プリニー〜ダンジョンで俺が最強って解釈違いじゃないッスか⁈〜   作:ジャッキー007

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やってみたかったけど、当時はハードを持ってないため諦めてきたソフトが、別ハードに移植されたりで出来るようになるとは、良い時代になりましたね


こっちも抜かなきゃ無作法ッス

ダンジョンでの腕試しと、辛い現実を目の当たりにした日から数日、俺は考える。

 

ダンジョンで稼いでも、転生費用としてカウントされるのは魔界で貰っていた給料と同額。

だったら、地上で働いても変わらないのではないだろうか?

 

だが、俺はヘスティア様のファミリアに世話になっている身だ。

 

興したばかりのファミリアは、とにかく金がなく、現にクラネル少年がダンジョンに潜ってる間、ヘスティア様は生活費を捻出するためバイトに勤しんでいる。

 

俺も、今やヘスティア様のファミリアの一員、自分の事だけ考えておしまいではいけない。

 

そう考えた結果、ダンジョンで金を稼ぐ以外にも掃除や洗濯といった雑用を引き受ける事を決意した。

 

2人からは止められたりしたが、城での激務を経験した身だ。たかが3人が暮らす場所の家事なんて造作もない。

 

 

さて、そんな俺が今何をしているかと言うと…。

 

「大将の!ちょっと良いとこ見てみたい!」

 

「〜っ、仕方ねぇな!コイツはオマケだ、持ってけドロボー!」

 

「フゥーッ!流石大将、シビれるッス!」

 

大通りにある八百屋でガタイの良い大将相手に値切り交渉(激戦)を繰り広げていた。

 

 

 

 

あれだけ奇異の目で見ていた住人達も、堂々と歩く俺の姿を見て順応したのか、今や気にする者は少ない。

 

着ぐるみを被ってる間は陽気なキャラという設定も活きているのか、周りからは奇天烈な格好をしたテンションの高い小人族と覚えられている。

 

「いや〜、大量大量。出費も抑えられたしこれは勝ちッスね」

 

買い物した商品の詰まったバスケットを提げ、意気揚々と大通りを歩いていると、不意に視線を感じて辺りを見回す。

 

しかし、周りにはこちらを見る者はなく、談笑しながらバベルへ向かう者や買い物をする者のみだった。

 

「…気のせいッスかね」

 

軽く首を傾げながら呟くと、俺は今晩の献立を考えながら再びホームに向けて歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オラリオの中心に聳える塔…バベル。

その塔の高層から、街を見下ろす1人の人物…いや、神物がいた。

 

銀色の髪を靡かせる美を体現したかのような姿を持つその神の名は、フレイヤ。

 

オラリオを代表するファミリアの一角の主神である、美と豊穣を司る女神だった。

 

「…あれは、何?」

 

彼女は、いつものように地上で生活を営む人間達を見ていた…そんななか、一つだけ、異質なものを見つけた。

 

鳥を模した奇妙な格好をしたナニカが、街中を歩くのを目撃した時は、思わず二度見してしまい、更にそれを視たフレイヤは、思わず呟く。

 

その中にある魂は、人間のものだった。

幼い子供とさして変わらない体躯、その中は伽藍としていて、納められているのは魂のみ。

 

それなのに、それはオラリオの街中を動き回り、商店で舌戦を繰り広げている。

 

 

地上に降り立って初めて見る、完全なる未知の存在。

娯楽に飢えた神であれば、手を出さずにはいられない存在。

しかし…。

 

「…あれは駄目ね」

 

フレイヤは予感する。

アレに手を出してはならないと。

 

見た目に騙され手を出せば、きっとロクな目に遭わない。

アレは…小動物の皮を被った竜だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

ホームへ帰る道すがら、細い路地の方から何やら声が聞こえてきた。

 

男の怒鳴る声と、女性の声が聞こえる方へと歩みを進めていくと…。

 

「サポーターの分際で、金を寄越せだ?ふざけてんじゃねぇぞ、クソ小人族が!」

 

「ガッ…⁈」

 

人通りの少ない路地というのを良い事に、1人の男が少女に暴力を振るっていた。

 

どうやら、男は冒険者で少女…いや、小人族と言っていたから女性か?

