ロンC
その日は国の事を決める会合が行われていた。会議は特に『反対意見など』出ずに終わった。
「待ってくれ、ロン」
会合の間を出ようとするロンを私は止めた。
「何の様だ?」彼は俺の方を向いた。
「…少し手合わせをしてくれないか?」
「フッ、丁度いい…俺も訓練場に向かうところだ」ロンは、早く行くぞと言わんばかりに部屋を出て行った。私もそれを追う様に部屋を出た。
訓練場は離れにある。中は武器の保管庫もあるが、それを通り越して訓練場に向かった。
私達は練習用の木製剣を手にして向かい合った。
「手加減はしないぞ」ロンは剣を私の方に向けて言い放った。
「騎乗しておらずとも、私は負ける気はない」私も剣を構えた。
夜の静まり返った訓練場で睨み合う2人の戦士…絶好のシチュエーション…!
「はあっ!」「そりゃあ!」私達は地面を蹴り上げ走り出した。
それからしばらく、ひたすら剣を打ち合った。正直、ああは言ったが、地上で戦い慣れている彼の方が幾分か剣の腕は上だった。彼の剣を一言で表すなら大火事だ。気を抜いていると次の攻撃が迫り来る。まるで水をかけるよりも早く燃え移る炎の様に。
それに対して私の剣はよく山の様だと言われる。常に戦場を見極め、相手へ的確な一撃を見舞う、まるで全てを見下ろす山の様にと…だからこそ、大地の剣を扱えるのだろうな。
「やはり、君の剣は強い…」すっかり汗をかいて、座り込んだ彼の隣に私は座った。
「そういうお前も、簡単に負けを認めない、厄介な奴だな」
「そうだな…」私達は容器に入れた水を飲み干し、布で汗を拭った。
「俺に対して怒っているのか?」ロンは一息つくと突然そう聞いて来た。
「…それは何故だ?」
「俺が先程の会合で反論を述べた事だ。そう言う場の空気を見出す人間は嫌いか?」なんだ、そんな事かと思った。
「いいや。むしろ意見があるならハッキリと言ってもらった方が気持ちいい。私も、君みたいに物事をハッキリと言えるようになりたいものだよ」私は素直にそう言い切った。
「…そうか…」ロンはそう言って夜空を見上げた。
その日の星はいつもより輝いているように見えた。それぞれ、自分の事を主張するかのように…
「奴らは何故己を主張しないのだろうか…」そう彼は呟いた。
「…皆、面倒ごとは嫌いなのだよ。無駄に意見を言って反感を買ったり、後から無責任だと責められるのが嫌なのだろう。だが世界は楽して生きられるものではない。国を背負う立場になった以上、こういった事をせざるを得ないのに」
「…そうだな…」ロンは突然立ち上がると、「疲れたから寝る」と言ってその場を後にした。
「…さて、私も戻るとするか…」