Re;Start   作:ぶらまに

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三次独特の要素!それこそはチートスキル!神釣詐欺なんて目じゃねえやっべえの行くぜ!
と、今回の新キャラ。

九頭竜まいん
クラス:ペルソナ使い?(フィレモン式)
Lv:55
元ネタ:本好きの下剋上

設定
カズキ以外は基本頭おかしい奴しかいなかったみんな大好き九頭竜一族の長女。
九頭竜一族最強の脳筋と恐れられた次女の九頭竜もも子(元ネタ:すもももももも)と双子で産まれたという設定になった。
ちなみに異名は【常識の理解者】などと呼ばれていた。妹であるもも子の【常識の破壊者】とセットになるように決まったらしい。
産まれた時から強大な魔力と専用ペルソナ『クインタ』を所持して生まれてきた選ばれしチート枠。しかもうっすらとだが何回か経験した転生の記憶を持っていた。
異様なまでの本好きであり、文字が読めるようになってから7歳までで学園中の本という本を読みつくし、さらなる本を!とばかりにMicopedia沼と九頭竜技巧沼に突っ込んでいった。
思いついたら一直線、なければ作ればいいじゃないとばかりにペルソナと追加契約して思いつく端から試して盛大に失敗重ねながら【合体魔法】を中心に九頭竜技巧を編み出して言った。

そして『Micopedia』と自分のうっすらとした過去記憶から『Micopedia系九頭竜技巧(スキル)』を次々と編み出していったという。

……複数の転生の記憶がうっすらとあったせいか、時々微妙にウチの文化なんかおかしくない?……ダンケル?と思っていたのは内緒。

名前もあって彼女のことを他のみんなは『自走式自爆型地雷、略して地雷さん』と呼んでいた。まあ愛されていた……理事長だけは彼女のことを『第二戦略兵器』だと思っていた。
最後はいつものように実験している最中に突如クインタが暴走し、彼女を連れて学園異界を飛び出してそのまま行方不明。死亡扱いになった。

『……あの忌まわしき夜叉どもの同類よ。タガを失い戦いに取りつかれ戦いに生き続ける者どもよ。もはや付き合ってられぬ。勝手に滅ぶが良い』

そう言い残したそうな。

……遠い過去ではとある異界神話の王とそれと契約した神だった。そして民に縋りつかれ過労死したことがある。
詳しくは本好きの下剋上を読め。30巻くらいあるけど、アレのバッドエンドルートだったと思って貰えれば。
ちなみにマイン過労死させた連中は最後はブチ切れた魔王様に異界神話ごと滅ぼされたのでめでたしめでたし。


事例12.私の考えた最良の一手

この文章を読んでいるということは、Micopediaは無事貴方の手に渡ったということでしょう。どうやら私の『最良の一手』は成功したようです。

アレは、私が20年間考えて編み出した『私の考えた最良の一手』です。今は九頭竜天衣に預けています。九頭竜天衣は恐らくはどこまで行っても『戦術兵器』にしかなれませんので、好きに使いなさい。

ですが、アレは……アレこそは……私が、この聖華学園が20年の間に『3回』だけ手にすることが出来た『戦略兵器』の最後の一つであると、私は考えます。

 

 

私は、ルールー・アムールと申します。3歳ですが肉体的には14歳のはずです。そういう設定です。

好きなプリキュアはもちろん私の名前の由来となった特別なプリキュア、HUGっとプリキュア!が一番好きです。

……などと申してはおりますが、実はこの時代に来るまで『18話』までしか見たことがありませんでした、そこで世界が滅んだのです。

 

『あれはもう様式美(おやくそく)主人公(エール)殴り合い(タイマン)からの和解!それをやった敵幹部(ヒロイン)で、追加プリキュアにならなかった奴は居ねえ!』

 

私にプリキュアを教えてくれた多仲先生は熱く語っていました。この時代でようやくその言葉が真実であると確認できました。

 

……変身後はキュアメタルとかキュアセクレタリーとかキュアドロイドとかだと思ってたらキュアアムールで業界初の二人で一人の追加プリキュア!(片方は小学生のマシェリ)だったのは色々と予想外でした。

 

そもそもその時不思議なことが起こって初代白黒来て敵幹部を拳とマーブルスクリューで倒すとか、変身アイテム分裂するとか、能天気系主人公のはなが実はいじめからの不登校転校コンボかましてたとか、

さあや役者の道きっぱり捨てて医者目指すとか、ほまれガッツリ振られるとか、地球人皆プリキュアとか、はなの出産とか、多仲先生が聞いたら絶対『!?』って顔しまくってる怒涛の展開でした。

