過ちの刃   作:千年坂

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M14-2 とけない記憶

 

 

 

 ────暗い。

 

 辺りの景色が、何も見えない。

 

 家を出る前まで月明かりで照らされていた天球は、次第に翳りはじめ、今では星の一つも浮かんでいない。

 

 自転車を漕ぎ続けているその足は疲労でどんどん鈍くなり、家を出たときに比べて進むスピードが落ちている。

 

「ははは……」

 

「大丈夫、私は何も間違ってない……よね」

 

 虚空を見上げ、何度も何度も確認する。私の記憶に間違いなんて、絶対に無いんだ。

 

 

 

 昔も────今も。

 

 

 

「こういうのを“運命”っていうのかな?」

 

 忘れた事なんて一度もない。

 

 思い出さない日なんて一日もない。

 

 現実は後ろから見張ってくる。

 

 悪い夢は──────

 

 

 

「ふふっ…………なんでこんなコトになっちゃったのかなぁ」

 

 私のせい? 私のせいなの?

 

 いや、違う。違うと信じたい。

 

 私は悪くなんかない。悪いのは────

 

 

 

「────あれ、誰が悪いんだろう?」

 

 

 

 今回の出来事、誰が澪様をこんな目に遭わせたの……? 誰も澪様を傷つけちゃいけないのに……

 

 ああ、そうだ。悪いのは犯人だ。

 

 何も迷うことなんてなかった。

 

 私が犯人を見つけ出して…………

 

 

 

 

 

 ────この手で消してしまえばいいんだ。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 なぁんて。そんな簡単な話なら、今更こんなコトにはなってないさ。ホント、どうすればいいのかなぁ。私にはもうわからないよ。

 

 ああ、なんだか肌寒いけれど、疲れた身体には夜風が気持ちよく感じる。

 

 そういえば、今日の天気は曇のち雨だったっけ。結局雨は降らなかったけど、カッパでも持ってくるべきだったかもしれないね。

 

 

 

(あれは…………)

 

 よく目を凝らしてみると、道の先に灯る、二つの光があった。

 

(パトカー?)

 

 気がつけば、その光は私の方へと近づいてきて────そして、私の目の前で止まった。

 

 黒と白で塗られたその車体は、間違いなく警察の車だ。どうやら運の悪い時間に出会ってしまったようで、止まった車から二人の警官が出てきた。

 

「キミ、学生?」

 

 どうやら、今から私は職務質問されるらしい。

 

「はい。学生です」

 

「今は一人なのかな?」

 

「はい」

 

 私に話しかてきた警官は、ここではあまり見かけない婦警だ。いや────そもそも警官に会うことが少ないから、珍しいかどうかも分からないね。

 

「どこから来たの?」

 

「大山からです」

 

「帰る途中? それとも用事でもあるのかな?」

 

「えっと、おばあちゃん家に行く途中なんです。容態が悪くなったからすぐ来て欲しいって……」

 

 少し焦ってる様な口ぶりをしてみる。こういうのは雰囲気で乗り切るものだ。

 

「んーとね、一応未成年は、夜十時以降の一人での外出はダメってなってるんだよね」

 

「ごめんなさい……」

 

「身分証明書はある?」

 

「あっ……急いで来たから財布とか持ってきてないんです」

 

「ん〜……まあ、ホントはダメなことだから、今後は気をつけてね」

 

「はい……」

 

 ……意外とあっさり引き返してくれたものだ。警官二人はそのまま車へと戻っていった。それっぽい雰囲気出してれば、何とかなってくれるものだね。

 

 止まってるパトカーを横目に、自転車にまたがりペダルを漕ぎ始める。

 

 少し進んだところで後ろを振り向いてみると、パトカーはもう居なかった。追ってくることはないようだ。

 

 予想外の出来事で立ち止まってしまったものの、こんな所で時間をくっているワケにはいかない。本校舎まで急がなきゃ。

 

 

 

 …………目的地まではあと少し。

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