You Are There   作:地球の星

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Quest.18 さようなら、魔法使いのあたし

 みんなで一発芸を披露した翌日、リベラは再び医師の診察を受けた。

 その結果、彼は明日退院になることや、破邪の剣のギラと左手でのメラミの使用を許可してもらえた。

「先生、ありがとうございます!」

「ただし、メラミは1日2回までにさせていただきます。いいですね。」

「はい。分かりました。」

 リベラはそのことをブラストに伝えると、旅人の洞くつに出現したモンスターの討伐に参加しないかという仕事の依頼を受けた。

「まだ一時外出の状態でこれをするのは少し厳しいかもしれないが、どうかね?」

「行かせてください。お願いします。」

「分かった。ではガルシア、スコット、ホリディに加えて、君にも行ってもらうことにしよう。」

「分かりました。ありがとうございます。」

 リベラは笑顔で頭を下げた。

 そしてガルシア達に合流し、一緒に現地に向かっていった。

 

 彼らはフィールドを歩いている間は聖水を使い、無駄な戦闘を避けることにした。

 その間、リベラはゆっくりと破邪の剣で素振りをしていた。

(よし、痛み止めを使わなくても今のところ痛みはない。このまま回復していけば、きっとパーティーメンバーに復帰出来る。そのためにも、今は無理はしないように気を付けよう。)

 彼ははやる気持ちを抑えながら歩き続けた。

 

 洞くつに入ると、そこにはかつてホラーウォーカーとかくとうパンサーのいたところに宝箱が4つ置いてあった。

「おおっ!これは何か役に立つアイテムが入っていそうだ。」

 スコットは早速箱のところに行き、そのうちの一つに手をかけようとした。

「待って。ここはまず僕に判別をさせて下さい。」

 リベラはそう言うと、それぞれの箱に向かって左手でインパスを唱えた。

 その結果、青く光ったのは一つ、黄色が一つ、残りは赤だった。

「というわけで、左端はアイテム、右から2番目はゴールド、残りはトラップです。」

「そうか。では、安全なものを開けてみよう。」

 ガルシアがそう言うと、スコットとホリディがそれぞれの箱を開けた。

 結果、中身はバトルアックスと580ゴールドだった。

「これは有用な武器だな。誰がこれをここに置いていったのは分からんが、ありがたくいただいていくことにしよう。」

 ガルシアはそう言うと、これを誰に持たせるかを考え始めた。

「あっ、それならハッサンに持たせてあげたいと思いますので、僕に譲ってくれませんか?」

「彼にか?確か炎のツメを持っていたはずでは?」

「それは今、アモスさんが使っていることもあって、ハッサンは武器がいかずちの杖なんです。だから彼のために何か武器を買ってあげようと思っていたんです。お願いします。」

「そうか、分かった。では君に持たせることにしよう。」

「ガルシアさん、ありがとうございます!」

 リベラは深くお辞儀をした後、バトルアックスを受け取った。

 そしてお金はスコットとホリディで山分けをすることになった。

 残った2つはモンスターであることが確定しているが、これらを討伐することが今回の仕事であるため、一行は息をのんだ。

(確かにここで放置したら後で悲劇が待っている気がする。討伐を頼まれた以上、開けるしかない!)

 リベラは大きく深呼吸をした。

「みんな。何が出現するのか分らんが、とにかく心の準備をしておいてくれ。」

 ガルシアはそう言うと、自ら左から2番目の箱を開けた。

 その正体はひとくい箱だった。

(出たな!正直、体にどんな負担がかかるのかも分からないけれど、やってみるしかない!)

 リベラは覚悟を決めると左手でメラミを唱えた。

 すると攻撃はまともにヒットし、かなりのダメージを与えた。

 ひとくい箱の動きは遅く、全員が先制攻撃出来そうだったため、ガルシア達は一斉に攻撃し、1ターンで戦闘を終わらせた。

 すると、目や口が消えていき、中からは素早さの種が姿を現した。

 ガルシアはそれを取り出し、袋にしまい込んだ。

 この戦いで勢いがついた一行は、残された箱を迷うことなく開けた。

 その正体はミミックだった。

(ここでもまずはメラミでいってみよう。)

 彼は早速その呪文を唱えてみた。

 しかしミミックは強耐性を持っていたため、ダメージをかなり減らされてしまった。

(えっ?これは計算外だった。でもこれ以上のメラミは体にきついし、まわし蹴りもまだ出来ない。ここはガルシアさん達に任せよう。)

