プリニー〜ダンジョンで俺が最強って解釈違いじゃないッスか⁈〜 作:ジャッキー007
「…で、落ち着いたッスか?」
『はい…』
絶叫を上げた2人を落ち着くまで放置して数刻、落ち着きを取り戻したのを見計らい、改めて声をかける。
明らかに俺の方が驚いたりする側なんだろうが、彼らの驚きっぷりを見て逆に冷静になった。
死後の世界を実際に体験し、主人のパワハラや無茶振りで死線を潜ってきた事もあってメンタルが強くなったのかもしれない…全く嬉しく無い事に。
「おっほん!と、とにかく本題に入ろう!君は、いったい何なんだい?」
「あ、それなんスけど。先に、ここが何処か教えてもらっても良いッスか?」
醜態を取り繕うように大きく咳払いをした女性の言葉に、俺は先に相手さんからの責任を要求した。
不審者が何を偉そうに、と思うかもしれないが、こっちがいきなり話をした所で信じて貰える訳がない。
それに、俺としても、此処が俺の知る世界なのかが解らなければ話を組み立てられない。
女性は、少年と顔を見合わせるとゆっくりと話し出した。
かつて、天界に住む神々は娯楽を求めて地上に降り立った。
自分達の持つ権能を封じ、人と同じ不自由な身となった神々は、地上の人々に恩恵を授ける事で彼らを眷族…ファミリアとする事で家族となり、共に暮らすようになった。
俺が居る場所は、オラリオという街で、この地下には魔物の棲む地下迷宮…ダンジョンが広がり、神から恩恵を授かった者達は冒険者となり、ダンジョンに潜って冒険をする。
俺の目の前に居る2人も、そんなファミリアであり、小柄な女性は女神ヘスティア、少年はベル・クラネルと言い、今居る此処は彼女達のホームらしい。
そして、俺が何故此処に居るかというと…理由はまったくの謎だが、ダンジョンの上層でアホ面を晒して爆睡しており、放置しておく訳にもいかずクラネル少年が保護した…と言うのがこれまでの経緯だ。
「…なるほど、大方理解出来たッス」
「ボク達から話せることは話した…それで、君の事を教えてもらっても良いかい?」
俺の様子を見ていたヘスティア様が改めて問いかけてくる。
その表情は微かにこちらを探るような、僅かな警戒が見て取れた。
「分かったッス。俺はレン、プリニーっス」
俺は、自分の覚えている事を話していった。
俺がプリニーという下級の悪魔であり、魔界や天界で主人に仕え、労働に勤しんでいること。
魔界で働いていたが、トラブルに遭い、気づけば此処に居た事を幾つかの事は隠しながら答えていく。
魔界のプリニーの労働環境やプリニーの正体に関しては2人には関係ない事だから端折ったが、ヘスティア様は俺の話から話してない事がある事に気づいている様子だ。
「魔界か…」
「神様、魔界のことを知ってるんですか?」
俺の話を聞き終えたヘスティア様が腕を組んで考えている様子に、クラネル少年が問いかける。
元々天界に住んでいたことから、関係性があると思ってるんだろうが…。
「わからない!」
「ですよねー」
ヘスティア様から返ってきた答えにクラネル少年はズッコケ、俺は予想通りの反応に目を細める。
「ボクも長いこと天界に居たけど、レン君みたいな…プリニー?に出会った事はないな〜」
「オレも、天界に行って天使に会った事はあるッスけど、神様に会った事はなかったッスから…オレの居た世界と此処は、完全な異世界って事ッスね〜」
ヘスティア様と互いに顔を見合わせて笑い合い、そして2人同時に盛大な溜息を吐いて頭を抱えた。
「どうしよう…とんでもない厄ネタを抱えちゃった気がする…!」
「ヤバいッス…職務放棄と見做されてクビが物理的に飛ぶッス…!いや、異世界に居るからワンチャンバレない可能性も微レ存ッスか…?」
それぞれにブツブツと呟きながらこれからの事を考える。
流石に異世界に俺が居るって事は分からない…というより、主人の事だから気づかない可能性が高いが、なんでもありな魔界でノリと勢いで行動する事も少なくないあの人の事だ。こっちの神々と同じ理由で異世界の壁をぶっ壊して乗り込んで来たりでもしたら世界がヤバい。
「と、とにかく!今は君のこれからを考えよう!」
「そ、そうッスね!」
頭の中にいくつも浮かぶ最悪な展開を忘れるように俺たちは改めてこれからどうするかを考え始めた。
「レン君が異世界から来たってバレたら、間違いなく他の神々から狙われるだろうね」
「娯楽好きって言ってたッスね…それを考えると、オレは格好のオモチャって訳ッスか…」
ヘスティア様の言葉に、俺は腕を組んで唸る。
レベルを上げて自分の身は多少守れるようにはなったが、この世界の冒険者ってのが魔界と比較してどれくらいの強さなのか分からない。
そんな状態で、街中を歩けば俺の強さが通用するか…。
「神様、どうしましょうか…」
「…レン君に恩恵を刻もう。彼を保護するには、これしかない」
クラネル少年が不安げな表情を浮かべてヘスティア様を見ると、彼女は意を決したように言葉を紡いだ。
恩恵を刻む…それはつまり、俺がヘスティア様の眷族となり、ファミリアに入る事を意味する。
「でも、良いんスか?俺なんて厄ネタ、わざわざ抱える真似しちゃって」
「ベル君が君を連れてきた時点で諦めたよ…それに、見ず知らずの土地に放り出すなんてボク達には出来ないさ」
その言葉を聞いて、俺は2人がとんでもないお人好しなんだと理解した。
捨て犬みたいに元いた場所に戻したって良いのに、態々抱え込もうとする彼女達。
久しぶりに見た、人の善性に小さく息を吐くと、俺は頭を下げた。
「そういうことなら、お世話になるッス。雑用とか出来る事は任せてくださいッス」
「こちらこそ、宜しく頼むよ。さて!それじゃあ早速恩恵を刻むとしよう!」
こうして、俺はヘスティア様の眷族として、オラリオでの新しい日常を過ごすことになったのだが…。
「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁈」
僅か数分後、ヘスティア様の某ジーパンばりの絶叫がホームに響き渡った。