艦これ エンプラ日誌   作:汰華盧顧

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流行って艦これ二次。
もっと私を満足させて。


プロローグ

駆逐艦"曙"は逃亡者だった。

人類の脅威、深海棲艦と戦うために建造された彼女。

また人の、国のために戦える。そう思えたのもつかの間だった。

 

彼女の所属する鎮守府は腐敗しきっていた。

建造コストが安い駆逐艦は、当然のように使い捨てられていた。主力の盾、無謀な偵察、碌な休みも補給すらなく遠征に行かされる日々。それだけならまだ良かっただろう。

 

艦娘は皆見目が良く、人に逆らわない。そして軍は男性社会で鎮守府という閉鎖的な環境。そうなれば碌でもないことになるのはわかりきっていた。

 

主力にはならない重巡や軽空母、軽巡やときには駆逐艦さえ、守るべき人類によって汚された。命令されて、姉妹艦を人質に取られて、望まない奉仕をさせられた。

下手に歯向かえば拷問や解体、装備を外され前線に送るなどの蛮行すら平然と行われていた。そんな蛮行を防ぐための憲兵すらも腐敗し、率先して協力する始末だった。

 

肥溜めのような環境、それは艦娘達の精神にも影響を与えた。なんとか自分だけでも助かろうと、いい目に会おうと、互いを監視して貶めあった。提督のお気に入りになれたものは優越感に浸り、なれなかったものは憎悪を燃やす。

ギスギスとした最悪な空気を何とかしようとした気のいい艦娘もいたが、そういったものは提督や憲兵に壊され、同僚の艦娘に利用され、失意の果てに水底へと還っていった。

 

そんな地獄に建造された曙も、当然にその洗礼を受けた。だが幸いなことに、彼女には味方がいてくれた。

軽巡■■、彼女は曙に生きる術を教えてくれた。彼女を守る為に提督に取り入り、自身を売ってでも彼女を守った。

反骨精神の強い曙にもその優しさは理解できた。故にまっすぐに受け止め、与えられた知識を、技術を、必死に吸収した。

他人を信用出来ない鎮守府の中で、二人だけは互いを信用しあい、支え合ってきた。そんな日々の中だった。

 

近海での戦闘が激化し、資源が不足し始めていた。それを補うために軽巡、駆逐艦は総動員で遠征へ駆り出された。補給を受けられないために遠征は失敗が続き、また疲労のためか遠征先での遭遇戦で逃げ切れず、轟沈するものが後を絶たなかった。

 

減少する資材に消耗する艦隊、なんとか人員を補充するためになけなしの資材で建造を試みた。だが、建造のための設備は突然動かなくなってしまった。

 

原因はわかっている。妖精の離反だ。

艦娘に関する設備、装備、艤装は全て妖精の協力の元に運用されている。だが近年、妖精の数は減少の一途を辿っていた。

 

彼らは消えたのではない。鎮守府を見限り、去って行ったのだ。

 

幸い全ての妖精が見限ったわけではなく、一部の妖精はまだ残ってくれていた。だがそれは人の為ではなく艦娘の為。艤装の稼働に必要な最低数の妖精が残り、工廠などの設備や、装備を担当する妖精は殆どが離反していった。

 

 

人員が不足する中、生き残った艦娘達の負担は益々増えていった。曙達は昼夜問わず、休み無く遠征に行く日々。過酷極まる環境に、複数あった遠征艦隊は消耗していき、曙がいた頃には4つまで減らされていた。そして………。

 

曙の艦隊は、遠征からの帰還途中に敵主力艦隊と遭遇してしまった。本来なら遭遇してもはぐれか水雷戦隊までだったが、遠征艦隊と同様に過酷な環境で戦っていた主力がとうとう瓦解し、敵主力に防衛線を突破されていたのだ。

 

降り注ぐ砲撃に疲弊しきった遠征艦隊はなすすべなく崩壊した。次から次へと轟沈していく同僚達。そんな危機的状況でも曙と軽巡■■は生き残っていた。遭遇時にすぐさま資材を捨て去り、退避に専念した結果だった。

旗艦だった軽巡■■は曙以外の艦娘にも資材を放棄するよう命令した。だが誰もが提督からの折檻を恐れ、命令を無視した結果、沈んでいった。

 

敵は強力。それに対してこちらの武装は12cm単装砲と貧弱極まりない物のみ。魚雷も機銃も資材にできるものは全て廃棄させられていた。唯一の武装である12cm単装砲も倉庫の片隅にホコリを被っていたものを軽巡■■がこっそり確保していた物で、当然ながら整備もろくに出来ていない。砲撃が出来るかどうかさえ怪しいもの。状況は絶望的だった。

 

ここで沈むのか。そう諦めたとき、軽巡■■から最後の命令が出された。

 

 

『私が囮になる!全力で逃げて、何が何でも生き残りなさい!!!』

 

