「………テ、テリーーーーーッ!!!」
「えっ?ミレーユ?まさか!」
「お前、声が出たのか?」
ミレーユの心の叫びが突如声になったことで、リベラとハッサンをはじめ、5人は一斉に驚いた。
(えっ?私、声が!?)
驚いたのはミレーユも同じで、彼女は思わずはっとしながら両手で口を押さえた。
「何だ?勝負の最中だぞ。邪魔をするな。」
「テリー…。もう…おやめなさい…。あなたはそんな人じゃないでしょ…?」
「フンッ!俺は誰の指図も受けん!俺の過去も知らないくせに、偉そうなことを言うな!」
「私は知っているわ…。ガンディーノで、あなたと一緒に過ごした時を…。その時のあなたは…、姉想いの優しい人だった…。あの時の…あなたに戻って欲しいの…。お願い。目を覚まして、テリー…。」
ミレーユはみんなの前に出てきて、懸命にテリーを説得した。
「ま、まさか…。姉さん…、なのか…?
テリーははっとして彼女の顔をじっと見つめた。
「そう…。あなたの姉のミレーユよ…。ずっとあなたを探していたの…。会いたかったわ…。テリー…。」
「姉さん…。今まで気が付かなかった…。これまで何度も目を合わせてきたのに…。」
「いえ。その時に…、声をかけられなかった…、私が悪いの…。ごめんなさい…。今まで黙っていて…。」
2人は未だに信じられないと言いたげな表情をしながらも、段々現実を受け入れていった。
「姉さん、ずっと探していたんだ…。」
「私もよ…、テリー…。もう…どこにも行かないで…。」
ミレーユはそっとテリーを包み込んだ。
「姉さん…。」
2人は涙をこらえながら再会を喜んだ後、みんなから距離を置いていった。
「そうか。テリーは肉親に会えたわけか。なかなか感動的なものを見せてもらったな。」
デュランは彼の願いが叶ったことで感慨深い気持ちになっていた。
彼は少しすると気を引き締め、リベラのHPとMPを回復してくれた上で真剣勝負を申し込んできた。
「えっ?それって1対1ですか?」
「そうだ。やってみるか?」
デュランの提案を断る理由も特になかったため、リベラはその提案を受けて立った。
しかしデュランの圧倒的な攻撃力と2回行動の前に、勝負はあっさりついてしまった。
「みんなごめん。とてもかなわないよ。」
「気にしないで。見るからに強そうな相手だから。」
バーバラは悔しがるリベラを優しくねぎらった。
「それじゃ、装備を少し変えましょう。あたしの星降る腕輪を装備して。」
「ありがとう。頑張るよ。」
リベラは早速その装飾品を装備し、はやてのリングを彼女に手渡した。
「負けないでね。応援しているから。」
バーバラはそう言うと、顔を赤らめながらリベラの手を握った。
そして事前にマホトラでハッサンから補充していたMPを使い、ベホマでHPを全回復させてくれた。
「さあ、リベラよ。勝負を再開しよう。だが、その前に一つ言わせてもらう。」
「何ですか?」
「お前の実力はそんなものではないはずだ。」
「えっ?僕の実力って?」
「お前はすでにギガデインが使えるはずだ。それに先程の戦闘で熟練度が上がったからめいそうも使えるはずだ。」
「そ、それは…。」
「それはもったいない。いい機会だからここで使ってみろ。」
デュランは大ボスという立場でありながら、リベラの能力を引き出そうとしているようだった。
(どうしてこんな態度をとるんだろう?何か理由でもあるんだろうか。)
彼は不思議に思いながらも、勝負に応じることにした。
先手を取ったリベラは早速ギガデインを唱え、軽減無しでダメージを与えた。
一方のデュランは通常攻撃を2回くり出してきた。
一気にHPを削られたリベラはめいそうを使い、全回復をさせた。
「そうだ、その調子だ。だが、私もムザムザと呪文攻撃を受けるようなことはせぬぞ。」
デュランはそう忠告するとマホターンを唱えてきた。
(くっ。これではギガデインが使えない。だったらこれで。)
リベラはラミアスの剣を道具使用し、バイキルトを発動させた。
するとデュランは凍てつく波動を使い、攻撃力を元に戻した。
「えっ?これもダメなのか?」
