プリニー〜ダンジョンで俺が最強って解釈違いじゃないッスか⁈〜   作:ジャッキー007

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1話投稿から3日でお気に入り80件オーバー…かなりビビってます
古いネタも多いですが、ご容赦ください


知らねー天井ッス

ベル・クラネルは、未だかつてない程に異様な光景を目の当たりにしていた。

 

 

女神ヘスティアの眷族となり、冒険者になって1週間が経ち、上層にも少しは慣れてきた頃だった。

 

1階層の、本道から少し逸れた道。

 

普段であれば、気にする事はない場所なのだが…その時ばかりは違った。

 

何か、予感めいたものを感じたベルは一歩、また一歩と歩みを進める。

 

不測の事態に備え、腰に差したナイフの柄に手を添え、少しずつ進んで行った先に…それは居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見た目は、まるで簡素に描いた鳥に近い。

ずんぐりとした体型に杭のように細い足。

 

腹部にポーチを巻いたそれは、アドバイザーから教えてもらった上層部に現れるモンスターとは全く違う姿をしていた。

 

それだけでも、異常事態と言えるだろう。

だが、問題はそれだけではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ンガァァァ…ッスピィィ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新種と思われるモンスターが、あろうことか道のど真ん中で高いびきをかいて眠っていた。

 

ご丁寧な事に、鼻提灯を作って。

 

 

「…何、これ…」

 

 

思わず、戸惑いの言葉が口から洩れる。

 

ダンジョンの中で寝るなど、冒険者もそうだがモンスターにとっても危険な行為だ。

 

眠るという事は、無防備な姿を曝け出す行為であり、ダンジョンの…それも、安全圏でない場所など、いつ襲われても文句を言えない。

 

第一、ダンジョンで眠っているモンスターをベルは見た事が無かったし、他の冒険者達もそうだろう。

 

 

「ん…うぇへへ…」

 

当のモンスター(?)はベルの困惑を他所に寝返りを打ち、尻を掻いてだらしの無い笑みを浮かべる余裕っぷりである。

 

 

その、あまりにも人間臭い仕草に脱力感を覚えながらも、ベルは意を決してそれへと近づいていく。

 

 

「…っ」

 

 

 

一歩、また一歩と恐る恐る近づいていき、漸く手が届く間合いに近づくと、腰からナイフを鞘ごと抜き、危険物に触れるように突く。

 

 

ナイフ越しに伝わる感触は、生き物とはまるで異なるものだった。

 

筋肉特有の硬さや柔らかさとは異なる、何とも例え難い感触を確認しながらも、ベルはある事に気づいた。

 

「縫い目…?」

 

涎を垂らした、だらしのない半開きの口元…嘴の根本の辺り。

顔との境目の辺りに縫い付けたような跡があった。

 

よくよく見てみると、色味の異なる胴体部分の境目にも同じように大小は違えど、縫い目を確認出来た。

 

 

「もしかして…着ぐるみ?」

 

ナイフを再び腰に戻してベルは呟く。

見た目は確かに、異様な姿ではあるが、その人工的な所がみられた結果だ。

 

だが、それでも不可解な所は多い。

 

着ぐるみであれば、この作り物めいた外見にも納得する事が出来る。

だが、着ぐるみがこうも表情を変える事が出来ただろうか?

 

 

「…このまま放っておく訳にも、いかないよね…」

 

悩みに悩んだ結果、ベルはそれを放置しておく事ができず、ホームに持ち帰る事にした。

 

 

 

 

道中、横切る人に見られたり、時折呼吸が止まりながらも未だ眠り続けるそれにヒヤヒヤしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…知らねー天井ッス」

 

まさか、プリニーになって生前憧れていたセリフの一つを言う事になるとは思いもしなかった。

 

それはともかく、今の状況を確認しよう。

 

目の前に広がるのは、古い木製の天井で、背中には硬い感触がある…手触り的に、土では無さそうだ。

最後に覚えている風景は、魔界の荒野…少なくとも、建物を見た記憶は無い。

 

寝ぼけてハッキリとしない意識の中、ゆっくりとこれまでの事を思い出すべく、記憶を掘り返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事の発端は遡ること半日前、いつもの主人の無茶振りからだった。

 

 

俺が仕えていた主人は、ハッキリ言ってかなりの我儘な悪魔だった。

 

前日の晩、明日はこれが食べたいと言っていた食事を作れば当日になって気分じゃないと言い出すのはザラ。

 

そんな主人は、その場の思いつきで何かを言い出す事も少なくなく、突如として俺たちに言ってきた。

 