(そう多仲先輩と話したらリアタイしたときに同じこと思ったと滅茶苦茶同意してくれました。友情が深まりました)

そんなわけで今日もまた、私はごく普通の完全造魔系中学生として生きています。

 

そして、そんなある日のことでした。

「ルールー、あんた、しばらく好きにしてていいわよ」

「……私、なにかやってしまいましたか?」

天衣様にそんなことを言われ、困惑しました。今まで、いつかはLv97になるとあれほど熱心に鍛錬や戦術研究に励んでいましたのに。

そんな私に天衣様は苦笑して答えました。

「違うわよ。来週テストがあるから、今週いっぱいそれの勉強会やるの。異界探索お休みで、学園から出ないから、まあ護衛いなくても何とかなるでしょ」

「テストの勉強?天衣様に必要ですか?小学生レベルなら毎回満点だったかと思いますが」

八一様とあい様の血を引いているからなのか天衣様は、頭がいいです。前の時代には勉強なんてロクにしている時間もなかったようですが、

今の授業……小学校レベルならば授業聞かなくても教科書全部読めば満点くらい普通に取れるでしょ?

そう言っています。流石に色々な意味で行く意味を見出せないとかで進学に備えて学習塾に行くつもりはないようですが、まあ『普通の小学生』レベルで出来ていればそれでいいということでしょう。

「私じゃないわよ……あの子らの勉強見てあげるの。『社会常識・倫理』が難しすぎてちんぷんかんぷんらしいから」

「……ああ、なるほど」

 

そこまで言われて、ようやく理解いたしました。

 

襲ってきたからという理由で人を殺して、財布を奪ってはいけません。

襲われた場合、可能であれば正当防衛として無力化(この場合は殺人も許される場合があります)したあと、財布はそのままで警察に引き渡しましょう。

日本では戦車は個人で所有できません。いくらお金を積まれてもダメです。

だからといってじゃあもう殺してもいい奴から奪うか地面に埋まってるの掘り出すしか!とか言い出さないようにしましょう。

この世界での文明はまだ崩壊していませんので、崩壊前なりの常識というものがあります。それを学んでいきましょう。

 

銃も手榴弾も日用品ではありません。普段から持ち歩いたり撃ちあったりしないようにしましょう。

この国は中国に侵略されてません。日本人のことを下等国民と呼ぶのはやめましょう。

アイスの味の好みは人それぞれです。そんなことで銃を構えないでください。

そもそもあなた方は偉大なる中華大帝国人だそうですが、中国の歴史と文化を本当に理解していますか?

この学園内にもそれらについて記された文献はいくらでもあります。学びましょう。

 

人間は天使の僕ではありません。むろん神の僕でもありません。

悪魔が混じった人間は人間です。むしろ純然たる悪魔でも社会にちゃんと参加しているなら人間扱いです。破魔が効くからと言って殺したら殺人です。

メシア教を信仰するのは自由ですが、それを他人に押し付けてはなりません。ましてや信じないものは神の敵なんだよ!とか言わないようにしましょう。

そもそもメシア教を名乗るのならまず、学校の図書館にあるキリスト教の聖書と福音書を全部読んで内容を理解するところから始めるといいかもしれません。

話はまず、それからです。分からない単語があったら先生や先輩に聞けば教えてくれるはずです。

 

一般の警察官は恐らく貴方がたより弱いですが、侮辱された、高慢な態度を取られた、実力差をわきまえてないなどという理由で反抗してはいけません、社会を敵に回します。

例えそれが貴方の暮らしてきた世界であれば殺してもよい、殺さなければ名誉に傷がつく、むしろ何を犠牲にしてでも殺さなければならないようなことであっても、です。

ただし、攻撃を受けた場合は、反撃しても構いません。それを正当防衛と言います。ですが、殺してはいけません。過剰防衛という罪に問われます。

 

明確に自らの命の危機があった場合は別です。その場合は殺しても問題ありません。また、貞操の危機の場合も状況にもよりますが殺しても恐らく許されるかと思います。

だからと言って、殺されるような状況にわざわざ追い込まれるようにしてから『仕方なかった。命の危機だった』と言って殺すのは辞めましょう。

それは現代日本人でもたまにやるおかしい人はいますが、禁じ手です。

 

社会を敵に回せば、あなたたちは生きていけないことを自覚しましょう。貴方達の生活は、社会が支えているのです。

その社会を支えているのは大半が戦闘能力を持たない愚者となりますが、だからといって異能を持っている異能者がえらいということはありません。

強いという理由は、えらいということにつながりません。真面目に努力し、社会に参加していることがえらいのです。

 

