スコット、ホリディとの勝負が終わった後、一行は城の奥へと進んでいった。
その途中、通路の向こうからは青い服の銀髪の少年がこちらに向かってくる姿が見えてきた。
「ハハハ。これで強力な武器が手に入った。でもまだこれは伝説の剣じゃねえな。探せばもっといい物があるはずだ。それまではこの剣で我慢することにするか。」
少年は独り言を言いながら剣の鋭さや光沢などをじっとチェックすると、リベラ達の目の前にまでやってきた。
「ん?何だお前達は?らいめいの剣なら俺がすでに手に入れたぜ。遅かったな。ハハハ…。」
彼は剣を一行に見せびらかしながら、誇らしげな口調で言い放った。
「いや、そ、そういうわけじゃ…。」
リベラはらいめいの剣に関する話をまだ聞いていなかっただけに、しどろもどろな答え方しか出来なかった。
「よお、兵士のおっさん達。そいつらを連れて歩いているってことは、負けたんだな。」
少年はキザな笑みを浮かべていた。
「何だと!誰に向かってそんな言葉を!」
ガルシアは思わずカッとなりそうになったが、スコットとホリディはとっさになだめた。
「フンッ!まあいい。とにかく俺は既にバトルレックスの討伐を果たして、この剣を手に入れたぜ。」
少年は持っている剣をさやにしまい、これまでやってきたことを話した。
「そういうわけだ。俺はこれから外でこの剣の威力を試してみる。興味があったら1時間後に外に出て見ろ。俺の実力がどんなものか、きっと思い知るだろうからよ。じゃあな、あばよ。」
冷酷な目つきの少年は、まるで悪人のような口調で言い放ち、城を後にしようとした。
そんな彼の姿を見て、ミレーユは思わずはっとした。
(この人はもしや?いや、そんなはずはないわ。あんなに私思いで優しかった彼がこんな人になってしまうわけがない。でも…。)
彼女は迷いながらも、とっさに「待って!」と声をかけた。
「何だ?」
少年は冷酷な表情を見せながらミレーユを見た。
(あっ、思わずしゃべってしまった…。)
彼女はどうすればいいのか分からず、あたふたとしていた。
「この剣がほしいのか?」
「い、いえ…。そんなわけでは…。」
「ならば何の用だ。」
「あの…、名前は…?」
「名前だと?フンッ!名乗る必要はない。」
「でも、聞かせて。せめて名前だけでも…。」
ミレーユは動揺しながらも、どうにか問いかけた。
「…テリー…。」
その名前を聞いて、彼女の動揺は益々大きくなった。
(テリー…。じゃあ、あなたは私の弟なの?もし弟なら、あなたは私と離れている間にこんな悪人のような人になってしまったの?出来ることなら、すぐにでもあなたを止めたい。止めなければ、何だか嫌な予感がする…。)
ミレーユは勇気を振り絞り、声をかけようとした。
しかしあと一歩が踏み出せず、その場に立ち尽くしてしまった。
「それじゃあ、俺はこの場所を出ていく。あばよ。」
テリーは足早にその場を立ち去っていった。
(ああっ…、テリー…。行ってしまった…。私…声をかけられなかった…。生き別れになっていたテリーがこんなに近くにまでやってきたのに…。チャンスを逃してしまった…。声をかけられなかった…。)
彼の姿が見えなくなった後もミレーユの動揺は静まらなかった。
ガルシア、スコット、ホリディに案内されて格闘場にやってきたリベラ達は、アークボルトで一番の凄腕兵士であるブラストに会った。
「ガルシア達がお客さんをここに連れてきたということは、君達は彼らと勝負をして勝ったわけですね。」
ガルシア「はい、そうです。ですから、今からあなたと勝負をお願いしたいのですが。」
「分かりました。では今から私と1対1の勝負をしたいと思います。」
「1対1ということは、私達は3人が未対戦ですから、チャンスは3回あるということですか?」
アモスの質問に対し、ブラストは迷うこともせずに、即答で「そういうことです。」と答えた。
