不本意ながら女装してダンジョン配信をしてたら、女勇者が厄介ガチ恋勢になっていた   作:こがれ

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第20話

 クソトラップダンジョン。

 内部に意味不明なトラップが仕掛けられているダンジョン俗称だ。

 人命にこそ影響がないが、一緒に探索していたパーティーメンバーの仲を引き裂いたり、配信者の社会的生命を脅かす危険なダンジョンと言われている。

 

「な、なんにゃ、この格好!?」

 

 ハルジオンは自身の姿に気づいて慌てる。

 スク水、白ニーソ、猫耳、いかがわしいコスプレにしか見えない。

 

『うおぉぉぉ!!』『猫耳最高!猫耳最高!』『ありがとうございます!(恐ろしいトラップだ……)』『にゃ?』『今、にゃって言わなかった?』

 

 コメントで指摘されて、ハルジオンは自分の言葉のおかしさに気づく。

 

「にゃんか、言葉ににゃが付いちゃうにゃ」

 

 ハルジオンの喋る言葉が勝手に猫っぽく置き換わる。

 

 終わりだ。

 こんな生き恥さらして、もう生きてけない。

 

「ボクはもう死ぬにゃ。さようにゃら」

 

 自身の人生の終わりを悟ったハルジオンは、トボトボと部屋の隅へと歩こうとした。

 

「ハルちゃん、可愛いよ!!」

 

 カレンが後ろから抱き着いてくる。そしてハルジオンの猫耳をふにふにと触りだした。

 

「わー、ふわふわだ!」

 

 続いてSAYAが正面にやってくると、ハルジオンの顎下をなでだした。

 なぜか妙に気持ちいい。

 ハルジオンはつい甘えた声を出してしまう。

 

「ふにゃ、そこはだめにゃ。にゃんか気持ちよくなるにゃ」

「なるほど、猫と同じような感じになるのかしら?」

 

 SAYAは口調こそいつも通りだが、その口角が少しずつ上がっている。

 明らかに楽しんでいる顔だ。

 ハルジオンがダメと言っても、止めようとしない。

 

「じゃあ、頭もうれしいのかな?」

 

 カレンがハルジオンの頭をなでる。

 その優しい手つきに安心して、ついカレンにもたれかかってしまう。

 

「もう、やめてにゃ。おかしくなっちゃうにゃ」

「いいのよ。おかしくなっても、私が責任を取ってあげる」

「ダメだよ! ハルちゃん、私が責任取るからね!」

 

『うひょー!!』『僕もおさわりしたい!!』『これ、映して大丈夫? banされない?』『セーフやろ、女の子がじゃれてるだけや』『やばい、リビングで見てたら親にすごい目で見られた……』『……どんまい』

 

 盛り上がるカレンとSAYA、そしてコメント欄たち。

 

 それをころねが冷めた目つきで見ていた。

 ちなみにころねは犬派だ。

 

貴女(あなた)たち、盛り上がってるところ悪いんだけど。私たちだって、そうなるかもしれないのよ?」

 

 ピシリと、凍り付いたようにカレンとSAYAの動きが止まった。

 そしてハルジオンを見ると、顔が青ざめていく。

 他人がなっているのを楽しむのは良いが、自分がなるのは絶対に嫌だ。

 そう思っていることが分かる。

 

『自分がスク水着てるところ想像してしまった……』『だからクソトラップダンジョンなんだよな』『でも配信だからOKです!!』『最低で草』

 

「ね、ねぇハルちゃん。それってどういう状態なのかな?」

「にゃ?」

 

 やっと解放されたハルジオン。

 ハルジオンは腰につけていたバックから、スマホを取り出す。

 

 探索者は皆、小さな腕輪をつけている。

 それによって体をスキャンして、スキルなどの状態が分かる。

 物理的な病気などは分からないが、ダンジョン由来の呪いなどは分かる。

 その情報はスマホに転送されて、アプリによって確認することができる。

 

 スマホのディスプレイには、こう映っていた。

 

『猫化の呪い』

猫耳と尻尾が生える。

猫っぽい喋り方になる。

解呪条件は30分経過。

 

『装備変化の呪い』

装備が変化する。

解呪条件は30分経過。

 

 がっつり呪われていた。

 30分間もこの姿で居なければならないのかと、ハルジオンは青ざめる。

 だが気づいた。

 

 幸いなことに、このパーティーにはころねがいる。

 ころねは回復魔法が得意で、解呪などもできたはずだ。

 

 ハルジオンは呪いの事を説明し、ころねに解呪してもらおうとするが……。

 

「あー、それは私じゃ無理ね」

 

 ころねはサジを投げた。

 

「解呪条件があるやつは、その代わりに解きづらいのよ。しかも解呪条件が軽いほど余計にね。30分我慢するしかないわ」

 

 神は死んだ。

 うなだれるハルジオン。

 

 そして沈黙が流れた。

 このトラップがこれ一つしかない。

 そんな保証はどこにもない。

 

 次に引っかかるのが自分かもしれない。

 もっと危険なトラップがあるかもしれない。

 そう考えると、下手に身動きが取れなかった。

 

「……ボクが先に行くにゃ」

 

 ハルジオンが立ち上がる。

 

「ボクが『みんにゃ』を誘ったんにゃから、ボクが責任をもって前を歩くにゃ。そうすればトラップに引っかかる可能性が減るはずにゃ?」

 

『さすハル』『かっこいいよ!』『だがスク水白ニーソである』『猫語じゃなければ……』

 

 ハルジオンが歩いたところを歩けば、トラップに引っかかる可能性は低い。

 

「いいえ。魔法系のハルジオンさんが前を歩くのは危険よ。モンスターに奇襲をかけられたときに、対処しやすいのは前衛の私たちだわ」

「それに、未探索の場所なら危険なモンスターが居る可能性だってある。やっぱり私たちが前に出ないと駄目だよね」

 

 だが、カレンとSAYAは良しとしなかった。

 前衛として自分たちが前に出ると宣言する。

 

『こっちは本当にかっこいい』『でもこの後は……』『おい、不穏なこと言うな!』

 

 それに対して、ころねはおずおずと手をあげる。

 

「そ、それじゃあ、お二人は頑張ってくださいね。私は後ろから付いていきますから」

「そうね。あなたには回避不能なトラップがあったときに役に立ってもらいましょう」

「解呪できないなら体でトラップを解除してもらおうね」

「そ、そんにゃー」

 

『肉壁回復職……』『解呪できないからしゃーない』『仕事しないとな!』

 

 そうして、探索のフォーメーションが決まった。

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