『邪竜族の卵を使ったプリンが食べたい』と。

 

 

邪竜族といえば、魔界の中でも上位の魔物で、プリニーごときでは太刀打ち出来ない相手だ。ましてや、その卵を盗むなど自殺行為と言っても良い。

 

しかし、命令を拒否すれば城で働くプリニー全員の首が飛ぶ(物理的に)のは明白。

 

従う他なく、俺たちは邪竜族の棲家に侵入することになった。

 

 

 

そして…。

 

 

 

 

 

『アァァァァァァァァアァア!』

 

俺を先頭に、十数体のプリニーが全力疾走する。

 

生前見たマーモットの動画のような野太い悲鳴をあげながら走る俺たちは、なんとか卵を盗み出す事に成功した。

 

しかし、それに気づいた邪竜は案の定大激怒。

その巨体で飛翔し、卵を抱えて走る俺たちを追ってきていた。

 

「ヤバいッス!リーダー、マジでヤバいッスゥゥゥゥ!」

 

「あっつ!火!今ちょっと掠ったッス!」

 

俺の後ろを走るプリニー達が、逃げながら俺に泣き言を洩らす。

 

チラッと後方を見れば、邪竜が俺たちを仕留めようとブレスを何度も吐き、着弾した地面が爆発する…その様子は、例えるなら船橋のゆるキャラが遭遇したドッキリや、昔見た特撮のワンシーンと言うだろうか。

 

見てるだけなら「すげー」と言って笑ったり出来るが、当事者になれば成る程。必死に走る理由も分かる。

 

 

「喋る余裕があるなら足を動かすッス!ちょっとでも止まったら御陀仏ッスよ!」

 

必死に足を動かしながら後ろの部下に檄を飛ばす。

俺以外のプリニー達はレベルが低い。

追いつかれたりしたら一巻の終わりだ。

 

 

「あぅっ!」

 

そんななか、最後尾に居たプリニーが足を縺れさせて転倒した。

幸い卵を抱えているメンバーでは無かったが、卵を奪われ怒っている邪竜には関係なく、倒れたプリニーに狙いを定める。

 

「っ、たく…!」

 

小さく舌打ちをし、先頭から踵を返して最後尾に向かって逆走すると、腹部のポーチから爆弾を取り出して邪竜目掛けてぶん投げる。

 

それに気づいた邪竜は、空中で方向転換して回避すると、今度は俺に狙いを変更した。

 

 

「立てるッスか?」

 

「は、はいッス…」

 

倒れていたプリニーを起こすと、俺は邪竜から目を離す事なく背後に居るプリニー達へ命令する。

 

「俺がヘイトを稼いでるうちに、このまま城に向かって走るッスよ」

 

「そんな、リーダーを置いて行けないッス!」

 

「お前達が遅れたら城の奴らの首が飛ぶッス、さっさと行くッスよ!」

 

俺の命令に、後ろに居るプリニー達が拒否を示し、自分達も残るなんて言い出す部下達に一喝する。

 

それと同時に邪竜が再び卵を運ぶ部下に狙いを移さないよう、攻撃してはヘイトを稼ぐ。

 

 

部下達を何とか城へ向かわせ、頃合をみて逃げようとするものの、邪竜も簡単に逃げさせてくれず。

 

やっとの事で気絶させる事は出来たが、回復アイテムと体力も底をつき、ぶっ倒れたのを最後に意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その筈なんスけどね…」

 

体を起こして辺りを見回す。

今居る場所は…何というか、正直に言うと古い。

掃除されているが、老朽化している床や壁。

視界の端に見えるソファに至ってはカバーがボロボロになっている。

 

誰かが俺を運んだのだろうか…そう考えていると、扉の向こうから声が聞こえてくる。

 

くぐもった男女の話す声が次第に近づいてくると、扉が開けられる。

 

 

最初に視界に捉えたのは、1人の少年。

14〜15歳くらいだろうか、真っ白な髪と赤い目は兎を彷彿とさせる。

 

続けて捉えたのは、少女と言っていいくらいに小柄な女性。

昔出会った魔王の配下と同じくらいの小柄だが、ある一部に関しては彼女いじょ…ッ⁈いや、やめよう。これ以上考えたら何かヤバい気がする。

 

2人は、俺を見て硬直している。

 

 

「あ、どもッス」

 

とりあえず、挨拶だけはしとこうと言葉を発したのだが。

 

 

 

『キェェェェアァァァァァシャベッタァァァァァ⁈』

 

返ってきたのは、まさかの絶叫(ハッキョー)だった。




汎用キャラ限定ですが、何体か出そうかと思います

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