 

そう言って、軽巡■■はまっすぐに敵艦隊へと突っ込んでいった。日頃の癖でとっさに命令に従う曙。すぐに思い返し、振り向こうとした瞬間に後方から砲撃音が響いた。

一瞬の集中砲火、その後に砲撃が曙を襲った。体に染み付いた回避術を全力で行いつつ、曙は悟った。彼女は、軽巡■■は沈んでしまったと。

 

あふれる涙を乱暴に拭い、全力で機関に火を入れる。

曙は、二度と振り返ることはなかった。

 

 

 

 

 

あれから無我夢中で航行を続けた曙は、気が付けば海岸で倒れ込んでいた。体には傷はなく、艤装も大きな損傷は見受けられない。たかが駆逐艦一隻と考えたのか、深海棲艦も追撃を掛けて来なかったのが幸いしたのだろう。

 

大体の状況を確認した曙は行動を開始した。

まず自分がどこにいるのか。付近を歩いたところ、ここが小さな無人島ということが判明した。どうやら無意識で本島に戻ることを避けたようだった。

 

自身の艤装に宿る妖精とかろうじて残っていた海図を見て議論した結果、この無人島は曙の所属している、いや、所属していた鎮守府から近い無人島であることが判明した。今まで来たことがなかった理由は、ここは小さすぎるためか資材が生成されず、遠征のコースから外れていた為の様だ。

 

曙は落胆した。自分はまだあの忌まわしい鎮守府から開放されていないと。

このままここにいればいずれは遠征艦隊に見つかり、連れ戻されてしまう。脱走がバレたときの折檻はより過激になる。さんざん痛めつけられ、陵辱され、尊厳を徹底的に破壊されつくされる。

曙があの鎮守府で再三見てきた光景だ。それは建造が出来なくなってからも続き、それどころかエスカレートさえしている。

 

すぐさま艤装を背負い、海に出ようとする。だが艤装は黒煙を上げて停止してしまった。逃亡の際に機関に負担を掛けすぎてしまったのだろう。まともな設備もなく、資材もない状況。どうすることもできない。

 

だが曙は諦めなかった。こんな時でもなんとかするための術は、全て軽巡■■から習っていた。

 

島の中央に進み、そこに仮の拠点を拵えた。と言っても精々雨をしのげる程度の粗末なもの。だが現状ではそれで十分と言えた。もとよりここに長居をするつもりは毛頭ないからだ。

 

仮拠点に動かない艤装を置き、次に海岸へと向かった。

この島は資材が生成されないとはいえ、ものが流れ着かないわけではない。戦闘の激化と無理な遠征で轟沈者は多数出ている。

 

そう、曙の狙いは轟沈した艦娘の艤装だ。

 

軽巡■■は言っていた。艤装の応急処置は艤装でなんとかできる。同じ艦種ならいいが、可能なら姉妹艦の艤装を使えばより精度の高い修理ができると。

 

艦娘には姉妹艦がいるものがいる。吹雪型や陽炎型、そして曙の綾波型。曙のいた鎮守府には姉妹艦がいなかったが、他の鎮守府ではそこそこいたらしい。そしてどの鎮守府でも大抵駆逐艦は消耗品扱い。ならば綾波型の艤装も流れ着く可能性はある。曙はそこに掛けた。

 

轟沈者の艤装を取るのは死体を漁るような物だと。曙の理性はそう言うが、この非常時にそんなことは言ってられなかった。

 

海岸には狙い通り、艤装が流れ着いていた。とは言っても、どれも残骸みたいなものばかり。だがそれでもないよりはマシと、同じく流れ着いていたドラム缶を拾い、中に艤装を集めていく。

 

制海権を取れていない海岸を歩くのは自殺行為。いつ深海棲艦と遭遇してもおかしくないからだ。

急ぎ足でことを済ませると、仮拠点へと向かった。

 

集めた艤装を、自身の艤装に隠していた工具で(これも軽巡■■に持っておけと渡されていた。)解体し、使えそうな物を仕分けていく。艤装には綾波型の物はなかったが、駆逐艦の物は豊富にあった。艤装の簡単なメンテナンスはできたが、修理の経験はない曙。艤装の妖精と試行錯誤を繰り返していく内に、3ヶ月が経過した。

 

それまでの間、曙はなんとか鎮守府の遠征艦隊にも、深海棲艦にも見つからず、凌ぎ切ることができた。曙自身が警戒心が強く、また悪戯に海岸に出なかったことが良かったのだろう。

 

艤装の修理は完了。ただ航行するだけなら問題ないまでに修理ができた。また、護身用の武装も比較的損傷の少ない12.7cm連装砲A型を拾ったことで前よりはマシになっている。

 

いよいよ出発の日が見えてきた。行く宛なんてない。だが、ここに入るよりはずっといい。

 

