プリニー〜ダンジョンで俺が最強って解釈違いじゃないッスか⁈〜 作:ジャッキー007
思い返せば俺の人生は、灰色と称しても良いものだった。
学生時代、そこそこに勉学に励み、部活動といった青春を送ることもなく
そこそこの大学に通い、就活で入った会社はまさかのブラック企業で。
朝は上司より早く出勤して、夜は上司より遅く帰るのは当たり前。
振られた仕事の量によっては、終電に間に合わず、職場で寝泊まりなんて事もあった。
休みの日も電話対応や持ち帰った仕事だけで1日を費やし、外出や趣味は気づいたら無くなっていた。
同級生たちの結婚や出産の報告を横目に仕事を熟す毎日で、クリスマスや年末年始を職場で過ごした事も少なくない。
職場と自宅の往復、なんなら職場に居る時間が自宅にいる時間よりも長い毎日を続け、心が麻痺していた頃、ついに身体が限界を迎えた。
重量に逆らう事なく倒れた体、霞む視界。
ボーッとした意識の中で最後に考えたのは、上司に怒られる事と親の顔。
それを最後に、俺は死んだ…はずだった。
「まさか、死後も働く羽目になるとは…」
水で濡らしたモップで廊下を拭く手を止めて、俺はポツリと呟いた。
窓に反射して映る今の自分の姿は、生前とは全く違う姿をしている。
デフォルメされたペンギンのようなフォルムに杭のように細い脚、身体のサイズとは不釣り合いな小さいコウモリのような翼に、腹部に巻いたポーチ。
そう…人として一度死んだ俺は、魔界の住人である魔物…プリニーとして生まれ変わった。
プリニー…それは、知る人ぞ知るSRPG「ディスガイア」シリーズに登場するキャラクターであり、シリーズを生み出した会社のマスコットキャラだ。
特徴的なフォルムから親しみやすさを覚えるキャラクターだが…俺が転生したプリニーという種族は、他RPGやファンタジー小説でいうところのゴブリンやスライムと同列と言っていい。
同じ下級魔族と比べても、多少ステータスの優劣はあっても、総合的に見れば下から数えた方が早い…そんな存在になってしまった当初は絶望感が半端なかった。
更に、ディスガイアシリーズは「やり込み要素」に力を入れた作品である事が、絶望感に拍車を掛けた。
このシリーズ最大の特徴と言っても過言ではない豊富なやり込み要素…その代表的なものが、他のゲーム以上に設定されたレベル上限にある。
RPGの最大レベルが99や100であるのに対し、ディスガイアシリーズのレベル上限は9999、総ダメージで億を超えるのだ。
そんな、文字通り桁違いの強さを有した魔物や悪魔が跋扈する弱肉強食の世界に放り込まれた俺が真っ先に考えたのは、如何に生き残るかだった。
魔界に住む悪魔は基本的に暴力的で傍若無人な奴らだ。
敵どころか、味方ですら命を脅かす脅威となる世界で生き残る方法…それは、2つ。
一つは勿論、強くなる事。
レベル1では抵抗する間もなくやられるだろうが、レベルを上げればその分ステータスも上がり、生存率が高くなる…まぁ、プリニーの特性上、レベルを上げてもアレなんだが。
もう一つは、上に逆らわない事。
忠誠心は無いにしても、上に逆らえば碌なことにならないのは生前学んだ事だから、こっちは何とかなる。
問題は、強くなる事だった。
生前から戦いや喧嘩とは無縁な生活を送ってきた人間…元人間だが。
そんな奴が、いきなり戦う事なんて出来るか?
答えは無理だ。
戦い方はおろか、武器の持ち方すらまともに教わっていない俺は、側から見ればそれは無様だったろう。
武器であるダガーを持つ手と足は震え、顔は青く、浅く呼吸をするので精一杯。
何も出来ず逃げた日もあった。
それでも、やらなければならない。
弱いままでは、奪われるだけだ。
その一心で、無理矢理自分を奮い立たせた。
背後からの不意打ち、力尽きたフリをしての騙し討ち。
敵同士で戦い、疲弊した所を狙って漁夫の利を掻っ攫うこともやった。
そうして、何度も戦って、レベルが上がれば真正面から挑む事も増えていった。
生き残る為には、装備品も妥協出来ない。
時には敵から奪いながら厳選し、強化を繰り返した。
そんな中で、幾つかの誤算もあった。
サボ…仕事の合間にレベリングをしているなか、ある悪魔によって時間と空間が捻じ曲げられる事件に巻き込まれたこと。
そして、その事件で所謂ナンバリング作品の主要人物と出会い、事件を通して一部から友人認定されたのは驚きだ。
…まぁ、その中であの天才マッドな邪悪学園の優等生に捕まり改造されたが、思わぬ収穫もあったから、強くなる為の仕方無い犠牲と目を瞑った。
そんな出来事がありながらも、人生ハードモードどころかインフェルノな世界で生き残るべく頑張った結果
「じゃあ、A班は庭の手入れ、B班は掃除。C班は洗濯を頼むッス」
『了解ッス!』
今や、城のプリニー達をまとめ上げるリーダー的存在になっていた。
こうなった原因だと思える事は割とある。
主人の機嫌が悪くなり、その矛先がこちらに向かないようにサボっていたプリニーをしばき上げた事や、ただでさえ機嫌の悪くなった主人がプリニーに手を上げようとする前に違うことで機嫌を取って矛先を逸らしたり。
プリニー達に報連相を徹底させた事で、主人が機嫌を損ねる事がいくらか減ったり。
生前に行っていた、ごく当たり前な事をやっていただけだが、気がつけば城で働く事になった新入りの指導を任され、ヘマをした新入りの尻拭いをしているうちに今の立場に立っていた。
その分、責任やらが重くのし掛かる事になった割に給料は増えないし仕事の量は全く減らないが。
ともかく、俺の目的は変わらない。
この理不尽でふざけた世界で生き残って金を稼ぎ、再び人として転生する
その為、俺は今日も自分の持ち場の清掃に勤しむのであった。
レン(プリニー族)
元ブラック企業勤めのサラリーマン
過労死した後、生前プレイしていたゲームのザコキャラに転生してしまう。
文字通り、桁違いの強さを持つ魔物や悪魔が跋扈する弱肉強食の世界で生き延び、再び人間に転生する為奔走中
なお、生まれ変わっても社畜な現状に通常のプリニーよりも目が死んでいる