序章「最強のドジっ子」
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吾輩はマスターである。名前など無い。
突然ながら、型月民の皆々。
『ORT』―――というキャラクターの事を、ご存知だろうか?
誰だよ其奴、と言う者が居る可能性は有る。
だが、恐らく型月作品を知っている者達、もしくはFGOをやっている者達であれば、よくご存知だろう。
そう、『対知性最強』の殺生院キアラや『最強の英霊』覚者を差し置いて、『型月最強』の名を背負いし『究極の一』―――彗星のアルテミット・ワンの事である。
FGOでは、設定通りの理不尽さ、期待を裏切らぬ余りの理不尽さに、白目を向いた民達も少なかったであろう、あのORTだ。
この辺りで何となく察している者達も居るのだろうが、だがまだ待ってほしい。
再び、型月の民達に問いたい。
ORTを知っているのであれば、「沙条愛歌」というキャラクターもご存知ではないだろうか?
そう。『型月作品に登場するマスターの中で最強なのは?』という議題で必ず1位に君臨する最強のマスター―――騎士王大好きマスターこと、沙条愛歌の事である。
型月の世界において、あらゆる全ての魔術師が追い求める悲願こと『根源』に、生まれ落ちた時から繋がっている、本当に数少ない人間『根源接続者』の一人。
東京で行われた聖杯戦争の勝者にして、『Fate/Prototype』における黒幕でもある『全知全能』の力を持った少女だ。
根源という、型月世界における『この世の全て』とも言える概念に生まれた時から繋がっている彼女は文字通り全知全能であり、その力を意中の相手であるセイバー―――もとい、アーサー・ペンドラゴンの為に使いまくっていた、謂わばサイコパスヤンデレである。
アーサー・ペンドラゴンに恋をした一人の少女である彼女を知らぬ者など、型月の民にはほぼ居ないだろう。
…では、此処まで長々と語った故、今より本題へと移るとしよう。
私、名も無きマスターは―――
「臨界、完了。疑似身体・疑似精神との接続、完了。存在意志、確定。
初めまして、マスター。サーヴァント・フォーリナー、沙条愛歌改め、ORT。此処に臨界しました。」
沙条愛歌を依代とした疑似サーヴァント、ORTを召喚してしまったのである。
霊長の抑止力、そして星の抑止力の御二方、本当に申し訳ございません―――本来の時間よりもめっちゃ早く、世界における最強のドジっ子を呼んでしまいました。
さて、どうなってしまうのでしょうか。
私にはもはや検討がつきません。
誰か、助けてくれません?