間モンスターの中でホイミンが好きで、どうしても仲間に加えたかったため、ここで登場させました。
また、ハッスルダンスの回復量がショボいですが、まだ一人前ではないからと解釈してくれれば幸いです。
あと、戦闘後に踊っていることに関しては突っ込まないでください 。