そして最後に、君たちのすぐ隣にいる人たちはみんな、あなたとは違う常識を持っています。それは漂流者でなくとも同じです。

その常識を理解も同意もしなくてもよいですが、せめて尊重することを覚えましょう。

 

常識の違いというものの凄まじさの見本市。先生方の正気を試す試練。それが反省室の社会常識・倫理なのだそうです。

特に文明が崩壊した世界の人間の常識との乖離はすさまじく、現代日本の常識を覚えさせることはとても大変だと先生が嘆いていました。

それでもまだ中等部くらいの年齢になれば崩壊世界出身でも損得勘定やら人間性やらでギリギリ社会適応できる通称『野生児君』みたいな事例もあるのですが、それが小学生になるとまず無理だそうで。

(我々はまだ現代日本に近い学園シェルターの出身でしたから普通に適応できましたが)

今の雰囲気は、かつての、ティンダロス襲撃前の学園に近しいものを感じます。私にとっては2年間の輝かしい日々でした。

そして、今の世界……時代はそんな私たちには少々広すぎるとは感じています。

 

『君たちは人口3,000人の小さな村で育った田舎者だよ。俺の故郷の、福島のど田舎レベル。たとえ理事長が世界の名だたる才能集めたとかどや顔してても信じない方がいい。

周りからおだてられて、自分には才能があるって信じて、それでど田舎から将棋の世界に入って自分より才能あるやつに潰されるやつ、将棋じゃあいくらでもいた。

将棋だったらマジの天才で、才能あるやつが無様に潰れる姿いくらでも見てきた俺が言うんだから間違いない』

 

私が完成する前に病死なされたためお会いしたことはない九頭竜八一戦術室長……九頭竜先生がまだ若い親だった学生たちに講演で語った言葉だと、記録には残っていました。

九頭竜先生曰く、どうも最近、九頭竜ぶっ殺した自分たちはすごいとか自分たちは優れている、特別だとかいうヤバいカルト臭がしてて怖かったそうです。

 

特にその代表だったのが棗白野(旧姓:岸波)様で、激しく反発されたそうです。そんなことはない。自分の考案した龍王砲・本格岸波は最強だ。負けるはずがないと。

そんな白野様に対し、九頭竜先生はプッと噴き出してこう言ったそうです。

 

『将棋だったら20年どころか40年、50年、弟子を取って戦法受け継がせたり、解説書書いて普及させてをいれたら数百年くらい同じ戦法突き詰めて研究してた人、プロにもアマにも結構いたよ?

マエストロとか実家の銭湯継ぎながら40年くらい振り飛車だけさしてた。だから君のまだ5年くらいしか研究してない龍王砲・本格岸波(笑)もまあ、まだまだ改良の余地はあるんじゃないかな。

……ああでも、やる気だけは認めてもいい。プロ棋士の子供が最高の環境与えられて鍛えてもプロ棋士になれるのは稀だったから、自分の子にはあまり将棋をさせない人が多かった。

だから戦闘どころか自分の考案した戦法を押し付けて娘にやらせて、それを最強だと信じさせる君は、棋士にはなれなくても棋士を育てる教育ママになれる才能はあったと思うよ?』

 

……白野様はそれを聞いてから、イロハ様の教育に『さらに熱心に』なってしまわれたと聞きます。それを見た九頭竜先生の評価は『うっわまじ児童虐待じゃん。ひくわー』だったそうです。

そして、そんな子供を甘やかすように、九頭竜先生は実の娘のようにイロハ様のことを可愛がり、恐ろしい目つきをしたあい先生に文句を言われてたそうです。

 

『正直な話、厳しいばかりの両親よりも優しくて面白い八一先生のが好きでしたね……いわゆる初恋という奴だったのかもしれません』

 

イロハ様は昔を懐かしみながらそんなことを言っていました。

とはいえそのお陰でティンダロス相手にも通用し『おかあさま』の援護が出来るイロハ様の『龍王砲・本格岸波』が誕生したのですから、世の中とはわからないものです。

 

(しかしそうなると、私は何をすればいいのでしょうか……)

天衣様はああいっていましたが、緊急時の呼び出しには対応できるようにしておきたいものです。

とはいえ家でプリキュアを見るというのはとても惹かれるものを感じますが……全シリーズ制覇してしまいました。二度見するにはまだ余韻を充分に楽しんでいません。

そして勉強と言っても、完全造魔である私には完全記憶に近い情報記録能力があるため、意味が薄いですし、かといって難しい戦法を考えるには演算力が足りません。

 

……することがありません。

 

