俺は今、秘密結社のアジトの転送装置に入れられている。
歓迎会中止から高速で事が進んでおり、正直なところ最初からこうする気だったのではと思っていた。
が、目の前の光景を見てそんなのは杞憂だったと気付いた。
こいつらほんと阿呆だ。出たとこ勝負にも程がある。
「閣下、ついでにポチも送って良いですか?」
「ふむ、犬の怪人か。良かろう。」
「よっし!これで成功確率倍だ!」
「閣下!このプロフェッサーのカニ怪人は?」
「駄目だ。あれは美味しいからな。軍にでも奪われたら大変だ。」
「はっ!承知しました!」
転送装置で犬と二人、それを眺めていると犬が話しかけてきやがった。
「おい!俺が先に突っ込むからお前が後に来いよ!」
「分かったぜ先輩。ここは譲ってやるよ。」
「先輩?!良い響きだ!うおおおお!やるぞ!俺は!」
それにしてもこいつ、テンション高えな。
散歩に行くとでも思ってんのか?
「猫怪人クンとその他1名!出撃だよ!」
「「おう!」」
「ポチっとな。」
"ビュイーン"と音がして、俺と犬の体は軍の基地に転送される。
昨日も使ったけど凄え気持ち悪いなこれ。
何か引き延ばされる感じがする。
・・・基地
特に問題もなく降りることが出来たな。
犬は……いないな。逸れたか。転送精度はまあまあみたいだ。
さてと立ち上がるかな。
……何で香箱座りしてるんだ俺は?
俺は香箱座りを辞めて、立ち上がり周りを見渡した。
ここは基地外周の植林エリアみたいだ。
人の気配も無いし、良い所に降りれたな。
えーと基地はあっちみたいだ。
夜まで待って奇襲を仕掛けるか?
でも先輩が先に行ってるかも知れないしな。
うーん、寝るか。おやすみなさい。
・・・基地 夜
お腹の所がムズムズするので目を開けた。
日はとっぷり暮れているな。
さて、お腹のムズムズの原因はなんだろう?
……仔猫だ。ひいふうみいよお、4匹もいる。
はあ、一応話しかけるか。
「お前ら親は?」
「どっかいった〜。」
「お兄ちゃん遊んで。」
「Zzz」
「ふかふか〜。」
どうしたものか。こんな事をしている間にも先輩が戦っているというのに……。
でも基地は静かなんだよな。
さては先輩しくじってもうやられたのか?
きっと蜂の巣にされたんだろう。
先輩の事は忘れないよ。
そうだ!アジトに連絡しよう。
「もしもし、俺だ。猫怪人だ。」
「誰だいキミは?にゃーにゃー言ってて何が何だか分からないぞ。」
「何で一番偉い人に直通なんだよ!」
「もしもーし、ドクターだよ。猫怪人クン。」
「ドクターか。指示を仰ぎたい、それと犬の先輩は無事か?」
「指示〜?その仔猫ちゃんの事かな?よし!戻ってきなさい!帰還ボタンオン!」
「いや、先輩はああああ!」
浮遊感に包まれる。
気付いたら俺と仔猫達はアジトに着いていた。
先輩はどうなったんだ?
周りを見渡すと怒り顔の閣下と目が合う。
「ドクターくん、この体たらくは何だい?戦果ゼロじゃないか!」
「戦果は上々ですよ!軍の基地から重要人物を攫ってきました!これを見てください!」
ドクターが仔猫を持ち上げ閣下に見せびらかす。
いやいや、流石に駄目だろそれは。
もう一回出撃するかな。
「素晴らしい!大戦果だ猫怪人くん!」
「はぁー?」
「そうでしょう、そうでしょう。」
「うむ、流石はドクターくんの怪人だ。この子達は私が飼うぞ。」
「いやいや、閣下、私が飼いますよ。」
「ほほう、ボーナスの査定に響くが良いのかな?」
「ぐぬぬ、では半々で手をうちませんか?」
「コイツら道楽で秘密結社やってんのか?」
無意味な争いをしている閣下とドクターから仔猫達を回収した俺は、食堂で飯を貰い(ちゃんとしたやつな)、部屋に戻った。
なぜか部屋にはミーちゃんがいて(どこから入った?)、俺のベッドで寛いでいたが突っ込むのは無駄だろう。
細かい事は無視して俺は寝るぞ。
次の日起きた俺は部屋にベッドが2つ増えている事に気付いた。
ベッドの上では閣下とドクターが寝ている。
ここは俺の部屋なんだが、上司に出て行けと言える訳もなく。
下っ端の悲しみを感じた三日目の朝だ。
◆簡単な設定◆
ポチ:生死不明。
仔猫達:猫怪人の初戦果。オスが2匹。メスが2匹。