結果、こちらはリベラ、バーバラ、アモスの3人のうち、誰か一人が勝てば突破ということになった。
ただし選手交代となった場合、ブラストにそれまで与えていたダメージはリセットという条件が付いた。
最初の挑戦者はバーバラだった。
彼女は緊張しているのか何度も深呼吸をし、必死に自分を落ち着けようとしていた。
「よろしくお願いします。」
ブラストがあいさつをする中でも、彼女はどこかガタガタ震えていた。
「バーバラさん、どうしたんですか?」
「やる前からすでに気持ちで負けているじゃないか!」
「どうか頑張ってくださいよ!」
アモス、ハッサン、チャモロに声をかけられても、彼女は震えたままで、結局あいさつがないまま勝負が始まった。
最初のターンでバーバラはメラミを放ち、ヒットさせた。
しかしブラストが着ている鎧の効果もあってか、思ったほどのダメージにはならなかった。
一方のブラストは様子を見ているのか、全く攻撃してこなかった。
「おいバーバラ!なめられてるぞ!」
「どうか頑張ってください!」
ハッサンとチャモロが怒鳴るように叫ぶと、途端に彼女の呼吸が激しくなり、その場に崩れ落ちるように自分から膝をついてしまった。
「どうしたんですか?このままではあなたは負けになりますよ。」
まだ攻撃もしていないブラストが問いかけてもバーバラはうずくまったまま立ち上がれず、結局彼女は試合放棄のような形で敗戦が決まってしまった。
「おい、頑張りもせずにみっともない姿を見せるんじゃねえ!」
「こんなありさまじゃ、パーティーメンバー失格ですよ!」
ハッサンとチャモロからヤジを飛ばされると、バーバラはその言葉がよほどこたえたのか、そのまま泣き出してしまった。
「これは医務室に連れていった方が良さそうですね。スコット、ホリディ。彼女を頼む。」
「分かりました。」
ブラストの依頼を受けて、彼らはバーバラを連れて、この場を立ち去っていった。
次の挑戦者はリベラだった。
彼とブラストは「よろしくお願いします。」と言ってお辞儀をした。
しかしリベラは破邪の剣を抜こうともせず、表情はかなり険しかった。
(どうしたんだ?この少年にも何か異変が起きているのか?)
ブラストはバーバラの時と同様にまずは様子を見ることにした。
試合が始まると、リベラはまわし蹴りをヒットさせたが、威力が落ちているのか大したダメージにはならなかった。
一方のブラストは今度も全く攻撃をしようとしなかった。
その後、リベラはもう一度まわし蹴りをヒットさせたが、明らかに様子がおかしいことに気づいたブラストは突如「君、ここまでにしませんか?」と言い出し、勝負をストップさせた。
「えっ?どうしてですか?」
リベラはあまりにも意外な展開に驚き、思わず聞き返した。
「君の体はもう限界だ。今すぐに医務室に行きなさい。これ以上戦ったら取り返しのつかないことになるぞ!」
「どうして、それを…。」
リベラは体の痛みをブラストに見抜かれてしまい、驚いたまま思わず固まってしまった。
「君は恐らく、以前の戦闘ですでに体に故障を抱えていたんでしょう。そしてそれをみんなにバレないように隠しながらだましだまし戦ってきた。そうだろう。」
「はい…。そうです…。」
ブラストにこれまでのことまでも見抜かれてしまい、リベラは正直に答えることにした。
そしてムドーの城の時点で体に痛みが発生しており、右肩に思うように力が入らなかったこと。
そのことが原因でムドー戦を含めてそれ以降は通常攻撃をせず、ひたすらメラミを使い続けていたこと。
さらに、右肩をかばったことがきっかけで、次第に体のあちこちに痛みが走るようになり、そのメラミですらきつくなってきたため、キックやまわし蹴りに切り替えるようになってきたことを打ち明けた。
「みんな…、ごめん…。今まで…言えなくて…。」
リベラはその場にうずくまり、涙を流しながら謝った。