(もう、一番やるべきことは終えてしまいましたしね)

そう、私も含め、第13生徒会は『必ず為すべきこと』を終えてしまいました、なので各自それぞれにできることを模索している段階なのです。燃え尽き症候群という奴でしょうか。

 

私たちがこの時代まで漂流してきた最大の目的が今の巫女様になんとか理事長の残したMicopediaを届けることでした。

存在そのものを巫女様以外には知られてはならないため、細心の注意を払ってお届けしたのです。

あの親善試合後、世界の危機に関わる非常に重要な情報と20年の間に集めた九頭竜技巧集が詰まった貴重な品である、

という名目で理事長が愛用していたPCを10億円とおかあさまを入れる封魔管と引き換えにお渡ししました。

無料だとかえって怪しまれるし現実問題として我々独自の活動資金は必要になるという、パピヨン会計の発案でした。

その後はきっとすぐにMicopediaを見て、序文に添えられた趣旨を見てどのようなものか納得されたかと思います。

それから一番の人気記事であった理事長が3年ほどかけて書いたあの素晴らしい『恋愛小説』を楽しんだあとに内容を精査すれば、これがどれほど重要な代物であるか。

巫女様が理事長と同じ魂を持つならばきっとご活用されるかと思います。

 

(さて、やりたいこと、やりたいこと……観光?)

時間がある。その辺を歩き回っても問題ない戦力もある。となればやるべきは観光のはず。

思えば基本学園から出ずに鍛錬と勉強とプリキュアばかりでした。これは学生として不健全です。

(行きますか……行きましょう)

そういうことになりました。

 

最初に行ったのは、歩いて15分。お気軽に行ける自分だけの観光地。

 

(ああ、もう解体始まったのですね)

 

我らが第13生徒会の記念すべき初仕事会場となった異界『ガンナーズヘヴン』

ついこの前、Lv80にも及ぶ秘神マルバスが作ったこの異界は、危険な場所でした。

あの天衣様が死なない……もとい【食いしばり】まで使わされたのですから。

その後も『おかあさま』なしの初めての本格戦闘ということもあり、大分苦戦しました。あそこでカヴンの群れといつものイロハ様の砲撃がなかったらヤバかったかもしれません。

ついでに、あのあと仲魔に加えたマルバスを天衣様が普通に仲魔にしたのには驚きました。10秒後には弾丸ルートだと思っていたのです。

『おかあさんが使えない今、貴重な戦力ではあるし、あの経緯ならそうそう裏切らないでしょ。精々こき使ってやるわ』

そう言った天衣様はもう一端にデビルサマナーだと思いました。

どうせこっから魔改造か合体材料にするからで抜いた素のアナライズデータを速攻で林水先生に送り付けたのはいつも通り過ぎて苦笑しましたが。

(あそこで初めて、ここでも少しはやっていけるんじゃないか、そう思ったんですよね……)

本気ではない親善試合とはいえ、見事にボロ負けして心が折れそうになってたので、大分楽になりました。

まさか使い古されたはずの『技巧 龍王殺し』なんて凡手が『ドロンパ新手』が加わることで『技巧 クトゥルフ殺し』に化けるなど予想外過ぎてやはり新時代とは怖いものだと震えあがったものです。

そんな異界も消え、ついでとばかりに解体され、新しいお店でも出来るのでしょう。

 

そう思い後にしようとしたときでした。

「なん……だと!?」

ボロボロの安っぽい軍事系装備を着た、黒髪の推定『崩壊世界デビルバスター』だと思しき少女が驚いた声を上げていました。

「え、狩り場無くなってんじゃん!?」

ボロボロの布を纏った、推定『崩壊世界獣人悪魔』らしき少女も一緒でした。

(ふむ、来たばかりの漂流者……にしては装備がアレですね?)

 

私は『九頭竜技巧(スキル) 世界鑑定(ワールドアナライズ)』を使い、大まかな出身世界を割り出し、その結論に首をかしげました。

 

九頭竜技巧(スキル) 世界鑑定(ワールドアナライズ)は『Micopedia』を元にかつての九頭竜一族『九頭竜まいん様』が編み出したという九頭竜技巧(スキル)です。

元々は新しい時代がどんな世界であるかを服装や装備、年恰好を見てMicopediaの記述から『想像』し、どうやって取り入るかを『想像』するという、九頭竜まいん様が編み出した九頭竜技巧(スキル)でした。

まあ普通に私たちと同じ『現代世界』だったので特に使い道は無いかと思っていましたが、こうして漂流者の出身地を大まかに割り出すのは使えます。

(さて、この場合の対応は……)

崩壊世界ならば、恐らく『悪魔が居ない世界』を想定しないので……

「狩り場……もしやガンナーズヘヴンのことですか?そこでしたら先日、ボス悪魔が討伐されて消滅しましたよ」

この言葉が、最善手でしょう。

「知ってたのか……もしかして君、この世界のハンターか何かか」

「……うわやっば。滅茶苦茶強いよこの人……『真っ赤』に見えるもん」

正解だったようで、普通に会話が続きます……ふむ、赤?

