シルヴィアC
ある戦いが終わった後の夜、ロンは1人で鍛練場に居た。外は既に雪で覆われていた。
その日はいつもよりも強い寒波が押し寄せており、いつも以上に冷え込む夜になりそうだった。
「今晩は冷えそうだな…」そう言って強く剣を握りしめる。テミス領でも雪が降らない訳ではないが、今日のように一面真っ白になると言うことは稀だ。その美しさに見惚れそうになるが、それよりも寒いと感じる方が強かった。
身体を温めようともう少し訓練をしようとするが、後ろから呼び止める声があった。
「ロン!」
「シルヴィアか…」彼女は、ロンに温かい飲み物のお裾分けを持って来た。彼女は容器に飲み物を注いで彼に差し出した。
「きっとまだ訓練するんだろうなって思って」シルヴィアはそう言ってロンに差し出した。
「感謝する」そう言ってロンは一口飲んだ。
「お礼を言いたいのは私の方だよ。あの時、ロンがああ言ってくれなきゃ、誰も救えなかった。ありがとう」
「…俺からしたら普通の策を提案しただけだ」ロンは特に表情変えずに答えた。
「しかし、意外だな。お前はてっきり今回の策に不満を持っていると思っていたが」彼は意外そうに聞いた。
「そうね…見ず知らずの味方にそれを強要したら私も反対するけど、今日みたいにどうしようもない時に仕方なく行った囮作戦だもの。何より貴方が味方を切り捨てるような真似はしないって分かってたから」シルヴィアは笑顔で答えた。
「…そうか」ロンはそう言って再び温かい飲み物を飲み、鍛錬に戻った。
「…あの時、なんでそんな案を思いついたの?」シルヴィアはなんとなく聞いた。
「…テミス領では、常にパルミールの侵略がある。それに対抗する為にも父上は俺や姉上に鍛錬や勉学を強要した。領民を、国を守る為に…」
「そうなんだね…」
「…お前はどうだったのか?エウロバ男爵はどんな父親だったのだ?」
ロンは剣を素振りしながら彼女に聞いた。
「そうね…私のやりたい事をなんでもやらせてくれた優しいお父さんだよ。魔法もいっぱい教えてくれたし、いつも私を大切にしてくれてた」
「…そうか…良い父親だったのだな」
「うん…だからこそ、守る事ができてよかった。お父さんもそうだけど、お父さんが大切にしてきた領民や街を…」
彼女は最後に何かを言いかけたが、何を思ったのか頭を掻いて会話を途切れさせた。
「それじゃあ、風邪ひかないようにねー!」彼女はそう言って訓練場を後にした。
「大切にしてくれた…か」ロンはそう呟いた。
「俺は大切にされてきたのだろうか…」