働いた分の稼ぎを貰おうとした彼女に暴行を働いている、といった所だろうか。

 

(日本なら、即ポリスメンに通報ッスけど…大通りに憲兵っぽいのは居なかったッスね)

 

ふと、大通りの様子を思い返すが、治安維持を担うというガネーシャ・ファミリアの団員らしい人物は見当たらなかった。

 

 

「仕方ないッスね…」

 

なお、女性に暴力を振るう男の姿に嫌悪感が勝り、小さく溜息を吐くと、路地の陰から2人のもとに歩き出した。

 

「ちょっと良いッスか?」

 

 

「あん?」

 

声を掛けると、気づいた男は不機嫌そうにこっちに視線を動かした。

俺の見た目に眉間の皺が深くなるが、それよりも邪魔された事への怒りが勝ったんだろう…こちらを威圧するように睨んでくる。

 

「なんだテメェ、ふざけたナリしやがって…見せもんじゃねえぞ!」

 

そう言って凄んでくるが、全くもって怖くない。

魔界に居た魔物や悪魔と比べても、チワワが精一杯吠えているようにしか見えない…いや、男の顔から見てチワワに失礼だな。

 

「話がたまたま聞こえてきたんスけど、労働に対価を払うのは常識ッスよ?その上、弱い者いじめとか…ぶっちゃけダサすぎて、オレが女なら鼻で笑ってお断りする物件ッスね」

 

「この野郎…調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

 

男の剣幕を無視して女性を起こし、怪我の具合を確認する。

殴られた後が痛々しいが…あの人に渡されたコレを使えば良いだろう。

 

「指…はねぇんだった、この棒は何本に見えるッスか?」

 

「1本…って、あの…」

 

視界に異常がないか確認するため、小人族の女性に見せる。

その答えから目に問題はなさそうだが…彼女は、俺を異様なものを見る目で見てくる。

 

その理由は…こうしている間も、俺が男に後ろから殴られているからだろう。

 

 

人間相手に検証したことは無かったが、これだけ殴られても痛痒も感じない事から、入っているダメージは0か、せいぜい1桁程度ってところか。

 

そんな事を考えながら、買い物途中で出会った神物から貰ったポーションを飲ませると、みるみるうちに傷が癒えていくのが確認できる。

 

「っこの…!」

 

「ッ、危ない!」

 

痺れを切らしたような声と、傷の癒えた小人族が切羽詰まった声に後ろを振り向くと、男が背負っていた剣を鞘から抜き、振り下ろそうとしていた。

 

怒りから正常な判断が出来てないのか、女性ごと俺を斬るつもりなのか…男が剣を振り下ろすのと同時に、ギュッと目を瞑る小人族の頭を下げさせる。

 

 

 

 

結果として、振り下ろされた刃は俺を傷つける事は無かった。

それどころか…刀身の半ばから、ポッキリと折れていた。

 

 

 

「…は?」

 

「…へ?」

 

カラン、と折れた刃が地面に落ち、状況を飲み込めない男と小人族の口から間の抜けた声が溢れる。

俺は、ただじっとしていただけ。

 

人間相手の検証はこれが初めてだが、俺のレベルはこの世界の人間相手でも通用するようだ。

 

漸く状況を理解したのか、男は焦りと驚愕をない混ぜにしたような表情(エネル顔)を見せ、逃げようとする。

 

「そっちが抜いたんなら…こっちも抜かなきゃ無作法ッス」

 

だが、遅い。

 

こちらに無防備な背中を見せる男に一足で接近すると、俺は右腕を下から上へと振り上げる。

 

放たれた右腕は、放てば必中と言われた槍のように、狙い定めた男の背中…より下、臀部に突き刺さった。

 

「かひゅ…っ⁈」

 

「千年殺し…釣りはいらねぇ、おしめ代に取っときなッス」

 

千年殺し…三年殺しなど、世代によって呼ばれ方も違うそれの正式名称は、カンチョー。

小学生男子がイタズラでやっていたアレだ。

 

とはいえ、人間の急所への攻撃なので下手すれば命に関わる危険な行為だ、よい子はマネしちゃダメだぞ?

 

男は尻を押さえながら顔を蒼くして、口から少し泡を吹いて倒れこんだ。

 

 

「ぇ…死んだ、んですか…?」

 

「手加減はしたから生きてるッスよ…当分の間、オムツ生活になるだろうけど」

 

そう言って悪どい笑みを一瞬だけ浮かべると、改めて小人族と向き合う。

 

「助けてくれて、ありがとうございます…リリは、リリルカ・アーデっていいます」

 

「オレはレン、通りすがりの…こんな見た目をしてるけど、小人族ってとこッス」

 

 

これが、俺と彼女…リリルカのファースト・コンタクトだった。




次から、原作キャラの顔面崩壊(エネル顔、宇宙猫)が出てくる予定

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