「ええまあ。大体そんな感じです……しかし、それにしては銃器を持っていないのが気になりますが」

ここを狩り場と呼ぶのであれば、楽勝で勝てるように揃えてきてるはず。気になったところは素直に聞くことで、会話を続けます。

「ああ、銃弱点なのは分かるんだが、やはり攻撃を受けるのが怖い。悪魔混じりだと奇襲できないことがあってな」

「単純に素早いしね」

「なるほど……」

この微妙にかみ合わない会話。もしや、と思いますが、結論は急いではならないとまいん様のノートには書いてありました。

「なので基本は煙幕と隠密を駆使して奥の扉に行く。そこからがお楽しみだ」

「お楽しみ?普通に死ぬのでは?」

……いや、まさか……マジですか?

「それがな奥の部屋の扉を開けると、出てくる敵がすべて銃撃無効のシャドウになるんだ。そういう仕掛けなんだろうな。開けた瞬間逃げて奇襲に備えるから、詳細は分からんが」

「奥の部屋にたくさん装備が転がってるの出来れば回収したいんだけど、アレあからさまに罠だもんね……多分欲をかいて部屋に入ると強いシャドウが出て死ぬ奴」

ああ、これは色々と脇が甘い割に恐らく仕込んだ人が良かったので生きてる奴ですね……これはもう、決まりでは?

「あいつら、結構レベル高いのに『マハムドオン』しかしてこないから、楽勝なのがありがたい。祝福弱点だから、簡単にダウンや即死取れるし」

「奇襲に失敗すると私が毎回ムドられて死ぬんだけどね。リカームと呪怨吸収相性のペルソナ持ちであるアマネがいるからいいものの、やっぱリスクは高かったね。

一度破れかぶれになったのか普通に殴ってきたのが居た時は死ぬかと思った」

まさか実在するとはと思いつつ、確定とみて、言います。

「あなた方、もしや『怪盗』では?」

バッと、二人してわたしのことを見てきます。図星であると、顔に書いてありました。なんとも。

(まいん様ですら理論上はあり得るレベルと捉えてた『崩壊世界怪盗』……実在したとは)

そこには恐るべき珍種が普通にいました。

 

怪盗。Micopediaによれば恐らく世界で最も使い手が少ない戦術の持ち主の一つ。あの世界最強の英雄の一人であり年収3億円の『雨宮蓮』様とその仲間たちの特別な戦い方。

ペルソナ使いの中でも『叛逆のペルソナ使い』と呼ばれる、特殊なペルソナ使いのみが出来る戦い方とMicopediaには書いてありました。

聖華学園にはいませんでしたが、なんでも彼らは敵の目を欺いて一瞬のスキをついて奇襲し、ダウンを取り、バトンタッチでつないで、全員ダウンさせたところで、リンチにかけて敵を倒すという、芸術染みた戦いをするそうです。

基本装備は、防御力重視で適当。大体アクセサリと自身のペルソナとスキルで補うのでパッと見奇妙な装備になると思われます。

先手取って奇襲で決着に特化した場合、金や物資がないとただの服すらありうるとも。

その内容に合致しています。怪盗は現代社会のみでしか生きられず、世界崩壊と同時に姿を消すと推測されていたので、本当に驚きました。

「な、何故知っている!?」

「どこで聞いたの!?」

が、考えなしに見破った結果そう言われて、答えに窮しました。恐らく怪盗型の常として、社会を信用せずに正体を隠すはずという記述を忘れていたのです。

こういうときはそう、あれです。口先三寸で誤魔化せばよいと、まいん様のノートには書いてありました。

「……ええ。それはもう……わたし、これでも『心の怪盗団』のファンなのですよ。年末の電波ジャックすごかったですよね」

とりあえず、一般人でも知っている情報を適当に流します。まあ、嘘ではありませんし。

「心の怪盗団!こっちにもやっぱりあるんだ!」

「私たちでは探しようがなくてお手上げだったからな!COMPも怪しげなネットにしか繋がらんし、人外ハンター協会はないし、警察やヤクザどもは信用ならんし」

「なるほど……つまり、お困りなのですね」

うーんこれはもう、早晩に詰む奴ですね。天衣様がこの前トイレで話してたのと同じ状況です。

あのとき、天衣様が急いでイロハ様とパピヨン様に連絡入れつつ、私を呼んだ理由がよくわかりました。

(さて、確か『怪盗との付き合い方』は……)

