プリニー〜ダンジョンで俺が最強って解釈違いじゃないッスか⁈〜   作:ジャッキー007

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情報確認するたびに増えてるお気に入り数に震える数日です。

ディスガイア7出ましたが、まだ他の作品をプレイ中なので悩み中

今回は文字数多めになったので、箸休めの漬物感覚でお楽しみください

一部修正かけました


やだーーー!!!

ヘスティア様から恩恵を刻んでもらった、という事はつまり、ギルドで冒険者登録をすれば俺もダンジョンに潜る事が出来る。

 

ダンジョンに棲息するモンスターを倒し、ドロップする魔石と呼ばれるものや、稀に落ちるドロップアイテムと呼ばれる遺骸の一部を売る事で、冒険者たちは生活費などを稼いでいるらしい。

 

その話を聞いた俺に、一つの考えが浮かんだ。

つまり、ダンジョンに潜ってモンスターを狩りまくれば、早く転生出来るのではないか?

 

 

 

そうと決まったら、行動は早かった。

朝目が覚めるとホームにある食材を確認して簡単な朝食を作り、食事を終えた俺は、クラネル少年とともに冒険者登録をするためにギルドへ向かおうとした。

 

「ちょっと待ってくれ」

 

だが、俺とクラネル少年はヘスティア様に呼び止められた。

どこか真剣な表情を浮かべた姿に、俺たちが足を止めると、ヘスティア様は徐に口を開く。

 

「…レン君、君をファミリアに迎えるにあたって考えたんだ」

 

そういうと、ヘスティア様は1枚の神をテーブルに置く。

 

 

それは、昨夜見た俺のステータスが書かれた紙。

 

だが、違う所が一ヶ所だけある。

 

「…君の事を、ちゃんと、教えて欲しい」

 

ヘスティア様が取り出した紙には、俺が言わなかった事が書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレたちプリニーは、元は人間ッス」

 

俺が彼女達に言わなかったこと…つまり、生前に犯した罪と、贖罪の為稼がなきゃならない金額が書かれた部分を見せられた俺は、小さく息を吐くと改めてプリニーという種族について話し始めた。

 

生前、何かしらの罪を犯した人間の魂は死後地獄に堕ちる。

そして、皮で作られた仮初の体を与えられ、プリニーとして加工され、教育を受けたのち、天界か地獄に出荷される。

 

魔界に行ったプリニーは魔王や、それに次ぐ力を持った貴族のもとで働いて金を稼ぎ。

天界に行ったプリニーは、その罪に応じて善行を積む。

 

そうして罪を償い、贖罪を終えたプリニーは、晴れて転生をする事が出来るのだ。

 

 

 

 

「…これが、プリニーの真実ッス」

 

「そうだったんだね…」

 

「…でも、レンさんは何も悪いことなんかしてないじゃないですか…」

 

 

俺が話し終えると、静かに聞いていたヘスティア様は理解したように頷く。

しかし、同じく話を聞いていたクラネル少年は納得出来ないように呟いた。

 

「どっちに行くかなんて、出荷されるまで分からないッスからね。オレが知ってるプリニーの中には、子供の病気を治す為に自ら命を落とした人も居たッス」

 

そう言って思い出すのは、1人のプリニー。

死後、その魂は天使として生まれ変われる筈だったが、当時お腹に宿していた命を天使に生まれ変わらせ、自身はプリニーとなって残った息子を見守っていた。

 

彼女は今頃、生まれ変わって幸せに生きているだろうか?

 

「金を稼いだら転生出来るッスからね。ダンジョンでバンバン稼いでさっさと転生するッス!」

 

しんみりした空気を破るように、俺は手を叩いて笑顔を見せる。

 

 

だが、この一言が盛大なフラグを立ててしまった事に、この時の俺は気づく事が無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、ヘスティア様達と考えた設定として、俺は人見知りが激しく着ぐるみに入った小人族で通す事になった。

 

レベルに関しても、本来のステータスをそのまま出すと面倒な事になるのは明白だから、ペナルティ覚悟で1と偽る事になった。

 

下界の人間は神々に嘘をつけないらしいが、異世界出身である俺は、この世界の人間よりも分かりにくいとヘスティア様が言っていた。

 

だから、レベルを偽ってる事は神にバレても、本当の事を言わない限りバレる事はないだろうと。

 

 

 

そんな訳で、なんとか冒険者として登録を終えた俺たちはダンジョンの上層部である1階層に来ている。

 

「おぉ…ここがダンジョン…」

 

「レンさんのいた魔界には、ダンジョンは無かったんですか?」

 

俺の感嘆を洩らす横で、クラネル少年がふと気になった様子で問いかけてくる。

 

その問いの答えとして、魔界にもダンジョンはある。

アイテム界と呼ばれる、装備品の中に広がる別次元の世界がそれだが…。

 

「こう、いかにも迷宮!ってダンジョンは無かったッスね」

 

そう呟いた俺たちの前方に広がる通路、その壁の一部が崩れ、中から一体のモンスターが這い出してきた。

 