その衝撃的な事実を聞いて、ハッサン達は何も言えないまま立ち尽くしてしまった。
「そういうことだ。君は医務室に行きなさい。そして適切な治療を受けなさい。いいですね。」
「はい…。」
リベラはうずくまったままブラストの忠告に同意をした。
そしてガルシアに連れられて、彼は格闘場を後にしていった。
結果、残った人はアモスだけになった。
「よろしくお願いします。」
ブラストがあいさつをしながら礼をしても、アモスは無言のままだった。
「どうした?何か言いたいことでもあるのか?」
彼に厳しめの口調で問いかけられると、アモスは何を考えたのか、突如「ジュテーム」と言いだした。
「何と、この私に『Je t'aime.』と申すか!?そ、それはいかん!もう1度考えてみなさい。」
ブラストはI love you.をフランス語で言われたため、思わずうろたえてしまった。
(※アモスが意味も分からずに言ったボケのせいで、格闘場には変な雰囲気が漂ったため、落ち着くまでしばらくお待ちください。)
改めて気を取り直すと、両者は向かい合い、あいさつをしながら礼をした。
勝負が始まると、ブラストはルカナンを唱えてきた。
後攻めという形になったアモスは通常攻撃をヒットさせた。
ブラストは多彩な攻撃方法を持っている一方、アモスは通常攻撃以外ではメラミとラリホーしか覚えていなかった。
そのラリホーは無効化されてしまい、メラミも軽減されてしまうため、結局通常攻撃に頼らざるを得ず、やり方が単調になってしまった。
そのため、たちまちブラストに先を読まれてしまい、状況はどんどん不利になっていった。
(困りましたねえ。回復しようにも私にはホイミしかありませんから、唱えても焼け石に水ですし、こうなったら。)
アモスはかくなる上はとばかりに変身の特技を使い、モンストラーに化けた。
「ぎょえーーーっ!」
思いもよらない光景を見て、ブラストは思わず大声を上げた。
アモスはチャンスとばかりにしんくうはを使い、ダメージを与えた。
ブラストは動揺が静まらないのか、その後は隙だらけになってしまった。
アモスはそれを逃すはずもなく、どんどん攻撃を加えていった。
するとブラストはこのままでは殺されるとでも思ったのか、とうとう降参を宣言してしまった。
これ以上相手がかかって来ないことを認識すると、アモスは元の姿に戻った。
ブラストは実力をフルに発揮出来なかったこともあってか、どこか不満げな表情だった。
しかし、降参してしまった事実は覆せないため、悔しい気持ちを抑えながら「ありがとうございました。」と言いながら礼をした。
こうしてアークボルトの兵士との勝負は、リベラとバーバラが敗北しながらも、ブラスト達全員に勝ったため、ハッサン達は敷地内を自由に歩いていけるようになり、武器屋などにも行けるようになった。
しかし、弟であるテリーにばったりと遭遇してしまったミレーユの表情は暗いままで、彼女は相変わらず心の整理が出来ずにいた。
その頃、城の外ではテリーが戦闘を繰り広げていた。
彼はらいめいの剣のライデインをフル活用させていたため、MPを消費することも無く派手にモンスターをなぎ倒していた。
「フンッ!弱ええな!まあ、俺がこの剣を手に入れて強くなったってことだろうけどな。だが、この時点ですでに戦士を極めちまったから、そろそろ転職しなければな。まあ、これだったら魔法使いでも僧侶でも勝てそうだから、呪文をたくさん身に付けるのも悪くないか。」
テリーはモンスター達を尻目に、キメラの翼を使ってその場を離れていった。
作中でテリーが登場するタイミングがずれていますが、これは棺桶を書きたくないという思いと、バトルレックス(ドランゴ)討伐による残酷な描写を避けるための処置です。
旅人の洞窟内におけるテリーの見せ場に関しては、読者の想像にお任せします。