脳内で慌ただしく計算しながら、とりあえず言葉を紡ぎだします。

「それでは『取引』と行きませんか?」

「取引!?……そっか、怪盗のこと知ってるんだっけ」

「条件次第だな」

私の言葉にうまく乗ってくれたことを感じつつ、彼らに用意できそうなもの……

「……ドロン玉を、そうですね。10個いただきましょう」

「それならある。代わりに何をくれる?」

やりました。狩りに来たなら多めに用意しているだろうと踏んで正解でした。

「では、新しい新品の服と、お風呂……それに美味しい晩御飯をつけましょう」

「……いいだろう」「取引、成立だね!」

内心上手く行ったと思いながら明らかに手作りのドロン玉10個を受け取ります。

まあ、あとで天衣様のお土産にでもしようと思いつつ、脳内でインターネットにつないで基本をやっておきます。

 

ーーー九頭竜技巧(スキル) ルート検索!

 

「秀知院学園……検索結果14件」「集尽学園……検索結果140,000件」

(確定しましたか)

ルート検索は理事長直伝の九頭竜技巧(スキル)です。英雄の発生条件が整っているかを見ることで、この世界に居るか否かを判別できるそうです。

『秀知院学園』は護国系の要素が強くなると発生し、発生個所が集尽学園とほぼ同じなので、まず怪盗は産まれなくなります。社会に余裕がないので。

 

……14件ひっかかったのは、誤差ですかね?

 

「ほらほらかぐやさん!早く行きましょうよ!今日こそ会長に告白するんですよね?ね?」

「い、いやそんな……でも」

「会長ただでさえ今ら……甘粕様に鍛えられてどんどんLv上げてモテモテなんですよ!?マキさんみたいに他の子に取られてもいいんですか!?ね?この恋愛探偵にお任せですよ!」

「わ、わかりました!……会長の好みの下着を助言していただくのが藤原さんなのがとても不安なのですが」

「ひどくないです!?」

 

首をかしげている後ろを、どこぞの高校生らしき少女たちがそんな会話をしながら通り過ぎていきました。

 

 

それから私は安全なレルムに向かい、漂流者向けにも商売をやっている銭湯に向かいました。

「な!?これが全部風呂だと!?」

「え、ドラム缶で沸かす奴じゃないの!?」

お二人は予想以上に豪華だと驚きを上げていました。これでスーパー銭湯になど連れて行ったらひっくり返るかもしれません。

「女、3人。大人料金で」

「……まいど」

料金を払い、玄人のふりをします。銭湯の利用は私も初めてなどという態度はおくびにも出しません。

店主様もどういう存在かは分かっているらしく、黙って通してくれました。

「申し訳ありませんが、先に入っててください。私はこちらの方と少し話があります。入り方はそこの注意書きを読んでください……文字、読めますかね?」

「大丈夫だ!師匠から教わったからな!……おお、なるほど。身体を先に洗うのか」

「え!?石鹸使い放題なの!?ここひねるとお湯が出るって……水じゃなくて!?」

初めての銭湯にはしゃぐお二人をほほえましく思いながら、私は店主様とこっそり交渉をすることにします。

「……お客さん?」

「ええ。着たての漂流者です。あとで服を」

そういえば分かってもらえるはず。これがプロというものです。

「安い下着とTシャツとかジャージしかないよ?」

「……え。もっとこう、年頃の女の子向けのおしゃれな感じの」

……予想外の反応に思わず固まりました。

「ここは安いから、そういう客は滅多に来ないんだ。着れれば充分って服しか売れない。覚えておくんだね、お上りさん」

……そういうこともあるんだ。

私は、一番近くて安いからできわめて合理的にここを選んだことを少し後悔しました。

 

 

あれから、失敗を恥じつつもお二人からお風呂に入りつつ、事情を聞き出して電車に乗り(お二人とも電車に乗るのは初めてだったらしく、おっかなびっくりでした)

