ゼニスの城から戻ってきた後、ミレーユは心に大きな傷を負っているテリーをケアするため、一時的にパーティーメンバーから外れることにした。
それを受けて他のメンバーも各自で行動をすることにした。
その中で、スライムつむりのエスカは一旦踊り子に転職した上で、カッコよさの高い装備品を装備した。
(さあ、これでベストドレッサーコンテストのランク7を勝ち抜いてやるわ。そして絶対に賢者の石を手に入れてみせる!)
彼女はHPがかなり低いこともあって、戦力としてはかなり厳しい立場に置かれていただけに、このアイテムで回復役としての役割を勝ち取ろうと意気込んでいた。
会場にはリベラ、ハッサン、バーバラに加えてホイミンとピエールが駆けつけてくれた。
参加者は他にスライムのルーキー、キングスライムのキングス、ベホマスライムのベホマン、マリンスライムのマリリンがいた。
彼らは4匹でパーティーメンバーを組んでおり、回復手段を確保するためにぜひこのアイテムを手に入れようと意気込んでいた。
(絶対に渡さない。絶対に勝ち抜いてみせる!)
強力なライバル達がいる中で、エスカは懸命に自分を奮い立たせた。
彼女はマリリンとの一騎打ちの末に、わずか1ポイント差で勝利した。
「やった!これで私もみんなの役に立てたわ!」
ホイミン「エスカちゃん、おめでとう!」
ピエール「やりましたね!さすがです!」
彼らが大喜びする中で、結果に納得出来ないマリリンは「その判断、異議あり!」と主張し、逆転審査を要求した。
しかし判定は覆らなかったため、正式に賢者の石がエスカに授与されることになった。
貴重なアイテムを手に入れて気持ちに弾みがついたホイミンとピエールは、装備を整えた上でスライム格闘場のHランクに挑むことになった。
事前に相手を調べたところ、ラストテンツクやブースカ、ランドアーマーといった強力なモンスターがいたため、彼らは大変な戦いになることを予感した。
そしてリベラ達からこれらの相手に関する情報を集め、さらに出来る限りの対策を考えた上で会場へと向かっていった。
彼らの職業と装備品
ホイミン(魔法戦士:3)… きせきの剣、スライムアーマー、力の盾、スライムメット、力のルビー
ピエール(パラディン:6)… らいめいの剣、やいばの鎧、メタルキングの盾、メタルキングヘルム、星降る腕輪(他に賢者の石)
2匹は参加料の5000ゴールドを支払い、会場に姿を現した。
観客席では彼らの応援のためにチャモロ、アモスとエスカが応援に来ていた。
特にチャモロはドラゴン職に就けることを首を長くして待っていたため、誰よりも彼らの勝利を願っていた。
最初の相手はラストテンツク4匹とエビルワンド2匹だった。
「確かラストテンツクはまねまねをしてくるんでしたよね。」
「そうですね。でも、攻撃をしないと勝てませんからね。」
ホイミンとピエールは厳しい表情をしながら作戦を立てた。
そして先手を取ったピエールはらいめいの剣を道具使用し、全員にダメージを与えた。
エビルワンドAはルカナンで守備力を下げ、Bは通常攻撃をピエールにヒットさせた。
するとやいばの鎧がそれに反応し、反射ダメージを与えた。
ホイミンは自分にバイキルトをかけ、攻撃力を上げた。
するとラストテンツクAはホイミンに通常攻撃、Bは誘う踊りでホイミンの行動を邪魔してきた。
残りの2匹はバイキルトをかけてきたため、早く決着をつけないといけない状況になってしまった。
幸いピエールが2度目のライデインを使うと、ラストテンツクは一気に全員がダウンしてしまったため、大惨事は免れた。
一方、エビルワンドはピエールに集中攻撃をしてきたため、彼のHPがピンチになってしまった。
しかしやいばの鎧の反射攻撃と3度目のライデインで決着がついたため、彼らは無事に1回戦を突破した。
「ピエール、ごめん。何も出来なかった。」
「気にしないでください。まだ戦いは続きますから、十分に取り返せますよ。」
「分かった。頑張ろう。」
ホイミンは素早く気を取り直し、ベホマで素早くお互いのHPを全回復させた。
