とある日の朝、フェルディナンドは厩舎にやって来た。彼は子供の頃から馬の世話をするのが好きだった。最初は世話係のやっている事を見よう見まねにやっているだけだったが、段々自分から進んで手伝う様になった。
最近はずっと王都にいた為、今日は久々に世話ができると息巻いていた。
太陽が登り始める頃、フェルディナンドは厩舎に着いた。そこには、既に人影があった。
「誰か居るのかい?」彼は優しく問いかけた。その影は彼が声をかけると動きを止めた。しかし、声で誰か分かったからかゆっくりと彼に迫った。
「…私です」そう言って彼の目の前に現れたのは、マリアだった。彼女は怒られるのではと心を震わせていた。
「君だったか。朝早くからここで何をしてたんだい?」
「その…馬の世話をしようと思いまして…」恐る恐る彼女は答える。その答えに彼は驚いた。
「奇遇だな、私も世話をしようとしていた所だった。良ければ一緒にやらないか?」フェルディナンドの誘いに彼女は笑顔で「はい」と答えた。
2人はそれぞれ馬や天馬の手入れを始めた。
「よしよい…いい子だね」マリアは一頭の天馬の毛並みを整えていた。その様子を見ていた彼は素直な感想を述べた。
「マリア、先程から感じているんだが…君に世話をしてもらった馬や天馬はとても嬉しそうだな」
「そうでしょうか?」自信なさげに彼女は聞く。
「ああ、君は動物の言葉が分かるのかい?」フェルディナンドは彼女に冗談半分で聞いた。
「言葉自体は分からないですね…けど、態度や仕草から、この子が何をして欲しいのかというのは分かりますね…長年の経験というか、勘というか…」
「だとしてもそれは素晴らしい才能だ。私も見習わなければ」フェルディナンドはそう言ってつい力んでしまい飼い葉の入った桶を蹴って倒してしまった。
「あーあ、やってしまった」その飼い葉に続々と集まる馬達…その姿を見てマリアはついつい笑ってしまった。
「フフッ、フフフッ」
「あはは…笑われてしまったよ…」フェルディナンドは恥ずかしくなり頭を掻いた。
「そろそろ、朝の集会が始まりそうだ」フェルディナンドは明るくなる外を見て言った。
「後は私がやっておきますので、フェルディナンドさんは其方に行ってください」
「すまないね、後は任せたよ」フェルディナンドはそう言って厩舎を去って行った。
彼が去った後、マリアはため息をついた。
「フェルディナンドさん…」そう呟く彼女は、何処か悲しそうだった。