いよいよ本日のメインイベントに向かいます。天衣様に一応連絡入れたら『9時までには帰ってきなさいよ……楽しんでらっしゃい』というお言葉をいただきました。

「こんなに状態が良い服、本当に貰っていいんだな!?もう返せんぞ!?古い服は下着ごとゴミ箱に放り込んでしまったんだ!」

「大丈夫ですよ。所詮防御力は期待するなという安物(ガチ)ですから。セット価格5,000円くらいですから」

電車にゆられながら黒いジャージを着たアマネ(怪盗名:ジェントルー)様がしつこく確認してくるのに再び頷きを返します。

結構しっかりしてるというか、がめついというか……まあデビルバスターとしてもそこそこ良い腕だったんでしょう。

珈琲牛乳も奢りますと言ったら2本飲んでましたし。

 

「あの、さっきのあれ。なんか甘くて酸っぱい奴。ふるーつ、牛乳?アレくれるんならまた、取引してあげてもいいんだけど?」

おずおずと、でもちゃっかりとしたユニ(怪盗名:ブルーキャット)様が青いジャージ姿でおずおずと取引を持ち掛けます。

せめてものお詫びにと奢ったフルーツ牛乳が気に入ったみたいです。

3本飲んでました。4本目は流石に遠慮しろとアマネ様に止められていました。

 

「ええ。いずれまた必要があれば取引させていただきたいと思いますが……連絡先が」

「これだ!師匠のスマホ!メールなら届くはずだ!頼んだぞ」

それとなくほのめかした瞬間アドレスを教えてくれました。これは多分、本当に困窮してる状態ですね。

キリギリス掲示板で言われてるタイプだとヤクザやカルトの類に引っかかる奴です。ここは怪盗の社会の信用しなさが上手く作用したのでしょう。

「それで、何を食わせてくれるんだ?」

「美味しいものっていうけど、さっきのより?」

お二人が聞いてくるのに頷きながら、私は『最高の御馳走』の説明をします。

「噂ですが、食べると心の力が回復して元気になれる素晴らしい料理です」

「そんなものが……それはまるで師匠が作る……」

「本当に、師匠お料理美味かったもんね……あたしたちだとあそこまで美味しく作れないし」

本当に料理食べるだけで回復するとか、やはり怪盗ってすごい。

そう思いつつ私は本日のメイン料理を口に出します。

 

「その名も……『喫茶ルブランのスペシャルカレー、珈琲付き』です」

 

お二人がとてもびっくりした顔をしたことに満足しつつ、次の駅『四軒茶屋』で降りることを告げました。

 

 

「おお、こ、ここがルブラン……」

「本当に、あったんだね……もしかして、これがさゆり?」

「ほら、立ち止まってはご迷惑ですよ……申し訳ありません。3人ですが、テーブル席をお借りしても?」

カランカランと鐘の音を鳴らしながら、店のドアをくぐり、泣きそうになりながらあちこち見ているお二人を促し、席に着きます。

「……!?えっと、い、いらっしゃい?こちらへどうぞ」

滅多に来ない客、それもうら若き女子が3人。そのことに驚きつつも、地味目の眼鏡の青年が出迎えてくれました。

「はい。いらっしゃいました……その、注文させていただいても?」

「ど、どうぞ」

……残念ながら、今日は『雨宮蓮』様はいないようです。

 

「それでは、とりあえずスペシャルカレー3人前。大盛で」

そのことを残念に思いつつも、注文します。

 

目の前の地味な青年も、顔立ちはまあまあ整っているのですが、Micopediaに記されてた

 

『目があったら惚れる』『彼女が300人いる』『笑っただけで惚れる子がいる』『撫でられただけで惚れた』『近寄るとバラの香りがする』『彼の伝説であるアーナンダをも凌駕する』

 

そんな魔性の美形であったという雨宮蓮様とは似ても似つきませんし、そもそもバラの香りがしません。ついでに理事長のイラストと比べると鼻と顎が丸すぎますし。

(ああ、でもあの猫がモナでしょうか)

さっきからこっちをガン見している猫と目があって思わず笑いかけます。

モナも普段は猫に見えるけれど極めて強力な怪盗型のペルソナ使いであったという記述はありましたが、ただの完全造魔である私には、ペルソナ使いの見分けはつきません。

同じペルソナ使いの空条様ならばあるいは……いや、やめておきましょう。私たちは目立つわけにはいかないのです。

 

Micopediaの存在を知るものとして、理事長の指示に従い、動く。

それまでは『ただのモブ』として『目立たない』ように『ごく普通』に振舞う。

 

それが我ら第13生徒会の方針です。例外として天衣様の危機には最優先で対応するという方針もありますが、それはそれです。

 

『プロ棋士はね、一般人ドン引きさせるから将棋への情熱と狂気は隠すものだったんだ。そして社会に求められることは何でもやる、将棋を一人でも多く普及させないといけない。

