ダーマ神殿を後にした5人は夢の世界にある、名も無き小さな村に入っていった。
入口の近くには、ある一人の青年が困った顔をしながら立っていた。
「あの、どうしたんですか?」
リベラが話しかけると、青年は自分が所有している畑を何ものかに荒らされたことを打ち明けた。
「それは、モンスターなんですか?」
「いや、多分野生動物で間違いないと思います。」
彼はリベラと話をしながら、何とか退治してくれる人がいればという思いを打ち明けた。
「それなら、僕達にその仕事をさせてもらえませんか?」
「えっ?いいんですか?」
「はい。こちらもこれから熟練度を上げるつもりでいますから、ちょうどいいです。やらせてください。」
リベラはみんなを代表して仕事を引き受けた。
青年は「どうもありがとう!」と言いながら喜んだ後、仕留めた場合の報酬を約束してくれた。
話し合いの結果、先にハッサン、ミレーユ、チャモロが張り込みをすることになった。
「じゃあみんな、頑張ってね。」
「あたし達は先に休んでいるわ。」
リベラとバーバラはルーラを唱えて一旦パーティーから離れていった。
3人は青年と一緒にあらかじめエサをまいておき、茂みの中に隠れた。
ハッサン「さあ、これからどうなるんだろうなあ?」
チャモロ「分かりません!」
「あっ、あそこに獣が!」
「えっ?」
「何と!」
「おおっ!」
「出ませんでしたーーっ。」
「あららら…。」
ハッサンのフェイントを受けて、チャモロは思わずずっこけた。
「2人とも、何やってるのよ!もし気付かれたら逃げてしまうじゃない!」
ミレーユは少し厳しめの口調で2人を黙らせた。
それから時間が経過しても、お目当ての動物はなかなか現れなかった。
これでは適当な場所でモンスターと戦闘をした方が早かったかもしれない。
でも、仕事を受け入れてしまった以上、途中で放棄することも出来ない。
一方の青年も口にこそ出さないが、依頼したことを内心では後悔し始めていた。
彼らは何とも言えないもどかしさを抱えながら待ち続けた。
やがて時間も過ぎ、彼らは青年が用意してくれたおにぎりを食べ、さらに待ち続けた。
「これだけ待っても来ないのかよ…。」
「まあ、もうすぐ交代ですから、我慢しましょう。」
すっかり待ちくたびれているハッサンとチャモロは何度もあくびをしており、目もうつろだった。
さすがのミレーユも2人に声をかける気にはなれず、じっと機会をうかがい続けた。
その時、近くの茂みから何かガサゴソという音が聞こえてきた。
「ん?やっとか?」
「そのようね。」
「絶対に仕留めたいですね。」
ハッサン、ミレーユ、チャモロはようやく訪れたチャンスを前に、気合を入れた。
すると、茂みから大きなイノシシが2頭姿を現した。
「あっ、あれです。あれがお目当ての動物です。」
青年が指さしながら言うと、ハッサンは思わず「でけっ!!」と大きな声を出してしまった。
するとイノシシはこちらに気づき、立ち止まった。
「こらこら!静かに!」
「すまねえ、うp主。」
彼らはせっかくの獲物が逃げてしまうことを覚悟した。
しかし2頭のイノシシは逆にこちらに向かって迫ってきた。
(これは間違いなく戦闘だな。望むところだ。やってやるぜ!)