「その通りだ。とんだ計算違いだったな。私がバイキルト対策をいつまでもせずにいると思ったか!」
彼は不気味な笑みを浮かべながら言い放った。
(こうなったら、HPが減ったらめいそうで回復をして、隙を見て攻撃をするまでだ。)
腹をくくったリベラは試しにギガスラッシュを放った。
しかしまだマスターする前だったこともあり、威力がギガデインより弱い上にMPはしっかりと20消費したため、もったいない行動になってしまった。
一方のデュランは2回行動をしてきたため、本来ならやられてしまうダメージを受けたが、自動回復のおかげでかろうじて踏みとどまった。
命拾いをしたリベラはめいそうで回復をした。
しかしデュランの猛攻を受けたため、彼は回復に追われるようになっていった。
(1対1ではどうにも不利だ。どうすればいいんだ。)
攻撃が出来ずにいる彼が焦りの表情を浮かべていると、デュランはそれを見逃さなかった。
「さすがにこのままでは私に勝てそうにないな。だったら、もう一人加えても良いぞ。これでどうかね?」
「えっ?もう一人ですか?」
「そうだ。私は卑怯な手段など使いはせぬ。悪くはないだろう。」
彼は武士の情けというべき一面を見せてくれた。
「でも…。」
「迷う必要はない。私はただ純粋にお前と真剣勝負をしたいのだ。この世界にいられる間にな。」
「この世界にいられる間にって?」
「その理由は後で明かすことにしよう。」
デュランはそう言うと、どこか寂し気な表情を浮かべた。
(一体どんな理由なんだ?確かめたいけれど、今は戦闘中だ。全力で戦ってやる!)
リベラは迷いを吹っ切ると、仲間一人を加えることにした。
するとバーバラは彼のところに駆け寄ってきて、「あたしを加えて!」と言い出してきた。
「でも君は今賢者だし、マダンテのせいでMPが…。」
「お願い!」
「でも…。」
リベラはその場で決断出来ず、デュランから早くするようにせかされてしまった。
するとハッサンが「俺を起用してくれ!」と言いながらやってきた。
「えっ?いいの?」
「ああ。しっかりと準備をしておいたぜ。」
そう言い放つ彼は気合ためをしている最中だった。
それを見たリベラは「分かった。頼んだよ。」と言って、彼を加えることにした。
「バーバラ。時間を稼いでくれて、ありがとうよ。」
ハッサンは彼女に感謝をしながら攻撃をヒットさせた。
それに続いてリベラはムーンサルトをヒットさせたが、デュランも同じ攻撃をしてきて、2人にダメージを与えた。
ハッサンはリベラの通常攻撃に続いてせいけん突きを仕掛けたが、これはかわされてしまい、しかもかまいたちと通常攻撃を受けてしまったため、ここで降板となった。
代わりに入ったバーバラは何とか役に立ちたい一心でメラを唱え、デュランのマホターンを解除した。
(デュランは2人にムーンサルトを浴びせ、リベラはめいそうで回復。)
「じゃあ、次は俺が行くぜ。」
ミレーユと一緒に勝負の様子を見ていたテリーは、キザな表情をしながらリベラ達の前にやってきた。
「ほう。お前も戦う気になったのか。」
「ああ。あんたに教えってもらった技を一度見せておきたかったからな。」
「なら良かろう。私に恩返しの一撃を見せて見ろ。」
「分かった。」
テリーはそう言うと「はああああっっ!」と叫びながらジゴスパークを放った。
「おおっ!お前もそこまで腕を上げたか。その調子だ。強くなるのだ、テリー。もっと強く。」
デュランは彼の成長ぶりを素直に認めてくれた。
続いてリベラは再度ギガデインを唱え、ついにデュランのHPを削り切った。
「お前達、見事だった。私は満足だったぞ。では、私はこの城を去ることにしよう。そしてこの城をゼニス王に明け渡すことにする。彼に会ってそのまま狭間の世界に行くのもよし。旅の歩みを止めてテリーと過ごすのもよし。お前達の好きなように過ごすがよい。」
デュランはそう言うと、別の場所に移動しようとした。
「待ってください!」
「何だ?リベラよ。」
「どうして僕達を手助けするようなことをしたんですか?」
「お前達に借りがあるからな。それを返したかったというわけだ。」