この3ヶ月の間、休息など殆どとっていなかった曙は、明日に備えて地面に敷いた葉の上に横になり、眠りについた。

 

 

 

 

早朝、海岸へむかった曙は困惑していた。海岸に見慣れない人影があったからだ。

 

それは長身の女性だった。黒のコートに頭には軍帽。長い灰色の髪を靡かせている。そして特徴的なのは、その手に持つ機械的な弓と腰のアームに繋がるENの文字が書かれた飛行甲板のようなもの。

 

曙は彼女が空母だと判断した。だが、話し掛けはしなかった。木の陰に隠れ、様子見していた。

 

曙の鎮守府にも空母はいた。そしてそれ以外の空母の容姿も大体把握してはいる。だがその記憶の中には彼女の容姿に当てはまるものはいない。

 

そこで閃いた。彼女は海外艦なのだと。

海外艦は鎮守府で建造されることは基本的にはない。最前線で保護されることが稀にあると聞いたことがあった。……そして希少さ故に高値で売買され、大抵が碌でもない結末を迎えるとも。

 

海外艦に限らず、ドロップ艦は鎮守府がどれだけ酷いことになってるか知っているものは当然いない。だからこそ保護されて鎮守府に捕らわれてから地獄を知ることになる。

 

鎮守府にいた頃、出撃した艦隊が連れ帰った艦娘達が絶望に顔を染める光景は散々見てきた。そしてそれに何もできず、歯噛みしてきた日々は今でも思い出せる。

 

そんな後悔はもうしたくない。

一瞬の逡巡の後に、声を掛けるために一歩踏み出す。だがほんの僅かに遅かった。

 

件の艦娘が遠くに見える艦隊に手を振り、そちらに向かって航行し始めてしまった。その方向を見た曙は、顔を青ざめた。

 

声を掛けた艦隊は曙がいた鎮守府の艦娘達だった。

その遠征艦隊の旗艦は"五十鈴"。提督に取り入り、一緒になって他の艦娘達を虐げてきた艦娘。考えられる限り最悪の出会いだ。

 

もうなりふり構ってはいられない。海に飛び出し、機関に火を入れ全力で航行する。

艤装妖精が必死で止めてくる。もともと艤装は応急処置で済ませていた。これ以上無理をさせると直せなくなると。

 

だが曙は航行をやめない。

曙は思っていた、誰かを助けたいと。軽巡■■は自分を助けてくれた。その恩を返そうとしたが、彼女は笑って言った。『返さなくていい。その気持ちは他の子に使ってあげて』と。優しさを他の艦娘に伝えてほしいと。

 

今は亡き彼女の意思を、ここで繋げる。

 

 

 

「そこの灰色!頭伏せて!!」

 

 

 

曙はかつての同僚に躊躇なく砲撃をお見舞いした。それだけにとどまらず、持てる弾薬をすべて打ちつくさんと砲撃を続けていく。

 

 

「どぅえええ!?何?何事!?」

 

「間抜けな声出してる暇があるならとっとと逃げて!!鎮守府には行っちゃダメ!!」

 

「はぁ!?何言って、それにありゃ艦娘で、仲間なんじゃ」

 

「仲間じゃない!!いいから早く!!!」

 

 

 

いまいち鈍い空母にがなり声を上げる。その一瞬、砲撃がやんでしまった。

 

 

 

「______こ、んのぉ………死にぞこないがぁ!!!」

 

 

 

あの鎮守府の中では歴戦である五十鈴には、その一瞬で十分だった。

放たれた砲撃は隣りにいた空母へ目掛けてのものだった。五十鈴は知っていた。鎮守府で自分と同等、またそれ以上の練度を誇る軽巡■■、その教えを受けた曙がどういう艦娘なのか。彼女は口は悪く、周りに棘棘しい態度でいても、本質は優しさを捨てきれない弱者だということを。そんな彼女の前で誰かが撃たれようとしたらどう行動すらかも。

 

砲撃は空母には届かなかった。とっさに前に出た曙が庇い、被弾したからだ。

砲撃は曙の継ぎ接ぎだらけの艤装を破壊し尽くした。大破以上、轟沈未満といった状況だ。

 

 

 

「ば、馬鹿野郎!!なんで庇った!?おい!しっかりしろ!!!」

 

「_______は、はやく_____逃げ………__」

 

 

 

海面に倒れ、薄れていく意識の中で曙は見た。

勝ち誇り、とどめを刺そうとする五十鈴の姿を。

 

そして…………

 

 

 

「何晒してんだゴラァァァ!!!」

 

「は、何しクペっ!!??」

 

 

 

そんな五十鈴に突っ込み、腕を伸ばしての体当たり、俗に言うラリアットを叩き込んだ空母の姿を。

 

 

 




外側だけエンプラさん。まじでアズールレーンは知らない。
でもエロい事は知ってる。愚息がお世話になりました。
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