ハッサンはやる気満々だった。
戦闘になると、ミレーユはまずハッサンにスカラをかけた。
(※本当はスクルトにしたかったのですが、レベル的に微妙なところだと思ったので、スカラにしました。)
すると、イノシシAが攻撃をしてきて、ハッサンにヒットさせた。
(良かったわ。スカラが間に合って。)
ミレーユは思ったよりも少ないダメージで済み、ホッとしていた。
チャモロはバギマを2頭に命中させたが、ダメージを軽減されてしまった。
しかも直後にイノシシBから反撃をされてしまい、ダメージとともに突き飛ばされてしまった。
ハッサンは炎のツメのメラミをBにくらわせた。
「チャモロ、大丈夫?」
「イタタタ…。かなりHPを削られました…。」
彼は体当たりをされたところを抑えながら苦しそうな表情を浮かべていた。
それを見てミレーユはとっさにベホイミを唱えた。
しかしチャモロはなかなか立ち上がれず、攻撃が1回休みになってしまった。
そうしている間にも、2頭のイノシシはさらなる攻撃を仕掛けてきた。
「おおっと!仲間に攻撃はさせねえぜ!」
ハッサンはとっさに立ちはだかり、仲間達を守った。
その結果、このターンでは誰も攻撃が出来ないままだった。
次のターンでミレーユはチャモロにスカラを唱え、チャモロはハッサンにベホイミを唱えた。
一方、2頭のイノシシはミレーユにスカラがかかっていないことを見抜いていたのか、彼女に集中攻撃をしてきた。
「だからよ!仲間への攻撃はさせねえって言っただろ!」
ハッサンはとっさにミレーユの前に立ちはだかり、ダメージを肩代わりしてくれた。
「ごめんなさい。私のために。」
「いいってもんよ!お前は今魔法使いだから、ダメージをくらうとやばいだろ。」
「確かにそうだけれど…。」
申し訳なさそうな表情のミレーユに対し、ハッサンはサムズアップのジェスチャーをした。
しかし、受けたダメージは決して少なくはなかったため、チャモロは再びベホイミを唱えることになってしまった。
そしてミレーユは自身にスカラをかけ、やっと全員の守備力を上げることが出来た。
とはいえ、今度も2頭のイノシシの攻撃によってチャモロとミレーユがほぼ同時にダメージを受けてしまった。
それを横目に見ながらハッサンはせいけん突きを仕掛けたが、こういう時に良くないことは重なるもので、Bが攻撃をかわしたため、このターンでもノーダメージになってしまった。
(まずいわね。私達は転職の影響でHPと守備力がかなり下がっているから、このままではやられてしまう…。)
(この2頭、なかなか強いですね。すでにバギマとメラミを食らっているBの方はあと少しだと思いますが…。)
ミレーユとチャモロには焦りの表情が浮かんでいた。
すると今度はAがハッサンに痛恨の一撃を浴びせてきた。
「ぐわあああっ!」
スカラ無視の大ダメージを受けたハッサンは後方に突き飛ばされてしまい、一気にダウン寸前になってしまった。
一方のBは仲間を呼び、イノシシCが新たに加わった。
(これでは戦況がますます悪くなるわね。かくなる上は!)
イオを唱えようとしていたミレーユはとっさにそれをキャンセルし、ラリホーに切り替えた。
するとAとBは眠ってしまった。しかし眠らなかったCはチャモロに突進してきてダメージを与えた。
(何とかして相手の数を減らさなければ。)
チャモロはとっさに軽減覚悟でバギマを唱えて3匹にダメージを与え、Bをダウンさせた。
しかしハッサンは足がふらついていたために攻撃が出来ず、戦況はなかなか好転しなかった。
(何だよ!こいつらかなりの強敵じゃねえか!)
(転職していなければもっと簡単に勝てたはずなのに。)
(魔法使いの熟練度上げはイバラの道ですね。)
ハッサン、ミレーユ、チャモロはすでに肩で息をしていた。
すると眠っていたイノシシAが目を覚ましたため、戦況は再び厳しいものになった。
ハッサンはチャモロからとっさに渡してもらったゲントの杖で、ミレーユとチャモロはベホイミでHPを回復させながら対策を考えていると、ふと近くから「メラミ!」という男女の声が響いた。
(えっ?あの声は!?)