「どんな借りなんですか?」
「それはこのアイテムを使えば分かる。とにかく私は急がねばならん。もしいつの日かこの世界に戻れる日が来たのならば、またお前と真剣勝負をしてみたいものだな。」
彼はそう言い残し、今度こそ別の場所に移動していった。
その際、何か貝がらのようなものを置いていった。
「何だ?これは?どういうアイテムなんだ?」
「使ったら一体何が起きるのかしらね。」
「まさかモンスターが出るわけじゃないですよね。」
ハッサン、バーバラ、チャモロは不安げにそのアイテムを見つめた。
「とにかく使ってみるよ。使わなければ分からないわけだから。」
リベラがそれを使用すると、何とデュランの声が聞こえてきた。
「えっ?何ですか?これは!」
「どうやら…、何か…メッセージを残す…アイテムの様ね…。」
アモスが驚く一方で、ミレーユは冷静だった。
「じゃあ、早速聞いてやろうじゃねえか。」
テリーがそう言うと、今度は女性の声が聞こえてきた。
彼女のメッセージは次のとおりだった。
人間のみなさん、初めまして。私の名前はアリー。デュランの妻です。
この度は私を助けて頂き、誠にありがとうございました。
(アリーって言われても、会ったこと無いし、助けたって言われても…。)
リベラが不思議に思っている中で、女性の声はその後も続いた。
私は以前から重い病気を患っており、余命も長くはないことを宣告されていました。
夫のデュランも仕事が忙しい上に金銭面で苦労していましたが、そんなある日、私は試練のモンスター達からお金を恵んでもらえました。
そのおかげで即座に手術を受けることが出来、さらにその後の治療費もいただいたおかげで、私は余命宣告の期間を超えて生き続けることが出来ました。
そのお金を用意してくれたのが人間のみなさんということを知り、私は最初、戸惑いを隠せませんでした。
しかし、いざという時にはモンスターも人間も関係ないということを学ばせていただき、私は素直に人間に感謝することが出来るようになりました。
私を助けてくれたみなさんには本当に感謝をしています。
ですが、この世界ではこれ以上の治療法が無いため、私は別の世界で新たな治療法にかけることにしました。
出来ることならその前に、みなさんに直接お礼を言いに行きたかったのですが、まだ自由に動ける状態ではありません。
そのため、このような形でしかお礼を言えなかったことを、どうかお許しください。
私は決してこの病気に負けません。必ず元気な体になって、いつの日かみなさんに会いに行きたいと思います。
最後にもう一言言わせてください。
私を助けてくれて本当にありがとうございました。
アリーと名乗った女性モンスターは懸命にメッセージを残してくれた。
「そうか…。デュランにはそんな秘密があったのか…。」
「きっと彼はずっと重い現実を抱えていたのね。」
「こんなこと、俺でさえも聞いてなかったぞ。」
「そんな状況で四天王として活動していたのか。」
リベラ、バーバラ、テリー、ハッサンをはじめ、みんなは彼がなぜ人間にあからさまな敵意を見せなかったのか。そしていさぎよく城を明け渡した上でこの世界から去っていったのかを理解した。
封印されていたゼニスの城が復活し、ゼニス王に会った彼らはこれから目指す場所について教えてもらった。
しかしリベラ達はテリーが仲間になったばかりでミレーユとともに心のケアが必要であることや、熟練度をもう少し上げたいということを希望したため、一旦下界に戻ることを伝えた。
「分かりました。では、私はここでお待ちすることにしましょう。これからの幸運をお祈りしています。」
ゼニス王はそう言った後、城を後にしていく7人の背中をそっと見守った。
今回、デュランの妻として登場したアリーですが、名前の由来は「聖剣伝説3」の「アンジェラ」と「リース」です。
選んだ理由は、このゲームの登場人物名をチェックすれば分かると思います。
ちなみに彼女達のどちらが好きかと言われた場合、答えてしまうともう一方のファンの人達からディスられそうな気がしたので、秘密にしておきます。