プリニー〜ダンジョンで俺が最強って解釈違いじゃないッスか⁈〜   作:ジャッキー007

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またギャグじゃなくなった…銀魂の真面目回みたいなもんって事で大目に見てください

あ、今回のサブタイトルは本文中のセリフではないッス


君は僕に似ている

人の縁とは、不思議なものだ。

 

身近なあの人の知り合いや友人が意外な人物であったり、長い間疎遠だった人と、思いがけない場所で再会したり、親兄弟の世話になった恩師が自分の担任になる等。

 

とかく、人の縁とは複雑、かつ不思議なもので。

 

 

「えっ…?」

 

「ん?」

 

同じファミリアの団長殿が雇ったサポーターが、まさかの顔見知りなんてことも、まぁあるだろう。

 

 

 

 

 

 

リリルカと再会して数時間。

当初は普通に挨拶をしようとしたのだが、初対面を装った態度の彼女を見て、何らかの事情を抱えているのかと思い、俺は話を合わせる事にした。

 

そして、3人でダンジョンに潜り、モンスターを狩り続けていたのだが…。

 

(う〜む…)

 

時折、クラネル少年…正確には、彼が持つナイフを獲物を狙う眼差しで見ている姿が目に入る。

 

 

あのナイフは、ヘスティア様がクラネル少年の為に作ってもらった一点物だ。

鍛治神であるヘファイストスが鍛え、ヘスティア様が神聖文字を刻み込んだそれは、まさにベル・クラネルのためだけの武器。

 

少年と共にあり、共に強くなるというそれは、彼が持てば凄い武器だが…少年以外が持てば、途端にただの鈍となる。

 

 

だが、事情を知らないリリルカからすれば、クラネル少年のナイフはヘファイストス・ファミリア製の一級品としか見えないだろう。

 

 

(どうしたもんッスかね…)

 

以前、彼女が置かれていた状況からも何かしら事情が絡まってるだろう事を思い、俺は人知れず溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てなわけで、数日の間クラネル少年たちとは別行動をとることになり、俺は情報を集める事にした。

 

街中のお姉様方や酒場、さまざまな所に行っては、リリルカ…というより、彼女の所属するファミリアの噂を聞いて回る。

 

 

結果として分かった事は、ソーマ・ファミリアに対する街の人の評判はあまりよろしくないと言う事だけだった。

 

暴力沙汰や恐喝なども数多く、中でも酒場での事件が多いときた。

 

「ん?あれは…」

 

仕入れた情報を整理しながら街を歩いていると、向かい側から見知った顔が歩いてくるのが見えた。

 

「あ、レンさん」

 

「エイナさんじゃないッスか…こんな所で会うのも珍しいッスね」

 

ギルドの制服に身を包んだハーフエルフの女性…クラネル少年と俺のアドバイザーを務めてくれているエイナ女史も、此方に気づいた様子で互いに会釈を交わす。

 

「何かあったんスか?」

 

「それが…」

 

何か考え事をしている様子のエイナ女史に問いかけると、彼女もクラネル少年の雇ったサポーター…リリルカの事が気になる様子で独自に調べている事がわかった。

 

女史はギルドに勤めている事もあり、ソーマ・ファミリアの団員達の素行の悪さやらは目にしていたからこそ、少年がリリルカを雇った事に不安を抱いたのだと言う。

 

 

 

「そうですか、レンさんは彼女に以前会って…」

 

「だからまぁ、リリルカの所属するファミリアってのがどんな所か調べてたんスよ」

 

互いに事情を話し終えると、改めて情報を整理する。

 

 

ソーマ・ファミリアの団員達は、ギルドの換金所でも問題を起こす事が多く、その全員がどうも切羽詰まった様子である。

 

団員達は、特に酒場での印象が良くない。

 

そして、ファミリアの主神…ソーマは酒造りにしか興味を示さないような神物であり、彼の作った酒は市場で高値がついているらしい。

 

 

「…その酒ってのが、色々絡んでそうッスね」

 

「はい。なので、今から酒屋に行ってみようと思っていた所で…」

 

「オレも一緒に行って良いッスか?」

 

ソーマの作る酒…それに何かがあると感じた俺は、女史と共に街の酒屋を回ることとなった。

 

 

 

 

 

しかし、ソーマの作る酒は人気なのか、数軒の酒屋を回っても売り切れていて、次の入荷は未定とのこと。

 

それでも、探し続けた俺たちは、ついに件の酒を見つける事が出来た。が…

 