2回戦はブースカとランドアーマーだった。
(ランドアーマーはもう一匹をかばうんだったな。)
(ブースカはイオナズンと仲間呼びをするんでしたよね。)
ホイミンとピエールは事前に聞いていた情報を思い出した。
最初に行動したピエールは今度もライデインを発動させ、ホイミンは自分にバイキルトを唱えた。
ブースカはイオナズンを唱えてきたが、ピエールとホイミンは元々イオ系に強耐性を持っているため、それほどのダメージにはならなかった。
ランドアーマーはマホカンタを唱えたため、2匹は呪文での攻撃が出来なくなった。
(こうなったら特技か道具使用で行くことにしましょう。)
ピエールは今度もライデインを発動させたが、ランドアーマーが身代わりをしたため、そのモンスターに2度攻撃と同じ結果になった。
それを見たホイミンは強烈な通常攻撃を当てて、ランドアーマーをKOさせただけでなく、自身のHPを回復させた。
残ったブースカはベホマスライムを呼び出した。
ピエール(このままではベホマでブースカを全回復されてしまいますね。)
ホイミン(こうなったら先制で攻撃出来る手段を使おう。)
2匹はそう考えると、まずホイミンがしっぷう突きを仕掛け、続けざまにピエールがせいけん突きをヒットさせてベホマスライムをKOさせた。
しかしブースカが凍える吹雪で攻撃してきたため、HPが大きく減ってしまった。
それを受けてピエールはとっさに賢者の石を使った。
ブースカは力任せの通常攻撃をホイミンにヒットさせたが、ホイミンはギリギリ踏みとどまったため、直後にベホマラーを唱えて窮地を脱した。
「こうなったら強力な攻撃手段にかけてみましょう。」
「分かった。このターンで決着をつけてしまおう。」
ピエールとホイミンはそう打合せをすると、それぞればくれつけんとはやぶさぎりで攻撃し、ブースカのイオナズンを受けながらも彼をKOさせて2回戦を突破した。
「キャーーッ!ホイミン君、ピエール君、かっこいいっ!」
「あと1回ですよ。頑張ってください!お願いしますよ!」
「あなた達ならきっと出来ます!応援していますよ!」
エスカ、チャモロ、アモスは大声で彼らに声援を送った。
「ありがとう!エスカちゃんのために頑張るからね!」
「必ずドラゴンのさとりをチャモロさんに届けてみせます!」
ホイミンとピエールは笑顔で応えた後、HPを全回復させた。
Hランクの勝負はいよいよ大詰めになり、彼らはデーモンキングとチャンプと勝負することになった。
前者は見るからに強そうな外観をしていたが、後者はスライム同様の姿をしていたため、あまりにも対照的な見た目だった。
しかし束になってかかってきた彼らの実力は確かなもので、イオナズンや凍える吹雪で一気にHPを削ってきた。
そのため、ピエールは賢者の石を使うようになり、ホイミンは回復をするかたわら、バイキルトも唱えて2匹の攻撃力を上げた。
するとピエールは直後にせいけん突きを駆使し、4倍の攻撃力を披露した。
彼の攻撃はチャンプにはヒットしたものの、デーモンキングにはいまいちだった。
その間も相手は通常攻撃の他に呪文や凍える吹雪などでどんどんこちらを追い詰めてきたため、ホイミンはこの状態を何とかしようとマホトーンを唱えた。
するとデーモンキングが事前にマホカンタをかけていたため、結果的にホイミンは呪文を封じ込まれてしまい、回復が出来なくなった。
「すまない、ピエール。また足を引っ張る結果になってしまって…。」
「私は大丈夫です。気を取り直しましょう。」
「分かった。自分の回復は頼んだよ。」
「ガッテンです。ホイミンも頑張ってください。」
2匹は厳しい状況の中でも、何とか勝ち抜こうと意気込んでいた。
しかし相手はHPが飛びぬけて高く、しかもチャンプはベホマを使ったため、せっかくのダメージをご破算にされてしまった。
(そんな…。せっかくここまで追い詰めたのに…。)
ホイミンは力が抜けて思わず呆然と立ち尽くしてしまった。
デーモンキングはそんな隙を見逃してくれるはずもなく、顔に強烈な攻撃を受けたホイミンは一気にダウンしてしまった。
