序章「名も無き英霊」
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「ミクトランでの激戦を終え…そして、最後の戦いへの準備を進めていた諸君に、最悪の情報を伝える…」
ノウム・カルデア。新しいカルデア。
その所長を務めるゴルドルフ・ムジークが、顔を青くしながら、そう話し始めた。
何だ何だ、とざわめくスタッフ達と、どうしたんだろう…と、神妙な顔付きをする藤丸とカドック。
皆、確かな不安を覚えていた。
「我々はミクトランでORTと戦い、そして苦戦の果てに勝利を収めた。だが…どうやら、奴は滅びてなどいなかったらしい…」
「――――――」
衝撃、なんて言葉は生温い。
驚愕、なんて言葉は生易しい。
絶望。思い浮かんだのは、その一言だ。
何度も体験したソレを、再び体験させられた。
何度も突き刺された刃物を、再び突き刺された。
そんな、酷い気分に陥れられていた。
ORT―――最強の侵略生物。カルデアが対峙してきた、どんな敵よりも圧倒的な強さを持った絶望の壁だ。
ORTは、確かに滅びた筈だった。
自身の一部、子供の様な存在である彼女に―――ククルカンに、打倒された筈だった。
彼等は、その瞬間を見たのだから。
最後の最期を、その目で見届けたのだから。
間違える訳がない。見逃す筈がない。
だが――――――現実は、そうではなかったのだ。
全員が絶句する中で、ダ・ヴィンチが言葉を紡いだ。
「昨夜、一つの特異点が観測された…その特異点に、我々が戦ったORT…いや、藤丸くん達が見た、『事象転換』によって起こされたORTと同じ反応があった。」
「そ、そんな……」
「ウソだろ…また、あんな怪物と戦えっていうのか…」
「……」
オルト・シバルバーという、無限に蘇る絶望と戦う前。
藤丸立香達は、その異聞帯の王である戦争と死を司る神であるテスカトリポカの事象転換によって、『イスカリという心臓を得たORT』を、一時的にだが呼び起こした。
そのORTは、正しく圧倒的だった。攻撃が通る事はなく、当たりはすれど一切の負傷はしなかったのだ。
その戦いは、抵抗すら出来ない蹂躙で終わった。
オルト・シバルバーは、あのORTとは違う。
オルト・シバルバーとは、言ってしまえば弱体化したORTが選んだ策の一つであり、ある意味ではさらなる弱体化である。
あれはサーヴァントだった。存在こそ異質かつ歪ではあったものの、確かなサーヴァントだった。
だが、その特異点に居るORTは違う。
心臓を得たORTが、オルト・シバルバーの形になっている。図体が大きく、俊敏だったという訳でもなかったORTが、心臓を得て人型になっている。
侵食固有結界も使えるのだから、もはや勝ち目など皆無同然だ。
「手段は……」
「無いだろうな…あんな怪物を相手取れるヤツなんて、もう…」
『境界記録帯の干渉・改竄、それ伴う、座に新たな英霊の登録を確認。
立体並行世界による記録帯の改竄
30年に亘る個人歴史の総括
これらを用いた、仮想英霊体の構築を確認しました。
生物分類:人類種 真名:無し
サーヴァント:クラス アーチャー
無銘 が 召喚されます』
「――――――――――――は?」