────暗い。
辺りの景色が、何も見えない。
家を出る前まで月明かりで照らされていた天球は、次第に翳りはじめ、今では星の一つも浮かんでいない。
自転車を漕ぎ続けているその足は疲労でどんどん鈍くなり、家を出たときに比べて進むスピードが落ちている。
「ははは……」
「大丈夫、私は何も間違ってない……よね」
虚空を見上げ、何度も何度も確認する。私の記憶に間違いなんて、絶対に無いんだ。
昔も────今も。
「こういうのを“運命”っていうのかな?」
忘れた事なんて一度もない。
思い出さない日なんて一日もない。
現実は後ろから見張ってくる。
悪い夢は──────
「ふふっ…………なんでこんなコトになっちゃったのかなぁ」
私のせい? 私のせいなの?
いや、違う。違うと信じたい。
私は悪くなんかない。悪いのは────
「────あれ、誰が悪いんだろう?」
今回の出来事、誰が澪様をこんな目に遭わせたの……? 誰も澪様を傷つけちゃいけないのに……
ああ、そうだ。悪いのは犯人だ。
何も迷うことなんてなかった。
私が犯人を見つけ出して…………
────この手で消してしまえばいいんだ。
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なぁんて。そんな簡単な話なら、今更こんなコトにはなってないさ。ホント、どうすればいいのかなぁ。私にはもうわからないよ。
ああ、なんだか肌寒いけれど、疲れた身体には夜風が気持ちよく感じる。
そういえば、今日の天気は曇のち雨だったっけ。結局雨は降らなかったけど、カッパでも持ってくるべきだったかもしれないね。
(あれは…………)
よく目を凝らしてみると、道の先に灯る、二つの光があった。
(パトカー?)
気がつけば、その光は私の方へと近づいてきて────そして、私の目の前で止まった。
黒と白で塗られたその車体は、間違いなく警察の車だ。どうやら運の悪い時間に出会ってしまったようで、止まった車から二人の警官が出てきた。
「キミ、学生?」
どうやら、今から私は職務質問されるらしい。
「はい。学生です」
「今は一人なのかな?」
「はい」
私に話しかてきた警官は、ここではあまり見かけない婦警だ。いや────そもそも警官に会うことが少ないから、珍しいかどうかも分からないね。
「どこから来たの?」
「大山からです」
「帰る途中? それとも用事でもあるのかな?」
「えっと、おばあちゃん家に行く途中なんです。容態が悪くなったからすぐ来て欲しいって……」
少し焦ってる様な口ぶりをしてみる。こういうのは雰囲気で乗り切るものだ。
「んーとね、一応未成年は、夜十時以降の一人での外出はダメってなってるんだよね」
「ごめんなさい……」
「身分証明書はある?」
「あっ……急いで来たから財布とか持ってきてないんです」
「ん〜……まあ、ホントはダメなことだから、今後は気をつけてね」
「はい……」
……意外とあっさり引き返してくれたものだ。警官二人はそのまま車へと戻っていった。それっぽい雰囲気出してれば、何とかなってくれるものだね。
止まってるパトカーを横目に、自転車にまたがりペダルを漕ぎ始める。
少し進んだところで後ろを振り向いてみると、パトカーはもう居なかった。追ってくることはないようだ。
予想外の出来事で立ち止まってしまったものの、こんな所で時間をくっているワケにはいかない。本校舎まで急がなきゃ。
…………目的地まではあと少し。