「ホイミン君!」
観客席のエスカは思わず大声で叫び、彼を助けに行こうとした。
チャモロ「ダメですよ、そんなことしたら。」
アモス「反則負けになってしまいますよ。」
「でも、ホイミン君が…。」
「戦いが終わるまでの我慢ですよ。」
「でも…、でも…。」
エスカは泣きそうな表情になりながら訴えたが、チャモロは懸命に彼女を説得した。
そうしている間にも戦闘は進んでおり、ピエールは4倍のせいけん突きでチャンプを攻撃した。
再びベホマを唱えられる危険はあったが、それでも彼は構わずに再度せいけん突きをヒットさせた。
(何としても勝たなければ…。チャモロさんとの約束を果たさなければ…。)
ピエールは鬼のような形相で相手をにらみつけた。
しかし時を同じくしてバイキルトの効果が切れてしまったため、彼は一層不利な状況に追い込まれてしまった。
一方のチャンプとデーモンキングはチャンスとばかりに強力な攻撃を駆使してきたため、ピエールはベホマに追われてやいばの鎧の効果以外でなかなか攻撃の機会を見つけられなかった。
(このままではやられてしまう。とにかく数を減らさなければ。)
覚悟を決めた彼はせいけん突きをチャンプにヒットさせて降参させた。
1対1の状態になるとピエールはベホマで回復をしながら相手にばくれつけんを浴びせた。
しかしあるターンでデーモンキングの強烈な一撃が腕に決まってしまい、会場では鈍い音が響き渡った。
「ぐああああっ!!」
ピエールは悲鳴のような叫び声をあげながらその場にうずくまった。
(幸い、反射ダメージが発動したため、デーモンキングもかなりのダメージを受けました。)
「もうやめて!お願い!」
エスカは泣き叫びながら会場に駆け込もうとしたが、やはりチャモロとアモスに制止されてしまった。
(腕が…。それでもあきらめるわけには…。)
ピエールは激痛に耐えながら無事な方の腕で攻撃をヒットさせた。
するとそれが見事に急所にヒットし、一発KOさせた。
その後、デーモンキングは10カウント以内に立ち上がれなかったため、土壇場でピエールが逆転勝利を決めた。
「ピエールさん、大丈夫ですか?」
「ホイミン君、しっかりして!」
「私がベホマを唱えましょう。」
勝負が終わるとチャモロ、エスカ、アモスは彼らのところに駆け寄っていった。
しかしホイミンは何度ベホマをかけても立ち上がれず、ピエールの腕は思わず目をそむけたくなるような状態になっていた。
「ピエールさん、こんな状態になるまで…。」
「それでもチャモロさん…、これでドラゴン職に就けます…。後は…、頼みましたよ…。」
「ピエールさん…。」
チャモロはそれ以上何も言えず、涙を流しながらMPが続く限りベホマを唱え、ゲントの杖と布切れなどを使ってピエールの腕を固定した。
一方のホイミンはアモスと泣きじゃくるエスカに連れられながら検査室に向かっていった。
検査の結果、ホイミンは顔を、ピエールは腕を手術することになった。
全治までにはかなりの時間を要することが予想されるため、彼らは当分の間パーティーメンバーから外れてしまい、しかもエスカは彼らの世話のために離脱となってしまった。
(ホイミンさん、ピエールさん。あなた達の気持ちは決して無駄にはしません。私がきっとあなた達の分まで頑張ります。見ていてください。)
チャモロはHランクの賞品であるドラゴンのさとりを大切に抱えながらアモスのルーラでダーマ神殿に行き、胸が張り裂けそうな気持ちをこらえながらドラゴン職に転職をした。
スライム格闘場は通常仲間モンスターが単独で挑むことになっていますが、今回は物語の都合上、ホイミンとピエールが一緒に戦う設定にし、さらに最終戦はデーモンキングとチャンプとの2対2の対戦にしました。
今回のデーモンキング&チャンプ戦が決着し、チャモロがドラゴン職に就くまでの場面は、アベル伝説の「Stone Blue」という曲をヒントにして作りました。
(アベルとオルテガが再会し、オルテガが倒されてからアベルが墓標を背に歩くシーンまでの間で流れる曲です。)