そうすればきっと将棋沼にはまってくれる子供が増える。結局のところ、数は力だよ。研究を進めるためのね。多分だけど、悪魔業界関係者も同じだったんじゃないかな?』

 

九頭竜八一戦術室長の残したお言葉を糧に、ここまで生き延びてきたのです、ならばMicopediaに書いてあったルブランのカレーくらいは楽しんでもいいでしょう。

 

「お、おまたせしました!カレー、3人前です。珈琲はあとで!」

さっさとカレーを席に置いたあと、眼鏡の青年がスマホを弄りだしました。

うーん現代の若者という感じですね。

 

それはさておき、年頃の少女が3人、喫茶店で、晩御飯にカレーを食べる。

なんと普通なのでしょう。

 

「うっわ……うっわ」

「これは……そうか、これが師匠の言っていた」

ものすごい勢いで食べる食べ盛りのお二人を微笑ましく思いながら、私も一口戴きます。

「……そうか。これが」

初めて食べるルブランのカレーは、Micopediaの記述通りの美味しい味がしました。

「う……全部なくなってしまった……」

「ね、ねえ……その、あのさ……」

あっという間に全部食べたお二人が、物欲しそうにします。

「……ふむ、では取引と参りましょう」

今の、この状況であれば、問題ないはず。

何を話してもただの中学生の妄想(バカ話)にしかなりませんので。

先達の失敗を生かすのです。

いきなり大規模に募集して学園やら企業やらキリギリスやら色々巻き込んでパピヨン様をブチ切れさせ、スレッタ様を泣かせたイロハ様とは違います。

「取引……なんだ?悪魔討伐か?」

「そ、それだとこのかれー?を3杯くらいもらうからね!?」

やっす、と思いつつ、そこまでの味だったということかと判断し、喜んでいただけたことに満足します。

「ここのカレーお替りし放題。その代わりに……」

そしてMicopediaの記述を追加するのに必要な情報。つまりは経費です。

基本的に予算に厳しいパピヨン会計も認めてくれるでしょう。

私はついに決まり手を放ちました。

 

ーーー貴方の師匠についてお聞かせ願えないでしょうか?

 

「そんなことでいいのか!?いいだろう、聞かせてやる。わが師匠は、表向きはただのしがないデビルバスター、レン・アマミヤ……」

「けれどその実態は!なんと!伝説の大怪盗ジョーカーなのです!すごいでしょ!?」

ガシャンガシャンと、厨房で皿が割れる音が響きました。

 

 

この20年、九頭竜戦術室長から徹底的に『考え方』を教えられ、考えた結果、私に真に足りなかったものをついに見つけました。

 

ーーー私です。美国織莉子という存在の『数』です。

 

私は、私の脳味噌一つで全部やろうとしました。だから失敗した。考えれば分かります。どう考えてもキャパが足りない。想像力が足りない。

分からないのならばそれは多分戦略眼が足りてないのです。

だからこそ『価値観が違う外付の自分』を用意することにしました。

 

Micopediaは、いわば種です。

 

その種を好きに植える。それだけで数が増えます。このオンボロPCでも何らかの装置でも信頼できる人でも……アレと同じ造魔でもいいでしょう。

対話して、自分なりに考えてくれる私。

それはきっと『違う視点』をくれて役に立つはずです。

故に戦略兵器。私というたった一つの駒の模造品。

そして、探査機。Micopediaを充実させる駒。

 

これを私はこう名付けました……

 

九頭竜技巧(スキル) 未知を暴くもの(ティンダロススレイヤー)

 

これは一手です。すぐに勝利にはつながらないかもしれませんが、私はやり直せます。何度でも、何度でも。

繰り返し、繰り返していつかすべての未知を暴いたとき、次の一手は勝手に見えてくるでしょう。

 

【注意事項】

 

コンセプトだけ説明して【エルネスティ・エチェバルリア】に丸投げで作らせないこと!

 

学園全部巻き込んだ挙句【戦闘から護衛から日頃のお世話まで全部できる元悪の秘密結社系幹部にして光堕ち予定の一見クールに見えて実はアツいプリキュア系完全造魔】とかいう、

コスト意識が完全に欠如したクソみたいな代物で学園予算吹っ飛ばすぞ!いいか、絶対やめとけ!

 

ーーーMicopedia『ルールー』の説明より抜粋




個人(脳みそに徹底的に将棋叩き込まれた美国織莉子)の意見です!
この意見をどう扱うかは今の巫女様にゆだねられてます!以上です!

ルールーの記述を見ましたね?SANチェックをどうぞ。

これが書きたかった。きっと楽しんでもらえるって信じてる。
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