 リベラがそう思っていると、今度はミミックが突き飛ばしをしてきて、ホリディを気絶させてしまった。

(※この作品ではザキ、ザラキNGのため、突き飛ばしに変更させていただきます。)

 続いて、スコットはガルシアにバイキルトを唱え、ガルシアは強烈な一撃を叩き込んだ。

 次のターンで、リベラは破邪の剣でギラを放ってヒットさせたが、ガルシアの通常攻撃はかわされてしまった。

 その直後にミミックが再度突き飛ばしをしてきたため、スコットも気絶をしてしまった。

(くっ!道具使用でも多少体に負担はかかるんだな。でも、やるしかない!)

 リベラはもう一度ギラを放とうとしたが、それよりも一瞬早くミミックが力任せの攻撃をヒットさせてきたため、彼はその場に倒れ込んでしまった。

(しまった!左手で呪文を唱えるために盾を外しているせいでこんなことになるなんて!)

 幸い右肩から倒れることは免れたが、それでも彼は倒れ込んだまま立ち上がれず、残るはガルシア一人になってしまった。

 彼は強烈な一撃を叩き込み、ミミックをダウンさせてくれたため、戦闘はそこで終了となった。

 すると、ひとくい箱と同様に目と口が消えていき、今度は命の木の実が姿を現した。

「これはサラに渡すことにしよう。彼女はきっと喜ぶはずだ。」

 ガルシアはうれしそうに実を拾い上げ、袋にしまった。

(その実、出来ることならバーバラに渡したかったけれど、サラさんだったら彼女も許してくれるだろうから、ここは黙っておこう。)

 リベラは言いたかったことを懸命に我慢しながら自分に薬草を使った。

 

 一行がある程度動ける状態になると彼らは洞くつの外に出てきて、ガルシアがキメラの翼を使ってアークボルトに戻ってきた。

 城の入り口ではバーバラが両手を合わせながら心配そうに立っていた。

「あっ、バーバラ。」

「良かった、無事で…。」

「ごめんね、心配させちゃったね。」

「うん…。でもリベラ、けがしたの?」

「大丈夫。ちょっとミミックにやられただけだよ。」

「じゃあ、けがをしちゃったんだ…。」

「大したことじゃないから、気にしないで。」

「でも、顔は痛いって言っているわよ。」

「えっ?」

 リベラはこれ以上痛みを隠すことは出来ないと判断し、ミミックの攻撃を受けてその場に倒れ込んだことを打ち明けた。

「やっぱりそうだったんだ。じゃあ、あたしが回復させてあげるわ。」

 バーバラはホイミを2回唱えてくれた。

「ありがとう。君に回復してもらうと、すごくうれしいよ。」

「本当に?」

「うん、単にHPを回復させるだけじゃないような気がするんだ。何だか気持ちまで前向きになるような…。」

「ホント!?じゃああたし、これからは率先してリベラの回復役になるわね!そしてリベラを心の面でも支えてみせる!」

「ありがとう。じゃあ、これから移動中の回復は君に任せるよ。」

「わーい!それならあたし、武闘家だけでなく、僧侶にもなって、ベホイミやベホマを覚えるわ!そして移動中だけでなく、戦闘中でもリベラの回復役になるからね!」

 バーバラは満面の笑みを見せてくれた。

 

 それから2人はお互いの手袋を外した上で手をつなぎ、城壁を背にしながら座った。

 彼らは何も言わず、時々顔を赤くしながらお互いを見つめ合った。

(このまま、リベラとずっと一緒にいられたらいいなあ…。)

(さっきから胸がドキドキしている。何だろう、この気持ち。)

 お互いは相手がはっきりと好意を持っていることを実感していた。

 

 しばらくの間、言葉無しで雰囲気を楽しんでいた2人だったが、やがてお互い何か会話をしたいという気持ちになった。

 最初は何から話せばいいのか分からず、話しかけてもすぐに途切れてしまうありさまだった。

 でも、バーバラが自分を見捨てずに守ってくれたことへの感謝の言葉を述べると、リベラは彼女を放っておけなかったことや、何とかして戦力になるための方法を懸命に考えていたことを打ち明けた。