緑色の体色をした小鬼と呼ぶに相応しい姿のそれ…ゴブリンを見ながら、ギルド職員から受けた説明を思い出す。

 

ダンジョンはモンスターを産み出す。

例えるなら、ダンジョンは母胎であり、モンスターは子供。

モンスターたちは、地上に繋がる出口を塞がれた事で神々や、その恩恵を受けた冒険者達を敵視していると。

 

そう言っていたが、心なしか、モンスターが俺たち…正確には、俺に向ける敵意が強く見える。

 

「なんか、いつものモンスターより怖い…」

 

「多分ッスけど、オレが居るからッスかね」

 

俺は、この世界においては異物だ。

更に言えば、元人間とはいえ今や魔物。

ダンジョンのモンスターからすれば、俺はウシガエルやアメリカザリガニといった厄介な外来種といったところだろうか。

 

 

だが、俺からすればだから何だと言う話で。

襲って来るなら容赦はしない。

 

「こっちでどのくらいやれるか、腕試しといくッス」

 

そう言うと、俺は腹部のポーチからダガーを取り出して駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めてのダンジョン攻略は、大成功だったと言える。

上層部の探索だけだったが、ゴブリンやコボルトといったモンスターが俺の体にダメージを与える事は出来ず、逆にこっちは一撃で簡単に倒す事が出来た…試しに、素手で本気で殴った結果、モンスターが四散した時は流石に引いた。

 

そうして、腕試しという事でクラネル少年にはサポーターに回ってもらい動き回った結果、稼いだ額は3万ヴァリス。

パンパンに膨らんだ硬貨の詰まった袋を見て、この調子ならいけると思ってたんだが…。

 

「そんな、馬鹿な…⁈」

 

思わず語尾に「ッス」をつけるのも忘れ、俺はヘスティア様から貰ったステータスの写しを凝視する。

 

そこに書かれた数字は全く変わっていない。

否…一部だけ、変わっている箇所があるにはある。しかし…。

 

 

 

転生まで残り

999,887,555ヴァリス

 

 

変動した数字は、あまりにも小さすぎた。

 

 

 

「そんな、なんで…?」

 

俺の後ろから、クラネル少年が写しを覗き見ながらショックを受けたように呟く。

それはそうだろう…少年は、俺が転生出来る事を応援してくれ、ダンジョンで3万も稼いだ時は共に喜んだのだから。

 

一方、ヘスティア様は指先を顎に添えて何かを考えている。

 

「レン君…一つ、聞いて良いかい?」

 

「…なんスか?」

 

不意にこちらを見ながら声を掛けてきたヘスティア様に力なく答える。

彼女は、何かに気づいたように言葉を紡ぐ。

 

「魔界にいた時、働いて得た君の給料って…いくらだい?」

 

「そりゃ、日当でイワシ2匹…」

 

ヘスティア様の問いかけに答えていくうち、俺も一つの考えが過ぎる。

 

「っ!」

 

「あっ、レンさん!」

 

それを確かめるべく、クラネル少年が呼び止めてくるのを無視して、俺は街へと駆け出す。

 

周りの奇異な目すら振り切り、大通りを駆け、目的地を目指して走り続けて十数分。

 

 

たどり着いた其処は、特徴的な香りが漂う。

大きさや形も様々な魚が並んでいる。

 

俺は其処…鮮魚店で、ギラギラとした眼光で目当てのものを探し回り…そして、見つけた。

 

青光りするそれは、魔界に出荷されるよりも前…まだ地獄に居た頃どころか、生前から見慣れた姿。

 

煮るもよし、焼くもよし。

DHAやEPA、ペプチドを豊富に含むとして、あの人がこよなく愛したあの魚。

 

そう…イワシを。

 

値札を確認するや、俺は自分と…そして、ヘスティア様の予想が正しかった事を理解した。

 

陳列されたイワシと一緒に立てられた値札には、こう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

イワシ 2尾5ヴァリス

 

 

 

 

 

 

「ただいまッス…」

 

フラフラとホームに帰り着くと、俺は床に膝をついた。

 

「…その様子だと、予想通りだったんだね」

 

「神様、いったいどういう…」

 

項垂れる俺を見て自分の予想が正解していた事を悟ったヘスティア様に、状況が理解出来てないクラネル少年が声をかけた。

 

 

「ステイタスから減った金額と、レン君が魔界で働いてた時に貰っていた給料の話を聞いて、一つの考えが浮かんだんだ…労働としてカウントされる金額は魔界での給料と同額なんじゃないか、って」

 

「つまり…それ以上の稼ぎは、労働としてカウントされない…」

 

「そうなるね」

 

2人の会話がグサグサと突き刺さる。

ダンジョンで稼いだら、少しは楽に…早く転生出来るって思ったのに…。

 

「労働から逃げられないじゃないッスか!やだーーー!!!」

 

俺のやるせない叫びが、ホームに虚しくこだました。


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