不本意ながら女装してダンジョン配信をしてたら、女勇者が厄介ガチ恋勢になっていた 作:こがれ
「なんか最近、見られてる気がする」
詩音は大学の廊下を歩いていた。
となりには飯野が居る。
「ストーカー? 警察にでも相談する?」
「でも気のせいかなぁ?」
「どっちなのよ……」
ふとした時に視線を感じる。
だがどこから見られているのかは分からない。
周囲を警戒しても、それらしい気配は感じず。
気がつくと視線を感じなくなっている。
もしかしたら、華恋のストーカーかと思った。
だが、それならなぜ付け回すのだろうか。
逆上して襲い掛かってくるとか、写真をネットにばらまくとか。
もっと攻撃的な行動に出そうなものだ。
結果として『ただの気のせい?』と詩音は考えていた。
「ねぇ、それって
飯野が指さす。
その先に居たのは。
「紗耶だ。なにしてるんだろう」
紗耶は壁に隠れるようにして詩音たちを見ていた。
詩音たちが視線を向けると、ひゅっと姿を隠す。
「かくれんぼかな?」
「そんなわけないでしょうが……」
じゃあ何をしているのだろうか。
詩音が首をかしげる。
「あ、こっち来たわよ」
カツカツと足音が鳴る。
紗耶が近づいてきた。
その顔は真っ赤だ。
少しうつむいて、慌てるように喋った。
「しししし、詩音くん。今日は私とお昼を食べましょう」
なるほど、紗耶が話しかけるタイミングをうかがっている視線だったのか。
詩音はそう納得した。
そしてご飯のお誘いだが。
詩音はチラリと飯野を見る。
別に約束をしているわけではない。
だが時間が合うときは、いつも飯野と食べていた。
紗耶と食べるとなると、それを裏切ってしまうようで心苦しい。
「詩音くん。その女は危険よ」
「いきなり人のことを危険物扱いしないでください……」
紗耶はビシっと飯野を指さす。
探偵が犯人を当てるように。
「その女は、腐ってるの! これ以上いっしょに居てはいけないわ!」
詩音は飯野を見た。
腐ってる? どこが?
詩音がみる限りでは、飯野におかしなところはない。
「えっと、飯野は体の調子でも悪いの?」
「快調よ」
「じゃあ、ゾンビになったとか」
「だとしたら、こんなにペラペラ喋れないわよ」
ならばどこが腐っているのだろうか。
詩音は紗耶を見る。
「その女はね。腐女子なのよ」
「ふじょし?」
「はぁ!?」
驚きの声を上げたのは飯野だ。
詩音は腐女子ってなんだろうと、飯野を見る。
「ち、違いますけど!? そういう趣味を否定するつもりはないけど、私は違います!」
「どうかしらね。実は詩音くんでアレな妄想をしてるんじゃないの?」
「し、してませんよ! 私は夢女子派です!」
夢女子。
また知らない単語が出てきた。
詩音は後で検索してみようと決める。
「嘘を言わないで。あなたが詩音くんに女装させて喜んでいることは分かってるわ」
「は? 女装?」
「女装した詩音くんが、男と絡んでいるところを妄想して楽しんでいたのでしょう?」
紗耶は勝ち誇った顔で、飯野に叩きつけた。
だが飯野には効いていない。
深いため息をついて、こめかみを揉んだ。
「女装させていたのは、私じゃなくて華恋さんですよ」
「え?」
飯野から紗耶に説明される。
飯野には説明済みだった。
もちろん華恋から許可をとって。
華恋をストーカーらしき者が付け回していた。
それを追い払うために恋人のフリをした。
だが華恋の所属する事務所は異性との恋愛禁止。
それをごまかすために、詩音は女装をしていた。
「つ、つまり、私の勘違い?」
「そうですよ」
ぽかんと紗耶が口を開けた。
そして、
「ご、ごめんなさいぃぃぃ!!」
声を上げながら走り去ってしまった。
結局、何だったんだろうか。
詩音がよく分からないうちに、話は終わってしまった。
「ふ、私の勝ちね」
なぜか飯野は勝ち誇った顔をしていた。
ぐぉぉぉぉ!?
先の展開がまとまらないでござるよ