「リベラはあたし達のこと、本当に真剣に考えてくれていたのね。」

「うん。そうでなければ、僕はリーダーとして失格だと思っていたから。」

「ありがとう。あなたがリーダーで本当に良かったわ。」

 バーバラは握っている手をさらにぎゅっとつかんだ。

 するとリベラの顔は一層赤くなり、再び無言のまま時間が過ぎていく結果になった。

 とはいえ、言葉は無かったとしても、それは2人にとって幸せな時間だった。

 

 そうしているうちに、日は大きく西に傾いていき、徐々に門限の時間が近づいてきた。

 リベラはもう一日アークボルトに滞在することになっていたため、2人は日没とともに離れなければならなかった。

「じゃああたし、ルーラを唱えるわね。」

 彼女は手を離して立ち上がると、呪文を唱える動作に入った。

 するとリベラはとっさに「待って!」と声をかけた。

「何?」

「バーバラはライフコッドに帰るの?」

「その前にダーマ神殿に行くわ。いよいよ魔法使いからお別れになるの。」

「えっ?昨日の段階でイオラを覚えていたし、もう転職したと思っていたけれど。」

「確かにそれが目標だったら覚えた時点ですぐにダーマ神殿に行っていたわ。でも、いざ行こうと思ったらルーラを唱えられなくて…。」

 彼女は決して賢者への思いが消えたわけではないだけに、その表情からは未練が感じられた。

「でも、きっとそのチャンスはやってくるよ。道は一つじゃないんだから。」

「うん。それは分かっているんだけど…。」

 そう言ってうつむくバーバラを見て、リベラは何とか彼女を励まそうとした。

 そして、一発芸を披露した時の歌を自分のためにもう一度歌ってほしいと申し出た。

「えっ、やだ。リベラの前で歌うの、恥ずかしいよお…。」

「じゃあ、詞の朗読だけでもいいから。」

「それも恥ずかしい。後で紙に歌詞を書くから、明日それを渡してあげるわね。」

「分かった。じゃあ、頼んだよ。」

「うんっ。じゃああたし、今からダーマ神殿に行くわ。明日また会おうね。」

「うん、また明日ね。」

 リベラは相手の顔をしっかりと見つめながら左手を差し出した。

 バーバラはそれに応える形で両手を差し出して相手の手を握り、しっかりと握手をした。

「あっ、そうだわ。ダーマ神殿に行く前に、イオラの威力を見せてあげるわね。」

 彼女は手を離すと、その呪文を唱えた。

(この威力だったら、戦闘をかなり有利に進められそうだ。バーバラはこれから間違いなく大活躍をしてくれる。これまで本当に色々なことがあったけれど、本当にあきらめなくてよかった。)

 リベラはこれまでのことを振り返りながら、バーバラが飛び立っていく姿をじっと見つめていた。

 

 ダーマ神殿にたどり着くと、バーバラは祭壇に向かって歩きながら、これまで魔法使いとして過ごした日々を思い出した。

(思えば、魔法使いはイバラの道だった。何度も戦闘でダウンしてしまい、その度に足を引っ張ってしまった。悔しい思いもした。過呼吸にもなった。逃げ出したこともあった。でも、それらの日々がやっと思い出として振りかえられるようになった。そしてこれからは新しいあたしとして歩んでいくわ。)

 彼女は祭壇にたどり着き、僧侶になるためのお祈りを開始するまでの間、思わず涙ぐみそうになった。

(あたしは絶対に賢者をあきらめたわけじゃない。きっと、またいつか魔法使いに戻れる日が来る。そう信じてる。その日が来るまで、さようなら、魔法使いのあたし…。)

 




 というわけで、バーバラはパラディンを目指すことになりました。
 構想段階の時、彼女は魔法使いの熟練度が5になるとすぐに転職し、完全に賢者への道を断ち切るつもりで考えていました。
 しかしそれだと道は一つではないということに反するため、魔法使いに戻る可能性を残しました。
 ネット上でバーバラの職業をチェックしてみると、賢者やスーパースターが目立ちますが、バトルマスターになっているケースもありました。
 最初は驚きましたが、よくよく考えてみると、はがねのムチ、きせきの剣、グリンガムのムチを使いこなせば、確かに活躍出来るのではないかと思えたため、今では納得しています。
 そしてイオラを覚えた後、スーパースターになった時の彼女をイメージしたのが、今作でオリキャラとして登場したサラです。
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