ミレーユが思わずハッとするとメラミがAとCにヒットし、Aをダウンさせた。
「おおっ!リベラにバーバラじゃねえか!」
「2人とも、来てくれたんですね!」
頼もしい仲間達の姿を見て、ハッサンとチャモロには安どの表情が浮かんだ。
「良かった!間に合ったわ。」
「みんな、大丈夫か?」
「大丈夫よ。予想外に苦戦しちゃったけれどね。」
チャモロ「でもあなた達が来てくれれば心強いです。」
バーバラ「ありがと。相手はあと1頭ね。」
リベラ「早く決着をつけてしまおう。」
5人がそろい、戦況が一気に変わったことで、焦ったイノシシCはとっさに仲間を呼んだ。
しかし誰も来てくれず、作戦は失敗してしまった。
そしてハッサンがメラミをヒットさせて戦いに決着をつけた。
するとハッサンはホイミとニフラムを覚え、ミレーユとチャモロはメラミを、さらにチャモロはラリホーを覚えた。
「よし。これで全員ホイミとメラミを使えるようになったね。」
リベラは目的を果たしたことで、大満足だった。
そしてバーバラは今日覚えたばかりのホイミで仲間のHPを回復させ、さらにハッサンはチャモロと協力しながらイノシシの足をロープで縛り、身動きが取れない状態にした。
「それじゃ、報告しに行こう。」
「OK。早速行きましょう!」
リベラとバーバラは満面の笑みを浮かべながら、他の人達と一緒に村に入っていった。
「ありがたい。まさか3頭も生け捕りに出来るとは!」
「これでイノシシも懲りたでしょう。本当にありがとうございます!」
駆けつけた村の人達はリベラ達にお礼を言ってくれた。
「どういたしまして。思ったよりも大変でしたが、勝てて良かったです。」
戦闘に最初から最後まで関わっていたミレーユは、パーティーを代表して答えた。
この日の夜。リベラ達5人は食事をふるまってもらい、報酬を受け取った。
その中で、ハッサンはリベラとバーバラがそれぞれいつの間に武闘家と魔法使いになっていたのかについて問いかけた。
「実は3人が張り込みに出かけた後、ただ休んでいるのが嫌で、レイドック城に向かったんだ。」
「そうそう。それであたし達、兵士の人達と稽古したの。」
2人はその稽古を通じて熟練度を得たため、リベラはメラミとラリホーを、バーバラはホイミを覚えた。
そして、ダーマ神殿に戻ってリベラは武闘家になり、バーバラは魔法使いになってメラミを覚え、ハッサン達のもとに向かってきたということだった。
「じゃあ、私達は明日ダーマ神殿に行って、それぞれ就きたい職業に転職することにしましょう。」
「おう。確かにもう夜だから今日はやめといた方がいいな。明日からそれぞれの職業で熟練度を上げていこうな。」
ミレーユとハッサンが気合を入れる中で、チャモロは次の職を何にするのかを考えてばかりいたため、会話にあまり参加しなかった。
翌日。5人は村人達から感謝の気持ちを受け取りながら村を後にしていった。
そしてルーラで再びダーマ神殿に行き、ハッサンは戦士に、ミレーユは僧侶に転職した。
一方、ギリギリまで何に就くのかを決められずにいたチャモロは、とりあえず誰も選んでいない職業を選ぶことにし、神官に商人と盗賊の特徴を詳しく聞いた。
その中からお金を集めるかアイテムを集めるかに興味を持ち、悩んだ末に盗賊を選ぶことにした。
「さあみんな。これから本格的に熟練度を上げていこう!」
神殿を後にすると、リベラはパーティーのリーダーとして声をかけた。
「ああ。がんばろうな!」
ハッサンは4人を代表するように声をかけた。
この段階で、彼らは新たな能力を身に付けようと意気込んでいた。
そう、あくまでもこの段階では…。
作中にオリジナルの敵キャラとして登場したイノシシは、僕自身が管理している土地を荒らされた経験に基づいて登場させたものです。
自分では倒せない悔しさを作中にぶつけてみました。
今回出てきた村の青年は、ハッサンがうp主と言っているとおり、僕の分身です。
ちなみにこのQuest.3限定での登場です。