「話に聞いてたけど、高いッスね…」

 

 

貼られた値札を見て、俺は呟いた。

 

値段にして倍以上…上等な酒を数本買っても、お釣りで安酒を更に買えるくらいの値段だ。

これには、俺だけでなくエイナ女史も驚きを隠せず、手の届かない額に諦めて帰ろうとした時だった。

 

「エイナじゃないか…それに、君は…」

 

俺たちに1人のエルフが声を掛けてきた。

たしか、ロキ・ファミリアのメンバー…だったな。後ろに本神も居る。

 

「リヴェリア様…お久しぶりです」

 

「久しぶりッス」

 

女史の畏まった様子に、確かリヴェリアと呼ばれたエルフは王族出身だと以前聞いたな、とか考えていると。

 

「お、ソーマがあるやん!なぁ、リヴェリア〜買って〜?」

 

彼女の後ろにいたはずのロキが、俺たちの背後に陳列されていた酒を手に、まるでスーパーで食玩をねだる子どものように頼み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、なんで自分もおんねん」

 

「だから、俺もソーマ・ファミリアについて知りたいって言ったじゃないスか」

 

 

神ロキ達と出会った俺たちは事情を説明すると、彼女達のホームにある応接室に通された。

 

だが、ロキは俺も居る事に不満げな顔を隠す事なく話す。

 

まぁ、主神同士が仲の良くないファミリアの団員…それも、俺はファミリアの団員をボコボコにしたのだから仕方ない事だろう。

 

 

「…まぁええわ、で?ソーマの事やったか」

 

 

それを割り切ったのか、深い溜息と共に気持ちを切り替えたロキは、俺たちに話しだした。

 

 

市場に出回るソーマは、謂わば失敗作であり、その完成作はファミリアの中でも上納金の多かった者が一杯だけ口に出来る。

 

故にソーマ・ファミリアでは日々周りの足の引っ張り合いが行われており、彼等は今や、主神(ソーマ)ではなく(ソーマ)を崇めているのだそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まるでヤク中ッスね」

 

話を聞き終えた俺は、ポツリと呟く。

酒に溺れる、なんてのは生前でも耳にした話だ。

 

だが、ソーマ・ファミリアの在り方…と言うより、彼らの金を集める事に執心する姿や、その背景はどちらかと言えば麻薬中毒者のそれに近いだろう。

 

「…だからこそ、違和感があるんスよねぇ」

 

「違和感?何がだ?」

 

 

俺の言葉に、一緒に話を聞いていたリヴェリアが問いかけてくる。

 

その場に居た人達が俺に視線を向けるなか、今まで見聞きしてきた事を纏めていく。

 

 

「ソーマ・ファミリアの団員達が金集めに必死な理由は分かったッス。でも、リリルカ…ベルさんの雇ったサポーターが金を貯める理由は、なんか違う気がするんスよ」

 

「ほぅ…。その心は?」

 

「目ッス」

 

俺の言葉にロキは興味を抱いたように目を開き、俺に続きを話すよう言外に促す。

 

「他の団員もリリルカも、金集めの為に必死ッスけど…リリルカの目は、なんというか…まだ理性的なんスよ」

 

「金を集めるって所は一緒でも、着地点…つまり、ゴールである目的が違う。俺はそう感じたんス」

 

 

 

「なるほどな…アンタとしては、その理由として考えられるものに見当ついとるんか?」

 

俺の漠然とした話を聞き終えたロキは、空になったグラスを指で撫でながら俺を見てくる。

周りに視線をやれば、残った2人はまたそれぞれに考え始めている様子だった。

 

 

ロキの問いに、腕を組んで考える。

 

 

(ソーマ)を求めている様子ではない。

しかし、時に見せる目は、何が何でも金を稼いで、その先の何かを成し遂げるといった覚悟のようなものを感じた。

 

その目に、既視感を覚えたのは何故だ…?

 

 

いったい、あの目をどこで見た?

そう思いながら、視線を動かした先。

 

ロキの手元にある空のグラスに、俺の姿が反射して見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうか」

 

組みかけのパズルにピースが嵌まった感覚がした。

 

リリルカが時折見せた目に感じた既視感、そして、金集めに必死になる理由。

 

 

「何か心当たりが見つかったか?」

 

「あくまで俺の予想で、また回りくどい表現になるッスけど」

 

 

 

 

 

 

彼女は、俺たちに似ているんだ。

 

 

 

 

 

 

「新しい自分に生まれ変わる為、ッスかね」

 


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