ブルーアーカイブ短編集   作:ぽぽろ

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シャーレにGがでた

自分の後ろに存在する展望台も真っ青になる程のシャーレの大きい窓から空が段々と落ちていくのが見えた。

ぐっーと身体を延ばし、デスクの上の時計を見ると時刻は既に六時を過ぎている。

一般的にはもうとっくに退社をして帰路を辿る事をしているはずだが、一向に朝から存在する紙の束が私を離してくれる様子は無かった。

 

5歳児の方がこんな書類より聞き分けがいいだろうに

 

マグカップを見ると何も入っておらず、コーヒーでも飲んで一息入れようと思い後ろをむくと嫌な音がした。

 

白いフローリングの上をカサカサと音を立てながら滑るように歩く奴。

そう、全人類から嫌われ以前人間はあいつらに食べられていた何て眉唾ものの噂もある黒光りする奴。

 

私は昔から奴は苦手で、殺虫剤も手元に無く私には逃げ回る事しか出来なかった。

 

「先生、近くに寄ったから来たよ」

 

近くの椅子に立ち、近寄られない様にしているとドアから誰かが来た。

はて、誰だろうか。今日は誰も当番にしてなかったはずなんだけれど……

 

「カヨコ……?」

「先生……?何やってるの」

 

訪問してきたのはカヨコだった。彼女はこちらを見ると呆れたような目を向けた。

 

「え、あの、その、ゴ……ゴ……奴がいてね。どうしようか迷ってたんだ」

 

ほら、此処に。と指を指すと、劣勢を悟ったのかGはソファの下に潜り込んだ。

 

「なるほどね、先生ちょっと待ってて」

 

カヨコは近くにあった雑紙を多めに取り、それを丸めた。そしてソファに近寄り、片手でソファを持ち上げ姿が見えた時にまるで剣道の達人の様な綺麗な振りで叩き潰した。

 

「先生、これで大丈夫だよ」

 

こちらに振り向くと、はにかむ様に笑った。

こうして彼女らと私との身体的な違いを見せつけられると、段々と先生として男としての威厳が無くなっていく感じがする。

あのソファーだって、私が持ち上げるには重すぎる。銃弾一発受けただけで致命傷になる。10キロくらいの道のりを走り続ける体力もない。

 

人並みには身体能力には自身はあったのだが、私の言う人並みとはここ、キヴォトスでは最底辺にも満たない。

 

そうやって項垂れていると、ソファーを降ろしながらカヨコは不思議そうな目を向けた。

 

「先生?どうしたの」

「いや、ちょっと少しばかり自分の情けなさを思い知ってね……」

「それでも先生は私の先生だよ」

 

カヨコに惚れそうだった。こんな情けない大人に着いてきてくれるなんて。

 

「先生にも可愛い所あるんだね」

 

彼女はいつもの様に微笑みながら言った。

 

「虫は大丈夫なんだけど、どうしてもあれだけはね……」

 

どうしても見た目や動きがダメなのだ。

クワガタ等とあまり変わらないのに。

チヒロに頼んだら虫もシャットダウンしてくれるようなセキュリティにならないだろうか。

今度相談してみよう。私はそう思った。

 

「あ、先生そこにもいるよ」

「ひぃぃ!」

 

私は思わずカヨコに抱きついた。

ゲマトリアと対面した時もベアトリーチェと戦った時もシロコテラーとプレナパテスの起こした事件の時だってこんなに恐怖を感じた事は無かった。

 

「ふふっ、先生、ごめん嘘だよ」

「カヨコ!」

 

クスクスと上品に笑うカヨコ。

一通り笑うと、彼女は仕切り直すように咳払いをした。

 

「先生、今日シャーレに泊まってっていいかな………?」

「ん?今日なにかあったのかい?」

「別に何も無いんだけど、ただ先生と一緒に寝たかっただけかも、先生、昨日も寝てないでしょ。隈、凄いよ」

 

じっと私を咎めるように睨んでくるカヨコから私は目を逸らすしか無かった。

 

「参ったな、ちゃんと隠したんだけど」

「先生の事は何でもお見通しだから」

「そんなに分かりやすいかなぁ、私」

 

確かに、よくユウカやホシノ、果てにはアリスにまで隠し事をしようとしても毎回見抜かれているので私はどうやら顔に出るのだろう。(ノアはこの場合強すぎるので除くとする)

 

「休憩室が空いてると思うよ、鍵は渡しとくね」

 

私はコルクボードから鍵を取り、カヨコに渡した。

 

「先生も一緒に来ないと」

「まだ仕事が残っているんだ、それを終わらせたら行くよ」

「ダメ、休まないと倒れちゃうよ?起きたら私が手伝うからさ」

「カヨコに迷惑をかける訳には行かないからね」

 

私がそう言うと彼女は大きく呆れた様にため息をついた。

 

「分かった、もう力づくにするね」

 

するとカヨコは私を脇に抱えた。力で彼女に勝てる筈もなくいくら暴れてもビクともしなかった。

また一つ先生として大人として男としてのプライドが砕け散った音がした。

 

「もしかしたらもう一回虫が出るかもしれないから、その時に私が居ないと先生、ダメでしょ?」

 

その年齢に似合わぬ色香を纏いながらカヨコは言った。

 

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