プリニー〜ダンジョンで俺が最強って解釈違いじゃないッスか⁈〜 作:ジャッキー007
今回は本筋とは逸れた閑話的な話なので、短いです
さて、ロキ・ファミリアの駄犬に躾を行ってから数日跨いだ日の朝。
人々の俺に対する反応は
ロキ・ファミリアに喧嘩を売ったやべー奴と敬遠したり、警戒、あるいはそれに至らずとも興味を抱いた者。
普段と変わらず、友好的に接してくる者。
対岸の火事と、我関せずを貫く者の三つに分かれ、混沌を極めていた。
そんな、数年前に放送されていた特撮番組のOPナレーションのような状況だが。
ヘスティア・ファミリアのホーム…その前に建てられたテントの中では、数日前の騒ぎの原因となったロキ・ファミリアの団長が主神と、当事者であったアイズ・ヴァレンシュタインを連れてヘスティア様とクラネル少年に謝罪を行っていることだろう。
まるで、その場に居ないような語り口だが、それは何故かと言うと。
「さ、やるッスよ〜」
「おーっ!」
「…ケッ」
俺は、彼らについて来たアマゾネスの少女…ティオナと、謝罪の為引き摺られてきた駄犬を伴って外に居た。
時間を遡ること、数日前。
駄犬に躾を施し、ヘスティア様にしこたま絞られた日。
その日は休む事になり、ホームで過ごしていた俺は、ヘスティア様とクラネル少年にこう切り出した。
「ホームを建て直す?レン君がかい⁈」
「そうッス」
それは、前から考えていたホームの修繕について。
普通なら、こう言った建築作業というものは大工と言った業者に頼むのだが、いざ頼むとなると建材やら人件費といった建築費用で出費が嵩む。
新築で家を建てる場合、現代でも土地代の他建築費で3千万を超えるってこともある。
だが、それを自分達で行うとしたら、その費用はグンと下がる。
人件費は自分達でやるならタダだし、かかるのも建材費くらいで済む。
幸いにも、これまで街で過ごしてきた中で築いた人脈もあって、建材を格安で買える事になったので、こうして立て直そうと思い至ったわけだ。
「でも、教会を建て直すなんて…犬小屋を作ったりするのとは訳が違うよ?」
俺の提案に、ヘスティア様もクラネル少年も乗り気ではない。
まぁ、彼女の言う通り、日曜大工とはまるで違う。
基礎や梁、柱の位置やら耐震強度などにも気をつけていかなきゃならんだろう。
だが、そこは魔界で色々とやってきた俺だ。
「魔界じゃ城を1から作らされたりもしたッスから、この規模の建て直しならなんとかなるッスよ」
こうして、半ば押し切る形でホームの修繕…いや、建て直しを行うこととなった。
「さて…まずは確認からッス」
そう言うと、俺は作業台の上に数枚の紙を並べていく。
それぞれ建て直したホームの完成図を描いたスケッチや柱の寸法、間隔が細かに描いてるものなどだが、それを俺の後ろからティオナが興味深そうに覗いてくる。
「あれ、今と見た目変わんないんだね?」
「あくまで建て直しッスからね。無駄に部屋を増やしたり豪華にすると余計な金が掛かるッスから」
ホームは粉塵や騒音を防ぐため布製の幕で囲っており、内部の様子は外から見えないようになっている…が、それでも、中で物を破壊する音が鳴り響いている。
それを行っているのは…駄犬だ。
最初は俺の言う事を聞く様子は無かったが、二言三言煽ったら、この通り。
ちなみに、ヘスティア様達には場所を移動するよう提案しており、謝罪を終えた団長…フィンが、完成までの仮住居を用意してくれるとの事で、今はそれを見に行っている。
「それで、これからどうするの?」
「駄犬が壊し終わったら、瓦礫を撤去して本作業開始ッスかね〜」
幕の中でドッタンバッタン大騒ぎと言わんばかりに旧ホームを壊しているのを尻目に、俺は今のうちにできる事を始めていく。
測った寸法に合わせ、柱に印をつけ、鋸を使ってカットする。
この工程を先に済ませるだけでも、後の作業を円滑に進める事が出来る。
初めは見ているだけだったが、作業に興味を持ったティオナに鋸引きを頼み、作業を分担していると、壊し終えたのか駄犬が幕の中から出てきた。
それを確認すると、ちょうどティオナも作業を終えたようだ。
「さ、それじゃ本作業開始ッス!」
そこからは、一気に作業を早めていった。
基礎を打ち直し、撤去した瓦礫の中から使えそうな石材は砕いてモルタルに混ぜて石レンガを積み上げ。
内装部分で木を使う場所は釘を使わない木組みを採用。
日が暮れる頃、ティオナと駄犬は帰っていったが、寝る間を削っての突貫工事を続け、3日が経ち。
「おぉ…」
旧ホームの建っていた場所には、真新しい教会が出来上がっていた。
家具のない新築状態だが、中の間取りも含め、かつてあった物と同じ。更に地震にも耐えれるよう強度には十分気を配った仕上がりになっている。
「凄いな、あれからまだ1週間も経ってないのに…」
「それは人手を貸してくれたおかげッスね。俺だけなら2週間くらい掛かったッスよ」
「いや、それでも早いと思うよ…」
出来上がった新ホームを眺めながら話す俺とフィンの視線の先では、ヘスティア様にクラネル少年、ホーム建築を手伝ってくれたティオナがはしゃいだ様子で中を見て回っている。
「…改めて、君達には迷惑をかけてしまった事を謝罪したい」
「それはもう良いッス。今度から、ちゃんと躾はしといて欲しいッスね」
「あぁ…肝に銘じておくよ」
3人の様子を見ながら俺が呟くと、フィンは力なく笑いながら腹部を摩ったのだった。