この日は軍の食事会が行われていた。
食事と言っても、殆ど宴の様なものだった。自由に席を移動し、酒を浴びる様に飲み、食べたいだけ食べる。食べている側の人間はいい気分になるが、片付ける側からしたら最悪な惨状だ。
そんな騒がしい雰囲気が少し嫌になったルーグはテラスに出て一人で夜空を眺めていた。
酒も少し入っているからか、それとも長い旅路だったからか疲れが出始めていた。
「君も疲れ気味かい?」その彼の後ろから声をかけて来た人物がいた。
「殿下…」そこには同じ様に騒がしい雰囲気に嫌気が差したエドワード王子の姿があった。彼は「そう畏まらなくてもいい…ここは宴会の席だから」とルーグを宥めた。
「…折角だから少し話さないか?」エドワードは彼の隣に立った。
「…仮面騎士団は君にとって居心地の良い場所かい?」
「…悪くはないです…」エドワードの質問にルーグは恐る恐る答えた。
「誰かの為に戦うことができて、仲間もいい人たちばかりで…俺には勿体無いくらいの…良い場所です」続けてそう答える。
「良かった…やっぱり君の事を推薦して正解だった」エドワードはそう優しく微笑んだ。
「推薦?」ルーグは耳を疑った。自分が選ばれたのは士官学校の模擬戦での力が認められたからではないのか…そう考えた。
「そうだ…僕が君を騎士団に推薦したんだ。当時、君とティーガーはどちらとも仮面騎士団に配属される予定はなかった」
初めて聞いた…自分とティーガーがどちらとも配属される予定が無かったなんて…。
「君達は何方も貴重な騎士の卵だ。だからこそ何方ともまずは王国騎士団の所属にしたのち、何方かを仮面騎士団に異動させよう…そう考える人たちが多かった。だけど仮面騎士団には人が必要だった。ゲイボルグにレーヴァテイン、マージ、インドラが欠員していた」
「確か、先代のゲイボルグは老衰、レーヴァテインは病死、マージは離脱と立て続けに人が居なくなった…」ルーグは自分が知っている情報を話した。彼はゲイボルグを始めとする先代騎士の顔や本名は知らない…秘匿事項だからだ…。
「なら、俺だけでなくティーガーも騎士団に入れるべきだったのでは?」
「…それは…」彼は言葉に詰まった。確かに、普通ならそう思われてしまう。
「君と顔見知りだったから…だから僕は君を推薦したんだ」
「顔見知り…」確かに、2人はこうして話す前にも一度だけ会った事があった。しかしそれは子供の頃、それも一瞬だけ…
しかし、顔見知りだったからと言う理由だけで選ばれてしまったのか…もし俺でなくティーガーも…あるいはティーガーがゲイボルグだったら…
「それに、君なら安心して妹を預けられる…」エドワードは小声でそう付け加えた。
「…何か?」ルーグはその言葉が聞こえなかった為聞き返した。しかし、エドワードはなんでもないとはぐらかした。